愛情の限界

  • 分類:長編小説
  • 初出:「女性自身」1992年3月24日号~1992年12月8日号
  • 連載時挿絵:石川黎
  • 初刊:1993年/光文社
  • 刊行回数:2回
  • 入手:古書のみ(電子書籍あり)

あらすじ

 男の息が耳の裏から首すじへとすべり落ちていく。
 下半身では吐き出しきれなかったものをその熱い息で男が吐き出しているような気がした。熱いというより〝あたたかい〟と呼んだほうがいい、不思議な優しさを含んだ息が、耳の裏から全身へと滲みて杏子の体にまだ残っている揺れを静めた。

結婚式の前の晩、杏子は二十も年上の男との愛人関係を清算すべく、その男――佐上とベッドの上にいた。妻子ある佐上を捨て、理想的な夫・構一との幸福な結婚生活を選んだ杏子だったが、佐上の妻・絹江から式当日に届けられた離婚届を皮切りに嫌がらせが始まり、さらに夫の裏の顔も明らかになり始める。杏子は佐上の仕掛けた罠に立ち向かおうとするが――。

登場人物

  • 矢杉杏子
    • 25歳の女。
  • 矢杉構一
    • 杏子の夫。
  • 佐上行広
    • 45歳の作曲家。
  • 佐上絹江
    • 佐上の妻。
  • 沙苗
    • 杏子の妹。
  • 栗原リサ
    • アイドルタレント。
  • エミ
    • 絹江の店のホステス。

解題

女性誌「女性自身」に連載された恋愛サスペンス。80年代の某長編と構造がよく似ている。
芸能スキャンダルが話の軸になり、性描写が多めなのは掲載誌を意識してのサービスか。

「愛情の限界」というタイトルは、フレデリック・ラファエルの小説にもあり、ラファエル自らが脚本化して「いつも2人で」のタイトルで1967年に映画化されている(イギリス、スタンリー・ドーネン監督)。「いつも2人で」は「試写室のメロディー」の中で観た映画として言及されているが、これを意識して本作にこのタイトルをつけたのかどうかは不明。

90年代の長編群の中でも地味な存在であり、語られることも少ない。
現在、書籍としては品切れだが、電子書籍版が入手可能である。

刊行履歴

初刊:光文社/1993年3月15日発行

逆転のシンデレラ・ストーリー
きみは結婚しても幸福になれない!
年上の男が別れのベッドでいった言葉。
妖艶な性の中で語られる女の幸せとは――!
(単行本オビより)

単行本/265ページ/定価1359円+税/絶版
装幀/石倉ヒロユキ

文庫化:光文社文庫/1996年10月20日発行


 結婚式を12時間後に控えた杏子は、過去と訣別するために男とベッドにいた。男――佐上は、杏子の胸に爪でSの字を刻んだ。
 挙式直後から杏子を翻弄する異常な出来事。そして「理想の夫」構一の不可解な言動に罠の匂いを感じ取った杏子は、「幸せ」を守るために決然と立ち向かっていったが、逆に……。彼女が最後に信じたものは何か?
 サスペンスフルな恋愛小説!
(文庫裏表紙より)

文庫/340ページ/定価544円+税/品切れ/電子書籍あり
解説 成熟しすぎた少女/石原正康(編集者)
写真・カバーデザイン/上原ゼンジ

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最終更新:2017年10月17日 02:54