恋愛小説館

  • 分類:短編集
  • 初出:別記
  • 初刊:1987年/文藝春秋
  • 刊行回数:2回
  • 入手:古書のみ

解題

日曜日と九つの短篇』に続く、30枚程度の恋愛短編10編を集めた短編集。
「別册文藝春秋」で連作「連城三紀彦恋愛小説館」として書かれたものを中心にまとめられている。このシリーズはこの後『新・恋愛小説館』に続き、『夏の最後の薔薇』の収録作も一部は「恋愛小説館」と銘打たれていた。
タイトルも含め、連城三紀彦=恋愛小説家というイメージを強く打ちだした短編集といえる。

 書くものに男女の話が多いせいか、取材でよく愛という言葉の定義や解説を求められます。もともと解説能力に欠けている上に、愛という口に出すと嘘になってしまう厄介な言葉が相手となるともう完全にお手あげですが、強いて言うなら、その言葉を解説するのに、僕にはこの十の物語と本一冊分の字数が必要だったのです。四十近い年齢で漠然と考える恋愛には、恋の甘美さはなく、愛のほうも純粋にそれだけというわけにはいかず、生活の雑事の埃と煤にまみれています。
 もう一つ強いて言わせてもらえば、その埃と煤のほうを書きたかったのだとも思います。
(単行本あとがきより)

これは本書に限らず、「SUN・SUN」に掲載された掌編群をはじめ、中期の連城三紀彦の恋愛短編群の基本スタンスであると言えるだろう。

収録作

組歌

  • 初出:「別册文藝春秋」1985年10月号
  • 雑誌時挿絵:斎藤真一

裏木戸

  • 初出:「別册文藝春秋」1986年1月号
  • 雑誌時挿絵:斎藤真一

かたすみの椅子

  • 初出:「別册文藝春秋」1986年4月号
  • 雑誌時挿絵:斎藤真一

淡味の蜜

  • 初出:「別册文藝春秋」1986年7月号
  • 雑誌時挿絵:斎藤真一

空き部屋

  • 初出:「別册文藝春秋」1986年10月号
  • 雑誌時挿絵:斎藤真一

冬草

  • 初出:「別冊婦人公論」1987年冬号
  • 雑誌時挿絵:東谷武美

かけら

  • 初出:「小説新潮」1986年2月号
  • 雑誌時挿絵:深津真也

片方の靴下

  • 初出:「オール讀物」1987年2月号
  • 雑誌時挿絵:木原いづみ

ふたり

  • 初出:「オール讀物」1987年5月号
  • 雑誌時挿絵:北村治

捨て石

  • 初出:「別册文藝春秋」1987年1月号
  • 雑誌時挿絵:斎藤真一

刊行履歴

初刊:文藝春秋/1987年8月20日発行

静かな出会いと別れの諸相
結婚をとりやめたのに新婚旅行に出た二人、転勤してゆく隣家の主人を見送る人妻など、さまざまな淡い愛の形を描いた珠玉の作品集
(単行本オビより)

単行本/201ページ/定価900円/絶版
あとがきあり
装画/齋藤真一 AD/竹内和重

文庫化:文春文庫/1990年7月10日発行


上司の妻に誘われながら一度のキスだけで遠ざかる青年(「組歌」)、結婚をとりやめたのに形だけの新婚旅行に出た二人(「淡味の蜜」)、転勤してゆく隣室の主人を見送る人妻(「空き部屋」)、老いたるお手伝いさんとの再婚を決意する作家(「捨て石」)……。さまざまな愛の形を、静謐な筆に描き出した珠玉の短篇集。
(文庫裏表紙より)

文庫/231ページ/定価350円+税/絶版
あとがきあり(単行本と同一内容)
解説/植村修介(文芸評論家)
装画/齋藤真一 AD/竹内和重

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最終更新:2017年10月17日 02:52