離婚しない女(短編集)

  • 分類:短編集
  • 初出:別記(全て「オール讀物」)
  • 初刊:1986年/文藝春秋
  • 刊行回数:2回
  • 入手:古書のみ

解題

中編の表題作「離婚しない女」に、短編「写し絵の女」「植民地の女」の2編を併録した、やや変則的な形の作品集。
タイトルからそうと見抜くのは至難の業だが、立派なミステリ短編集である。

表題作は刊行と同年に神代辰巳監督、萩原健一・倍賞千恵子・倍賞美津子主演で映画化されたが、もともと映画化を前提に原作として書かれた作品だった。表題作の掲載された「オール讀物」1986年7月号には「連城三紀彦 『離婚しない女』の周辺」と題したグラビアが掲載されている。
映画の方は原作の殺人事件はカットされ、恋愛映画になった模様。倍賞姉妹の初の本格的共演が注目されたようである。

「映画化不可能な話を書いてもいいですか」
 監督にそうたずねてみた。映画化を前提に原作を書いてほしいと頼まれ、登場人物からある程度の性格設定までスタッフの方々と相談して決め、さてストーリーはほぼ全面的に僕にまかされることになった時である。
「いいですよ」
 神代監督はあっさりとそう答えた。どんな話をもってきてもサバいてみせるから、自信というより余裕が温和な微笑に覗いていた。
(映画『離婚しない女』パンフレット収録「原作者のことば」より)

なお映画公開の3ヶ月前、86年7月に同題のテレビドラマが放送されており、出演者に奥田瑛二がいるが、どうやら別作品のようである。

また「写し絵の女」は初出時は「写し絵」というタイトルだったが、他2編のタイトルに合わせるためか単行本収録時に改題されている。アンソロジー『推理小説代表作選集1986 推理小説年鑑』(1986年、講談社)では「写し絵」の原題で収録されているが、その文庫化である『殺人はお好き? ミステリー傑作選21』(1991年、講談社文庫)では「写し絵の女」として収録されている。

収録作

離婚しない女

  • 初出:「オール讀物」1986年7月号
  • 雑誌時挿絵:安久利徳

写し絵の女

  • 初出:「オール讀物」1985年11月号(「写し絵」改題)
  • 雑誌時挿絵:村上昴

植民地の女

  • 初出:「オール讀物」1985年1月号
  • 雑誌時挿絵:滝沢和大

刊行履歴

初刊:文藝春秋/1986年9月10日発行


二人の女が
一人の男を
激しく愛した。
(単行本オビより)

単行本/212ページ/定価900円/絶版
装幀/村上みどり

文庫化:文春文庫/1989年9月10日発行


喫茶店主・高井由子と水産会社の社長夫人・山川美代子は、ともに私設気象予報官・岩谷啓一に魅かれていた。由子はその恋を一夜だけの浮気にとどめ、夫の元へ戻ってゆくが、美代子はあえて夫殺しの共犯者となることにより、啓一を独占しようとする。他に「写し絵の女」「植民地の女」の二篇を収録。
(文庫裏表紙より)

文庫/206ページ/定価311円+税/絶版
解説/山岡聡(映画宣伝マン)
カバー/斎藤和雄

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最終更新:2017年03月27日 14:48