夜よ鼠たちのために(短編集)

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夜よ鼠たちのために(短編集) - (2020/07/12 (日) 20:24:24) のソース

-分類:短編集
-初出:別記(全て「週刊小説」)
-初刊:1983年/ジョイ・ノベルス
-刊行回数:4回(うち2回は再編集)
-入手:入手可

*解題
実業之日本社の隔週刊小説誌「週刊小説」(現在の「月刊J-NOVEL」)に掲載された6編を集めた短編集。
同じ「週刊小説」掲載作を集めた短編集に『[[顔のない肖像画>顔のない肖像画(短編集)]]』がある。長編では同誌に『[[わずか一しずくの血]]』を連載した。また初刊がノベルスで刊行されたのは本書と『[[敗北への凱旋]]』のみ。

2012年の『東西ミステリーベスト100』では『[[戻り川心中>戻り川心中(短編集)]]』(12位)に次ぎ、連城作品では2位となる86位にランクイン。
連城三紀彦の現代ミステリ短編集の代表作と言っていいだろう。

> 出世作である『[[戻り川心中]]』のような大正ロマン路線ではないためか、発表当時はさほど話題にならなかったようだが、八〇年代の著者の短篇集としては『[[戻り川心中]]』に匹敵する最高傑作ではないだろうか。六篇すべてにどんでん返しが用意されているが、六篇も続けて読めば普通は仕掛けを考える際の作者の癖が透けて見えてしまうものなのに、連城に限っては、騙されないように注意しながら読んでも、結局引っかけられてしまうのだから恐ろしい。(中略)
> 叙情的な文体に隠されたパラドキシカルな怪論理に、存分に翻弄される快感を味わってほしい。
>(『本格ミステリ・フラッシュバック』より 執筆者:千街晶之)

綾辻行人は特に本書がお気に入りのようで、デビュー間もない1990年に「an・an」で本書を「戦後最高のミステリー短編集」として挙げている。

> ミステリーのおもしろさの最たるものは何かと言ったら、やはりラストのどんでん返し、結末の意外性にあると思うんです。でも、それを短編で出すのは、すごく難しい。ところが、この短編集は、どの作品もすべて、見事な反転の構図を描いている。考えうる限り、最高の展開を実現させた作品ばかりなんです。まるでネガフィルムがポジに変わるように、結末で、白黒が逆転する。すべて、完全にだまされてしまう。戦後のミステリー短編集の中で、僕はこれが最高のものだと思う。特に印象深いのは、表題作ですね。ミステリーという性格上、ストーリーを言うことはネタをバラしてしまうことになるので控えますが。自分がもし短編を書くのなら、こんな風に書きたいと思いましたね。
>(「an・an」1990年11月23日号 綾辻行人「わたしの、一冊。 見事な反転の構図。戦後最高のミステリー短編集。」より)

>&bold(){綾辻}:連城作品は、一般的には直木賞受賞作の恋愛小説『恋文』が有名ですが、衝撃的だったのはやはりまず、『戻り川心中』『変調二人羽織』『密やかな喪服』あたりの初期短編集。今は光文社文庫で読めると思います。それから絶対に外せないのは、『夜よ、鼠たちのために』です。これが今、非常に手に入りにくい状態らしいですね。最初は実業之日本社から新書判で出て、新潮文庫に入ったあとハルキ文庫に移って、そこで品切れ状態が続いているんだとか。日本の叙述トリック系短編集の最高峰なのに......もったいない。
>(「[[作家の読書道 第150回:綾辻行人さん>http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi150_ayatsuji/20140716_3.html]]」より)

上記の通り、ハルキ文庫版が書店から消えて以来10年ほど品切れ状態が続いていたが、『このミステリーがすごい!2014年版』の企画「復刊希望!幻の名作ベストテン」にて&bold(){1位}に輝いたことで、2014年に宝島社文庫から復刊された。綾辻は宝島社版のオビに推薦文を寄せている。

宝島社文庫版は5万部超のスマッシュヒットになった。

もともとの収録作は6編だが、ハルキ文庫版は『[[密やかな喪服>密やかな喪服(短編集)]]』から「[[代役]]」「[[ベイ・シティに死す]]」「[[ひらかれた闇]]」の3編を増補した9編収録の再編集版。
宝島社文庫版はハルキ文庫版を底本としたため、同様に9編収録となっている。&italic(){密やかな喪服ェ…}

ジョイ・ノベルス版と新潮文庫版では、表題作の「[[夜よ鼠たちのために]]」の真相に作者が註を付している(ハルキ文庫版以降は削除)。
ジョイ・ノベルス版は連城の著作の全判型の中で最もレア度の高い1冊。表紙のジャンル表記は「クール・サスペンス」になっている。

**各種ランキング順位
-週刊文春『東西ミステリーベスト100 2012年版』(文春文庫) &bold(){86位}
-『このミステリーがすごい!2014年版』「復刊希望!幻の名作ベストテン」 &bold(){1位}

**収録作
***[[二つの顔]]
-初出:「週刊小説」1981年7月3日号
-雑誌時挿絵:福野佳宥

***[[過去からの声]]
-初出:「週刊小説」1981年10月9日号
-雑誌時挿絵:中沢潮

***[[化石の鍵]]
-初出:「週刊小説」1982年1月29日号
-雑誌時挿絵:福野佳宥

***[[奇妙な依頼]]
-初出:「週刊小説」1982年6月4日号
-雑誌時挿絵:中沢潮

***[[夜よ鼠たちのために]]
-初出:「週刊小説」1982年10月22日号
-雑誌時挿絵:中沢潮

***[[二重生活]]
-初出:「週刊小説」1983年2月25日号
-雑誌時挿絵:中沢潮

**刊行履歴
***初刊:ジョイ・ノベルス(実業之日本社)/1983年3月25日発行
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>&bold(){推理小説界のクールな旗手}
>&bold(){連城三紀彦の最新作}
>殺人に理屈はない――――――
>新感覚のサスペンスをどうぞ!!
>(ノベルス初版オビより)

新書/235ページ/定価680円/絶版
カバー・絵/石山みのる 装幀/サン・プランニング

***文庫化:新潮文庫/1986年4月25日発行
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>脅迫電話に呼び出されて出かけた総合病院の院長が殺され、続いて、同じ病院の内科部長の死体が発見された。見つかった二人の死体は、首に針金を二重に巻きつけられ、白衣を着せられていた。何故二人がこんな姿で殺されたのか? そして、「妻の復讐のために殺した」という犯人の電話の意味は? 執拗な復讐者の姿を追う表題作ほか、人間の心の奥に潜む闇を描くサスペンス6編。
>(文庫裏表紙より)

文庫/290ページ/定価360円/絶版
解説/関口苑生
カバー/池田良二

***再編集:ハルキ文庫/1998年11月18日発行
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>世田谷の某総合病院にかかってきた脅迫電話に呼び出された医師とその娘婿が相次いで殺害された――白衣を着せられ、首には針金が二重に巻きつけられているという奇妙な姿で……。妻の復讐のために次々と殺人を犯していく一人の男の執念を描いた表題作をはじめ、意外な結末の余韻が心を打つ、サスペンス・ミステリーの傑作全九篇を収録した短篇集。
>(文庫裏表紙より)

日下三蔵編《連城三紀彦傑作推理コレクション》第4回配本
9編収録(「[[代役]]」「[[ベイ・シティに死す]]」「[[ひらかれた闇]]」を増補)

文庫/422ページ/定価857円+税/品切れ
解説/碓井隆司
装画/宇野亜喜良 装幀/芦澤泰偉

***再編集再刊:宝島社文庫/2014年9月18日発行
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>脅迫電話に呼び出された医師とその娘婿が、白衣を着せられ、首に針金を巻きつけられた奇妙な姿で遺体となって発見された。なぜこんな姿で殺されたのか、犯人の目的は一体何なのか……? 深い情念と、超絶技巧。意外な真相が胸を打つ、サスペンス・ミステリーの傑作9編を収録。『このミステリーがすごい!2014年版』の「復刊希望!幻の名作ベストテン」にて1位に輝いた、幻の名作がついに復刊!
>(文庫裏表紙より)

9編収録(ハルキ文庫版と同様)

文庫/413ページ/定価730円+税/入手可
解説なし
カバーデザイン/菊池祐(ライラック)

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