-分類:短編集 -初出:別記 -初刊:1986年/新潮社 -刊行回数:2回 -入手:古書のみ *解題 『[[恋文>恋文(短編集)]]』に続く、主に「小説新潮」に発表された恋愛小説5編を収録した短編集(「[[手枕さげて]]」のみ「小説現代」初出)。 タイトルが示す通り『恋文』の姉妹編という扱いだが、内容的には表題作のガジェットが「[[恋文]]」と共通、という以上の繋がりはない。『恋文』同様、連城が身近な人々をモデルに書いた恋愛短編集の第2弾、という程度の意味合いと受け取れば良い。 >「書いてもいいですか」 > この短篇集の作品は、全部、その、こわごわ切り出してみた一言から始まりました。 > 相手は、僕に小さな名場面をくれた人たちです。 > 前作「恋文」のあとがきに、「現実にも小さな名場面があります」と書きました。子供の頃から映画ばかり見ていたせいなのか、誰かがちょっといい顔や仕草をすると、スクリーンのように四角く切りとって、記憶に残す癖があります。 >「恋文」には納まりきらなかった、またそれ以降に出逢った素人の名優たちに、今度も素人演出家が好みの役と衣裳とを押し着せてドラマを演じさせてみようとした、つまりは『恋文』第二集です。 >(単行本あとがきより) あとがきによれば、それぞれ「[[手枕さげて]]」は関口苑生、「[[俺ンちの兎クン]]」はカメラマンの柴田博司、「[[紙の灰皿]]」は映画『恋文』などの監督の神代辰巳、「[[もうひとつの恋文]]」は9歳歳下の友人だという橘利器、「[[タンデム・シート]]」は脚本家の荒井晴彦と高田純がそれぞれモデルであるようだ。ただし「[[手枕さげて]]」のエピソードは連城の実体験だという中村彰彦の証言もある。 >&bold(){中村} 連城さんには女性ファンが多かったのですが、ある日、ある作品中の女性を自分のことだと思い込んで、彼のマンションに、トラックで花嫁道具を一式送りつけてきた女性がいた(笑)。 >&bold(){片山} いまでいうとストーカーですね。 >&bold(){中村} 普通は激怒するところ、彼はむしろ恐怖で震え上がってしまったんです。そのときの怯えっぷりといったらなかった。そのことを「手枕さげて」という短編に書きましたから、さすがは作家だと思いましたが(笑)。 >([[『小さな異邦人』鼎談書評 何気ない日常に潜む謎と巧緻な仕掛け、深い心理描写が秀逸の短編集>http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/1043?page=2]]より) 『[[恋文>恋文(短編集)]]』よりもさらにミステリ色は薄まっており、純粋な恋愛短編集と思って読むべきだろう。 『恋文』がテレビドラマ化された効果でか、2004年に一度品切れ状態から増刷されたようだが、現在はそれも再び入手不能となっている。 そのため現在は『[[六花の印 連城三紀彦傑作集1]]』に収録された「[[俺ンちの兎クン]]」のみ新品で読める。 **収録作 ***[[手枕さげて]] -初出:「小説現代」1984年12月号 -雑誌時挿絵:村上豊 ***[[俺ンちの兎クン]] -初出:「小説新潮」1985年11月号 -雑誌時挿絵:渡辺有一 ***[[紙の灰皿]] -初出:「小説新潮」1985年8月号 -雑誌時挿絵:長尾みのる ***[[もうひとつの恋文]] -初出:「小説新潮」1985年5月号 -雑誌時挿絵:安西水丸 ***[[タンデム・シート]] -初出:「小説新潮」1986年3月号 -雑誌時挿絵:小林泰彦 **刊行履歴 ***初刊:新潮社/1986年7月15日発行 #amazon(410347503X,text,left) >言葉にできない想いを胸の内に抱きながら、都会の片隅で生きていく男と女……。 >あざやかに描き出したさまざまな愛のヴァリエーション。 >&bold(){直木賞受賞作『恋文』姉妹編} >(単行本初版オビより) 単行本/225ページ/定価980円/絶版 あとがきあり 装幀/早川良雄 ***文庫化:新潮文庫/1989年8月25日発行 #amazon(4101405069,image,left) >酒場のカウンターで、飲み友達から妻あてのラヴレターを見せられた絵本作家の不思議な経験を描いた表題作「もうひとつの恋文」。いつのまにかブスで一途な女の虜になっていた男の物語「手枕さげて」。父親より年上の落ちぶれた男に恋をした女のせつない思いを綴った「紙の灰皿」など――日常のなかに生まれる謎解きと心のさざなみを描いた傑作短編集。&bold(){直木賞受賞作『恋文』の姉妹編。} >(文庫裏表紙より) 文庫/254ページ/定価400円+税/品切れ 『[[もうひとつの恋文]]』と連城さんのこと/一色伸幸(脚本家) カバー装画/早川良雄 デザイン/新潮社装幀室 #comment