-分類:短編集 -初出:別記 -初刊:1997年/集英社 -刊行回数:2回 -入手:入手可(電子書籍あり) *解題 「小説すばる」に発表されたものを中心に8編を集めた短編集。統一テーマは〝演技〟か。 > 本書は一九九七年に集英社から刊行された。収録作は一九九二年から九六年にかけて発表された八つの短篇である。 > 連城三紀彦というと、探偵小説専門誌『幻影城』出身ながら、最近は普通小説、恋愛小説を多く手掛けているというイメージが強いのだが、近作もミステリ・スピリット横溢する作品ばかりだから、探偵小説ファンもゆめゆめ敬遠などしないでいただきたい。殊に本書には、「これぞミステリ」と言うしかない凝りに凝った短篇が収録されている。 >(集英社文庫版 千街晶之「解説」より) > 実に豪奢な短篇集である。華麗な文章と巧みな心理描写、そして鮮やかなトリックが三位一体となって読者を出口のない迷宮に誘い込み、快い眩暈のなかに置き去りにする。連城三紀彦の名人芸は、ここに極まったと言える。 >(中略) > 表面が欺瞞で、内面が真実などという凡庸な方程式は、連城ワールドにおいては全く通用しない。不自然なまでに人工的なプロットによって、表面と内面、正常と異常、愛情と憎悪といった二項対立こそが逆に不自然であることが暴き立てられる。 > 連城の作品に同性愛者や異性装者がしばしば姿を見せるのも、整形手術によって人工的に創られた美女が登場するのも、別に現代風俗をリアルに描きたいためなどではない。まさしくジェンダーこそは現実の世界に課せられた最も不自然な社会的制度であり、整形美人とは「美」という概念をメタ化して演技し続ける存在にほかならないのだから、これほど連城の作品に相応しいテーマもないのだ。物語設定の人工性によって現実世界の人工性を告発し、それを流麗なレトリックで美学化するという逆説的方法論、まさにこれこそが連城独自の小説技法の核心なのである。 >(「週刊朝日」1997年4月25日号 千街晶之「透明な純愛小説と粘着質な官能小説を同時に読んだ気分に陥る謎物語」) 『[[戻り川心中>戻り川心中(短編集)]]』光文社文庫版、『[[流れ星と遊んだころ]]』双葉文庫版、『[[私という名の変奏曲]]』文春文庫版など、近年の連城作品の文庫の多くで解説を手掛ける千街晶之は、本書の集英社文庫版が連城解説初登板。刊行時に「週刊朝日」の書評で絶賛したのを見た連城から直接解説に指名されたらしい。 それもあって、千街は機会があるごとに中期連城の代表作として本書を取り上げ、特に「[[喜劇女優]]」を毎回熱く絶賛している。例として『本格ミステリ・クロニクル300』(2002年、原書房)や千街の単著である『読み出したら止まらない!国内ミステリー マストリード100』(2014年、日経文芸文庫)、あるいは『[[流れ星と遊んだころ]]』双葉文庫版解説など。 集英社文庫版は、連城作品ではおそらく唯一、完全に異なるデザインのカバーが2種類存在する(他に『[[戻り川心中>戻り川心中(短編集)]]』光文社文庫版と『[[夢ごころ]]』角川文庫版にも、それぞれレーベルの背表紙リニューアルに伴う背表紙違いのバージョンがある)。旧カバーはオレンジ主体に女性の裸身がデザインされたもの。カバーが変更された正確な時期は不明だが、2007年に集英社文庫が背表紙デザインを刷新した際のことかもしれない。 2000年に出た集英社文庫版は現在も新品で入手可能。 **収録作 ***[[夜光の唇]] -初出:「小説すばる」1994年4月号 -雑誌時挿絵:赤岩保元 ***[[喜劇女優]] -初出:「小説すばる」1993年8月号 -雑誌時挿絵:浅野陽 ***[[夜の肌]] -初出:「小説現代」1993年2月号 -雑誌時挿絵:渡邊伸綱 ***[[他人たち]] -初出:「小説すばる」1992年9月号 -雑誌時挿絵:久世アキ子 ***[[夜の右側]] -初出:「小説すばる」1996年5月号 -雑誌時挿絵:三嶋典東 ***[[砂遊び]] -初出:「すばる」1992年1月号 -雑誌時挿絵:山崎英介 ***[[夜の二乗]] -初出:「小説新潮」1993年6月号 -雑誌時挿絵:宇野亜喜良 ***[[美女]] -初出:「小説すばる」1995年4月号 -雑誌時挿絵:村上みどり **刊行履歴 ***初刊:集英社/1997年3月20日発行 #amazon(4087742466,image,left) >&bold(){女という役者、男という役者が、} >&bold(){恋愛という舞台の上で、} >&bold(){必死の演技を交わしはじめる…。} >8つのミステリー・ノベル >柴田錬三郎賞受賞作家が、短編の粋をみせる最新傑作集 >(単行本オビより) 単行本/322ページ/定価1600円+税/絶版 装画/村上みどり デザイン/上原ゼンジ ***文庫化:集英社文庫/2000年7月25日発行 #amazon(4087472132,image,left) >この里芋のような女に、俺の「浮気相手」が演じられるのだろうか? 妻の妹と関係を持った男は、妻の疑いをそらすために、馴染みの居酒屋の女将に一芝居打ってくれるように頼み込んだ。男の前で、妻とその妹、女将――3人の女の壮絶な「芝居」がはじまる。逆転、さらに逆転劇!(表題作「美女」)息を呑む超絶技巧で男と女の虚実を描く、8篇の傑作ミステリアス・ノベル。 >(文庫旧カバー裏表紙より) 文庫/358ページ/定価590円+税(旧カバー) 620円+税(新カバー)/入手可/電子書籍あり 解説/千街晶之 カバー(旧)/上原ゼンジ カバーデザイン(新)/泉沢光雄 写真/Carl Warner/Masterfile/amanaimages #comment