諸惑星の自由とは前世世界において宇宙歴796年8月に行われた自由惑星同盟軍前線における最大の根拠地攻略作戦。
1 戦いの背景
第七次イゼルローン要塞攻防戦において
第一三艦隊が
イゼルローン要塞を陥落させた事を受け
宇宙艦隊司令部作戦参謀チームが作案を
最高評議会に持ち込んだ。宇宙歴796年8月6日、
サンフォード政権はこの作案の可決について議論された。その中で
財政委員長・
ジョアン・レベロは
アスターテ星域会戦の敗北で150万8900人余りの戦死者遺族年金で100億ディナールが支出され更に第七次イゼルローン要塞攻防戦で捕虜となった
トーマ・フォン・シュトックハウゼン大将を始めとする帝国軍50万人の兵士の生活費で今後同盟の財政が赤字状況なのに更にこのまま戦火が拡大する事が続ければ財政悪化は明白だと進言。更に
人的資源委員長・
ホワン・ルイも軍事方面に人材が集まり過ぎた事で経済開発や社会開発の能力が落ち教育や職業訓練に対する投資が削減される一方で労働者の熟練度が低下加速度が止まらない現状が続いている。民間航宙士の訓練期間の短縮及び人員不足に過重労働を始め首都の生活物資流通制御センターのオペレーターの平均年齢は42歳だがその8割は20代以下と70代で占められており30代から40代がほとんどおらずルンビーニ星系での輸送船団事故や都市交通制御センターの単純な人為的ミスで発生した交通事故など職場事故が半年間で続出している事で本年度前期の事故発生率が前年に比べ3割も増加しているのが現状だ。社会機構全体にわたって、ソフトウェアの弱体化がしている。そこで民主主義の原則に外れない為に2人はイゼルローン要塞を手に入れた今、その運営責任者を決めしばらくの間は休養期間を取って軍に微用されている技術者、輸送及び通信関係者のうちから400万人を民間に復帰させ社会経済を立て直し帝国との講和条約を締結するチャンスだと強調する。だがそれに待ったをかけたのは1週間前に就任した
情報交通委員長・
コーネリア・ウィンザーだった。「大義を理解しようとしない市民の利己主義に迎合する必要はありません。そもそも犠牲をなくして大事業が達成された例があるでしょうか?どれほど犠牲が多くとも、たとえ市民が死に至っても、成すべき事があります。私達には銀河帝国・ゴールデンバウム王朝を打倒しその圧政と脅威から全人民を救うという崇高な義務があります。安っぽいヒューマンリズムに陶酔うして、その大儀を忘れ果てるのが、果たして大道を態度と言えるでしょうか。」と強く否定した。レベロとウィンザーの激しい口論になるのに待ったをかけたのは
ロイヤル・サンフォードだった。彼は全員に評議会の一般の支持率の資料を端末機の画面に表示した。支持31.9%、不支持56.2%と来年の選挙には勝利する事は難しい状況だった。だがコンピューターに計測した結果100日以内に帝国に対して画期的な軍事上の勝利を収めれば支持率は15%UPするは確実だと全員に強調し「軍部からの提案を投票にかけましょう。」とウィンザーは進言。これにレベロは「吾々にはそんな権利はない。政権の維持を目的として無益なな出兵を行うなどそんな権利を吾々は与えてはいけない。」と抗議するも無視され結果賛成6、反対3、棄権2で採用は可決された。これを受け政府は
シロン・グループより資金援助を行う事を決定し同時に
ヤン・ウェンリーの辞表を却下し中将昇進を決定しました。閣議終了後、奇妙にも反対票を投じた
国防委員長・
ヨブ・トリューニヒトは報道陣の取材に対しに「私は愛国者でね。だがこれは常に主戦論で立つ事を意味するものではない。私がこの出兵に反対だった事を銘記しておいていただこう。」と疑問に残る返答をするのでありました。
2 メンバーと作戦会議
宇宙歴796年8月12日、
統合作戦本部地下会議室において場所とメンバーが発表された。着任日は同年8月22日。
総動員数は
自由惑星同盟軍の6割の3022万7400名(自由惑星同盟の総人口の130億の0.23%)。
これらには装甲機動歩兵、大気圏内空中戦隊、水陸両用戦隊、水上部隊、レンジャー部隊、各種の独立部隊、さらに国内治安部隊の中から重武装要員が参加している。
更に非戦闘員に技術、工兵、補給、通信、管制、整備、電子情報、医療、生活の各分野から最大限の人的動員がされる。
作戦会議が始まった時の
統合作戦本部長・
シドニー・シトレ元帥の表情は高揚感がなく発言も苦悩を見せるような積極性が欠けるものだった。彼がこの作戦に大反対だった事を参加する艦隊司令官達は皆知っていたからだ。それでもNo.1の立場上、出来る限りの犠牲を出さない為に自由惑星同盟軍が民主主義の自由の国の軍隊である事を象徴する為にその精神に基づいた活発な提案と討論を行うよう参加者全員に強く希望した。その中でやる気満々なのは作戦を立案した首謀者の作戦参謀・
アンドリュー・フォーク准将だった。彼は「今回の遠征は、自由惑星同盟開闢以来の大軍事作戦であると信じます。幕僚としてそれに参加させて頂けるとは、武人の名誉、これを過ぎたるはありません。」と美辞麗句で自賛する発言をするのであった。次に発言したのは猛将のウランフ中将だった。「吾々は軍人である以上、赴けと命令があれば何処へでも赴く。ましてはゴールデンバウム王朝の本拠地・帝都オーディンを突くと言うのであれば喜んで出征しよう。たが、言うまでもなく雄図と無謀はイコールではない。周到な準備が欠かせない。迂遠ながらそれをお聞かせ願いたい。」と質問した。それに対しフォークは「大軍をもって帝国領土の奥深く進攻する。それだけで帝国人民の心を変化させます。」と回答した。この返答にウランフはまるで戦う必要はないように感じとった。抽象的過ぎるからもう少し具体的に説明しくれないかと返答した時、老将のビュコック中将が「要するに行き当たりばったりと言う事ではないのかな。」と呆れ返るように返答してきた。次に質問して来たのはヤンだった。何故今このタイミングで作戦を実行しなければいけないのかと。その答えにビュコックは選挙が近いからだというのに対しフォークは今逃したら運命そのものに逆らう事になりますとキッパリ否定し作戦内容を全員に説明した。イゼルローン要塞を本拠地とし同盟軍の空前の大艦隊が長蛇の列をなし自由と正義の旗を掲げて進み勝利に導く事を3次元ディスプレイを使って余裕満々に語った。たがこの映像にヤンは敵中に深入り過ぎる上、艦列はあまりに長過ぎて補給や連絡があまりにも不便な挙げ句、帝国軍は我軍の細長い側面を突く事で容易に我軍を分断出来る事を強く指摘し更に
宇宙艦隊副司令長官に就任し帝国元帥となった
ラインハルト・フォン・ローエングラム伯爵が出世の為にはしゃり出て来るはずこの事を踏まえてもっと作戦を練り直すべきだとフォークに進言した。その時、グリーンヒル大将から「彼はまだ若い。どこかで失敗や誤謬を犯す事もあるはずだ。」と論争を止める返答をして来た。でもヤンはラインハルトの想像を超える軍事的才能は神業というべきできっと我々が想像以上の大失敗を犯すように策を練るはずに違いないと強く進言した。でもフォークは「敵を過大評価して必要以上に恐れては武人としては最も恥すべきところだ。そんな事されたら兵士達の士気を削ぎ、その決断と行動を鈍らせては結果として利敵行為に類するものとなりましょう。だからこのような予測はやめていただきたい。」とヤンを嘲笑うかのように注意した。その時、ビュコックが机を激しく叩きながら「貴官の発言は礼を失している。自分の意見に賛同せず慎重論を唱えたからといって利敵行為呼ばわりするのが節度ある発言だといえるか。」と激怒した。でもフォークは「あくまで一般論を申し上げたまでです。一個人の誹謗ととらわれては甚だ迷惑です。そもそもこの遠征は専制政治の暴圧に苦しむ銀河帝国250億び民衆を解放して救済する崇高な大義を実現する為のものです。これに反対する者は結果として帝国に味方するものと言わざるをえません。たとえ敵に地の利あり、大兵力あり、或いは想像を絶する新兵器があろうとも、それを理由として怯む訳にはいきません。我々が解放軍、護民軍として大義に基づいて行動すれば、帝国の民衆は歓呼して我々を迎え、進んで協力するでしょう。」
会議終了後、会議場に残ったヤンはシトレと難しい話をしていた。シトレが是が非でもヤンに軍に残って欲しかったのは彼の存在と期待が重要不可欠になった事を今回の会議で理解させる為だった事とフォークのやり方を見極める為だったのだ。フォークは士官学校を首席で卒業し戦死した
ウィレム・ホーランド中将の出世などに響かせた事で准将にまで昇進したが、更なる出世とヤンへの対抗意識の為に私的なルートを使ってロイヤル・サンフォードの秘書に作案を持ち込むという卑劣な手を使い支持率UPを図る政権の後押し受け今回の会議に持ち込む事が出来たのだ。ヤンにとっては不満かもしれないがシトレはヤンが軍のトップになる事を強く望んでいるのだ。なぜならこの作戦が終了したらシトレは退役しなけばならない。失敗したら反対だったとはいえNo.1の立場上引責。成功すればロボスの出世だ。ロボスは現在
宇宙艦隊司令長官で本来なら次は長年席が空いていた
幕僚総監の職なのだが歴史的快挙達成と新英雄誕生の功績から更に上の統合作戦本部長しかなく彼に職を譲って勇退するしかないのだ。だから今後の政治や軍部の未来の為にヤンは不可欠なのだと強く教えました。それでも成功しても失敗しても犠牲をなるべく出さない為にシトレは旧知の仲である
後方勤務本部長・
レナート・ヴァシリーシン大将と話し合ってレナート配下の後方勤務次長・
ハンス・ランナーベック中将を副参謀長に推挙しメンバーに加えました。
3 対応
帝国側
この作案はフェザーン自治領主・
アドリアン・ルビンスキーとトリューニヒト、
地球教の地下協定でフェザーン駐在帝国高等弁務官・
ヨッフェン・フォン・レムシャイド伯爵を通して
国務尚書・
クラウス・フォン・リヒテンラーデ侯爵に情報は伝えられた。リヒテンラーデは居館に財務尚書・
ゲルラッハ子爵を招きカストロプ動乱の事後処理の一段落の報告と同時にこの件について話し合いをしました。リヒテンラーデは情報提供者がルビンスキーだと言うのが気がかりで黒狐と守銭奴共が今後の帝国に害を及ぼすのではないのかと疑問を抱くもこんな事は今はさておき内務尚書・
フレーゲル侯爵の報告によるとイゼルローン要塞が陥落した事を平民達が薄々感づきはじめ彼らの中で革命的気分が醸成さつつあるとだから叛徒共を撃破して帝室の威信を回復させぬばならない。そこで、対処と防衛の任をラインハルトに一任しようとゲルラッハは提案してきました。これにリヒテンラーデは「あまり感情的にならない方がいいぞ。あの小僧にやらせたとしてだ、もし奴が成功すれば一段と声望が上がり吾々としては奴に対抗する余地がなくなるしれぬ。仮に失敗したら吾々は極めて不利な戦況のもとで叛乱軍と戦う事になる。恐らく帝国の中枢部で勝利に意気あがる3000万の大軍とな。」と抗議する。これにゲルラッハは「閣下は悲観的に過ぎます。金髪の小僧の軍と戦ったからには勝利したところで叛乱軍も無傷ではすみません。小僧は確かに無能ではなく叛乱軍に少なからぬ損害を与えるでしょう。しかも叛乱軍は本拠地を遥か離れて遠征し補給も全く出来ず地の利も得ていません。戦い疲れた敵を吾々はゆっくり迎撃出来ます。いやそういう状況であればあえて戦う必要はなく持久戦に持ち込むだけで叛乱軍は物資の不足と心理的不足に苦しみ遂には撤退せざるをえないでしょう。そこを狙い撃てばよいのです。」と詳しく説明しました。しかしリヒテンラーデは「なるほど、だが失敗した時の事はともかくもし勝利したらどうする?現在でさえ奴は吾々の手にはおえない。皇帝陛下の恩願と武勲を笠に着てな。一段と増長していくのは目に見えているぞ。」と不安を抱くもゲルラッハは「増長させとくんですよ。成り上がりの小僧1人いつでも料理出来ます。毎日軍隊と共に行動するわけではありません。叛乱軍が死滅した時、あの金髪の小僧も倒れる。吾々が必要な内は役立てようではありませんか。」とリヒテンラーデを上手く納得させました。
翌日、新無憂宮・黒真珠の間においで皇帝・
フリードリヒ四世立会のもとリヒテンラーデはラインハルトを迎撃の司令部に任命。
ローエングラム元帥府に戻ったラインハルトは所属する8艦隊の司令官に物資と食料を引き上げる
焦土作戦を行う事を決定し内容を説明した。
ウルリッヒ・ケスラー准将は作戦の為に幼馴染みの
クラインゲルト子爵の
フィーア・フォン・クラインゲルトと悲しい別れをするのでありました。
同盟側
焦土作戦が行われるとは知らず同盟艦隊は帝国領の200余りの辺境恒星系を制圧し解放軍と名乗って平等と自由を与えようとする。その中でも一番張り切っているのは
第七艦隊所属の
フランツ・ヴァーリモント少尉だった。彼は得意の土木学を使って枯れた井戸を掘り畑や作物を元通りにし地主の
ワグナーや彼の娘の
テレーゼに好かれました。ヴァーリモントが楽しく切ない思いをテレーゼに打ち明けながら一時を過ごしていた頃、イゼルローン要塞にいるキャゼルヌは各艦隊の報告で予想以上の物資と食料が必要だと判明し、ロボスに現在の状況では無理があると進言しもしかしら帝国軍が輸送艦隊を襲撃するのではないかと推測した。だがフォークの横槍で食料・物資の追加報告書を最高評議会に提出する事となった。この報告にレベロは「帝国軍はこれを機に同盟の財政を崩す気だ」と撤退を強く強調した。ホワンも出兵した兵士や占領地の民衆を多く死なせない為に撤退を賛成する。これに他の委員長は動揺するもウィンザーの「この作戦は帝政に苦しんでいる民衆を救う為のもの、それを今撤退したら市民から避難を浴びるだけだ。」と強く反対を推し進め、最終的にはサンフォードが「前線で異常が無いなら送っても問題ない。」と追加の物資と食料を送る事を決定した。一方ラインハルトの計画を見破ったヤンはウランフと話し合って撤退の準備を進め更にビュコックにも連絡してロボスに撤退をするようにお願いするのでありました。その頃、イゼルローン要塞から
グレドウィン・スコット准将の輸送艦隊が発進した。ランナーベック中将は護衛に残存の半分に当たる50000隻をつけようとするもフォークの横槍でたった100隻にまで減らされた。キャゼルヌもせめて200隻にして欲しいと進言するも無視された。余裕をこいてたスコットだったが突如200倍以上の艦数で
キルヒアイス艦隊が現れこの襲撃には耐えられず輸送艦隊は全滅をしました。だがこれでも諦めないフォークは最高評議会とロボスの特命と言って全艦隊の兵士に現地調達の指示を出し全艦隊司令官にもその旨を伝えた。これによりヴァーリモントは仲間の兵士達に見捨てられワグナーや民衆に暴行を受けられました。そしてとうとう彼の居る占領地で大規模な民衆暴動が起こりました。時を同じくして他の4艦隊の占領地でも同様の暴動が発生、ラインハルトは民衆と同盟軍の仲を裂く事に成功したのでありました。一方、イゼルローン要塞に連絡を入れているビュコックはフォークの横槍を受けていた。身勝手行為ばかりするフォークをビュコックは叱咤激励したりなだめたりしました。その直後フォークは倒れ込みました。診察を行った
ダニエル・ヤマムラ少佐によるとフォークの病名は転換性ヒステリーによる神経性盲目と判明。刺激を与えると再発する恐れがあるのでフォークは療養のため病院へ入院する事となりました。そしてグリーンヒル大将が出てきて撤退が出来ると思われたがロボスは昼寝をするから敵襲まで起こすなと言われているので今は無理ですと返答してきた。結局撤退は出来ず占領地は大量の死者・重傷者が続出し兵士の士気は大低下するのでありました。
4 戦火
アムリッツァ前哨戦
宇宙歴796年10月10日に両軍は戦いの火花を切った。
第三艦隊は惑星レージング上空で
ワーレン艦隊と交戦するも占領地の民衆暴動の末士気が下がり抵抗虚しく壊滅。第五艦隊はビルロスト星系で
ロイエンタール艦隊と交戦。最初から撤退の準備を整えていた為、3割の犠牲を出しながらも離脱に成功した。第七艦隊はドヴェルグ星系でキルヒアイス艦隊と交戦するも占領地の民衆暴動の末士気が下がっており抵抗むなしく敗走した。第八艦隊はヴァンステイド星域で
メックリンガー艦隊と交戦。占領地の民衆暴動の末士気が下がるも3割の犠牲を出し早々に撤退した。第九艦隊はアルヴィース星系で
ミッターマイヤー艦隊に急襲され、占領地の民衆暴動の末士気が下がっており反撃も出来ないまま敗走。乗艦のパラミデュースが被弾してアル・サレムが重傷を負ったため、副司令官のモートン少将が指揮権を引き継ぎ、部隊を統率して敗走した。第一〇艦隊は、惑星リューゲン上空で
黒色槍騎兵艦隊と交戦。艦隊の4割が戦闘不能となった段階で脱出作戦に移行。結局半数が撃破され、残りは脱出。ウランフは殿軍として脱出を援護したが、旗艦盤古が撃沈され戦死した。第一二艦隊はボルソルン星系で
ルッツ艦隊と交戦するも占領地の民衆暴動の末士気が下がっており壊滅寸前に陥り、戦力のほとんどを失った後、ボロディンは自殺した。指揮権を引き継いだコナリー少将は降伏勧告を出すのであった。第一三艦隊はヤヴァンハール星系で
ケンプ艦隊と交戦。半月陣形を活用した艦隊運用で優位に立った後、隙をついて撤退し、
第七艦隊との合流点であるドヴェルグ星域に向いキルヒアイス艦隊と交戦、連戦と無理な撤退戦にもかかわらず、損害は1割程度に収まっていた。
この報告を受けグリーンヒル大将は撤退をするよう進言するも諦めきれないロボス元帥は残存艦隊をアムリッツァ星域に集結し陣形を立て直すよう指示を出す。
アムリッツァ星域会戦
宇宙暦796年10月14日、同盟軍は
第五艦隊(左翼)、第八艦隊(中央)、
第一三艦隊(右翼)を軸とし、これに第九艦隊、第一〇艦隊の残存艦艇合計49000隻を合流させ恒星アムリッツァ上に布陣した。また後方からの攻撃を避けるべく後背には機雷原を敷設した。対する帝国軍はラインハルトの直属艦隊に加え各星系から同盟軍を追撃してきたロイエンタール艦隊、ミッターマイヤー艦隊、メックリンガー艦隊、黒色槍騎兵艦隊、ケンプ艦隊合計74000隻を同盟軍前方に布陣させた。会戦開始直後、ヤンは
惑星レグニッツァ上空の戦いのお返しをしようと恒星アムリッツァに核融合機雷を打ちこみ、その爆風を利用して帝国軍先鋒ミッターマイヤー艦隊に急接近し、多少の損害を負わせた。第一三艦隊の突出を見た帝国軍左翼の黒色槍騎兵艦隊は第一三艦隊側面を突くべく突進し、ヤンはこれを躱すが、これにより中央でラインハルト艦隊と戦っていた第八艦隊の側面が露わになってしまい、直進してきた黒色槍騎兵艦隊の攻撃をうけて第八艦隊は壊滅、アップルトンは戦死し潰走した。これを見たラインハルトは完全勝利だと微笑み一方のヤンは負けたな痛感しました。ここでビッテンフェルトは第一三艦隊に再度攻撃を加えるべくその場で全艦隊に回頭を命じワルキューレの発進を準備を進めるが、その隙を突いてヤンは黒色槍騎兵艦隊に向け回頭し、猛攻撃を加えた。第一三艦隊は黒色槍騎兵艦隊の戦力を多く削ぐ事に成功した。この光景にラインハルトは大激怒した。そこにビッテンフェルトより「このまま戦況を推移すれば負ける。援軍を請う。」と通信が入った。これにラインハルトは「奴め、私が艦隊を湧き出す魔法の壺を持っていると思っているのか?奴に伝えろ。総司令部に余力はない。他の戦線を回せば全戦線のバランスが崩れる。現有兵力を持って部署を死守し武人としての職責を全うせよ。以後、ビッテンフェルトからの通信を切れ。敵に傍受されたら我軍の窮状が知れる」とオペレーターに指示しました。説明し終えたラインハルトはまたしてもヤンにしてやられたと苦虫を噛んでいました。一方、キルヒアイス艦隊、ワーレン艦隊、ルッツ艦隊、合計30000隻が同盟軍の背後に展開されていた機雷原を指向性ゼッフル粒子で除去して進攻し、同盟軍を挟撃する事に成功した。これにより大勢は決した。
同盟軍の総崩れにヤンはまだ逃げるのは早いと判断。一方のラインハルトは10万隻の追撃戦を初めて見てさっきまでの不満が一瞬に消え去ったように声が若者のように弾みました。同じ頃ヤンはビュコックに残存戦力の集結と
イゼルローン要塞への撤退の指揮を依頼すると共に、自らの第一三艦隊を殿とし帝国軍の前に立ち塞がりました。メインスクリーンと戦術コンピューターのパネルを相互に睨んだオーベルシュタインはヤンは黒色槍騎兵艦隊をを狙って一挙に突破を図るから早急に固めるべきだと進言。ラインハルトはキルヒアイスに早急に連絡し黒色槍騎兵艦隊に配下の艦隊の戦列を伸ばして後方に防衛ラインを敷こうとするも撤退のチャンスを測り続けていたヤンに幸運が訪れました。キルヒアイス艦隊の急行動を見てその進行方向に居合わせていたビュコック率いる残存艦隊がパニックに襲われ大質量の近くであるにも関わらずワープし脱出に成功しました。そしてキルヒアイスが艦隊再編に手間取っている隙にヤンは第一三艦隊の全兵力をもって名誉回復に燃えている黒色槍騎兵艦隊に集中させました。ビッテンフェルトは最後の一兵まで死守しようとしたもののオイゲンの諌めに従って退却するのでありました。こうして第一三艦隊は黒色槍騎兵艦隊を突き崩し脱出に成功しました。この光景にキルヒアイスの近くにいたロイエンタールとミッターマイヤーは叛乱軍にも大した奴がいるな。今度会う時が楽しみだとヤンを賞賛しました。
終戦後
同盟
本戦争で戦死及び重傷、行方不明の兵士は以下の通り
兵士の戦死者・行方不明者数2115万9180人以上、占領地の民衆の死者・重傷者・行方不明者数3125万人以上。
完全破壊された艦隊数は14万1061隻以上、輸送艦・100隻、護衛艦・26隻。
この戦争で一番の大打撃を受けているのは
財政委員会でこの作戦で投資された予定経費は5000億ディナール、たが、占領地確保及び拡張と住民に食糧の供給する事でさらなる費用が加わったがそれらはみな帝国軍の砲撃で宇宙のチリとなり、更には大量の戦死・行方不明者が出た為、その為の遺族への一時金は2500億ディナール。そのうえ年金や艦隊再建費等を加えると被害損失額は10兆ディナールを超え、同盟政府は財政はおろか経済・社会・軍事等政治の全てにおいて巨大な衝撃・影響を与えてしまいました。
軍部では統合作戦本部長・シドニー・シトレ、宇宙艦隊司令長官・
ラザール・ロボス両元帥、後方勤務本部長・レナート・ヴァシリーシン、
地上軍総監・
ケネス・ペイン両大将が揃って退陣。サンフォードもロボスも己の保身と出世の為に無謀な事をした末、シトレやレナート、シモンを巻き込んだと罵声を浴びせられた。ドワイト・グリーンヒル大将は国防委員会事務総局査閲部長、ハンス・ランナーベック中将は同事務総局査閲次長、アレックス・キャゼルヌ少将は第14補給基地司令官にステファン・コーネフ中将、カーポ・ビロライネン少将、
マリネスク少将も辺境地の基地司令官にそれぞれ左遷されました。そして元凶のアンドリュー・フォーク准将は退院後、予備役の辞令が下りました。
一方、処遇が決まらないヤン・ウェンリーは
憂国騎士団本部と第13艦隊に所属していた兵士の母親からの手紙を読んでいました。憂国騎士団の方は「愛国の名将をたたえる。」と母親の方は「貴方も所詮は殺人者の仲間だ。」という一言だった。これを気に酒を飲み過ぎるのではないのかと心配した
ユリアン・ミンツはヤンの体調管理の為長期休暇をとって惑星ミトラに赴く提案をし自然の中を3週間過ごしていました。宇宙歴796年11月30日、ヤンは大将に昇進し幕僚最高会議議員として
ヤン艦隊総司令官の就任辞令が下り、
イゼルローン要塞への転勤が決定しました。同時に
宇宙艦隊総参謀長には
ハリッサ・オスマン少将が中将昇進で就任しました。そしてこの転勤をうけユリアンが兵長待遇の称号を持ち軍服を身につける事となりました。
帝国
同戦いに勝利したラインハルトはビッテンフェルト以外の閣僚には暖かい声で励ました。ビッテンフェルトにはヤンに邪魔された腹立ちに苛立ちをぶつけながら激怒した。この光景にヤンと闘ったケンプとミッターマイヤーも動揺を隠せなかった。そんなラインハルトに
キルヒアイスは部下にまで敵を作らないでほしいと慰めながら説教しラインハルトも気が動転し我を忘れていたと深く謝罪した。そんな帰路の中、皇帝・フリードリヒ四世がアムリッツァ星域会戦の最中に急性心疾患で亡くなったという知らせが入った。ラインハルトとキルヒアイスは自分達から
アンネローゼを奪った男がこんな情けない形でなくなった事が悔しくて溜まらなかった。だがそうもしていられないフリードリヒは後継者を決めずに亡くなったのだ。つまり3人の孫(
エリザベート、
サビーネ、
エルウィン=ヨーゼフ二世)を巡って帝位継承争いが起きるのは明白だった。その中でも最有力候補は
オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵と
ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム侯爵を父に持つエリザベートとサビーネだった。2人のどちらかがゴールデンバウム初の女皇帝になれば摂政となり固有の武力を持ちラインハルトを毛嫌う父親の鶴の一声でラインハルトは帝国から完全追放となるのは明白だった。ところが結果は予想を遙かに驚かせていた。国璽と詔勅を掌る国務尚書・リヒテンラーデ侯爵が自身の保身と外戚による帝国私物化を阻止する為に
ルートヴィヒ皇太子の息子・エルウィン=ヨーゼフ二世を第三七代皇帝に即位された。こうして帝国宰相(摂政)として公爵となったリヒテンラーデは自身の派閥を強化させようとラインハルトを武官代表として迎え入れ爵位を侯爵へと上り詰め勇退した
グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥に代わって
宇宙艦隊司令長官に就任した。これを受けブラウンシュヴァイク、リッテンハイムを始めとする門閥貴族は皆失意し大激怒するのであった。
新皇帝が決まるとリヒテンラーデ公爵とラインハルトは新人事を着々と進めていた。まず、リヒテンラーデの腹心・
ゲルラッハは副宰相に
グライフスは上級大将に昇進し統帥本部次長にそれぞれ就任。キルヒアイスはラインハルトの後任として宇宙艦隊副司令長官に就任し上級大将に昇進。
ロイエンタールと
ミッターマイヤーは大将に昇進。
オーベルシュタインはラインハルト付の参謀のまま元帥府事務長、
宇宙艦隊総参謀長に就任し中将に昇進。元帥府には
ウルリッヒ・ケスラーと
ナイトハルト・ミュラーがそれぞれ加わった。ただ1人オーベルシュタインはキルヒアイスの出世について「幼馴染みというは結構、有能な副将もよろしいでしょう。しかし、その両者が同一人というのは危険です。そもそもNo.2は必要ありません。キルヒアイス提督を他者と同列におくべきではありませんか。」とラインハルトを強く異を唱えました。だが、ラインハルトはおろかリヒテンラーデ公爵も決めた事は今更白紙には出来なかった。そしてアンネローゼはラインハルトが用意したシュワルツェンの館に移住するのでありました。
最終更新:2025年04月20日 14:56