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Goat Simulator - (2015/12/08 (火) 22:15:14) の編集履歴(バックアップ)


ヤギシミュレーター(Goat Simulator)

【やぎしみゅれーたー】

ジャンル シミュレーター/アクション*1
対応機種 Windows Vista/7/8
Xbox One/360
メディア ダウンロード専売ソフト
(PC版は要Steamアカウント及びSteamクライアント)
発売・開発元 PC版:Coffee Stain Studios
Xbox One/360版:Double Eleven Limited
発売日 Steam:2014年4月1日*2
Xbox One:2015年4月17日
Xbox 360:2015年5月13日
価格 Steam:$9.99/980円*3
Xbox One/360:各1,080円
レーティング CERO:C(15歳以上対象)*4
CEROコンテンツディスクリプターアイコン:暴力・犯罪・麻薬
プレイ人数 PC版:1~4人
Xbox版:1~2人
分類 バカゲー
ポイント ヤギになれます
物理演算が描き出す大騒動
リアルなヤギがあらゆる物を台無しに
雑でガバガバっぽいゲームプログラム
ヤギになります
BAAAAA!


WARNING???????
これは数週間で作成された小規模なゲームです。過大な期待をしないでください。
正直このゲームに10ドルを使うなら『フラフープ』や『レンガの山』、『実際のヤギ』を買ったほうが良いでしょう。

公式サイトの日本語訳)


概要

  • 物理演算を駆使した3Dシミュレーターゲーム。しかしヤギの生態などを再現するものではない。
    人里に現れたヤギを操作して色々な物品や人間に頭突きし、物理演算により弾き出された結果を観察するサンドボックス型のゲームである。
    • ほとんどの場合、ヤギの行動は破壊的で残酷な結果を生み出す。物体は吹っ飛び。物によってはブッ壊れたり、爆発したりする。
      人間も明らかに骨折している姿勢になって悲鳴を上げるが、たいていは死なない。その一方でヤギ自身もまた吹っ飛ばされたり致命的な姿勢になることも多いが、絶対に死なない。
    • つまりは狭義の"シミュレーター"ではなく、それをパロディしたものといったほうが良い。
    • 「Unreal Engine 3」をほぼリファレンス通りに使用しているため、グラフィック(ライティングや3Dモデル)はあくまでリアル志向である。
      • 一部の3Dモデルは「UE3」サンプルに付属してきたものをそのまま使っていると思われる。
  • このゲームを開発したスウェーデンの「Coffee Stain Studios」はFPSとタワーディフェンスを融合させたストラテジーアクション『Sanctum』シリーズで知られる真面目な独立系小規模開発会社である。
    • このゲームの原型は手が空いている社員のプログラム経験と創造力鍛錬を目的とした社内イベントの「ゲームジャム」において、「どれだけ短時間で一本のゲームを作れるか」というコンセプトのもとに製作された物らしい。
  • そうした経緯から一般販売の予定などあるはずもなかったが、そのα版のプレイ動画を開発者がYoutubeにアップロードしたところ、かなりの速度で再生数が伸びる大反響を呼んだ。
    そして販売を望む声が大きくなった結果「しかたなく」スタッフ総出で2週間の突貫工事をかけ、最低限のバグ取りを施した上でSteamで一般販売されることとなった。
+ そのα版プレイ動画

  • こんな経緯なのにリリース後も精力的にアップデートが重ねられている。この辺りがただの手抜きとは一味違う。

システム・特徴

  • 画面構成や操作方法は、TPSなどの一般的な3Dアクションゲームと大差ない。キーボードとマウス、またはゲームパッドで自機であるヤギを操作する。
    • ヤギは目の前にある物に向かって頭突きができ、後ろにあるものを蹴ることが出来る。この2つで物を吹っ飛ばすできる。
    • もう一つ、舌を長く伸ばして対象に絡みつかせることができる。この舌はゴム紐のように弾性を伴って長く伸び、舐めた物や人などを引きずり回して移動させることができる。
  • ストーリーなどは特にない。しかし「クエスト」と呼ばれる特定条件を満たすと、色々な特殊能力を持ったヤギが使用可能になったり、アイテムを装備できるようになる。
    • 使えるようになるヤギは「悪魔ヤギ(ブラックホールの魔法が使える)」「天使ヤギ(ジャンプがふわっとした感じになる)」「背の高いヤギ(どう見てもキリン)」「羽の生えたヤギ(どう見てもダチョウ)」「巨大ヤギ(どう見てもクジラ)」とか。
  • ヤギは決して死亡することはない。たとえ首が折れても、高空から地面にたたきつけられても、大爆発で吹き飛ばされても平気で立ち上がれる。
  • 人や物を破壊したり、設置されている仕掛けを起動したり、その他いろいろなことを引き起こすと得点が得られる。派手なものほど高得点。また連続して複数のアクションを取るとコンボとなり倍率がかかる。
  • 物理演算にまつわるバグは「物理演算を用いるゲームでよくあるバグのパロディ」として意図的に実装されている。
    • このゲーム自体の物理演算はnVidiaの「PhysX」を使用しているが、ポピュラー故に多くの物理演算バグを世に知らしめてきた物理演算ミドルウェア「Havok」をパロっているバグ仕様が多い。
    • たとえば「ヤギにぶつかった人間は、まるで操り人形の糸がすべて切れたようになり関節も感じさせない「ぐにょぐにょした物体」と化し、重量も感じさせなくなる」や、
      「ヤギがはしごに登るときは歩行モーションのままで、頭が押されて背中の方に「ぐにょり」と曲がる」、
      「壁や物体にめり込み奇妙な小刻みな動きをし続け、のめり込んだところに力が加わるとエネルギーがたまり吹っ飛ぶ」などである。

評価点

  • 「何かが起こるのでは?」という期待に応えてくれる。
    • 基本的にすべてのオブジェクト(物品)が3Dで作られている本作だが、ヤギはその殆どに干渉できる。ほとんどは吹っ飛ばして破壊といった形なのだが、とりあえず謎の達成感は得られる。
    • マップ上には色々な仕掛けが設置されており、それらに触れたり人間などを投げ込むと、ちゃんとゲームならではの予想通りの(時には予想を超える)事態が起こる。例えばトランポリンに乗ると上空高くジャンプできる、コンクリートミキサーに突っ込むとほぼ無傷でグルグル回る…など。
      ガソリンスタンドを叩くとさすがに爆発の規模も大きく壮観。
    • 観客に「これから何か面白いものが見られるのでは?」と期待を持たせて、期待通りの物を見せてあげるというのはお笑いの基本なのであり、本作はそれを徹底した造りなのだ。何かを見つけてわざわざ近づいたのに何も起こらずガッカリするという事が少ない。
  • グロゲーではない。
    • 本作はバカゲーであり鬼畜ゲーだが、グロテスクな表現はほとんど存在しない
      人間を攻撃しても流血や身体破損といった残酷表現はなく、どれだけ痛めつけられても平気で起き上がって歩き出す。したがって、プレイヤーの心理がドン引き方向に寄ってしまい笑えなくなるという事もない。
      • 多少残酷と思われる例としては、人間を燃やすと火だるまになって悲鳴を上げながら走り回るといったものがあるが、火が消えると普通に戻る。
      • ただし「人間を燃やす」表現などが影響したか、Xbox One版で与えられたCEROのレーティングは「C」、かつコンテンツディスクリプターアイコンで「暴力」「犯罪」「麻薬」が付けられたりするなど結構重たいものになっている。
    • リアルな残酷表現はないが、魔法陣の上に生贄として並べた複数の人間が一つの肉塊になって爆散するような、固定シチュエーション的な物は用意されている。
  • Ver 1.2の大型アップデートとして、MMORPGシミュレーターモード「Goat MMO Simulator」が追加。
    • あくまでシミュレーターなので実際のMMOプレイは不可能であり、オフラインプレイのみ。
    • 新たなエリアで職業を選び色々なクエストをこなしたりできるなどRPGとしての基本はできており、小癪にも意外と遊べる内容になっている。
    • 選べる職業は、タンク(所謂戦士。トゲトゲの鎧を纏う)、ローグ(盗賊。皮の身軽そうな服)、マジシャン(魔術師…というか手品師。トランプとかまき散らす)、ハンター(狩人…というか釣り人。釣竿を装備している)、電子レンジの五つ。とうとう生物ですらないものがついてしまった。
      • 外観は電子レンジに人間の脚が生えたものであり、非常にシュール*5
    • クエストの内容もどこかおかしいものばかり。
      • 「目の前に大量に散らばったリンゴを拾って渡せ」と依頼してくる村人。
      • ウ○コの山に埋もれた村人を救出するクエスト。お礼にもらえるのは…
    • プレイ中には偽のチャットが流れてくる。しかもやたらにテキストの分量が多い。
      • 他のゲームの評価を好悪問わず喋ったり、RMT*6を持ちかけていたり、やけに生々しい内容が含まれている。
    • このモードではインベントリが使えるがNPCでさえも入れることが出来る。
    • マップ内にはサーバルームが隠されているが、ここを破壊するとグラフィックがバグり、完全に破壊するとゲームが強制終了する。
      • もちろんこれは演出の一つで実際にゲームデータが破損しているわけではない。

賛否両論点

  • バグが多い。
    • 公式自らが「数百万のバグ!」と胸を張るように本作はバグ取りが不十分で、頻繁にバグが発生する。むしろそのバグじみた挙動を探したりするのも、このゲームの楽しみ方の一つといえる。
      通り抜けできないはずの障害を抜けてしまったり、その結果として想像外の異世界に入り込んだり、理由もなく突然ワープしたり、起こるはずの物事が起こらなかったり、起こってはいけないことが起こったり、とにかく色々である。
      • 一応クラッシュバグだけは頑張って減らしたと言っているが、残念ながらこれが完全に無くなってはいない。
    • 開発元のCoffee Stain Studiosは先述した『Sanctum』シリーズで好評を得ており、その技術力は決して低くはない。
      要するにクラッシュバグや操作に関わる致命的な物以外はわざと残したと考えて差し支えない。

問題点

  • ストーリーがなく、プレイヤーに対する動機づけが乏しい。
    • 通常、オープンワールド型のゲームは「なんでもできる」自由度を謳う一方で、ミッションやクエストを用意して、プレイヤーに対して最低限「これをすればゲームが進行する」という指標を与えるものである。
      しかし本作にはそのような要素は殆ど無いと言っていい。一応「クエスト」や「実績」は用意されているが、それらは基本的にノーヒントであり、発見するためにはマップ中を手がかりもなく探しまわることになる。エンディングすらなし。期待するのもお門違いな気がするが。
  • 世界が狭い。
    • オープンワールド型3Dゲームである本作だが、その世界(マップ)は他のフルプライズ大作ゲームとは比較にならないほど狭い。至る所に物品や仕掛けが散りばめられているのだが、その種類や数も決して多くない。
  • わりとすぐ飽きる。
    • 上記2つの問題点の帰結として、プレイヤーにもよるが、基本的に飽きが来るのが早い。実績だったり変な挙動だったりは凄まじく多いが、それを追求するほど長期間熱中しているプレイヤーは結構稀である。
    • ver1.2以降は前述の通りMMO simulatorモードが追加されたため、ボリューム不足に関しては若干緩和されたか。
    • 一応こんなゲームでもMODを作る猛者は存在するようで、Steam WORKSHOPとの連携によって追加マップや追加ヤギなどといったコンテンツを拡張することが出来る。
  • わりと動作が重い。
    • UnrealEngine3使用である以上しかたのないことだが、小粒なゲーム内容の割に要求スペックは結構高い。普通のノートPC等だと処理落ちは不可避。

総評

「いいかげんに作られたバカゲー」として語られることが多い作品である。

実際のところその作り込みはゆるく、商業作品として要求される緻密さに達していない。
そしてメーカー側もそれを自認しており、逆にウリ文句として掲げているため、本作に対しては「どれだけ悪く言っても構わないし、むしろ悪く言われた方が評判が上がる」という状況になっている。
しかし単にいいかげんなだけのゲームが、果たして内輪ネタレベルから一般販売にこぎつけるまでに人を魅了するものなのだろうか?

本作の最大の評価点は、先述した「プレイヤーの期待に応える」という点である。
プレイヤーを笑わせ、驚かせようというエンターテイメント精神がきっちりと盛り込まれている。それこそが本作が愛された理由であり、バカシミュレーターとして抜きん出た存在になった理由であろう。


余談

  • 日本からは、「Steam」の他に「Magino Drive」、「Xbox Live」でも購入可能であるが、ただタイトルを変えて『ヤギシミュレーター』としただけで、ローカライズなどは一切行われていなかった。現在はXbox One版・Windows版とも日本語ローカライズされている。直訳とも異なる奇妙な味のあるローカライズだが気にしてはいけない。
    • 実際、Magino Driveで購入してもSteam用のプロダクトキーを渡されるだけで、結局はSteamアカウントの取得とクライアントのインストールが必須となる。
      「Steam」では頻繁に値引きセールを行っているので、安い方で買うといい。
  • 前述の『ヤギシミュレーター』という邦題は広まっておらず、原題の『Goat simulator』の方が通りが良い*7
    • Magino Driveの販売ページでも、検索性向上のためだろうか、『ヤギシミュレーター(Goat simulator)』という形で両方のタイトルが併記されている。この記事の記事名もこれに倣った。
  • ゲームジャンルの表記は、Steamでは「シミュレーター」、Magino Driveでは「アクション」、Xbox Liveでは「アクション & アドベンチャー」となっている。Magino Driveのほうが実情に近いような気がするが、冒頭の情報欄では一応両者を併記する形をとった。
  • 主人公のヤギはメスである。「ゴートクイーン」という称号と能力がある他、股間を見れば確認出来る。
  • 2015年3月23日より、auスマートパスにて本作が配信されている。Android4.0.3以上にアップデート可能な機種が対象となっている。
    • Google PlayやApp Storeでも落とし切り500円($4.99)で購入出来る。au以外のキャリアだったり、スマートパス未加入であればこちらを。アップデートも適時行われている模様。

発売までの経緯と発売後の影響

  • 日本においてはシミュレーター系のゲームといえばレースなどのスポーツを除くと、戦略を駆使して解き進めるオリジナルゲームというイメージが強いかも知れないが、海外ではいろいろな職業をリアルに疑似体験するゲームが安定した人気を集めている。
    北海のカニ漁を体験する『Deadliest Catch Alaskan Storm』(2008年4月)や、牧場経営ゲームとしての側面を持つ『Farming Simulator』シリーズ(1作目は2009年)などは日本でも一定の知名度はあるだろう。
  • このような「リアルシミュレーター」系ゲームはかなりマニアックな題材まで網羅していたのだが、一部の良作を除いてゲーム内容が非常にお粗末なものが多く存在し、粗製乱造の感を否めなかったのである。
    そんな中『Global Game Jam 2013』なるイベントに出現して話題をさらったのが、外科手術を体験する『Surgeon Simulator 2013』だった。
    • このゲームは『ナントカ Simulator 20xx』というお約束のタイトルで「リアル系シミュレーター」を名乗ってはいるが、実際はわざと操作性を劣悪に作った上に開腹した体内の臓器を物理演算で表現しプレイヤーが滅茶苦茶の限りを尽くせる(その末に患者の死亡で幕を閉じる)という、昨今のシミュレーターゲームを皮肉ったグロテスクな程に不謹慎ともいえるバカゲーでもあった。
      当時のシミュレーターとしてまじめに考えるなら論外の作品だったが、インパクトは相当なものでPCゲーマーたちの間でそれなりの話題となった。
  • それ以前よりシミュレーターゲーム界隈では「話題性を得るため少しでも変わった題材を」という傾向があったのだが、『Surgeon Simulator 2013』以降、正攻法での勝負は大手に勝てない独立系メーカーの間で、題材で奇をてらった「馬鹿シミュレーター」がちょっとした流行となった。
    本作『Goat Simulator』もまた、そうした風潮を汲んだ作品(もしくはそのパロディ)の一つである
  • 発売前より注目を集めていた本作は、発売直後から全世界的に大ヒット。$9.99という低価格作品でありながら、Coffee Stainの過去4年の売上額に等しい売り上げを記録した。
  • 異例となるこのストライクにより「馬鹿シミュレーター」というジャンルは一躍注目をあびることになり、多くの追従者が現れた。中でも大きな動きが見られたのがSteamである。
    • Steamには、トレーラーとコンセプト説明文を掲載して、ユーザーがそれを遊びたいか投票にかける『Greenlight』というコミュニティコーナーがあるのだが、ここに大量の馬鹿シミュレーターが投稿されたのである。例えば行列に並ぶイライラをリアルに再現する『行列シミュレーター』や、プレイヤーが大岩となって風雨に晒される『岩シミュレーター』など。
      そのほとんどはタイトルだけの一発ネタであり、本当に作る気があるのかと疑問に思えるような代物であった。そしてそれらのうちどれだけがGreenlightを通過できたのかも定かではない。
    • 結局、『Goat Simulator』を契機に巻き起こるかと思われた馬鹿シミュレーターブームは不発に終わり、実現した精神的後続作と呼べるものは『I am Bread』*8『Tea Party Simulator 2015』*9『Ampu-Tea』*10『Fly in the House』*11『Turbo Dismount』*12といった少数精鋭にとどまり、一大勢力と呼べるまでの数には至っていない。
      ヤギ自身はといえばなおも盛んなアップデートで画面分割多人数プレイが可能になったり、AndroidやiOS版が発売されるなど今もその勢いは衰えていない。

参考動画

+ 公式トレーラーとプレイ実況動画