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ヘビーメタルサンダー - (2016/06/04 (土) 11:12:26) のソース

*ヘビーメタルサンダー
【へびーめたるさんだー】

|ジャンル|人生を格闘するゲーム|&amazon(B000A41FQE)|
|対応機種|プレイステーション2|~|
|発売元|スクウェア・エニックス|~|
|開発元|スクウェア・エニックス&br;メディア・ビジョン エンタテインメント|~|
|発売日|2005年9月1日|~|
|定価|6,800円(税別)|~|
|レーティング|CERO:12歳以上対象|~|
|判定|BGCOLOR(MistyRose):''バカゲー''|~|
|ポイント|演出面が秀逸&br;ムービーが本編&br;異様に豪華な声優・アーティスト陣&br;ロボのカスタム要素も充実&br;ゲーム自体は単調で低ボリューム&br;何故か音楽番組とのタイアップ|~|

**概要
『[[鈴木爆発]]』を手がけたプロデューサーが手がけた一品。ジャンルは『''人生を格闘するゲーム''』。キャッチコピーは「''ゲームの歴史はある意味塗り替えられる!''」。~
全長30cm程度のロボットを互いに戦わせるゲーム『ロボットレスリング(略してロボレス)』が世界的に流行しているという設定。早すぎた『[[ダンボール戦機]]』といえなくもない。

**ストーリー
西暦2980年、全世界を狂熱の渦に巻き込んだ「ロボレス」。~
遥かなる頂に君臨する父親、宿命を背負った息子。友情、恋、別れ…。~
この物語は、天と地を疾走する稲妻の闘士達が己の人生を賭けて咆哮する、余りにもドラマティックなナンバー。~
純粋にして過剰なまでの重金属人生讃歌(ヘビーメタルサンダー)。~
(パッケージより抜粋)

**ロボレスとは
ロボレス…身長およそ一尺(約30cm)の小さなロボが六角形のリング上で魂をぶつけ合う準格闘競技。~
そのあまりにも熱く、あまりにも純粋な戦いが世界中にエモーショナルでエキサイティングな感涙の嵐を巻き起こしている。観る者の血流はいつしか沸点を超え、魂の叫びが響き渡る。~
シンプルかつ多彩な情熱のロボカスタム。激情の赴くままに入力可能なバトルコマンドがヘビーなリフとなってリングを燃やす。渾身の光速ボタン連打は「ビート」となりロボに伝わる。その時、熱き魂が流麗な旋律を奏で、秘技が覚醒。ロボは時に時空を超え宇宙となる。スリリングなロボとの格闘饗宴、いわばライブパフォーマンスがあなたの魂を震撼させる。~
ロボを送り込むリングに人間の入り込む余地はない。だが、試合中のオーナーはいわばロボという名のギターを操るギタリストなのだ。勝つためにロボを動かし、その戦いで観客の心を動かす。ロボが傷つく時オーナーの心は涙を流す。コマンドという名の情熱がリングを燃やす。~
ロボレスの試合はロボとロボの戦いであり、オーナーと観客の戦いでもある。観客は会場であろうとテレビ中継であろうと試合、ロボ、そしてオーナーに心を揺さぶられ、人生を感じるはずだ。~
ロボレスとはいわばオーナーの生き様。主人公が挑む「タイタンファイト」はロボレスの世界最高峰シリーズであり、勝ち抜いた者だけが「カンペオン(チャンピオン)」を名乗り、莫大な富と名声その他諸々を手にすることができる。しかし敗北したロボは即座に爆破処分、オーナーは額に「黒星」を刻印されデスアイランドへ島流し、1日22時間の強制労働という過酷な運命が待ち構えている。そんな非常で無情で純欄豪華、そして不条理なファイトに身を捧げ、己の人生を賭けるオーナーたち。それを「生き様」と呼ばず何と呼ぼう。~
(解説書、ゲーム内の設定集等より抜粋)

**「ロボレス」の流れ
-試合「ロボレス」は、以下の流れで行われる。
--最初にコマンドを選択する。コマンドはロボの通常技である「ストライク」「グラップル」「ガード」、そして必殺技「ビート」の4つ存在し、その中から一つを選ぶ。
---「ストライク」は打撃を中心とした技、「グラップル」は組み技を中心とした技、「ガード」はその名の通り防御態勢。「ビート」は必殺技となる。
--コマンドには優劣が存在し、双方が選んだコマンドによって技が発動する。通常技の三つは3すくみの関係にあり、「ストライク」は「グラップル」に打ち勝ち、「グラップル」は「ガード」を組み伏せ、「ガード」は「ストライク」を凌ぐ。「ビート」は3すくみの例外で、「ガード」には勝つが「ストライク」「グラップル」の両方に負ける。
---双方が同じコマンドを選んだ場合は競り合いとなり、どちらかの技がランダムで決まるが、能力値が高いほうが勝ちやすい。また、この場合は攻撃に成功してもTEMPゲージが上昇しない。
---「ガード」の場合、双方のTEMPゲージが大幅に減少する。
--「ビート」の場合、相手との連打勝負となる。ビート技のレベルはオーナーとロボの「シンクロレベル」に比例し、連打量によって発動するビート技も異なる。ビート技を発動させるためには、当然相手との連打勝負に勝たなければいけない。
-ロボは自律型であり、相手の選択したコマンドに対して勝てるコマンドを知らせる機能がある。このロボの要求に応じると必ず相手の行動に勝つことができる。そのため、ロボの言う通りに動いていれば理論上絶対に負けない。
-ロボにはライフゲージに加え「TEMPゲージ」「シンクロレベル」「プロテクター」の三つの要素があり、この三つの要素も気にかけなければならない。
--TEMPゲージはロボの機体温度を表すゲージ。このゲージが高まるとロボが熱くなり、攻撃力に補正がかかることで相手に与えるダメージが増加する。しかし、ゲージが限界まで上がってしまうとロボがオーバーヒートを起こし、1ターンの間一切の行動が不可能になってしまう。
---ロボレスではこのTEMPゲージをいかに調整するかが重要であり、ただひたすらロボの希望通りのコマンドを選んでいてはオーバーヒート一直線。そのため、「あえてロボの希望を無視し、相手と同じコマンドを選んでゲージの上昇を防ぐ」という戦法も必要となる。
--シンクロレベルは、オーナーとロボの魂の通い具合を表すゲージ。ロボの希望するコマンドを選ぶことでこのレベルが増加し、レベルが上がるとビート技の最大レベルが上昇する他、ビート技発動時の連打勝負でゲージの増加が早くなる。ただし、ロボの希望に反するコマンドを選んだりビート技を決めるとレベルは下がってしまう。
--プロテクターはロボの装甲パーツ。プロテクターがあれば相手のストライク・グラップルの威力を軽減できるが、プロテクターには耐久力が設定されており、一定以上のダメージを受けるとプロテクターは破壊されてしまい、ユニット部分がむき出しになってしまう。
---破壊されれば当然被ダメージが増加するため、可能な限り耐久力の高い高性能なプロテクターを装備することが必要となる。
-試合は全3ラウンド。1ラウンドは60秒で、ラウンド終了ごとにインターバルを挟む。インターバルではロボの修復や技セットの交換が行える。

-試合前にはガレージでのパーツ変更・技セットの交換・ペイント変更が行える。
--ロボは「ユニット」と「プロテクター」の二つで構成されている。ユニットは「頭」「胴」「腕」「脚」の四つ、プロテクターは「頭」「胸」「腰」「肩」「腕」「腿」の六つ。基本的な性能は「ユニット」に大きく依存し、「プロテクター」は主に防御性能に影響する。
--ロボの性能はHP・攻撃性能・防御性能・放熱性能・ストライクレベル・グラップルレベルの6つ。パーツごとに上昇する性能や、逆に低下する性能もある。
--「技セット」はビート技の内容を変更するもの。各種ビート技にはそれぞれ特殊効果が付与されている。

**評価点
-本編の大部分を占めるムービー
--それぞれのステージ開始時・クリア時に流れるアニメパートが異様に力を入れて作られており、3Dと2Dが融合したハイクオリティ且つおバカなノリのアニメが全編を通して流れる。
--第一話からして「ドクロが街中に腐るほどある主人公の故郷」「肉屋の冷凍庫で主人公の誕生日会」「食肉の中から謎の男が登場」「そしてその男が主人公の親父に変形する」「スーパーの中から巨大ロボが出現」「そしてその中がロボレスのリング」「訛りが強すぎて何を言っているか分からない対戦相手」とすでに突っ込みどころだらけ。そして終始こんなノリが続く。
---ちなみにこれらの突っ込みどころのほとんどはきっちり設定が決められており、クリア後のオマケ要素としてそういった設定集を見ることができる。
--ストーリー自体は主人公の26年にも渡る戦いや苦悩を描いたまともな内容であるのだが、ストーリーを彩る演出がそのような雰囲気を感じさせない。
--ロボとのファイト前には入場シーンが用意されているがこれらの演出も凝っており、ロボの個性をよく表している。
---そして勝利すると対戦相手のロボ爆破シーンとなり、こちらも個性あふれる爆破シーンとなっている。なお、爆破ボタンは「お手持ちのコントローラーのボタンを押してください」とプレイヤー自らに押させる仕様。
--『CG、アニメーション、実写、音楽、漫画、グラビア、テレビ、ゲーム…あらゆる世界の豪華キャストによる突き抜けた表現がたった今、このパッケージに過剰なまでに封じ込められた。~
それらは「ヘビーメタルサンダー」の名の下に共鳴し、怒涛のテンションと狂おしいまでの旋律を奏でながら超絶加速。70分を超える超大作ムービーとしてあなたに襲いかかる!』という宣伝文句は伊達ではない。
--なお、本作で流れるムービーはクリア後にすべて鑑賞可能。ゲーム部分等を抜きにしてぶっ続けで見ることもできる。

-豪華な声優陣
--主要キャラクターを演じるのは古谷徹、大塚明夫、劇団ひとり、右近健一、熊田曜子、ROLLY、大塚周夫。そして試合中の実況は小野ヤスシ、愛川欽也が担当し、脇役も千葉繁、冬馬由美、ウォーター・ロバート、飯塚昭三、銀河万丈、平野正人と声優陣が無駄に豪華。
--また、ほとんどセリフはないがSEX MACHINEGUNSのAnchangも声優として参加している。
-豪華アーティストによる楽曲
--テーマソングはSEX MACHINEGUNSとマイケル・シェンカーが担当。そしてステージごとに個別のBGMが用意されており、それらのアーティストもマーティ・フリードマン、相川七瀬、難波弘之、時任三郎、Komikurimo Pichinskey、MARCY&SHARA(EARTHSHAKER)と非常に豪華。
--解説書には「音楽という名の至宝を全身全霊で受け止めよ」「かつてこれほどまでに豪華なミュージシャンが一堂に会したことがあっただろうか?」「この一枚のディスクに愛川欽也とマイケル・シェンカーが共存するんだぜ。身震いするほど最高だ!」といった文面も並んでおり、いかに音楽に力を入れているかがわかる。
-ロボレス時の豪華で豊富な演出
--「ストライク」「グラップル」のような単純な攻撃もパターンが多く、見ていて飽きさせない作り。ストライクならシンプルな裏拳やアッパー、膝蹴りからのマウントパンチや踏みつけ、掴んでからのヘッドバッド、回避からのカウンターなど。グラップルなら投げっぱなしジャーマン、バッグドロップ、ジャイアントスイングといった大技を決めるなど豊富。
--戦闘中は実況二人に加え、各ファイターもセリフを喋るため中々賑やか。
--特筆すべきは「ビート技」の演出で、レベル1からレベル4まで全ての技でこれまた無駄に凝った専用のムービーが流れ、同時にその技セットを使うファイターによるハイセンスな技名の読み上げも入る。
---ムービーの内容も「思い切りジャンプして脳天へチョップ」「相手を掴んで顔面を何度も殴打」といったいかにも必殺技らしい技もあれば、「一句読みつつ相手の爪先を思い切り踏みつける」「相手をギターのように扱う」「メルヘンな雰囲気で相手をひたすら足蹴にする」「相手の顔面に股間を押し付けるように屈伸」といったネタ系まで様々。
-カスタマイズ要素の充実
--それぞれのパーツの種類自体もそこそこ多めな上、パーツの組み立て制限なんてものは一切存在しないのでどんな組み合わせだろうと自由自在。
--塗装も自由度が高い。各種プロテクターごとに個別設定が可能で、デフォルト以外に塗り分けのパターンが多数存在している。パーツごとにツヤ・半ツヤ・ツヤなしといった光沢の設定も可能。

**問題点
-ゲーム自体がボリューム不足
--ムービーに力を入れているが故、肝心のゲーム部分がおざなりな感じは否めない。
--ゲーム自体は大味でかなりあっさり終わる。「アニメパートのおまけ」という意見すらある。
--ロボレスの流れについては前の項目で述べたが、要約してしまうと「三すくみの行動(要するにジャンケン)と連打だけ」と言う至ってシンプルな内容。演出は凝っているが。
--一応クリア後に「ランキングバトル」というモードが出現するが、こちらも正直薄いボリューム。
--また、ストーリーモードでは入手できる技セットが次の相手に大抵有効であったり、試合前に対戦相手の性能や長所、弱点を知ることができたりする親切設計。ただし機体性能は終始こちらが劣るため、何の準備もなく挑んでクリアできるようなバランスではないが。一面の「ノーフューチャー」ですらこちらよりスペックは上である。
---どちらかというと前半が厳しめなバランス。特に二面の「レアル・マタドール」、三面の「アリガトウ山田」が前半の相手としては妙に高性能。
-カスタマイズの問題点
--ストーリーモード・ランキングモードごとに使用できるパーツの制限がある。一部だがCOM機体専用のパーツも存在する。

**その他
-ストーリーモードでは合間合間にカスタム屋の店である「アリスの店」というメニュー画面を使うのだが、「アリスの顔面が画面にアップで表示される」「メニュー項目が画面を埋め尽くす」といったような何かしらのネタを毎回仕込んでくる。
--もちろん操作面に関しては何の問題もないのでその点は安心。メニューが見づらくなることはあるが。
--また、BGMは弾き語りラジオが流れるという謎仕様。しかもステージごとに用意されている。

-解説書がなぜか雑誌のように作られており、その内容もゲーム内のTV局の番組表、トレーディングカード風なロボ紹介、ラフイラスト集、作中に登場するロボを模したグラビア(しかも折り畳みページ)、ゲーム内容に関する質問を適当に済ませ相対性理論について語るQ&Aコーナー、ヴィンセントによる8000文字越えのライナーノーツなどが載っている、無駄に凝った作り。
--もちろんちゃんとした解説も行っているが、登場人物・声優・参加アーティストの紹介が前半部分のフルカラーページで行われ、肝心のゲーム紹介は後半以降かつ白黒ページ、しかもシンプルな内容というあんまりな扱い。
--声優やアーティストの紹介文は文章量も多く、声優紹介では「あなたにとってヘビーメタルとは?ヘビーメタルな生き様は?」「好きなアーティストは?」という質問まで載っている。

**総評
とにかくムービー、音楽といった「演出」に全てを注いだ作品。「超大作」と自負するだけはあり演出面においては非の打ち所がない。~
本作をプレイすればそのある種革命的とも言える衝撃を受けるはず。~
破壊的なパワーを撒き散らし疾走する危険な感覚、揺らぐことないスピリッツに則った様式美、必要以上に細部まで拘った想像を絶する世界観、そしてそれらを支える、それぞれの分野で頂点を極めた、この先二度と交わることはないであろうアーティスト達が織り成す夢の競演。その全てが馬鹿馬鹿しいほどに無駄なエネルギーに満ち溢れている。~
あまりにも下らなく、感動的なまでに馬鹿馬鹿しい、壮大にも程がある暴挙とも言えるこの作品は「''ゲームの歴史はある意味塗り替えられた''」と言ってもいいだろう。

ただし単純なゲームとして見た場合、単調な戦闘システムに薄いボリュームと正直厳しい内容である。~
ゲームとしての出来には期待せず、「演出」を楽しむつもりでプレイしよう。

**余談
-当時放送されていた音楽番組『ヘビメタさん』にてドラマ仕立てのCMが全10本流された。現在は公式サイトで見ることが可能。
--ちなみに『ヘビメタさん』自体はゲームとはほとんど関係がない至って真面目な音楽番組である。共通点は熊田曜子やROLLY、マーティ・フリードマンが出演していたことくらい。

-プロデューサーである安藤武博氏にとって本作はかなり愛着があるらしく、ファミ通1180号でのインタビューにおいて「『[[ドラッグ オン ドラグーン]]』を最初『ヘビーメタルサンダー』ってタイトルにしようとしたが却下された」「スクエニの良いところ:ヘビーメタルサンダーを作らせたところ。足りないところ:ヘビーメタルサンダーを作らせたところ。」「社長になったら2を作りたい」と多くの珍言を残している。
--最もセールスは散々で莫大な赤字を出したらしく、クビも覚悟したとの事。この経験を教訓にして、氏は以後ダウンロード配信タイトルを主に手掛けるようになったそうな。