千里の棋譜 ~現代将棋ミステリー~
【せんりのきふ げんだいしょうぎミステリー】
ジャンル
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現代将棋ミステリーADV
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対応機種
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プレイステーション4 Nintendo Switch Windows(Steam/DMM.com) iOS(10.0) Android(5.0)
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発売元
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ケムコ
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開発元
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ミスタ・ストーリーズ(チャイルドドリーム)
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発売日
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【PS4/Switch/Win】2020年2月27日 【iOS/Android】2020年8月5日
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定価
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【PS4 DL/Switch DL/Win/Android版】3,000円 【PS4/Switchパッケージ版】3,666円 【iOS】3,060円(全て税込)
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:B (12歳以上対象)
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備考
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パッケージ版には特別詰将棋冊子が封入
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判定
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良作
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ポイント
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同名の無料スマホアプリをリメイク 将棋を題材としたミステリーノベル 充実の将棋解説で初心者にも優しい作り 第二部には超展開も見られる
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ケムコノベルアドベンチャーシリーズ
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概要
将棋を題材としたノベルゲームであり、元々は2015年にチャイルドドリームが開発・配信したスマホ用無料ノベルゲームアプリで、それを大幅にリメイクした作品となる。
原作にあったストーリーまでを第一部とし、新たに第二部と番外編を追加している。
監修を実在の棋士である高橋道雄九段が担当しており、高橋九段含めた実在棋士たちも多く登場。本編ストーリーにも深く関わっている。
あらすじ
フリーライターである主人公・一ノ瀬歩未は幼馴染で奨励会に所属する三段の棋士・長野圭と共に、将棋連盟の会長である永峰國雄の別宅へ取材に赴いていた。
だが、何者かにより中は荒らされ会長も気絶。その場には詰将棋の棋譜が残されていた。
程なくして、将棋界のスポンサーを務める新進気鋭のテレビ局「サイバーテレビ」が突如として将棋AI「飛燕」と翔田名人とで名人位を賭けての対局となる最終王者戦を提案。
しかし、肝心の翔田名人は行方知れずとなっていた。
歩未と長野は一連の事件の謎を追い求める事となり、やがて将棋界の過去に纏わる出来事や謎に包まれた「千里眼」の秘密も知る事となる。
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以上が第一部のあらすじとなり、第二部の内容は直接の続編となる。このため、第二部を読むには第一部をクリアする必要がある。
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第二部では幻の名人戦や有能な棋士が突如将棋界を去るジンクス「神隠し」に関する謎が描かれる。
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番外編は副監修を務めた香川愛生女流三段が原案とプロデュースを担当した短編シナリオが展開される。勿論、本人もゲームに出演する。
特徴
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縦画面表示形式だった原作から横画面へと変わった他、キャラの立ち絵も原作を踏襲しつつリファインされている。
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基本的なシステムやUIは他のケムコノベルと同等。ただし、完全一本道であるためかチャート機能は一切無い。
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選択ミスによるバッドエンディングは多数存在している。
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将棋を題材としている事もあってか、駒の動かし方や試合を始めとする様々な業界用語がシナリオ中に多く飛び交っている。
一見、将棋に詳しくないとハードルが高く見えるが、シナリオ中の解説だけでなく用語解説も収録されており気軽に調べる事が出来る。
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別途に「将棋教室」モードも収録されており、プロ将棋に関して丁寧に解説してくれるなど、内容は非常に充実している。
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ミニゲームとして詰将棋を多数収録。ノベルゲームという事もあり、自分で駒を直接動かす事が出来ない選択クイズ形式だが解き応えは十分。
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第一部はストーリーが一定以上進むごとに人物の動向や事件のあらましを振り返るパートが挿入される。第二部には存在しない。
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ボイスはパートボイス仕様。
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登場人物たち
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一ノ瀬歩未
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主人公であるフリーの記者。将棋の事はよく知らない初心者。
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長野圭
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奨励会三段の棋士で歩未の幼馴染。プロを目指しているが、戦績はなかなか芽が出ない。
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幸村香蓮
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奨励会唯一の三段棋士。圭とは同じ三段であるライバル。
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翔田真
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名人の位を持つ将棋界のスター。柔和な態度を持ち、長野を始め尊敬する者も多い。
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森方征一郎
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九段のプロ棋士。翔田名人のライバルであり長野の師匠。
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永峰國雄
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将棋連盟会長。過去に一時代を築いたプロ棋士であり、現在は会長職に専念している。
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蘇我公雄
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サイバーテレビの局長。将棋界の有力スポンサーだったが、名人の座をかけたAIとの対決試合を提案する。
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七澤恭子
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蘇我の腹心の部下であるサイバーテレビ局員。優秀な研究者でもある。
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北条草太
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第二部に登場。若干13歳ながら奨励会の三段に昇段した逸材。
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遠峯杏樹
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第二部に登場。香蓮に続く女性三段であり、芸能活動も幅広くやっている。一方で盤外戦術を使う一面も。
以下の人物は実在のプロ棋士たちである。
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高橋道雄九段
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タイトル獲得5期の大ベテラン。アニメなどサブカル好きでも有名であり、劇中では「みっち」と自称するなどコメディリリーフとしての活躍が多め。
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香川愛生女流三段
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俳優業などマルチタレントとしても活動している。主な活躍は第二部と番外編。
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糸谷哲郎八段、高見泰地七段
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本編での出番はやや少ないが、将棋の試合では解説役として必ずと言っていいほど顔を出すので印象は強め。
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山口恵梨子女流二段
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高橋和女流三段
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現在は引退し、2016年に将棋スペース「将棋の森」をオープン。本作でも舞台の一つとして登場する。
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評価点
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将棋初心者にも優しい作り。
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上記の通り用語解説が充実している他、ストーリー面でも将棋に関しては素人の歩末が主人公で、長野を始めとする多くの人物たちが教えてくれる場面が逐一出るため、将棋に詳しくなくても入り込みやすい。
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試合の場面ではシナリオの進行と共に棋譜の動きも見せてくれる。
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さらに将棋教室ではこの作中に登場した棋譜についての解説も存在する。
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用語解説も将棋用語だけでなく将棋にまつわる地名や実在の出来事なども記載・解説されており、中にはシャーロック・ホームズに関する出来事までも記載される。
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将棋方面だけでなく、推理ミステリーや人間ドラマも良質なものとなっている。
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第一部では冒頭の会長が襲われた事件を始め、様々な事件が道中で発生するも最終的に一本へと収束。どんでん返しも含めて全ての謎が説き明かされていく。
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第一部・第二部共に将棋に携わる人間たちの苦悩と生き様も深く描かれていき、読み進めていくうちに人物たちに愛着が湧きやすい。
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対局の場面も少年漫画やライトノベルのようなギャラリーによる解説や打ち手の心情を多く用いた描写となっており、入り込みやすい構成となっている。
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良質な音楽。
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『逆転裁判シリーズ』で多く起用された岩垂徳行氏が本作でもBGMを手掛けており、将棋の対局や緊迫する場面など印象に残りやすい音楽が多い。
問題点
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第二部のシナリオ展開。
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作中の世界観が2010年代と現代の延長ではあるが、後半では明らかなオーバーテクノロジーを始めとしたスケールの大きな展開も描かれており、好みが分かれやすい。
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フォローしておくと、第一部でのストーリーや人間関係などを踏まえた上での展開となっており、またAIを通して将棋と向き合うという点も一貫しているため、決して将棋という題材を軽視するような話ではない。
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立ち絵やボイスの質にバラつきがある。
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本作オリジナルのキャラクターたちはともかく、実在棋士の方々は人によって塗りの質感などが大きく異なっており違和感を抱きやすい。
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似顔絵という点ではよく出来ており、本人の特徴を捉えてはいる。
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声優陣は無名の面々を起用しているためか、棒読みが目立つ箇所がある。
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歩未や長野といった主要人物はまだ良いとして、北条などは子供という年齢設定を見ても明らかに拙い演技であり気になりやすい。
総評
本題である将棋と棋士たちに強く焦点を当てたシナリオとなっている。
ライトな作風や充実した解説など初心者でも入り込みやすい構成もあり、総じて万人向けで満足のいく出来栄えと言えるだろう。
余談
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上述の通り、大元である原作は無料アプリであり現在そちらは配信を終了している。
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現在配信しているスマホ用アプリ版もリメイクである本作をベースとしたものである。
最終更新:2025年08月01日 04:44