シャインポスト Be Your アイドル!

【しゃいんぽすと びー ゆあ あいどる】

ジャンル シミュレーション
対応機種 Nintendo Switch 2
発売・開発元 コナミデジタルエンタテインメント
発売日 2025年6月5日
定価(税10%込) 8,800円(パッケージ/ダウンロード版)
デジタルデラックスエディション:11,000円
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 良作
ポイント まさかのSwitch2でリリース
アイドルの夢と現実のせめぎ合い
技術とこだわりのライブシーン
ゲームバランスは少々詰めが甘い部分も
電撃文庫シリーズ


概要

Nintendo Direct: Nintendo Switch 2 - 2025.4.2にて発表された、コナミとストレートエッジが手掛けるメディアミックス企画『シャインポスト』のCSゲーム版。
Nintendo Switch 2のローンチタイトルなので当然だが、サードメーカー初のSwitch2専用完全新規タイトルでもある。

電撃文庫などで先行していたメディアミックス作品が好評を得ながらも、ゲーム版発売に至るまで一筋縄ではいかなかったために期待半分不安半分な前評もあったが、中身の方は手堅い一作となっていた。
本ゲーム版及びメディアミックス作品を含める『シャインポスト』の総合プロデューサーは『Elebits』及び『ラブプラス』でディレクターを務めた石原明広氏が担当している。


『シャインポスト』とは?

記事内で本作の発売経緯やプロジェクト全体に都度言及すると冗長になるため、まずはこれまでの『シャインポスト』という企画そのものの解説を行う。

  • 『シャインポスト』とは21年に発表されたマルチメディアアイドルプロジェクト。
    • 2021年より刊行開始された小説版を原案とし、漫画・アニメ・リアルライブなど多角的な展開がなされていた。
    • しかしながら、企画発表当初より告知があったiOS/Andoroid向けモバイルゲーム版がサービス開始されないまま時間だけが過ぎて行き、ついにはSNS上の公式アカウントで行われていた配信までのカウントダウンも停止。出演陣の誕生日を祝うツイートだけが投稿されていたために誕生日お祝いbotと揶揄されてしまっていた。
      • こうした先行きについて暗雲が広がっていた状況故に、巷では開発中止になったのではないかとの噂も流れ始めていた。
  • 転機が訪れたのが2025年の1月。これまでiOS/Andoroidにてリリース予定だったモバイルゲーム版『シャインポスト』の正式な開発中止と、対応ハードがスマートデバイスからCS機へと開発移行していることが明かされ、先行きに一筋の光明が差したのであった。
    • そして同年4月2日。Nintendo Directにて突如開発中だったゲーム版『シャインポスト』が最新ハードであるSwitch2のロンチタイトルとなることがサプライズ的に明かされ、「Switch2初のサードメーカーがリリースする完全新規タイトル」であることも相まってこれまで『シャインポスト』というコンテンツを認知していなかった層からも注目を集めた。
    • こうして世に出たSwitch2用ソフトである『シャインポスト Be Your アイドル!』だが、中身はコナミの過去のシミュレーションゲームの要素を踏襲しつつも、これまでのアイドルゲームでは例を見なかった技術も投入されており、伝統と革新が融合された一作としてようやくお目見えすることとなった。

ゲーム内容

メインモード

  • 本編となるメインモードは、アイドルユニットを育成し武道館でのライブ成功に導くことが目的のシミュレーションゲームとなっている。
    • これまでの各媒体の作品とは世界観設定上の繋がりはない。「TINGS」や「HY:RAIN」などメディアミックス作品で各アイドルが所属していたユニットは存在せず、全員が新人アイドルという状態でスタートする。
    • このため、原作に登場していたアイドル以外のサブキャラも登場しない。主人公はゲームオリジナルの人物となっており、新興事務所の社長とプロデューサーを兼任することになる。
      • 裏方のキャラクターが登場しない分、主人公のコンサルタントとしてゲームオリジナルキャラの 和泉野小夢 (いずみの こゆめ)が登場し、随所でサポートしてくれる。
    • ゲームの流れ及び育成システムは同じくコナミから発売されている『パワプロ』シリーズの「栄光ナイン」に近い。
      • 「栄光ナイン」の「選手の育成環境を整え甲子園を目指す」という流れが、選手はアイドル・甲子園は武道館に置き換えられていると思って頂ければ大体正しい。
  • ゲーム内のプロデュース期間は5年間。
    • 1年目~3年目の年始にオーディションを実施し、同時最大3ユニットをプロデュースすることになる。
      • オーディションは全23人の中からランダムで10人が選抜され、その中から5人を選びユニットを結成する。
      • 選ばなかった残りの5人は、次回以降のオーディションに再度登場することがある。年齢は変わっていないのだがそれはご愛嬌。
    • 各ユニットはデビュー後3年目に条件を満たしていれば目標である武道館に挑戦できる。
  • ゲーム内の時間は、1月内の上半期・下半期をそれぞれ1ターンとして扱う。
    • 各ターンでは事務所運営・資金調達・メンバーとの交流・設備投資や曲や衣装の発注・スポンサーとの契約及びスポンサー料の受け取り・ライブの実行・現在のパラメーターの確認などが行える。
      • 事務所運営・資金調達・メンバーとの交流・ライブのいずれかを実行するとターンエンドとなり次ターンになる。
    • ライブはそのターンでも飛び入り開催できるが、会場の事前予約も可能で開催予定日が遠いほど費用が割引される。
      • 予約したライブのキャンセルも可能だが、相応のキャンセル料を払うことになるためそうならないようにスケジュールを考えて予約を入れる必要がある。
    • 特に最終目標である武道館での公演には相応の大金が必要となるため、ライブを成功に導き事務所を続けるためにはアイドルたちの育成のみならずお金も大事である。
      • ライブ等で資金が赤字になるとその瞬間に強制バッドエンド。よって手持ち資金には常に気を配らなければならない。
+ コマンド解説(ライブのみ要素が多いため別項で解説)
  • 事務所運営
    • 資金(所持金)を消費することで事務所のステータスを上昇させる。
    • 事務所ステータスは経営力、営業力、企画力、発信力、育成力、政治力の全6種があり、選択したコマンドに応じて上昇する。
      • 成功率と費用は毎ターン変動する。当然ながら成功率が高く・安い時を狙うことになるが、短期的には高くついても場面場面で上昇させた方がいい時もある。
  • 資金調達
    • 仕事を受けることで資金を入手する。会社パラメーターの「経営力」が高いほど入手できる金額は増加する。
    • 内容は3択で表示されるが、いずれの仕事でも結果に変化はない。
  • 交流
    • 事務所に所属中のアイドルたちと会話を行う。交流時の会話内容は各段階で繋がっていて、各アイドルの背景設定を掘り下げるサイドストーリーになっている。
    • 交流すると信頼度が1上昇し、最大値である5になると覚醒状態になる。
      • 覚醒するとパラメーターが合計100アップする。
      • 交流6回目以降も会うたびにパラメーターは上昇するが、会話内容に変化はない。
  • 施設・発注
    • 体力以外の5つのそれぞれのパラメーター上昇に関する施設が存在し、施設を開設するとアイドルの能力成長率が上昇する。
    • 施設開設後は更に資金を投じることで施設のレベルを上げることが出来る。
      • レベルが高い程パラメーターの成長率も上がるが、施設レベルを上げるためには一定度の事務所パラメーターが要求される。
    • また、毎ターン好きなタイミングでグッズの開発・衣装と楽曲発注も行える
      • グッズはレベルが高いほどライブ時の収益が増加する。
      • 衣装と楽曲に関してはライブの項を参照。
  • スポンサー
    • 各スポンサーからは「特定ターンまでに○○をする」という条件を提示され、契約後に条件を満たせればスポンサー料を受け取れる。『パワプロ』でいうコーチミッションに近い
    • しかしながら契約後に条件を達成できなかった場合は違約金を支払う必要があるため、依頼を受けるかは無理なく達成できるか見極める必要がある。
    • 会社パラメーターの「営業力」が高い程スポンサーは増えやすくなる。
  • ライブではどの曲をどの順番・メンバーで歌うかのセトリを作成し、リストの曲を歌いきれるだけの体力があればライブを実行できる。
    • 曲には6つのタイプが設定されており、ターンごとにランダムで決定されるトレンドがある。
      • タイプとトレンドが一致しているとライブが盛り上がりやすくなり、収益も増加する。
    • 各曲はそれぞれボーカルとダンスの難易度が定められている。
      • 高難易度曲を成功させるとその分収益も増えるが、アイドルの能力不足だとミスを誘発しライブそのものの失敗に繋がるため、現在の能力から適宜適切な演目を選ぶ必要がある。
      • ライブが失敗した場合、収益が減るだけでなくファンも減少する。
    • 曲には配置時にセンターの概念がある。センターのアイドルが歌うパートが多くなるため、、センターにした人物のパフォーマンスがよい時ほど曲そのものが成功と判断されやすくなる。
    • 一曲ごとに、どの衣装を着用するかも選べる。
      • 衣装はただ単の観賞用目的だけではなく、それぞれアイドルの特定パラメーター上昇効果を持っているため、得意な部分を伸ばしたり不安な部分を補うことができる。
      • 全員統一させるのみならず、アイドルごとに別々の物も着用可。
  • ユニット及び各ライブ会場にはクラスという概念が存在する。
    • クラス1から始まり、クラスが上がればより大きい箱でライブが行える。
    • 目標となる武道館は最高クラスであるクラス5となっているため、挑むためには予約期限であるデビューから3年目の9月下旬までにクラス5になっている必要がある。
    • 武道館を予約しない・あるいはそもそもできない状態のまま3年目の9月下旬を終えた場合、自動的にチームの解散が決定する。
      • 解散が決まった場合、最後の晴れ舞台として解散ライブを行うか、あるいは解散ライブも実行せずにそのまま解散するかを選べる。
    • 成否は問わず、武道館ライブを終えたらそのグループとは一区切りがついたという形となり、プロデュース対象から外れ、残りのグループのプロデュースに専念することになる。
      • 5年目終了時点で各年のアイドルを武道館に導けたか・武道館ライブが成功できたかでエンディングが分岐する。
  • 各アイドルにはボーカル・カリスマ・メンタル・ダンス・ビジュアル・体力の6つのパラメーターが存在する。
    • アイドルごとに伸びやすいパラメーターが存在し、歌に優れるがダンスは苦手、概ね平均的だがカリスマ性が高い、とにかく体力だけはある…などなど個性が存在する。
    • 体力のみ施設での育成が不可能で、他のパラメーターの総合的な数値から自動的に決定される。
  • メンタル管理
    • 一定期間ライブをしていない・アイドルと交流していない・クラスアップライブに挑戦してない…のいずれかの状況の場合、アイドルがメンタル不調に陥ることがある。
      • メニュー画面では所属アイドルたちのアイコンとセリフが常時表示されており、ライブ・交流・クラスアップのどれを望んでいるか判断できるようになっている。
    • メンタル不調になってしまうとライブでのメンタル値が0として扱われ、ライブ中のミスも増加する。体力も一時的に減少するので複数曲歌うのも困難になる。
      • 「一回起きると連鎖的に起きて手の付けられなくなる可能性がある」「特定の行動の繰り返しでは予防できない」「対処するために複数の女相手にいい顔をする必要がある」という点で、令和最新版「爆弾処理」と言える。
        上述の仕様や美少女ものであることも合わせ、レビューでは「『パワプロ』+『ときメモ』」と紹介されやすい。

ヒロインストーリーズ

  • タイトル画面より選択できる、ゲーム本編とは別の独立したADVパート。
    • 世界観設定はこれまでのメディアミックス版がベースになっており、本編とは異なり各アイドルは原作に登場した各自のグループに所属している。
    • なぜ一つの作品内にこのような世界観設定が異なるシナリオが別個に用意されているかというと、これらのシナリオは開発中止になったモバイル版で使用される予定だった物を再利用したものだからである。
      • TINGS、HY:RAIN、FFF、ゆらゆらシスターズと4つのグループからそれぞれ1人をピックアップしたシナリオが4本用意されている。
      • キャラクターの所属以外もほぼ原作に準じた世界観故に、主人公が他人の嘘を見抜く能力を持っていたり、アイドル以外のサブキャラクターが登場する。

ビューワーモード

  • メンバービューワー
    • 各キャラのプロフィールや3Dモデルを閲覧できる。
  • ライブビューワー
    • これまでの周回プレイで育成したアイドル・入手した楽曲や衣装・公演を行った会場を自由に組み合わせてライブを行える。
      • 5年目まで行けなかった赤字倒産ENDを通った場合でも、育成経験ありという扱いになってこちらで使用可能になる。
    • アイドル達のパラメーターはカンスト状態として扱われるため曲を外したりすることはない。
  • メモリービューワー
    • ver1.1より追加された各キャラのサイドストーリーや幕間の会話、特定の状況での発言などを観覧できるモード

評価点

CS機で楽しめる『シャインポスト』の世界

  • 上述の通り、難航の末にCS機向けタイトルに変更されて発売されたわけだが、まずこれ自体を喜ぶ声が多い。
    • スマートデバイス向けの運営型アプリはうまく行けば長期間継続的にコンテンツを楽しめるという利点もあるのだが、その一方でやはり主な収益方法は有償ガチャになりやすく、今更論ずるまでもないがガチャ絡みの様々な問題点がつきまとうことになる。
      • 石原Pへのインタビューでもガチャでの収益を前提とした運営体制になる予定だったことに言及されており、そうしたガチャ絡みのしがらみから解放され買い切りソフトとして遊べることを喜ぶファンが多い。
    • また、運営型アプリの性質上のリスクとしては時間の経過によりプレイ不可能になってしまうという点も挙げられる。
      • 収益が悪ければ短期のサ終になるのはもちろんながら、収益こそ黒字でも肥大化していくゲーム内容とレガシー化していく開発環境を維持することの難しさからサ終…ということは現実的にありうる。
      • どちらかと言えば本作発売までの盛り上がりからは前者の方が懸念ではあったので、CSゲーならば一度買ってしまえば手元でいつまでも遊べるという確たる安心感が存在するという点でファンにとっては安心して末永く楽しめるソフトになったのは大きいと言える。
    • 携帯して気軽に遊びたいという要望にも、Switch2ならばスマホより大きな画面で楽しめると同時にパワフルなサウンドで応えられる、ゲーム用に特化されたデバイスなので各種処理もスムーズ…などなど、
      総じてSwitch2のソフトになったことによるメリットの面が多く、見事ハードの切り替えに成功したと言えるだろう。

アイドルの華やかな夢とシビアな現実が交差する世界観

  • 他のアイドルコンテンツのように夢を目指す少女たちのサクセスストーリーではあるのだが、その一方で他のタイトルよりも業界の裏側やリアルな生々しさを感じさせる箇所もある。
    • ゲームとしての目標は武道館ではあるのだが、武道館に行けなかった場合の後日談もキャラごとに作られており、まだ人生をやり直せる範疇の人物もいればよからぬ方向に進んでしまう人も…と、失敗の代償がリアルに描かれる。
    • 夢破れても人生は「続いてしまう」ということの重さを直球で描くのはこうしたコンテンツとしてはかなり珍しく、独自色があると言える。
    • EDの中にはプレイヤーの右腕となりもっとも頼りになる小夢が、秘めたる思いをぶちまけるという衝撃的な内容になっているものも。
  • しかし、だからと言って決して現実の厳しさを強調してアイドルを偶像と切って捨てるようなゲームではない。
    • ストーリーとしてはアイドル文化及びそこに携わる人を通した他者の価値観の尊重・アイドル文化の地位を高めよう、というテーマが存在しアイドル文化そのものは肯定的に描かれている。
      + トゥルーエンドのネタバレ注意
    • 後述の難易度の都合から、トゥルーまでの周回でプレイヤーは小夢の辛い過去を知ることになるため、その小夢が新たな夢を見つけ報われるというオチなのは特に評価されている。
      • アイドルたちよりも小夢が好きになったという感想も多く、アイドルのサクセスストーリー面が強い他メディア版に対してプレイヤー=主人公のゲーム版だからこそのシナリオの魅力点と言える。
      • 終盤で全アイドルにとって目指すべき頂点である蛍が姿を見せる、という流れなのはアニメと同じだが、アニメでは表向きは尊敬を集めながらも裏では人間的な一面もある人物として描かれていた一方で、本作では主人公と蛍との間には個人的な深い繋がりは存在しない。
        • このため、「絶対アイドル」の肩書に恥じない表の人格面がより強調されていて、パフォーマーとしての格を強く印象付ける描かれ方がなされている。こうした違いがあるのは以前より既存ファンにとっても焼き直しになっておらず新鮮さを感じられる。
      • アニメではその蛍からバトンを受け取りシャインポストを目指すのは春を始めとした才能あるアイドルたち…なわけだが、その一方でひねくれた観点から物を言うと、本作の小夢のような途中で落伍したアイドルはもう輝けないのか?そもそも本作の主人公のような先天的な事情でまずスタートラインに立てない人はどうすればいいのか?との言いたくなるような部分もあった。
        • 本作はこうした問いに「アイドルでなくても大きな夢を持っている人や、大きな夢を持つ人にバトンを繋げる人はみんなが 輝く道標 (シャインポスト)である」という極めて前向きな解を提示している。
        • 「夢がない人も誰かの夢は応援できる」とも補足することで誰も一人にしないような温かさのあると同時に、強制しすぎない程度に「世の中を良くしていこう」ということを示しており、これまで王道中の王道と評価されてきた『シャインポスト』というコンテンツの一作として相応しいメッセージ性がある作品である。
  • 各キャラのハッピーエンドだが、恋愛関係になるわけではない。
    • そうした関係になることを想起させるキャラもいるが、一線は越えずにプロとしてそれぞれの道を歩もう…という矜持を感じつつもどこかビターな関係性で終わるようになっている。
      • 余談だがシナリオ担当者は普通に主人公とアイドルが結ばれるような展開にしようとしたところ、アイドルは恋愛をしないという石原Pのこだわりによって製品版の形になったとか。
    • 仲良くなった女の子といい関係になるというのはゲーム的なシナリオだが、客観的にみると夢を応援したいと言いつつ手を出すという不健全さもあるのでまぁよかっただろう。
      • システム上一周で3人のハッピーエンドが見られるので仮に恋愛関係になるオチにしてたら10代半ば~大学生と3股する社会人という非常に絵面的にまずいことになっていたので、そういう意味でも正しい選択だったと言える。

先端技術とこだわりで作り上げられたライブパート

  • 組み合わせ自由自在なライブシーン。
    • 本作の最大の特徴として、ライブにおいては23人全員が全曲のどのポジションに配置することへの制約がないことが挙げられる。
    • ライブで歌える曲はこれまでの『シャインポスト』に登場した楽曲の大半及び本作で初披露になる曲が全32曲も収録されており、いずれも実在のアイドルや有名歌手にも楽曲提供している作曲家が担当してることもあって申し分のないクオリティ。
    • 元々各ユニットごとに特色を出していたこともあって、王道的なアイドルソングからクールなサウンドまで幅広く揃えてあり、中にはアニメでも話題となったバラードソング「Yellow Rose」レトロ感あるシティポップ「シーサイド・ブルー」など変わり種とも言える楽曲もあり、聞いていて飽きない。
      • 32曲の中には更に人数違い版が存在する曲もあるが、こうした楽曲もポジションを変えれば歌うパートもそれに応じてちゃんと変わる。
      • もちろん各アイドルに合った歌を歌わせる…のもよいのだが、小中学生に女のドロドロとした感情のこもった「GYB!!」を歌わせたり、クールビューティーな年長者に児童向け教育番組のような「キラキラキュン」を歌わせたり…とイメージに反するような歌を歌わせるのも面白い。
    • また、歌唱パラメーターの上達状態がきちんと反映されるという仕様があり、上達度に応じて歌い方もよりはっきりした発声になりビブラートやロングトーンもしっかり使いこなせるようになる。
      • こう書くと『学園アイドルマスター』のように上達度に応じて各役者があらゆる曲を別撮りしたのか、と思うかもしれないが……。
  • 実は本ゲーム内のライブシーンで流れる楽曲に各演者が歌っている曲は一つとして存在しない。ライブで披露される全ての楽曲は「演者の声を模倣した歌唱AIが出力した歌」である。
    • 技術面の解説をすると、本作制作にあたりあらかじめ各キャラの演者に複数の曲を歌ってもらい、それを元にAIにディープラーニングさせ、本人の歌唱を学んだAIが各曲に合わせた歌声を生成する…という仕組みになっている。
    • 機械が作った歌なぞまともに聞けるものかよ、と思うかもしれないが、音声合成・歌声合成技術の研究開発を行っている株式会社テクノスピーチ社*1の技術協力を得たことで、さすがに演者本人の歌唱力と同一とまではいかないものの、AIもここまで来たのか!?と驚くようなクオリティに仕上がっている。
      参考動画1  技術デモなどではない。実際に発売されているゲーム内のライブシーンの動画である。)
    • 学習においてはコナミ側が曲の指定やリテイクを行わないという独特な手法がとられており、演者側が好きに選んだ楽曲から学習をさせることで、単純な歌の巧拙よりもアイドルごとの歌声の個性を重視した調声がなされている。
      参考動画2 このように、同じAI技術でも一本調子にならず、かわいらしい歌声とアーティスティックな歌い方といった個性を表現できる。)
    • さらに歌唱だけでなくライブ中の掛け声もAIが出力する、ステータスに応じて細かく歌い方が変わる、ミスをすると音程を外すなど、この技術は演出としても上手く活かされている。
      • AI歌唱が盛りこまれたゲームや作曲ソフトは以前からもあるが、一本のゲームのために23人分もの歌声を作るというのは決して簡単ではない上に規模として前例のないことで、本作のオンリーワンの要素と言える。
      • 様々な分野でAI技術の活用が注目されている昨今だが、AIをエンターテイメント分野に用いるとどのようなことができるのか、という実例としても革新的かつ興味深いと言える。
  • ライブ衣装は60種以上かつ細かな差分違い版を含めると80種近くも用意されており、曲やアイドルに合わせて色々着せ替えるのも楽しい。
    • ファンシーなかわいらしい衣装もあればスタイリッシュでカッコいい衣装もあったりと曲同様幅が広く、好きな衣装を選べる。
    • 衣装とアイドルの組み合わせによっては着こなし方や小物が変化するようになっていたりとここもまた細かいこだわり。
    • また、衣装の中には水着も存在する。大観衆の前で推しをセクシーな恰好で踊らせるのも一興。
      • 余談だが水着はもっとごく普通の水着のようなデザインだったところ、石原Pのこだわりで露出を減らしてかわいらしさを増やしたとのことで、アイドルとしての品性は保っている。まぁでかいキャラはちゃんと揺れるが
    • これらの衣装の原案は、AKB48や=LOVEなど現実世界でのアイドルグループの服飾デザインを行っている株式会社オサレカンパニーが製作を行しており、この点でも『シャインポスト』という企画へのスタッフの力の入れっぷりが分かるだろう。
  • 作品世界のリアリティを増すのに一役買っている点として、実在のライブ会場がそのまま実名で登場する。
    • ビル街にある「日比谷野外音楽堂」、ちゃんと背景に富士山が見える「コニファーフォレスト」など造形もしっかりしている。
    • 原作の縁からかライブ会場の中に「中野サンプラザ」があり、在りし日のように*2今からでもライブができるという貴重な(?)ソフトになっている。
    • そしてスタッフのこだわりが光る点として、会場ごとの音響の違いもしっかりと再現している。
      チープスピーカーではやや分かりにくいものの、屋内か屋外か、ライブハウスかアリーナか…等同じ曲でも歓声含め聞こえ方が違うため、しっかりと現場にいるような感覚を味わえる。
      参考動画3 会場はクラス5の屋外会場であるコニファーフォレストで、上の参考動画1,2とはそれぞれ音響の違いが分かるだろう。)
  • ハコがでかくなりファンも増えてくると、ライブに声援やコールが入ったり客に出演者の名前が呼ばれたりとより臨場感が増す。
    • メリットが一切ないプレイだが、ファン数はライブシーンの人数にきちんと反映されるため、ファンを増やさないままゲームを進めた場合箱の広さに対して観客に空きが目立つようになるという細かい仕様もある。
      • ごく一部ではあるが、特別な演出や性格に応じた踊り方の差が出る楽曲も用意されている。
  • 以上のように様々な要素から成り立つライブだが、プレイ中は収益の都合もあるため、あまり好き勝手にセトリは組めない。
    • しかしながら、クリア後はライブビューワー機能で好きなメンバーの組み合わせで自由にライブを見れる。
    • 同じ歌でも声のみならず、前口上や掛け声のセリフ、ブレスの大きさや長さ、そのまま歌うかフェイクを入れるか…等々が一人一人異なるのでこの曲をこのメンバーで歌ったらどうなるんだろう?と気兼ねなく試せるようになっているのも評価点。

シミュレーションゲーとしての面白さ

  • 不調管理に悩まされる面白さ
    • 特に二年目以降は不調の警告が見えていても、他チームとのスケジュールの兼ね合いもあってタイミング的にすぐには対処できないことになりやすく、プレイに緊張感を持たせる要素として機能している。
    • そうでありながらも、キャラクターとの交流によるパラメーター上昇・クラスアップにより3年目までの昇格に遅れないように…とシステム面から攻略を自然と促す形にもなっているため、プレイヤーにストレスを与える要素でありつつも、クリアへの導線としても成立している。
    • ちなみに、メンタル不調状態でキャラクターのプロフィール画面を開くと、ちゃんとメンタル不調時限定の専用モーション・ボイスが発生する。よく出来た作り込みっぷりである。
  • いかに成功と収益のバランスを取れたセトリを用意できるかも悩ましくも考えるのが楽しい。
    • お金の管理はライブでどれだけ稼げるかは事前段階ではおおまかにしか分からないが、ストレス管理や時期を考えたらやるしかないという決断が迫られる時があり、バクチ的な面白さがある。
      • 試行錯誤が面白く、簡単でないだけに武道館達成できたことは達成感がある。

丁寧に作られたADVパート

  • 各キャラとの会話パートも一見普通に見えてなかなか丁寧に作られている。
    • 動作のない一枚絵や数パターンあるモーションだけで進行するようなことはなく、とにかく3Dモデルが会話内容に合わせ動きまくる。
    • 細かな目線や身振り手振りも調整されていて、特定の本数指を立てて数字を表現する、後ろめたいので話ながら目線をそらす、会話内容に合わせ顔を向ける相手を変える、しゃべっている間に涙ぐんでしまう…など非常に丁寧にモーションが作られている。
    • メモリービューワーに登録される会話でも555本あり、実際にはこれに登録されないちょっとした会話などもあるため地味ながら作業量的には相当な手間がかかっていると言える。
  • ヒロインストーリーズも以前からのファンを中心に好評。
    • ゲーム本編内では語られない設定や裏側も補完されるので、本作から『シャインポスト』の世界に入った人でも本編とはまた違うアイドルたちの一面を楽しめるようになっている。
      • 特にアニメでは主人公チームであるTINGSの一員ながら個人回が無かった紅葉がピックアップされているのは好評。
      • FFFとゆらゆらシスターズの所属キャラは、これまでの作品では七海だけが他のキャラよりは多少出番があったぐらいで他のメンバーの仔細はゲームに預ける形になっていたので、ようやく詳細なキャラクター像やそれぞれの関係性が描かれたのも嬉しいところ。
    • フルで音声を再生すると7時間以上というかなりのボリュームで、当然ながらこちらのモードにしか登場しないキャラもしっかり3Dモデルのモーションが作られている。

賛否両論点

  • AI歌唱は上述のような評価点はあるが、自然さや完成度にはムラが存在する。
    • 突然ピッチが外れたりロングトーンで不自然な声の伸ばし方をする場合がある。特に紅葉は声質とAIの相性が悪かったのか、他のキャラよりもややボーカロイドのように聞こえる時がある。
      • 春や亜珠花などの歌声は未熟な新人アイドル的なかわいらしさも感じる一方で、歌の巧みさという観点では他のキャラに見劣りする。
        ボーカルのパラメーターが高いキャラとの差別化や歌唱時以外のキャラクターとしての声の演技に寄せた調声の結果だろうか。石原Pは歌がうまいだけがアイドルではないとコメントしているので意図的に歌唱力に差をつけている可能性もある。
    • 対して、愛利や桃華や花音などはかなり安定している。麗美や菜花や七海も比較的良く、実唯奈もキャラクターとしての演技からはやや離れてしまっているものの歌自体は上手い。
    • ダントツで突出した出来の良さを誇るのが響季。ゲーム内でも歌唱力の潜在能力がMAXになるように設定されているのも納得のクオリティ。
      • 技術としては本当に素晴らしいので、今後の発展・改善に期待したいところ。
  • 上述の通りシミュレーションゲームとしての面白さはあるのだが、題材から想像できないぐらい硬派な部分もある。
    • 難易度選択機能や、近年のゲーム業界で採用されやすい超初心者向けのサポート機能などは存在しない。
    • 赤字になったら即ゲームオーバーという都合上、プレイに慣れるまでの序盤や武道館を乗り切るまでに必要な資金を体感として理解してないとそこまで上手く進んででも一発アウトということが起こりうる。
      • 意外といきなり危険なのが初ライブ。初プレイではどれぐらいの収益が入るか想像がつかない上に、直前で曲や衣装の発注もできてしまう。複数曲をやり切るにはその分体力がかなりいることを把握してないと、ライブがあるタイミングで色々発注してしまい資金が尽きておしまい…ということになりかねない。
    • 3年目は特に苦しく、3チームの管理を同時に行わなければならない。
      • そのうえ最後の難関である武道館ライブが待ち構えており、失敗は許されない。また、十分なファン・グッズ開発・資金確保を行っていないと、ライブに成功しても大赤字になってしまいゲームオーバー...なんて残念なことにも。
      • ただし武道館の成功は「5人曲を3つ入れる」のが成功条件なので、3人曲と2人曲をうまく使う抜け穴がある。
      • また、武道館以外でも応用できるテクだが、マスクパラメーターとして各曲は消費体力がわずかに異なるらしく、小夢に実行不可能と言われる演目でもただ並びかえるだけ実行できてしまう場合がある。
    • 一方で、攻略の抜け穴とも言える仕様もある。
      • 曲や衣装は定期的に新しい物を用意する必要がない。このため、各トレンドの曲さえ揃えば発注はある程度抑えてしまってもよい。
      • 武道館以外では5人曲を要求されないので、いつも同じ衣装でいつも2・3人曲ばかりのグループという明らかにリアリティ的におかしいプレイを続けていてもランクアップできてしまう。
      • 難易度自体は決して簡単ではないためこうした抜け穴を塞ぐと初心者がクリアできなくなるかもしれないし、衣装に関しては適宜変えた方が収益は上がるため何着も用意する意味自体はあるが、あまりに長期間新曲・新衣装がないとファンが減少したり、クラス2からは5人曲を1曲は入れる縛りがあってもよかったかもしれない。
  • 本作はオートセーブでやり直しは不可能。
    • 周回プレイで前週の資金や曲や衣装の引継ぎも無し…と往年のゲームのような硬派さがある。
    • もっとも資金などは引き継いでいないことを前提のバランス調整をしているので、引き継げたら簡単になりすぎる部分はあるが。
    • スタッフインタビューにおいてもディレクターの永島氏は「(周回での引継ぎやイージーモードを搭載するかは最後まで悩んだが、)夢を叶えた時のカタルシスと、それを応援する側のカタルシス、アイドルと経営という、その2つのジレンマを両取りできた時のカタルシスが、どうしても損なわれるため搭載しなかった」という旨のコメントをしている。
  • ある意味スタッフのこだわった部分なのだが、こだわりすぎてて条件を分かっていないと回収困難な会話イベントがある。
    • 各アイドルとの会話の中にはそのアイドルが学生時代のうちにしか発生しないものがあり、ちゃんとゲーム内の時間経過と矛盾しないように設定されている。
    • しかしながら時限イベントであるというヒントが作中に無いため、仕様に気づかないとメモリービューワーにてその会話だけがいつまで経っても埋まらないままになりやすい。
      • 一応回収しなくてもゲームクリアには差し支えないので、会話を全回収しようとした時に気になってくる程度のものではある。

問題点

  • キャラクターが多いこともあって複数周回することを前提としているようなのだが、ゲームバランスにやや粗い箇所もある。
    • 3年目を耐えきった後は手持ち無沙汰になりがち。
      • 上述の通りこのゲームの難所は「資金繰りが厳しいが将来を見越た投資もする必要のある序盤」「グループが増える二年目以降」「1・2年目組の武道館挑戦」である。
        このため、1・2年目組を育成しなくてよくなる4年目の後半及び5年目はそれまでの資金や設備・ファンの人数が揃っていることもあって最低限のストレス管理さえしていれば特に躓くこともなく、そのまま2年目組の武道館さえうまく行けばあとは順当に3年目組の武道館ライブが成功できてしまうので、歯ごたえに欠ける。
    • 複数回周回してキャラクターとの会話イベントを回収する場合、5年目が余裕になるのを見越して3年目組にまだイベントを見ていないキャラを選べばゆっくり回収できるというメリットにはなっているが、過去のシミュレーションゲーム同様終盤が簡単になりがちという問題を抱えていると言える。
    • 1年目組が武道館成功した場合の4・5年目のみに対処しなければならないイベントを発生させたり、実行しなくてもクリアはできるが大量の資金がいるやり込み要素などがあってもよかったかもしれない。
  • 3年連続武道館ライブ成功が真エンドの条件である以上、攻略の幅は限られる。
    • 事務所のステータスだが、育成力が最重要で後はその他のステータスはEかD程度で3年連続武道館が達成できるようになっている。
      • 逆に育成力を疎かにして資金力関係のステータスを上げることのメリットが薄い。
    • ある程度上位クラスのライブで成功すればかなり稼げる上にアイドルの不安解消にもなるので、「金周りは最低限だけ強化してそれ以外は育成全振り」でよくなってしまう。
    • 資金調達コマンドは数百万程度しか足しにならないので、序盤は役に立つものの後半は出費に追いつかなくなる。
      • 資金調達で必ず1ターン消費でただ稼ぐだけでなく、拘束期間はあるがリターンも大きい仕事や、経営コマンド同様時期によって大きく儲かる時を作ってもよかったのでは。
    • 上位クラスでのライブ収益をもう少し減らす分、ゲーム中盤以降のスポンサーから得られる利益を増やしたり、真エンドを目指す以外にも条件を満たした時に見れる特殊エンドがあってもよかったかもしれない。
  • 死に要素のアンコール
    • ライブがうまくいった場合アンコールが発生し収益がアップするという要素があるが、あまりこの要素が生きているとは言い難い。
    • 本作のヘルプ画面はかなり親切なのにもかかわらず、何故かアンコールの解説だけは存在しない。このためスポンサーからの要求で初めて存在を知ることになるが起こし方が分からないという状況になりがち。
    • しかしながら、スポンサーの条件に「特定の会場でアンコールを起こす」が出てくるのは資金に余裕が出てくる中盤以降なので、スポンサーの枠を無駄に埋めがち。
      • 上述の資金のバランスも合わせて、普段のライブだとあまり儲からないがアンコールが発生した場合のみかなり収益面で稼げる、アンコールが発生しても攻略上のメリットはさほどないが特殊な演出のライブシーンが始まる…等この要素を活かす工夫をして欲しかったところ。
  • 問題点と言うよりは要望に近いが、これまでの作品で発表された大半の楽曲を収録している中で、アニメ最終回を飾った「On Your Mark!!」が未収録ないのがもったいないと言われていた。
    • アップデートでメモリービューワーモードのBGMとして採用されたため一応完全に聞く手段が無い状態からは脱却したが、結局現時点ではライブの演目としては歌えないままである。
  • 要望の類としてもう一点。
    • ヒロインストーリーズにて、ひまわりシンフォニーとLAUGH DiAMONDを主軸にしたストーリーを収録して欲しいとの要望がある。
    • 両グループのメンバーはこれまでのメディアミックス作品に登場しておらず、当初の初登場予定作だったモバイル版の中止により、本作が事実上の初顔見せになったため、他メディア含め「公式からの供給」が不足している。
      そうした経緯から、彼女たちの背景や関係性をヒロインストーリーで補完してほしいという要望が多い。
      • 厳密に言うとLAUGH DiAMONDのメンバーは、IPとして動きがなかった時期に『シャインポスト』との企画上の関係性を伏せた上でAIボイスライブラリとして先行的に登場しており、そちらの時期のSNS上でのミニストーリー等を振り返ることはできる。
        一方でひまわりシンフォニーは現時点でバックストーリーが明かされておらず、謎のグループのままである。
    • 石原Pは、没となったモバイル版から拾い上げられなかった未使用シナリオがまだ多数あると述べているため、いつか日の目を浴びて欲しいものである。
+ アップデートで改善
  • 初期版では会話回想機能が無かったため、各種会話をクリア後に再閲覧できなかった。
    • 特に一部の会話イベントではかなり力の入った専用の一枚絵があったため、再度見られるようにして欲しいとの要望が多かった。
    • 発売二か月後のver1.1でメモリービューワー機能が搭載され、現在では一枚絵つきのイベントに限らず他のストーリー・ランダムイベント時の各アイドルのセリフや個別のグッド/バッドENDなどを見返せるようになった。

総評

苦難を乗り越えて見事にSwitch2のロンチに間に合わせた本作は、待ちに待たせたファンたちの期待に十分応えた出来栄え。
もちろんながら『シャインポスト』を知らないユーザーでも楽しめると共に、コンテンツの入り口としても最適なため、キャラゲーとして良作と評価できる。

とりわけAIによる歌唱表現や細部までこだわったライブ演出は作品の核を強力に支える。
エンターテインメントにおけるAIの活用という先進的な要素と、その背後にある人間のクリエイティブ精神は輝くような印象を残し、
「夢と現実」という普遍的なテーマを軸に組み立てられた物語・世界観も、既存ファンを満足させつつ新規ユーザーからしても見所がある構成である。

一方で、シミュレーションゲームとしては攻略法を自分で見つけるまでの試行錯誤は面白いのだが、詰めの甘さも否定できない。
セオリーを確立してしまうと途端にゲーム体験の濃度は薄くなり、周回時の自由度の幅の狭さはゲームとしての長期的な遊びごたえに欠ける。

しかしながら、アイドルコンテンツ最後発という極めて厳しい立場において、あえて衆目を集めやすい変化球を投げずに、直球勝負の王道アイドルを作ろうとするスタッフの熱意は感じられる意欲作であることは間違いない。

専用タイトルが限られる現時点においては、Switch2でしか得られないゲーム体験や、AIを活かした新時代の美少女ゲームを味わってみたいという人には強く勧めたい。
Switch2をこれから買うつもりの人、既に買った人に推したい一作である。


余談

  • 本作は個人の動画投稿/配信ガイドラインにおいてYouTubeやTwitch、ニコニコ動画などにプレイ動画等を投稿するには許可されているが、X(旧:Twitter)及びDiscordにはスクリーンショットのみ投稿可・動画を投稿するのは禁止となっているので注意。
    • 恐らくは楽曲の権利関係の都合で上述の動画サイトはJASRACと包括契約を結んでいるが、X及びDiscordは結んでいないのが原因と思われる。
  • 開発長期化もあって、モバイル版では実装予定だったが本作には完全に引き継がれていない要素や没になった仕様もあることが言及されている。
    • 例えばモバイル版時代のプレスリリースでは屋外会場の天候や時間変化がある予定と告知されていたが、本作では実装されていない。
      • 厳密に言うと時間帯変化は最終製品版に部分的に採用されているのだが、天候の方は見栄えや処理的な問題があったのか採用されていない。
      • 実は歌のみならずダンスも上達するという仕組みも予定されて、振り付けをミスしたり転んでしまうなどの要素が製作されていたのだが、石原P曰く「結構ノイズになるということもあったりして、そのあたりの仕様はオミットした」とのこと。
    • なお、企画構想時点でも紆余曲折があったらしく、中には異世界モノや、登場アイドルの一人である杏夏が実は未来人で未来世界を救うためにアイドルをプロデュースするという迷走染みた構想も存在したそうな。
      • 最終的には、かえって王道物の方が昨今では珍しいと判断し、現在のリアリティを重視した作風に落ち着いたとか。別案のまま進んでいたらどうなっていたことやら…。
  • ゲームへの注目度・出来の良さもあってか、ゲーム発売後は関連商品にも大きな影響を与えている。
    • 原作小説版は本作発売後の3カ月間で5度もの重版、9月13日から10日間の開催が予定されていたポップアップストアは開始初日からたった3時間で全商品完売とこれまで「埋もれた良作」と言われていたコンテンツとは思えぬほどの勢いを見せている。
    • 公式も「今後の展開の参考にする」とコメントした上でアンケート企画である「シャインポスト国勢調査」を行ったりと、IP全体としての今後にも期待がかかる。

最終更新:2025年09月29日 23:46

*1 一般向け製品だと、「CeVIO」や「VoiSona」などのソフトウェアを開発している。

*2 中野サンプラザは2023年に閉館し解体が決まっている…のだが、諸事情で2025年現在では再開発計画が暗礁に乗り上げている。