パワーレンジャー


『パワーレンジャー』とは、日本の特撮作品『スーパー戦隊シリーズ』を海外用にローカライズした作品群である。



概要

このシリーズが生まれた発端は、サバン・プロダクションズのハイム・サバン氏が日本を訪れた時に、
スーパー戦隊シリーズを視聴した事がきっかけと言われている。
しかしこのコンテンツを輸入したいというサバンの意に反しアメリカから見た当時の日本の特撮は、
日本特撮の始祖とも言える『ゴジラ』シリーズや版権プロダクションに恵まれ、ハワイ限定でヒットした『人造人間キカイダー』を除き、
出来の悪い子供騙しという偏見を持たれていたため
粗製乱造時代の負の遺産があったのも事実だが、単純に好みの違いもある。トランポリンアクションは当時のアメリカからは安っぽく見られていた)、
業界関係者の理解を得るのに難航していた。
そこでサバン氏は東映との交渉の末、
「変身者の俳優は全て現地の役者を使い、戦闘パートは日本のものを流用、ドラマパートは新撮する」
という革新的な手段を実行したのである。
こうして生まれた『パワーレンジャー』は、当初はアメリカの専門家からは否定的な見解を持たれていたが、
1992年のパイロット版を経て、1993年にテレビ放送されるや否や社会現象になるほどの爆発的なヒットを飛ばしたのである
(どれぐらいかと言うと、クリスマスに子供にパワーレンジャー玩具をせがまれるも売り切れ続出で右往左往していた親達の様子を元に、
 シュワちゃんが「ターボレンジャーターボマン」の玩具を求めてクリスマスに大騒動を起こすコメディ映画『ジングル・オール・ザ・ウェイ』が作られたほど)。
ついでに識者から「隙だらけじゃねーか」と馬鹿にされた戦闘前の名乗り上げも「ごっこ遊びしやすい」という理由で子供達に定着したとか。
『世界まる見え! テレビ特捜部』より

なお『ジュウレンジャー』の「ジュウ」は「獣」という意味だが、アメリカ人には意味不明な上(そもそも日本語でも恐竜戦隊なのに何故…)、
ユダヤ人に対する蔑称「jew」に近い発音だったため(サバン氏自身もエジプト生まれでイスラエル国籍を持つユダヤ人である)、
『パワーレンジャー』になったとのこと。

初代である『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』は大ヒット故に、
役者を変えずにロボだけ変える(『ダイレンジャー』に当たる話ではそれもしていない)という手法だったのだが、
それ故にマンネリ化を避けられず、『パワーレンジャー・ジオ(超力戦隊オーレンジャー)』以降は、
続投するメンバーもたまにはいるものの、日本に倣ってレギュラーを一新する方針となっている。

日本のオリジナルの作品と比較すると、アメリカの規制の関係などから、
  • 戦いはガチの殺し合いというよりも、格闘試合のような感じに見せる。
  • 銃の形をした武器は全てビームかレーザーにして実銃を連想させないようにする
  • 多民族国家な事もあり差別呼ばわりを避けるため、
    変身者の性別・人種はなるべく散らばらせる(基本的にイエロー担当が女性である事が多い)
    例外は『マイティモーフィン・エイリアンレンジャー(忍者戦隊カクレンジャー)』と、
    初のイエロー不在である『パワーレンジャー・ダイノチャージ』及び続編の『ダイノスーパーチャージ(獣電戦隊キョウリュウジャー)』で、
    いずれも初期メンバーが男4:女1
    • 『騎士竜戦隊リュウソウジャー』と『宇宙戦隊キュウレンジャー』をベースとした『パワーレンジャー・コズミックフューリー』では、
      シリーズ初の女性レッドとなっている。
    • なお、スーパー戦隊が常に男性レッドなのは「少年向け作品のため女性戦士では玩具が売れない(=打ち切りの危機)」という切実な事情が大きい。
    • この規制の関係で、スーパー戦隊では初期メンバー全員が兄妹である作品をパワーレンジャー化(現状4作品)する場合、この設定は一切顧みられない。
      ただし、メンバーの一部だけ兄弟となっている例は存在する。
  • 1話限りの怪人はあくまで怪物である事を強調した上で倒す。人間っぽく見える悪役は殺すのではなく、結果的に改心させたり封印するにとどめる
  • 味方側の変身者は基本的に死亡しない
などの違いがある。

なお、「歴代34戦隊の力を借りて戦う」という設定だった『海賊戦隊ゴーカイジャー』が原作の『スーパーメガフォース』では、
『ジュウレンジャー』より古い戦隊は「地球以外の星で活躍していたパワーレンジャー」という事になっている
(これ以前にも『忍者戦隊カクレンジャー』は巨大ロボは主人公サイドの新機体だが、戦隊メンバーは他の星から来た助っ人で登場したことがある)。

またアメリカで好まれる作風に対応して「バイクアクションを増やす」「ある程度キャラクターの設定をアレンジする」などもよく見受けられ、
結果的に多少別物ではあるが新たな面白味が生まれる事も多い。
特に『パワーレンジャー・イン・スペース(電磁戦隊メガレンジャー)』で初登場した強化装備の「バトライザー」は大好評であり、以降の作品でも登場している。
なおS.P.D.のバトライザーは『魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー』にて、デカレッドの強化形態「バトライザーモード」として逆輸入されている。
逆に「車社会故に日本ほど電車の人気が無い」ため、
日本では爆発的に売れたグランドライナー(救急戦隊ゴーゴーファイブ)がまるっきり売れなかったりという現象も起きている。
この影響で列車モチーフの『烈車戦隊トッキュウジャー』は、パワーレンジャー化せず怪人だけ別作品に出張する形となっている。
また玩具的に見ると、日本では「なりきり玩具」やロボの超合金が人気だが、アメリカではそれ以上にアクションフィギュアが人気な為、
レンジャーや幹部怪人のみならず、なんと一話きりのゲスト怪人までフィギュア化されている(日本でもウルトラシリーズの怪獣ソフビという例はあるが)。
上記のバトライザー人気も、この大フィギュア市場にてバリエーションを増やすのに都合が良いとして後押しされている面も強い。

なお『パワーレンジャーS.P.D.』(特捜戦隊デカレンジャー)は、
(地上波ではないものの)日本でもデカレンジャーのキャストによる吹き替え版が1年をかけて放送された程。
あと変身時の掛け声や巨大戦力を「ゾード」と呼ぶのが『特命戦隊ゴーバスターズ』に逆輸入されていたりもした
(正確には『パワーレンジャー』は変身者が「It's Morphin' Time」と叫ぶのに対し、
 『ゴーバスター』は変身者が「Let's Morphin」と叫び、変身アイテムが「It's Morphin' Time」と応える)。
また50周年記念作の『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』では巨大戦力兼、
等身大戦では短剣付きの手甲(要はシミター)として扱えるメガゾードならぬ「テガソード」が登場している誰がうまい事言えと。

ただし人気を博した一方、当時のアメコミが社会派を気取って「正義とは何ぞや」とばかりにヒーロー達を悲惨な目に遭わせるのが流行っていたのに対し、
様々な人種・立場の人間が一致団結し真っ向から誰からも分かりやすい正義を掲げて戦う」という、
アメリカの理想を形にした本作はアメリカのインテリ層を大いに慄かせた。
なにせかつて太平洋戦争で倒したはず悪の帝国が何時の間にか復活したのみならず、自分達以上にアメリカの理想を表現して見せたのである。
『パワーレンジャー』のみならず、様々なアメリカ製品が日本製品に追いやられてゆく中、
ロボコップ3』を肇とした80年代から90年代のハリウッド映画において、
日本に経済的に支配されたアメリカ」という作品が多かったのも、そうした日本に対するアメリカ人の恐怖の表れなのだ。
故に、『パワーレンジャー』は子供向けコンテンツにすら浸透する日本製品の否定、所謂「ジャパンバッシング」の始まりにもなっている。*1

ちなみに、韓国では2004年頃から日本のスーパー戦隊シリーズの吹き替え版をパワーレンジャーとして放送している。
こちらも中々に好評のようで、『獣電戦隊キョウリュウジャー』に至っては社会現象と呼べるほどのヒットを飛ばし、
人気作でも続編は作らない、というスーパー戦隊の掟を破り韓国独自の続編まで作られたほど
(海賊版ではなく日韓共同制作のちゃんとした公式続編であり、国内においてもYouTubeバンダイチャンネルにて配信)。
こちらも役者を一新し韓国の俳優が新たな戦隊メンバーを演じているが、
こちらはこちらで「なんで当時のキャストで続編を作らない!」と韓国内でも賛否があった模様。
こちらでも(番組自体が15分×12話と短編な事もあってか)ロボット戦がほぼフルCGという新たな試みが行われている。
また、その後放送された『動物戦隊ジュウオウジャー』もキョウリュウジャーのように続編こそないものの、
韓国独自のロボの玩具(ただし完全新規ではなく「鷲→鷹、獅子→兎、鮫→鯱」みたいなリデコ品*2)が、多数登場するくらいには好評だった模様。
Angry Video Game Nerdがゲーム版をプレイ


格闘ゲームにおけるパワーレンジャー

『MIGHTY MORPHIN POWER RANGERS THE FIGHTING EDITION』

ナツメ開発の対戦格闘ゲーム。SNES用であり国内未発売。
等身大のヒーローではなく、巨大戦力と敵が戦うゲームとなっている。
ゲージ技は時間ごとに増加と減少を繰り返す特徴的なシステムとなっているが、コンボがあまり繋がらないなど対象年齢は低め。

ちなみにナツメは後に本作のゲームエンジンを流用・改善して『新機動戦記ガンダムW ENDLESS DUEL』を開発した。
こちらは逆にハイスピードなコンボゲーに仕上がっており、子供向けとは言えない。

  • 登場キャラ
サンダーメガゾード(大連王)、メガタイガーゾード(牙大王)、ショーグンメガゾード(無敵将軍)、ニンジャメガゾード(隠大将軍)、
ゴルダー(グリフォーザー)、レディリップ (口紅歌姫)、シルバー・ホーン(イカヅチ)、ロード・ゼッド
アイヴァン・ウーズ(隠しキャラクター)

『POWER RANGERS BATTLE FOR THE GRID』

LIONS GATE STUDIO発売。PS4、One、Switch、Steam対応。
モデルはソーシャルゲーム『Power Rangers Legacy Wars』からの流用。
TV版とリブート版のキャラが両方登場する上に、「(色)レンジャー」の名前がダブりすぎてややこしいのか、
レンジャー側は一部例外を除き原則変身者の名前が使用されている。

戦闘は3対3形式で、援護専用扱いのゾード1体を編成して戦う。

  • 登場キャラ
  • DLCキャラ
ジェン・スコット、トレイ、ロード・ゼッド、アヌビス・"ドギー"・クルーガー、
エリック・マイヤーズ、ダイ・シ、ロバート・マーティン、ローレン・シバ、
スコルピーナアダム・パーク、ポイサンドラ、リタ・レパルサ
  • ゲストキャラ
  • ゾード
メガゾードゴルダー、ドラゴンゾード、S.P.D.メガゾード、サムライメガゾード


MUGENにおけるパワーレンジャー

ベルトスクロールアクションゲーム『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』のドット絵の流用や、
上記の『FIGHTING EDITION』ベース、手描きのキャラが複数公開されており、
その数は原典である『スーパー戦隊シリーズ』準拠のキャラの数を凌いでいる。
基本的にスタンダードな格ゲー仕様だが、Redline氏のように元ゲーの仕様を疑似的に再現している製作者も存在する。

+ MUGEN入りしているキャラ一覧
MUGEN入りしているキャラ一覧

また、Justin kaiser氏によりキャラとしての「パワーレンジャー」が公開されている。
コマンドにより、操作キャラを入れ替えて戦う性能になっている。
DLは下記の動画から


*1
他には、当時の『ゴルゴ13』でも「ハリウッド映画を使ってアメリカの価値観を世界中に浸透させていたはずが、
今やアニメや特撮の所為でアメリカの子供達が日本の価値観に染まりかけている」というネタをやっていたり、
サウスパーク』における「チンポコモン」のエピソードも、子供達が外国産のサブカルチャーに熱中するあまり、
国内がそれらに侵食される様を見せられる大人達の潜在的な恐怖を皮肉ったものでもある。

*2
他はともかく「獅子→兎」は無理があるんじゃないか?と思う人が居るかもしれないが、
実際、タテガミパーツの一部を黒く塗りつぶしてウサミミっぽく見える様にしただけの無理やり感満載な代物である。
また「鯨→ブラキオサウルス」は「頭頂部の潮吹き」パーツを「ブラキオサウルスの頸」に変更している。

なおこのリデコ玩具、本編に登場したメカが丸々一式揃っているので、リデコ品だけで劇中の全ての合体を再現したり、本編玩具と入れ替えたりも可能。


最終更新:2025年03月30日 23:23
添付ファイル