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第1話
遠い遠い、遥か過去の時代。
その星は『人』の楽園でした。
その星は『人』の楽園でした。
翳りを知らず。喪失を知らず。理不尽を知らず。
『人』は、永遠にも似た寿命を持ち、穏やかに生きていたのです。
彼らは、魔法で万物を創り出しました。
たとえば『決して朽ちない石』。
積み上げて、頑丈な塔にしました。
積み上げて、頑丈な塔にしました。
そこに『輝く水晶』を嵌めれば、
夜の闇だって、淡く柔らかに微笑みます。
夜の闇だって、淡く柔らかに微笑みます。
そんな素敵な街で、『人』は心ゆくまで語り合い、
笑い合い、認め合い、愛し合っていたのです。
笑い合い、認め合い、愛し合っていたのです。
街路に、ひとりの男が佇んでいました。
身に纏う黒いローブは、ほかの『人』とお揃いです。
唯一、顔を覆う仮面だけが、
色も形も、まわりと違っていました。
唯一、顔を覆う仮面だけが、
色も形も、まわりと違っていました。
それは『人』を導く者の証。
男は、偉大な魔道士でした。
男は、偉大な魔道士でした。
「やあ、相変わらずキミは早いね」
男のもとに、待ち人が現れます。
気心の知れた旧友です。
気心の知れた旧友です。
じき、もうひとりの友人もやってきて、
三人で夜を賑わすことになるでしょう。
三人で夜を賑わすことになるでしょう。
幾千回、幾万回と、繰り返してきたように。
遠い遠い遥か過去の時代。
そこは彼の楽園でした。
第2話
楽園の崩壊は、あまりに唐突でした。
星を呑み込む災厄。
それは、あらゆる命の存在を拒むかのように、
災いの流星を降らせました。
災いの流星を降らせました。
大地は崩れ、水は血となり、文明は燃え尽きます。
偉大な魔道士である男と、種々の知恵者たちは、
星を律する神を創ることにしました。
星を律する神を創ることにしました。
『人』の半数を贄として。
生み出された黒き神は、災厄を鎮めてみせました。
災いが過ぎたあと、
すっかり荒れ果てた星を見て、男たちは言います。
すっかり荒れ果てた星を見て、男たちは言います。
「もとに戻そう」
「楽園へ帰るのだ」
「楽園へ帰るのだ」
彼らは再び贄を捧げ、神に再生を願いました。
一方で、男たちの行いに異を唱える者もいました。
「先に進もう」
「過去を過去とし、新たな未来へ」
「過去を過去とし、新たな未来へ」
彼らは白き神を創り出し、
男たちの黒き神に戦いを仕掛けました。
男たちの黒き神に戦いを仕掛けました。
二柱の神は、昼も夜もなく戦い続けます。
やがて勝利したのは、
未来を求めた白き神でした。
未来を求めた白き神でした。
その渾身の一撃が、
黒き神を、星ごと切り裂きます。
黒き神を、星ごと切り裂きます。
こうして世界は、十四の欠片に分かたれてしまったのです。
第3話
対立する白き神の、渾身の一撃。
魔道士の男は、居合わせた仲間と力を合わせ、
かろうじて耐え抜きました。
かろうじて耐え抜きました。
次に彼が見たもの......
それは、星とともに分かたれ、
もとの形を失った生命たちでした。
もとの形を失った生命たちでした。
「ウー......アァ......アー......」
人の『なりそこない』たちが呻きます。
彼らの声は、意味のある言葉になりません。
言語を扱う文化も、知性も、失っていたのです。
言語を扱う文化も、知性も、失っていたのです。
こんな結末は認められない。
男たちは、再び星をひとつにまとめ、
楽園を取り戻そうと動き出しました。
楽園を取り戻そうと動き出しました。
十年、百年、千年......
彼らが活動を続ける間に、『なりそこない』たちは、
めいめい文化を築きはじめました。
めいめい文化を築きはじめました。
新たな言葉でしゃべりだし、
新たな神を祀りだし、
新たな歴史を歩みだしたのです。
新たな神を祀りだし、
新たな歴史を歩みだしたのです。
男にとって、それはおぞましいことでした。
『なりそこない』は弱くて脆い。
魔法だって、さほど上手くは扱えません。
魔法だって、さほど上手くは扱えません。
『なりそこない』は愚昧で狭量。
くだらないことでいがみ合い、絶えず争っています。
くだらないことでいがみ合い、絶えず争っています。
『なりそこない』の命は短い。
簡単なことで、あっという間に、死んでいくのです。
簡単なことで、あっという間に、死んでいくのです。
そんなものが、『人』に取って代わろうとしている。
男にとって、それはおぞましいことでした。
どうあっても。
いつになっても。
いつになっても。
おぞましくて哀しいことでした。
第4話
星のすべてが分かたれた日から、
長い長い年月が経ちました。
長い長い年月が経ちました。
男は今も、生きています。
楽園を取り戻すため、戦い続けています。
ときには『なりそこない』に紛れ、
別の名を得て、仮初の人生を演じました。
別の名を得て、仮初の人生を演じました。
同じように、今日もまた。
誰かの名と身体を借りて、男は世界を見下ろしています。
誰かの名と身体を借りて、男は世界を見下ろしています。
くたびれたように丸まった背中。
疲れきった顔に似合いの、深いため息をひとつ。
疲れきった顔に似合いの、深いため息をひとつ。
視線の先には、『なりそこない』の一団がいました。
魂さえも視抜く男の眼は、
その中に、懐かしい色を見つけます。
その中に、懐かしい色を見つけます。
楽園の名残......
あのころの友人と、同じ色の魂でした。
あのころの友人と、同じ色の魂でした。
けれども、もはや何かを期待することも、
寂しさを覚えることもありません。
寂しさを覚えることもありません。
そんなことは、とっくにやり尽くしていたのです。
だから彼は、眼前の事実を、粛々と計画に組み込みます。
なおも捨てきれない願いを、
微かな余地として残しながら。
微かな余地として残しながら。
昔日の楽園を求めた男は、
星と命の物語を、静かに歩き続けます。
星と命の物語を、静かに歩き続けます。