「東方見文録」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
東方見文録」を以下のとおり復元します。
*東方見文録
【とうほうけん ぶんろく】
|ジャンル|アドベンチャー((公称ジャンルは「ニューウェーブ・サイケデリック・アドベンチャー」となっている。))|&amazon(B000068I7I)|
|対応機種|ファミリーコンピュータ|~|
|メディア|2MbitROMカートリッジ|~|
|発売・開発元|ナツメ|~|
|発売日|1988年11月10日|~|
|価格|5,800円(税別)|~|
|判定|BGCOLOR(MistyRose):''怪作''|~|
|ポイント|トンデモ展開の目白押し&br()わりと人が死ぬ&br()文字通り発狂もののED|~|
----
#contents(fromhere)
----

**概要
後に『[[メダロット>メダロットシリーズ]]』シリーズでその名を知られることになるナツメ(後のナツメアタリ)のデビュー作。マルコ・ポーロの旅行記「東方見 "''聞''" 録」ではない。~
アドベンチャーゲームとしては何の問題もないのだが、ストーリー展開が、あまりにぶっ飛んでいる…を通り越して''完全にトチ狂っていた''ために、プレイヤーに強烈な印象を植えつけることになった。

----
**ストーリー
>東南アジア大学歴史工学部旅行学科4回生の「東方見 文録(トウホウケン ブンロク)」~
彼は卒業論文を書くためにタイムマシンを開発し、敬愛するマルコ・ポーロが生きた1275年にタイムスリップした。~
タイムスリップは無事に成功し、文録は中国にキリスト教を布教するべく父ニコロと旅に出ていたマルコの前に姿をあらわす。~
ショックで腰を抜かし、なぜか背も低くなってしまったニコロに代わって、文録はマルコとともに中国を目指すことになる。~
しかし、その行く手には、不条理極まりない奇天烈な出来事の数々が待ち受けているのであった…。

----
**特徴
''システム''
-総当たり・コマンド選択型のアドベンチャーゲームで全5章構成。
--基本的には文録とマルコの2人旅だが、ストーリーが進むと文録だけ、マルコだけで進む場面も出てくる。
--登場人物のセリフ以外は、ナレーターの解説という体裁を取っている。このナレーターにも一キャラクターとしての人格があるらしく、夜の砂漠で「ツキのー サバクをーときたもんだ」と口ずさむなど、どこかノリが軽い。
--コマンドは「みる」「はなす」「とる」などの他に「''なぐる''」が常備されている。主人公の性格を表すと共に、誰彼構わず殴る事が出来るシステムとなっているのである。
---ただし、ナレーションに怒られて実際には殴れないパターンも多い。
--しかし殴る時は平気で殴る為、お偉いさんを殴って処刑されたり、使命を果たせなくなって''野垂れ死に''したり、''ナレーションに天罰を下されたり''と言った事が普通にある。ゲームオーバーの原因は大抵このコマンドである。

''奇怪さ漂う作風''
-そんな本作の特徴は何といっても、どこを取り出してもそこはかとなく漂う「怪しさ」である。
--太田螢一((アンダーグラウンド系漫画雑誌『ガロ』の表紙を担当したイラストレーター。ミュージシャンとしての顔も持ち戸川純、上野耕路と共に音楽ユニット「ゲルニカ」としても活動していた。))が描くパッケージ絵(上参照)をはじめ、パスワード入力画面で「マイムマイム」に合わせて表示される「バタイユ((難解な内容で知られるフランスの小説家・思想家。))の小説に出てくる眼球」「プラナリア」のアイコン、パスワード表示画面に出てくる''「パスワードは これだビッチ!」「ロシアよりアイをこめて…」''というメッセージ等等…。
--''軽いノリで話が進むわりに人死にが多い。''敵も味方もあっさりと死ぬ時は死ぬ。

-脇役の名前や登場人物の台詞、BGMにTV・映画などからのパロディが大量に盛り込まれている。以下はその一例。
--ゲーム序盤で訪れる街で「イスラム語」のワンポイントアドバイスをしてくれる''ラッキーさん''((元ネタは当時放送されていた情報番組『ズームイン!! 朝!』で、ワンポイント英会話のコーナーを担当していた「ウィッキーさん」で、その街で朝を迎えた際には『ズームイン!! 朝!』っぽい演出もあったりする。))。
--文録の荷物を盗んだ犯人を追いかける場面で文録が道行く人を手当たり次第に殴ろうとすると、ナレーターが「''カワバタ クンジですか?''」と言う((元ネタは1981年に起こった「深川通り魔殺人事件」の犯人の名前。いわゆる「電波系」が一般に認知されるきっかけになったとされる。不謹慎だがいいのかこれ?))。

-彼らの旅路は意外と元ネタの「東方見聞録」に忠実なのだが、章が進むにつれてどんどんストーリーは混沌としており突っ込み所を挙げるとキリがない。

#region(カオスなバカゲー要素※ネタバレ注意)
--''明らかにカッパの見た目の神父''が味方として登場。その後あっさりと死ぬ。
--キリストの磔刑像にうっかり金的をかましてしまった悪党(''オカマ'')が像のライダーキックで死ぬ。
--国の王様が呪いによってヤギのようになってしまい、トイレットペーパーばかり食べている状態になる。
--背中合わせの状態で大樹に埋め込まれた恋人どうしを助けるためにチェーンソーでタテ割りに。当然2人とも死ぬ。
--砂漠でいきなり出会ったヤンキーに''自慢の金歯を抜かれる''文禄。
--マルコが出会う船の漁師が''何故かタコの姿をしている。''誰にも突っ込まれず普通に会話している。
--文禄たちが敵から突き落とされるが、何故か''メッセージ画面のウィンドウに着地''して難を逃れる。
#endregion

-ここまではかなりカオスな内容であるものの基本的にギャグ要素が強く、比較的楽しめる出来となっている。このまま終わっていれば単なるバカゲーで済んだのだが....
--しかしこのゲームはそれでは終わらなかった。本作を怪作と呼ばれる出来たらしめたのが最終章である第5章の内容。
---ちなみに説明書には各章のあらすじ」が載せられており第5章については最終章ということで~
「&bold(){あんまり書いたらつまんないけども、この章は、けっこお、カルト((原文ではこの3文字の上に点(・・・)がつけられ強調されている。))してるよ!}」~
「&bold(){特に深い意味はないが、「暗いのが好き!」っていうアンタには、バッチリ満足してもらえるさ!}」~
「&bold(){セーゼー、ブッタマゲテオクレ!}」~
という、やたらとものものしい一文(原文ママ)と共に具体的な展開は伏せられているのだが、その忠告通りブッタマゲルほどのカルトじみた内容でプレイヤーを唖然とさせた。
--''一応書いておくが、これでも完全クリア時のものである。''

#region(ネタバレ注意)
//文の流れが寸断されて読みづらいんで、マルコの死にざまと没画像については余談節のそれ以外の没要素の節に統合した。
--無事にマルコを送り届けた文禄だが、元寇の大船団が日本に上陸しようとしている事を知らされ一緒に向かわされるという事態になる。
--「神風」が吹かない((それもその筈で神風が吹いたと言われるのは一旦日本に上陸して交戦したあとである。))ことに焦った文録がタイムマシンをいじったことで「神風」特攻隊があらわれる。元軍は壊滅するが、マルコも''流れ弾に当たって死ぬ。''
---そしてこのような歴史改変を起こした文録は''「日本が元国の侵攻を免れたことは事実です。私は無実です。」とのたまう始末''。

-マルコを失った文録は失意のうちに漂流を続けた末、日本のようでありながらそうとも言えない、どこか奇妙な場所に流れ着く。
--そこは時を侵したもの(すなわち時間犯罪者)を収容する「時の団地」と呼ばれる場所だった。
---ジパングに着いたと喜んでいたのもつかの間、狂気に満ち溢れた人々に取り囲まれた文録は、時間改変の罪で一生をそこで過ごす羽目になることを知らされ、憧れのジパングとの落差と無情な結末にもはや正気を保てず、発狂してしまうのであった・・・。
--文字だけではカオスさが伝わらないので、[[実際の動画リンク >https://www.youtube.com/watch?v=n5Zn8BJYH0E,width=420,height=270]]を参照してほしい。
#endregion

--このそれまでのギャグ色の強い内容から一転して''非常に重くシリアスな内容となり、悲惨な結末で終わる''というストーリーの急変ぶりがプレイヤーに衝撃をもたらし、東方見文禄は色々な意味でインパクトを残す作品となったのだった。

----
**評価点
-BGMは短いものが多いがFCとは思えないほど曲数が多く、バリエーションも多い。

-上記のシュールで奇怪極まりない世界観と展開をそのまま絵にしたグラフィックは地味に質が高く、2コマアニメで面白おかしく強調されているシーンも多いなどプレイヤーを飽きさせない。

-メッセージパターンも簡素ながら豊富
--プレイヤーが無意味な行動をとった時のナレーターの反応も楽しめる。

-純粋なバカゲーとして楽しめる出来
--本作が怪作として語られるのは主に第5章の展開が大きく、それ以外のストーリーは割と突っ込み所満載のバカゲーとして素直に楽しめる出来である。

----
**問題点
-テキストが読みにくい
--容量節約のためではあるが濁点が1文字扱い、文末の読点の省略、改行が少ないため単語が分断されている長セリフ、誤字脱字などが多く読みづらい。

-キャラ切り替えの面倒さ
--ストーリーを進めると、ブンロクとマルコが別行動し、パートが切り替わることがあるが、切り替わっても操作するキャラ自体はいちいち手動で切り替えなくてはならないので面倒くさい。

----
**総評
洗練されていない部分はあるものの、理不尽な謎解きを要求されることもなく、BGM・グラフィック・メッセージパターンが多彩で小ネタも豊富である。本作の独特のユーモアは現在でもなかなかお目にかかれない。

しかし、ぶっ飛びすぎてまともな理解が追いつかないシナリオ、シリアスなのかおふざけなのか判断に困るカオスな雰囲気、そして何よりも奇抜な作風にそこそこ馴染んだプレイヤーですら唖然とさせるエンディングの存在…。~
これらの要素によって、オーソドックスなテキストADVを軽々と突き抜け「''ニューウェーブ・サイケデリック・アドベンチャー''」の公称ジャンル名に違わぬ強烈な印象を残すこととなった。

一定の評価を下すのが困難な、まさに「怪作」と呼ぶにふさわしいゲームである。

----
**余談
-『美食倶楽部バカゲー専科』(キルタイムコミュニケーション)にて、本作についてのバタイユ論をまじえた詳細な考察及び解説が加えられている。

-『[[メダロット4 カブト/クワガタ]]』に「[[トウホウケン ブンロク>https://www7.atwiki.jp/medadictionary/pages/766.html]]」というNPCが登場する。
--顔グラこそは普通の男の子のものだが、文録のエキセントリックなしゃべり口調は再現されており、愛機「マルコ」も今作のエピソードを端的に再現したパーツで構成されている。

-本作の翌年に発売された『[[アイドル八犬伝]]』には、本作のシステムが流用されている。
--こちらは現代日本を舞台にしたコミカル路線であり、本作のようなイカれた狂気っぷりはさすがに鳴りを潜めているが、また違った意味で本作に負けず劣らずのカオスな作品である。

-マルコが流れ弾に当たって死ぬシーンの演出はマルコが点滅して消滅するだけという無難なものだが、没データの中に''木っ端微塵に頭を吹っ飛ばされるマルコ''というショッキングな画像が入っている。さすがに倫理チェックに引っかかった模様。
---なお、この没データの画像自体は通常ROM内でも確認されているものの、巷に没画像として出回っている死亡シーン全体の画像は、誰かがマルコの没画像と本編の該当シーンの背景画像をコラージュしたものであるという説が有力と言われていた。~
その後、2021年9月に開発サンプル版をコレクターが発掘、検証したことで[[該当シーンでそのまま使用されていたことが明らかとなった。>https://automaton-media.com/articles/newsjp/20210915-175826/]]。
--また、それ以外にも製品版との相違が数多く確認されている。
---具体的には差別表現、グロ・エロ描写、実在の人物の名前や商品名などがかなりの数盛り込まれており((上述した「ラッキーさん」「カワバタ クンジ」等もボカさず実名表記され、性的描写に至っては女性の胸の露出をはじめとして、とても当WIkiでは書き記せないレベルのものまで存在している。))、製品版はこれでもかなり描写が抑えられているという事も明らかになった。
----

復元してよろしいですか?