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アナザー・マインド - (2013/11/17 (日) 13:27:32) の編集履歴(バックアップ)


アナザー・マインド

【あなざーまいんど】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 プレイステーション
発売元 スクウェア
発売日 1998年11月12日
定価 5,800円


概要

3DCGで名を上げたスクウェアが敢えて実写を採用した実写アドベンチャーゲーム。当時(現在も?)は「実写ゲー=クソゲー」という方程式が成り立っており、ゲーム画面を見ただけで拒絶反応を起こすユーザーもいたが、ファンタジーがさも現実世界で起きているように見せている。

ストーリー

主人公はある日、意識だけの状態になって、交通事故で昏睡状態に陥っていた女子高生の葉山瞳(デフォルト名)の意識の中で目覚める。
主人公は自分の名前「真野俊平(デフォルト名)」以外のことは思い出せず、記憶喪失になっていた。
昏睡から回復した瞳は自分の中にいる主人公の存在に戸惑いつつも協力する事になり、彼女の周りで起こる不可解な事件を共に解決していく。

簡潔に言えば、ヒロインの身体の中に居る意識だけの主人公が、ヒロインと一心同体で謎を追っていく、という内容。
主人公に体の操縦権は一切無く、ヒロインに指示を出してストーリーを進めていくことになる。

操作系統

  • つっこみシステム」で、ゲームキャラとコミュニケーションを取っている感覚を味わえる。
    • なお、このシステムは正式名。つっこむ個所はあらかじめ決まっているが、つっこむかはプレイヤーが決める。
  • アドベンチャーにありがちな選択肢も、用意された文法を組み立てて、キャラに指示する。
    • この「ダイアローグシステム」は、単語を選んで組み立てて文章を作っていくという独特の方式。
      • 例えば、まず「聞く」「知っている」という選択肢が表示され、「聞く」を選ぶと「聞け」「聞くか?」「聞く」「聞かない」などの活用形の選択になる。ここで「聞くか?」を選んだとすると、次は主語として「 瞳は 聞くか?」「 僕は 聞くか?」などの選択になり、さらに「瞳は 黒川に 聞くか?」「瞳は 村井に 聞くか?」など対象を選ぶ…のように次々と選んで文章を完成させる。
  • 瞳との会話によって内部の感情パラメータが変化し、的確なアドバイスをして瞳から信用されていると「信頼度」、優しく接したりなどで好感をもたれると「好感度」、そしてギャグを狙った変な展開ばかりだと「おちゃめ度」が上昇していき、逆の行動で下がっていく(画面に数値は表示されない)。
    • 信頼度が高いと頼られて瞳の方から話しかけてくれたりすんなり指示に従ってくれたりするが、逆に低いと指示通り行動してくれないことがある。
      • ただし信頼度が高くても、主人公キャラが温泉に入っている時に「目を開けろ」と指示しようが発狂しようが断固拒否される。

特徴

  • ストーリーは章立て。各章の内容は独立した短編のようになっているが、それぞれにエンディング分岐が存在する。
  • 主人公(プレイヤー)の設定(名前・職業)はストーリー上で固定されているが、好きな名前・職業を付けることが出来る。
    • ストーリー上の名前とプレイヤーが付けた名前とで矛盾が生じると思うが、ストーリー上では無難に消化されている。
    • ちなみに主人公とヒロインの名前をゲーム中の登場人物と同じ名字や名前にすると、その人物の名前が同音異字になるという凝った仕様になっている。しかも一度しか名前の出ない人物などゲーム中の全キャラに適用される。
      • 例えば、村井薫(むらいかおる)という登場人物がいるが、ヒロインに「村井」や「薫」と名づけると、本来の村井の名字や名前が「村居」や「香」に変更されてしまう。写真やムービー中に名刺などで名前が登場するキャラはその場面のカットも変更されるという念の入った凝りよう。
  • ゲーム中に様々なスクウェア作品の小ネタが登場する。新聞記事の見出しに「郊外にメテオ」「ブリザラ中毒」「是の義、明日(ゼノギアス)」。FF7・FF8・FFTのキャラが登場する4コマ漫画「サンダラくん」。ニュース番組の名前が「ニュースLIVE And LIVE」(LIVE A LIVE)など。

評価点

  • 伊藤かずえ、筧利夫、高知東生、山下真司といった有名な俳優が登場している。
  • 上記のシステムによって会話の組み合わせの自由度はかなり高く、実際に瞳と対話しているような気分になれる。
  • ゲームに慣れていない序盤は、バッド気味のすっきりしないエンディングでもそのまま次の章へ進む事ができる。
    • ただし勿論、各事件をきちんと解決してグッドエンドで進めた方が瞳からの信頼度や好感度は上がる。
  • 隠しパラメータがいくつかありゲーム開始からの選択の積み重ねで瞳やその他の人物からの反応に変化がある。
  • コンフィグで片手だけでプレイできるようにすることも可能。
  • マルチエンディングで章の結末や最終的なエンディングも複数ある。

問題点

  • 会話の組み合わせは豊富だが同じ反応・展開になる組み合わせも多い。
    • 各章途中の展開の分岐はそこそこあるものの結末自体は2,3種類程度。
  • 文章やムービーのスキップができない(ムービーは基本的に短いものばかりだが)バックログ機能もない。
    • 最終章で、多少トラウマになるかもしれない鬱ムービーが流れる。
  • 最終的なエンディグも数種類あるが、ゲーム中で分岐条件のヒントのようなものはない。
    • 2週目以降でしか見れないエンディングもあるがゲームクリア後にその旨を教えてくれることもない。
  • 最終章でベストエンディングを見るための所謂「ラスボス」とのやりとりが少し難しい。
    • 詳しいネタバレは避けるが、ラスボスとのやりとりにおいて、最後の質問でラスボスの答えを間違わせるように会話を選んでいく(ラスボスを完全に信用させて最後だけ嘘を言う or わざとラスボスに抵抗して最後だけ本当の事を言う)必要がある。
    • 失敗した場合のバッドエンドが非常に後味の悪いものであり、しかもこの結末でもスタッフロールは普通に流れるため、マルチエンドだと気付かずに「オチが最悪のクソゲーだ」と誤解しているレビューが少なくなかった。

総評

 バグはなく物語や設定の大きな破綻もない。アドベンチャーとしては上出来といえる。斬新な会話システムや有名俳優を使った実写など意欲的な点も評価できる。しかし、周回プレイ前提のようなゲーム内容でありながらスキップ機能がない、分岐のヒントもないといった不親切さが惜しい。
 似たような実写ゲームにはチュンソフトの「街」や「428」などがあるが、あちらはサウンドノベルとしての実績があったがスクウェアがADVを製作するのは異例であった(スクウェア自ら認めていた)。当時コンシューマーのADV自体が下火で、実写ゲーへの抵抗も強く、うまくゲームに取り込む技術も未熟だった。
 スクウェアでなければ作れなかったがスクウェアが出したから評価されずそして時代が合わなかった不遇の作品ともいえる。

余談

  • 各所にスクウェアのゲームソフトの小ネタが散りばめられている。FFシリーズ、チョコボシリーズ、『ゼノギアス』、そしてなんと『ライブ・ア・ライブ』まで。
    • 鳴海健一の説明については「食いしん坊かどうかは…」といった表記まで(鳴海健一役は山下真司氏。同氏は「食いしん坊万歳」という番組に出演していた)。
+ 本作の基幹となる設定は、この3年前に世に出てベストセラーとなった井上夢人のホラー小説「ダレカガナカニイル…」との類似性がしばしば指摘されている
  • 以下は本作との共通点。
    • 主人公の頭の中に記憶喪失のもう1人の人格が現れ、会話できる(ただし男女は逆である)。
    • その別人格と会話する為、催眠術を用いる。
    • ヒロインの名字が同じ「葉山」。
  • スタッフロールや攻略本などに井上の名は一切出てこないので、原作者や協力者というわけではないようだ。
  • この設定の酷似から、小説を知る人だけがニヤリとできる元ネタとして採用したオマージュの可能性もあるが、天下のスクウェアがそんなあからさまなパクリをやるだろうか…? と、何とも謎な作品となっている。
    • ただし類似しているのは基本設定のみで、ストーリー展開そのものは小説とは大きく異なっている。設定の類似のみで盗作扱いすることは著作権上からも浅慮(アイデアや設定の類似性は規制の対象にならない)。
    • また、本作の没シナリオとして「閃光のハイウェイ」という名のシナリオがあったことが攻略本で語られている。没になった理由は撮影が難しかったとのことだが、タイトルが某作品にそっくりのため、開発スタッフがパロディに関して少し悪乗りしていた可能性もある。
    • 付記しておくが、当時スクウェアは『チョコボの不思議なダンジョン』など、他社のヒット作のスタッフを連れてきて似たようなゲームを作らせるという事を度々行っていた…。