アナザー・マインド

【あなざーまいんど】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 プレイステーション
発売元 スクウェア
発売日 1998年11月12日
定価 5,800円
判定 なし


概要

3DCGで名を上げたスクウェアが、発売当時ユーザーに評価される事の少なかった実写をあえて採用したアドベンチャーゲーム。ファンタジーがさも現実世界で起きているように見せている。

ストーリー

主人公はある日、意識だけの状態になって、交通事故で昏睡状態に陥っていた女子高生の葉山瞳(デフォルト名)の意識の中で目覚める。
主人公は自分の名前「真野俊平(デフォルト名)」以外のことは思い出せず、記憶喪失になっていた。
昏睡から回復した瞳は自分の中にいる主人公の存在に戸惑いつつも協力する事になり、彼女の周りで起こる不可解な事件を共に解決していく。
簡潔に言えば、ヒロインの身体の中に居る意識だけの主人公が、ヒロインと一心同体で謎を追っていく、という内容。
主人公に体の操縦権は一切無く、ヒロインに指示を出してストーリーを進めていくことになる。

操作系統

  • つっこみシステム」で、ゲームキャラとコミュニケーションを取っている感覚を味わえる。
    • なお、このシステムは正式名。つっこむ個所はあらかじめ決まっているが、つっこむかはプレイヤーが決める。
  • アドベンチャーにありがちな選択肢も、用意された文法を組み立てて、キャラに指示する。
    • この「ダイアローグシステム」は、単語を選んで組み立てて文章を作っていくという独特の方式。
      • 例えば、まず「聞く」「知っている」という選択肢が表示され、「聞く」を選ぶと「聞け」「聞くか?」「聞く」「聞かない」などの活用形の選択になる。ここで「聞くか?」を選んだとすると、次は主語として「 瞳は 聞くか?」「 僕は 聞くか?」などの選択になり、さらに「瞳は 黒川に 聞くか?」「瞳は 村井に 聞くか?」など対象を選ぶ…のように次々と選んで文章を完成させる。
  • 瞳との会話によって内部の感情パラメータが変化し、的確なアドバイスをして瞳から信用されていると「信頼度」、優しく接したりなどで好感をもたれると「好感度」、そしてギャグを狙った変な展開ばかりだと「おちゃめ度」が上昇していき、逆の行動で下がっていく(画面に数値は表示されない)。
    • 信頼度が高いと頼られて瞳の方から話しかけてくれたりすんなり指示に従ってくれたりするが、逆に低いと指示通り行動してくれないことがある。
      • ただし信頼度が高くても、セクハラな指示は断固拒否される。

特徴

  • ストーリーは章立て。各章の内容は独立した短編のようになっており、それぞれの章毎に個別のエンディング分岐が存在する。
  • 主人公(プレイヤー)の設定(名前・職業)はストーリー上で固定されているが、好きな名前・職業を付けることが出来る。
    • ストーリー上の名前とプレイヤーが付けた名前とで矛盾が生じると思うが、ストーリー上では無難に消化されている。
    • ちなみに主人公とヒロインの名前をゲーム中の登場人物と同じ名字や名前にすると、その人物の名前が同音異字になるという凝った仕様になっている。しかも一度しか名前の出ない人物などゲーム中の全キャラに適用される。
      • 例えば、村井薫(むらいかおる)という登場人物がいるが、ヒロインに「村井」や「薫」と名づけると、本来の村井の名字や名前が「村居」や「香」に変更されてしまう。写真やムービー中に名刺などで名前が登場するキャラはその場面のカットも変更されるという念の入った凝りよう。

評価点

  • 伊藤かずえ、筧利夫、高知東生、山下真司といった有名な俳優が登場している。
  • 上記のシステムによって会話の組み合わせの自由度はかなり高く、実際に瞳と対話しているような気分になれる。
  • ゲームに慣れていない序盤は、バッド気味のすっきりしないエンディングでもそのまま次の章へ進む事ができる。
    • ただし勿論、各事件をきちんと解決してグッドエンドで進めた方が瞳からの信頼度や好感度は上がる。
  • 隠しパラメータがいくつかありゲーム開始からの選択の積み重ねで瞳やその他の人物からの反応に変化がある。
  • コンフィグで片手だけでプレイできるようにすることも可能。
  • マルチエンディングで章の結末や最終的なエンディングも複数ある。

問題点

  • 会話の組み合わせは豊富だが同じ反応・展開になる組み合わせも多い。
    • 各章途中の展開の分岐はそこそこあるものの結末自体は2,3種類程度。
  • 文章やムービーのスキップができない(ムービーは基本的に短いものばかりだが)。バックログ機能もない。
    • 最終章で、多少トラウマになるかもしれない鬱ムービーが流れる。
  • 登場人物は皆4月なのに夏服を着ている。
    • また第3話に登場する旅館は山の中にあり、夕食は「山の幸」と言われているのに、画面写真には魚やカニばかり写っている。またこちらは3人客なのに、なぜか4人分の料理が置かれている。
  • 物語中の日付が進行すると、メニュー画面での日記や登場人物情報などが更新されるのだが、第3話のみ更新のタイミングがおかしい。
    • まだ知らないはずの人物名が書かれた部屋割表が載ったり、瀕死の重傷を負った人物の「お仕事始められたみたいだし」という紹介文がその重傷を負った翌日に載ったり
      • また、進め方次第ではある人物の書いたポエムを読まずに終わるのだが、読んでも読まなくても「あのポエムは忘れられそうにない」という紹介文が表示される。設定ミスか?
  • 第8章で警備員のポケットにロウソクが入っていた理由が不明。警備員自身も「なんで俺のポケットにロウソクなんか…」と不思議がっている。
    • このゲームは細かいところまで設定が作りこまれているのだが、ここだけやけにご都合主義…というより単純に「謎」である。
  • 最終的なエンディングも数種類あるが、ゲーム中で分岐条件のヒントのようなものはない。
    • 2周目以降でしか見られないエンディングもあるがゲームクリア後にその旨を教えてくれることはない。
  • 最終章でベストエンディングを見るための所謂「ラスボス」とのやりとりが少し難しい。
    • 詳しいネタバレは避けるが、ラスボスとのやりとりにおいて、最後の質問でラスボスの答えを間違わせるように会話を選んでいく(ラスボスを完全に信用させて最後だけ嘘を言う or わざとラスボスに抵抗して最後だけ本当の事を言う)必要がある。
    • 失敗した場合のバッドエンドが非常に後味の悪いものであり、しかもこの結末でもスタッフロールは普通に流れるため、マルチエンドだと気付かずに「オチが最悪のクソゲーだ」と誤解しているレビューが少なくなかった。
+ 終盤のネタバレ注意
  • 特徴の項目でも少し触れたとおり、主人公の名前と職業を自由に設定できるが、それとは別に本来の名前と職業が、固定の設定として存在している。
    • ゲーム開始時に主人公は肉体が存在しない上に記憶喪失であり、暫定的な名前と履歴をプレイヤーが決定する。それに準じてゲームは進み、後に記憶を取り戻して本当の名前と職業が判明するという形であり、ストーリー上は問題のないよう消化されている。しかしストーリー上は問題ないのだが、プレイヤーの心情的には時に大きな問題となりうる。ここで自分を主人公に投影する形で名前と職業を決めたプレイヤーは、終盤で主人公がそれとは大きく異なる人物であると示されてしまうため、場合によっては戸惑いや不快感を覚える。
      • はっきりと言ってしまうと主人公の正体は30代の成人男性であるため、ヒロインの瞳と同世代の高校生に設定していたプレイヤーや、自分の年齢にあわせて設定していた若いプレイヤーは、突然「実はあなたはヒロインの倍生きているおっさんでした」と宣告されることになり、そのショックは計り知れない。
      • ゲーム中の主人公は終始無言のドラクエ型主人公ではなく普通に「しゃべる主人公」ではあるものの、セリフに特に強いキャラ付けはなくプレイヤーが自己投影しやすい構成となっている。(当時の宣伝や解説書でもプレイヤーを主人公とする扱いであった)
    • もちろん、主人公に自己投影して感情移入するかしないかはプレイヤーの判断であり、そもそも移入してたとしても気にならない人もいるため、結局は人それぞれともいえる。「イメージしていた自分の像と正体が実はまったく違う」というどんでん返しを評価する声もある。

総評

バグはなく物語や設定の大きな破綻もない。アドベンチャーとしては上出来といえる。斬新な会話システムや有名俳優を使った実写など意欲的な点も評価できる。しかし、周回プレイ前提のようなゲーム内容でありながらスキップ機能がない、分岐のヒントもないといった不親切さが惜しい。
似たような実写ゲームにはチュンソフトの『』や『428』などがあるが、あちらはサウンドノベルとしての実績があったがスクウェアがADVを製作するのは異例であった(スクウェア自ら認めていた)。当時コンシューマーのADV自体が下火で、実写ゲームへの抵抗も強い時代だった。
スクウェアでなければ作れなかったがスクウェアが出したから評価されずそして時代が合わなかった不遇の作品ともいえる。

余談

  • 各所にスクウェアのゲームソフトの小ネタが散りばめられている。FFシリーズ、チョコボシリーズ、『ゼノギアス』、そしてなんと『ライブ・ア・ライブ』まで。
    • 新聞記事の見出しに「郊外にメテオ」「ブリザラ中毒」「是の義、明日(ゼノギアス)」。FF7・FF8・FFTのキャラが登場する4コマ漫画「サンダラくん」。ニュース番組の名前が「ニュースLIVE And LIVE」(LIVE A LIVE)など。
    • 鳴海健一の説明については「食いしん坊かどうかは…」といった表記まで(鳴海健一役は山下真司氏。同氏は『食いしん坊万歳』という番組に出演していた)。
+ 本作の基幹となる設定は、この3年前に世に出てベストセラーとなった井上夢人のホラー小説「ダレカガナカニイル…」との類似性がしばしば指摘されている
  • 以下は本作との共通点。
    • 主人公の頭の中に記憶喪失のもう1人の人格が現れ、会話できる(ただし男女は逆である)。
    • その別人格と会話する為、催眠術を用いる。
    • ヒロインの名字が同じ「葉山」。
  • スタッフロールや攻略本などに井上の名は一切出てこないので、原作者や協力者というわけではないようだ。
  • この設定の酷似から、小説を知る人だけがニヤリとできる元ネタとして採用したオマージュの可能性もあるが、天下のスクウェアがそんなあからさまなパクリをやるだろうか…? と、何とも謎な作品となっている。
    • ただし類似しているのは基本設定のみで、ストーリー展開そのものは小説とは大きく異なっている。設定の類似のみで盗作扱いすることは著作権上からも浅慮(アイデアや設定の類似性は規制の対象にならない)。
    • また、本作の没シナリオとして「閃光のハイウェイ」という名のシナリオがあったことが攻略本で語られている。没になった理由は撮影が難しかったとのことだが、タイトルが某作品にそっくりのため、開発スタッフがパロディに関して少し悪乗りしていた可能性もある。
    • 付記しておくが、当時スクウェアは『チョコボの不思議なダンジョン』など、他社のヒット作のスタッフを連れてきて似たようなゲームを作らせるという事を度々行っていた…。

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最終更新:2023年03月06日 21:23