【ふろんとみっしょん】
ジャンル | ドラマチックシミュレーションRPG | |
対応機種 | スーパーファミコン | |
メディア | 24MbitROMカートリッジ | |
発売元 | スクウェア | |
開発元 |
スクウェア ジークラフト |
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発売日 | 1995年2月24日 | |
価格 | 11,400円(税抜) | |
判定 | 良作 | |
フロントミッションシリーズリンク |
21世紀初頭、共同体化の波が世界各地に押し寄せる。そして20年余りの時を経て、南北アメリカ大陸が統一された「ニューコンチネント合衆国(U.S.N.)」と、日本、オセアニア、東南アジア諸国による「オシアナ共同連合(O.C.U.)」という二大勢力が誕生し、世界再編に大きな影響力を持つこととなった。
その中で、アクチュエーターを用いた二脚歩行兵器「WAW(ヴァンダー・ヴァーゲン)」が登場し、性能を期待される。そして後にコスト削減のため、機体各部のパーツやコンピューターの換装を可能にした新規格が採用され、"ヴァンツァー"こと「WAP(ヴァンダー・パンツァー)」が実用化された。
2065年。1995年に太平洋上に確認され、隆起が沈静化したばかりの島「ハフマン島」にUSNとOCU両国が入植を開始。やがて豊富な地下資源を巡り、領有権の争いが始まる。
2070年から2年間続いた紛争は、島中央のメール川より東側をUSNが、西側をOCUが統治することで停戦。ハフマンは二大勢力が唯一陸上で国境線を接する緊張地帯となった。
2090年。ハフマン島でUSNとOCUの小競り合いが度々発生し、再び両国間の緊張が高まる。
そんな中、OCU陸軍のヴァンツァー乗りであるロイド・クライブ大尉は、ハフマン島のUSN領ラーカス地区に存在するUSN軍施設の極秘偵察を命じられる。部下であり婚約者でもあるカレン・ミューア少尉らと任務に当たるロイドだったが、待ち伏せしていたUSN軍機の攻撃を受け、カレン機は大破。そして工場は突如爆発し、カレンは行方不明となってしまう。
USNはこの「ラーカス事件」をOCUの策略だと主張。一方のOCUは「事件はUSNの狂言である」と反論し、同時にロイドら事件に関わったパイロット達を「作戦行動中に行方不明」と処理した。両国の主張は平行線をたどり、遂にUSNが戦端を開く。第二次ハフマン紛争の勃発である。
紛争勃発から一年後。軍を追われ、島のヴァンツァー闘技場で日々の糧を得るロイドの元に、OCU軍傭兵部隊「キャニオンクロウ」の指揮官であるオルソン大佐が現れ、ロイドを同隊の隊長にスカウトする。
カレンの消息がつかめるかもしれない、そうオルソンに諭されたロイドは依頼を承諾し、再び戦いに身を投じる決意を固める。
かくしてハフマン島の各地を転戦することになるロイド。カレンを探す戦いの中で彼は、やがてこの紛争に隠された悪夢と、無残な真実を知ることとなる……。
1995年にスクウェアがジークラフトと組んで世に送り出した、それまでの同社のイメージからは想像もつかない、鉄と硝煙の臭いが立ち込めるシミュレーションRPG。
当時としてはマイナーなジャンルだったロボットもののSRPG、それも「自由にパーツを組みかえたロボット兵器による、現代世界の延長線上で描かれるリアル路線のミリタリーSRPG」という異色作だった。
緻密な設定に裏付けられた重厚な世界観、良質なドットグラフィック、天野喜孝デザインの魅力あふれるキャラクター達、下村陽子・松枝賀子による高クオリティの音楽、
そして旧大国と軍需企業の暴走を主軸に据えた、戦場の異常性を熾烈に描き出したストーリーが反響を呼び、約50万本のセールスを記録。後のシリーズの礎を築いた。
略称は「FM」「フロミ」「1ST」。
ゲームはヴァンツァーのカスタマイズや情報収集、ヴァンツァー闘技場への出場が行える「インターミッション」と、敵味方のターン制シミュレーションの「ミッション」が交互に展開され、進行していく。
ミッション
インターミッション
ヴァンツァーのセットアップ
「俺は本当のことを知ってから死にたい。それだけだ」 ――ロイド・クライブ――
そして本作を何よりも名作たらしめた要素が、「トラウマゲー」「鬱ゲー」とも評される衝撃的なストーリー展開である。
ゲームバランスの粗さが気になる作品ではあったが、それ以外の要素は概して高い評価を受け、何より異色の内容と末期に差し掛かろうとしていたSFC市場を考えれば十分なセールスを記録したこともあり、FMシリーズはナンバリングタイトル5作と、幾つかの外伝作品がリリースされるスクウェアの一部門となった。
しかし、後にPSでリリースされた『2nd』はAPシステムの導入によるゲームバランスの改善を図りながらも、プレイを放棄したくなるような膨大なロード時間が、『3rd』はロード問題を解決しシステム関連を更に洗練させたものの、前1作とは異なるロボアニメ的なシナリオ展開が、それぞれ(旧作ファンから)批判を受けることとなった。
FMシリーズは作品ごとの長所と短所がはっきりしている分、各作の信者とアンチの抗争が激しい傾向にある。とりわけ、ハフマン島という架空の島をうまく生かした完成度の高い設定と衝撃的なシナリオ、そしてテンポの良いシステムを併せ持ってデビューした本作は、ある意味、後のシリーズ作品に楔を打ち込んでしまったと言えなくもない。
現在の目で見てもプレイしごたえのある重厚な世界観を体験しない手はない。
また、後の『5 Scars of the War』は本作の第二次ハフマン紛争がストーリーの重要な部分を占めることこともあり、合わせてプレイしてみるのも一興だろう。
ぜひともハフマン島を訪れ、「戦いの歴史」の原典に触れてみてほしい。
「私? 大丈夫よ。私はこの島が好き。ここには20年前の戦争の傷を消し去ってしまうほどの生命力があるもの……」 ――カレン・ミューア――
本作はWSC、PS、DSと、シリーズで最もリメイク回数の多いタイトルである。なお、PS版はゲームアーカイブスで配信されており、PS3とPSP両方でプレイ可能。
移植版はWSC以外はタイトル末尾に『1ST』(1stではない)が追加されて区別されている。
どれも基本的には充分名作の部類には入るが、SFC版のファンからは細部の劣化(*5)が指摘されている。
発売・開発元 | スクウェア・エニックス | |
発売日 | 2003年10月23日 | |
価格 | 3,800円(税抜) | |
レーティング |
CERO:B(12歳以上対象) ※ゲームアーカイブスで付与 |
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配信 |
ゲームアーカイブス 2008年11月12日/600円 |
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判定 | 良作 |
移植に当たり、以下の様な追加・変更要素がある。
PS版をベースに、さらに以下のような要素が追加されている。
一方、不満点としては以下の要素が挙げられる。
本作をより楽しもうとするならば、アスキーから刊行された旧「ファミコン通信」攻略本『フロントミッション公式ガイドブック 上・下巻』の一読を強くお勧めしたい。
当時多かった分冊形態の攻略本の例にもれず、上巻は(最終盤の数ミッションを除いた)各ステージ攻略と豊富なコラム、下巻には設定資料とスタッフインタビュー、最終ミッションの攻略が掲載されている。
特に下巻『Last stand in Huffman』のボリュームは尋常ではない。天野氏のキャラクター原画(モブキャラの顔グラフィックまで!)やイメージイラストに始まり、『マシーネンクリーガー』や『カルネージハート』で知られ、本作ではパブリシティ用模型の制作を担当した横山宏の23ページに渡るフォトストーリーと特別寄稿、フロントミッションの生みの親である土田俊郎と橋本真司両名のユーモラスな対談が続く。
中盤はハフマン島及びヴァンツァー開発史の設定と、最終ミッションの攻略、エンディング後の考察が掲載されている。ゲーム本編では明示されなかった設定(裏設定というより、作品の世界観を作るために考えられた構想というべきか)はミリオタの心をぎっちりとキャッチする。ちなみに、最終ボスに関しては名前が明かされているものの、その顔グラフィックは一見すると真っ黒に塗りつぶされている。しかしじっくり見てみると、それは本来のグラフィックに黒みを強くかけただけであり、うっすらと顔が浮かんでいることが分かる。暗闇から迫るようなその顔は恐怖そのものであると共に、シナリオの異常性を更に強調している。
後半は各ヴァンツァーメーカーごとのパーツ説明と、幾つかのサンプル機体が並ぶ。100には達する全パーツに設定が記されているのは圧巻。サンプル機体も統一メーカー機を組む時に役立つ。
巻末にはおまけとして、やりこみサポートのための豆知識が記されている。ここだけは純粋なゲーム雑誌風の構成となっており、心を和ませる。
作品の作風を反映してか、この頃の攻略本としては派手な装飾や過剰な煽り文句はほとんどない、実に硬派なタッチでまとめられているところもポイントが高い。
肝心の攻略内容があっさり気味なのは少々残念だが、それでも充分役には立つ。
現在は絶版だが、中古店では一冊100~400円程度で取り扱われていることが多い。薄さとは裏腹の充実の内容を、ぜひ我がものにしてほしい。
蛇足だが、同様の企画を行った攻略本がもう一つ存在する。電撃スーパーファミコン(当時)の付録としてついてきた「フロントミッション傭兵マニュアル(File1,2)」である。 こちらはFile1が設定資料集、File2が中盤までの攻略となっているが、File1の巻末には当時のパソコンショップのような「WAPの広告」が煽り文句付きで大量に掲載されていた。 こちらは雑誌付録ということもあり、オークションでもまず見かけないので、万が一見かけた時は入札を検討してはいかがだろうか。