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SELECTION 選ばれし者 - (2015/12/07 (月) 05:40:24) の編集履歴(バックアップ)


SELECTION 選ばれし者

【せれくしょん えらばれしもの】

ジャンル ロールプレイングゲーム
対応機種 ゲームボーイ
発売・開発元 ケムコ(コトブキシステム)
発売日 1989年12月28日
定価 3,000円(税別)
配信 バーチャルコンソール
【3DS】2011年12月7日/400円(税5%込)
判定 ゲームバランスが不安定

概要

  • 魔界塔士Sa・Ga』に続くGBのRPGタイトル第二弾。
  • 平和だった王国が、探求心の強い王により闇の力に支配されてしまう。15歳の誕生日を迎えたハイン王子が、祖国の呪いを解けるのは自分だけだと知り、その為に必要な伝説の剣を求めて東奔西走する……というよくある王道ストーリー。
  • 普通のRPGとは違い、「みる」、「あける」、「たたく」といったコマンドを使いゲームを進めていくアドベンチャー要素が強いのが特徴。
  • このため移動方法もコマンドを選択していきたい方向を指定して移動していく。
    • 移動先のカーソルに●がついている場合は敵が道をふさいでおり、そちらに移動すると戦闘が始まる。
      • 移動せずともアドベンチャーコマンドを実行する毎にエンカウント発生はある
  • 呪いの影響で大多数の国民が森の木に変えられてしまった為、情報収集の多くは「き」に対して「みる」コマンドを実施して得ることになる。

評価点

あまりにも斬新な戦闘システム

  • 本作を語るうえで欠かせないのが独自の戦闘システム。主人公のハイン王子は終始一人旅という『ドラゴンクエスト』と同じ状況なのだが、それに対して敵は最大3体ものグループで登場する。このため常に多勢に無勢という劣勢に陥る……と、思いきや敵が異種族同士だと同士討ちを起こすという仕様があり、異種族同士が同時にエンカウントするとハイン王子か異種族を襲うというあまりにも独自なルールがある。
    • 異種族同士で現れた場合敵サイドは常時メダパニがかかった状態だと思ってもらってよい。
    • 後述の魔法システムも合わさり、敵サイドは同士討ちと自爆が平常運航という非常にカオスな状態になっている。
    • ハイン王子がコムギ(HP回復アイテム)を食べているうちに、勝手に戦闘が終わっているなどよくあることである。
    • ただし、このシステムのおかげでハイン側は異種族がそろっている内に敵に対して態勢を整えることが可能であり、能力強化の魔法で戦闘態勢を整えたり、HP・MP吸収魔法で回復を行ったり、逃げ道を確保したりなど高い戦略性を出すことに成功している。
      • 敵が疲弊しきったところでトドメをさすなど漁夫の利を狙うことが基本だが、防御行動がないのが難点。
      • 効果のない道具を使って無駄行動を行うことで、敵が弱り切るまで傍観することは可能。

妙なテンションのハイン王子。

  • 実父に殺されかけたところを落ち延び、その際に母と祖国を失い親の顔も知らぬまま15年も森の奥に潜み生活をしてきたという暗い過去がある割にあまりにも陽気。
  • 自称しんのゆうしゃせかいいちふこうなしょうねんに似た独特のケムコ節は本作でも健在である。
+ 以下抜粋
  • 道端に空いてある穴に対して「たたく」コマンドを選択すると、(スカッ)「たたけないよー!」と、ノリツッコミを披露する。
  • 穴に対して「あける」コマンドを選択すると「あいているからあなっていうんだろっ!」とツッこまれる。
  • 沼地を「たたく」と全身泥まみれになって激しく後悔する。
  • 扉がブツブツと言っているという状況において、言葉を聞き取れる道具を使ったあとのリアクションが「こんなとびらがいえにあったら、うるさいだろうなぁ」と、扉がしゃべるという状況を怪しむ素振りすら見せない。
  • 一部の宝箱に対して「たたく」を実行すると、すっきりしたという理由でHPが回復する
  • 塔の最上階から見える月を叩くと「はっ!つきをたたこうとせのびをしたらあしをすべらせちゃったよーっ!」と、本気で叩こうとする。
    • この際、塔の最上階から落下して20ポイントのダメージをうける。しんのゆうしゃならまず死神の世話になっているだろう。
      • 勿論ハイン王子もHPが20以下なら力尽きてしまうのだが…。
    • 因みに腐ったジュースを飲んで腹下しを起こしても20ポイントのダメージ。体が強いのかそれとも腹が弱いのかは謎である。
  • 愛をつかさどる魔道士カミュが閉じ込められている塔に入った時の第一声が「あのうつくしいひとがここにいるんだな…むふふっ!」である。
  • 小さな小人の質問に正解するとキスをされるが「やったぁーっ!キスされちゃったぞ!これでがぜんげんきがでてきたぞ!!」と叫びHPが回復する
  • 物語後半で挑む自分の城では、大きくなった時のハイン王子を想像して描かれた肖像画が飾ってあるが、「いまのほうがハンサムだぞ」と自画自賛する。
    • 敵に対してやたらビビリ腰なのもしんのゆうしゃと同じであり、行く手にクーガとスケルトンが戦闘をしているのが見えて「ああっ!ちかづいてくるぞ!!ど、どうしよう」と狼狽える。
      • 因みにクーガとスケルトンをドラクエに置き換えるとスライムとおおがらすが喧嘩をしているようなもの。
  • 探索で不意に現れたとはいえ、「ぎゃあー!」「で、でたーーっ!!」など情けない悲鳴を上げる。

……など、枚挙に暇がないが、こういった一人漫才を楽しむのも本作の醍醐味であり、一人旅という寂しさを微塵も感じさせない。

良質なBGM

  • 初期GB作品にしては曲数が多く使いまわしがない。いずれも雰囲気にあっており評価が高い。
    • ただし一番聴く機会が多い戦闘BGMは1曲のみであり、4小節ぐらいの短さでループしてしまう。

親切設計が多い

  • 移動に面倒なシステムだが、「テレポット」というMP0の移動手段があるのでそこまで気にならない。
  • 全滅してもペナルティが一切ない。
    • ただしHP・MPともLV1初期値の20で復活するため、回復する手間は必要である。

問題点

攻撃魔法の大半が使えない。

  • 本作の攻撃魔法は炎を呼ぶ「ムーフ」竜巻を呼ぶ「フィー」雷を落とす「ザグ」の3種類が基本形としてあるが、基本形の対象は「誰か一人」であり、唱えた本人が巻き込まれることもままある
    • 前述の「敵が自滅する」という理由の大半がこのシステムが原因である。
    • もちろんハイン王子にも起こりうる。LV2で念願の攻撃魔法「ムーフ」を覚えて、いざ唱えてみたら自分が被弾して死ぬという道は誰もが通ったと思われる。
    • 基本形の上位に「デ系」の魔法があり、こちらは対象が敵一人なので確実に敵を攻撃できるが、デ系を覚えたら対象が安定しない基本形は用済みである。
    • さらに上位の「ボザ系」魔法は念願の全体攻撃魔法なのだが、ボザ系の範囲は「戦場全域」なのでやっぱり詠唱者も巻き込まれる
    • 最上位の「ガル系」魔法の範囲は「敵全体」なのでここにきてようやく安全に全体攻撃ができるが、こうなるとやはり「ボザ系」魔法は用済みとなる。
      • ボザ系はガル系より消費MPが1軽いという点はあるが、これだけのためにダメージを受ける旨味は全くない。

アイテムに対してのヒントが少ない

  • 後述のアイテムしかり「使うことで強敵とも有利に戦える道具」にたいしての説明が全くない。

ゴールドが255Gしか持てない

  • 武器は自動的に強化され防具を買い替える機会は2回しかないものの、消耗品はLvが上がるごとに値上がりするためこの縛りは地味に厄介。LVが高くなるとオオムギや薬草は255Gでは2・3コしか買えないため定期的に買い足す必要があるのは地味に面倒である。

一部の敵があまりに強すぎる

  • 真っ先に上がるのはマーテルの領域で必ず戦うことになる「スラッグ」という敵。こいつは「酸を吹き付ける」という特殊攻撃を行うが、順当に進めて来たら一発で即死するような威力。ダメージ幅が大きいので運が良ければ何とかなるが、運が悪ければ相当鍛えていても本当にどうにもならないので、ダメージが最低値でとどまることをただ祈るしかない。
  • 終盤で戦う「ドルイド」という敵は本作屈指のトラウマモンスターとして語り草である。まず守備力が異常に高く、順当に進めてきたのでは最強の剣でも全然ダメージが与えられない。このため魔法に頼りたくなるが、フィー系を無効化しムーフ系とザグ系は反射するありさま。しかもドルイドサイドはゲトラフ(HP吸収)デザグ・デフィーという敵を確実に攻撃できる魔法で苛烈に攻めてくるため自滅することが絶対にないうえ火力が尋常じゃないので悠長にステータス強化も低下も行うことはできない。トドメをさすように行動力が高いため逃げにくく同種族2体で出現することが多いので同士討ちすらしないという全く隙がない凶悪モンスター。

ボスは雑魚に輪をかけて激強

  • 中盤で戦う沼の主「マッド」は守備力が高いうえ、中盤において最強の攻撃魔法「トルネ」と「ガルトルネ」を連発してくる。
    • キーアイテムの一つで呪文は封じることができるが、成功率が50%なので非常に運任せの戦いを強いられる。
  • サファイアを守護する「イエティ」は「吹雪」でこちらの行動力を落としつつ攻撃をしてくる。
    • 威力が非常に高いうえ行動力が落とされるため後手に回らざるを得なくなるので回復もままならず殺されることが多い。
    • そもそもよほど鍛えててもダメージが最低値付近で安定していても2発は耐えられないほど超威力でどうにもならない。
    • しかも特殊行動なので封じる手すらない。突破方法としては吹雪が来ないことを祈るしかないという運ゲーである。
  • 長い地下道を抜けた先の城に鎮座する実父「ヘネシー王」
    • 守備力が異常に高く、最高レベルでもまともなダメージが期待できないうえすべての魔法を反射してくるうえヘネシー王は最強魔法の「ガルトルネ」と「ガルグミー」で容赦なく責め立ててくる。ドルイドを筆頭に強敵が犇めく長い長い道中を抜けた先で待ち受ける攻撃も魔法も効かないボスに圧倒的に倒され強制送還されるという光景に心をへし折られたユーザーは数知れない…。
+ ネタバレ
  • 実は「きいろいミ」というアイテムで固定ダメージを与えることができるので、これを使い続けるのが攻略方法だがノーヒントなので気づかないユーザーのほうが多い。
  • さらに「マタンゴのほうし」という道具を使えば一定確率で眠らせることが可能なので、LV20代での突破も可能ではある。
  • したがってヘネシー王の攻略方法は胞子でトリップした親父に謎の実を与え続けて倒すという凄まじくシュールな展開になる。
  • 一方でラスボスは驚くほど弱い。はっきり言って道中のドルイドのほうが強いぐらいに弱いありさま。

総評

荒は目立つものの、大きなバグもなく作りこまれた世界観とユニークなテキストで飽きさせない作りであり、よくまとまった作品にしあがっている。
惜しむらくは2週間前にGB初のRPG作品として世に出た『SaGa』に完全に埋もれてしまったことだろう。
こちらが先に発売されていたらGBのRPGの礎になっていた……かもしれない。