宇宙戦艦ヤマト 遥かなる星イスカンダル

【うちゅうせんかんやまと はるかなるほしいすかんだる】

ジャンル ウォー・シミュレーション
対応機種 プレイステーション
発売元 バンダイ
開発元 ベック、エヌケーシステム
発売日 1999年2月4日
定価 6,800円
プレイ人数 1人
廉価版 バンダイ・ザ・ベスト:2001年6月21日(2,940円)
判定 なし
ポイント 非常に優れた原作再現や製作サイドのこだわりが光る
一方、原作再現度を追求しすぎた結果ゲームバランスにやや難あり


概要

無限に広がる大宇宙…。

宇宙戦艦ヤマトの目的地は遥か彼方、大マゼラン星雲にある惑星イスカンダル。

滅亡に瀕した地球人類を救うため、万難を排してでも、放射能除去装置・コスモクリーナーDを受領しに行かなければならないのだ。

直線航路は往路14万8000光年、計29万6000光年をわずか1年で飛ばなくてはならない。

時に西暦2199年…今、ヤマトの冒険が始まろうとしている。

(公式設定資料集より)

  • 1974年より放送され、高い人気を博したSFアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(以下「原作」)を題材としたウォー・シミュレーションゲーム。
    • 人類滅亡まで1年に迫った地球を救うため、宇宙戦艦ヤマトは謎の異星人「ガミラス」の妨害を乗り越えながら大マゼラン星雲の惑星イスカンダルを目指し、女王スターシアから放射能除去装置を受け取り地球を救うことが目的となる。
    • ヤマトを航行させる航海パート、ガミラスなどの敵艦隊と交戦する艦隊戦パート、乗組員が直接敵基地などに乗り込み破壊工作などを行う白兵戦パートが存在する。
  • 基本はイスカンダルを目指す航海パートを操作することになる。
    • ヘクス(六角形のマス)で構成された広大な宇宙のマップが9ステージにわたって登場しており、14万8000光年の旅を感じさせてくれるものとなっている。
    • マップには「恒星」と「惑星」のほか、行く手を阻む「アステロイド」、レーダーが効かなくなる「星間ガス」、ガミラスが妨害のために設置し、接触すると即死する「バリアー」といったヘクスが存在する。
    • ただ一本道にイスカンダルを目指すだけではなく、資源探索のために惑星を探査したり、スターシアが送り出したカプセルを回収してヤマトの強化を図ったりと探索要素が多分に含まれているのも特徴。イベント等もかなり細かく配置されている。
    • 航海パートで使用可能な特殊コマンドとして、若干波動エンジンを損傷するものの短時間で長いヘクスを移動出来る「ワープ」、1ステージにつき3回までしか使えないが、直線3ヘクスの敵を一瞬で殲滅する「波動砲」が存在する。またセーブ・ロードも航海パートでしか出来ない(一部イベント前にセーブ出来る場合もある)。
+ 全9ステージの紹介
  • 太陽系「冥王星基地決戦」
    • 原作における第3話~第10話を再現(第1・2話はヤマト発進前の物語なのでプロローグイベントとして語られる)。
    • 地球から旅立ち、火星・木星・土星と原作で通過した惑星をめぐりながらガミラス帝国冥王星基地の撃破を目指す。ちなみに天王星や海王星に寄り道することも出来る。
    • 序盤であり敵艦隊は強くないが、白兵戦が3戦もある上にいずれも意外と難しい。特に土星タイタンでの戦いはかなりの難所である。
  • アルファ・ケンタウリ宙域「外宇宙の苦難」
    • 原作における第11話を再現し、以後オリジナル展開を一時挟む。
    • 地球から最も近い恒星・ケンタウロス座アルファ星に近い宙域をモデルとした宙域。進路左側はアステロイドが多く迷路のような構成となっており、右側はアルファ・ケンタウリ星系を中心とした開けた宙域となっている。
    • 冒頭部で原作の「デスラー機雷」のイベントが発生する(今作ではこの呼称は登場しないが)。
  • オリオン宙域「銀河系脱出」
    • 前半部分はオリジナル。後半は原作第12話を再現している。
    • オリオン座α星の通過を目指す宙域。最初のアステロイド迷路では本作オリジナルキャラクターであるコルサック率いるガミラス第307哨戒艦隊がヤマトの前に立ちはだかる。オリジナルではあるものの、今作でカットされたガミラス人の捕虜を得る展開(第13話)とは異なった形でガミラス人の地球人との類似性を表現したエピソードである。
    • 後半では原作でも登場したガス生命体との戦い。真っ当に戦っても勝ち目はないが……。
  • 暗黒宙域「時か、命か」
    • 原作第14話を再現した、広大なアステロイドの大迷路。
    • 原作では「オクトパス星団」が大難所として立ちはだかっていたが、本作ではそのオクトパス星団の背後に広がる暗黒物質に包まれた宙域が大難所として控えている。
    • 原作同様、あまりに迷いすぎると古代と島が大喧嘩を始める。
  • 異次元空洞「命懸けの脱出」
    • 原作第15話を再現。マゼラニック・ストリームの中に発生した異次元空間。本空間では波動砲とワープが封印されてしまう。
    • この空間の謎を解くことがまず至上命題となるが、その先にも恐るべき罠が待ち構えている。本作の難所の1つ。
  • エルダーウッド宙域「老いた星団」
    • 本作オリジナル展開で構成された宙域。銀河系ハローの中間に存在し、老いた赤色巨星たちで形成された球状星団である。
    • ほぼオリジナル展開だがイベント密度が濃く、冗長さはあまり感じさせない。終盤では恒星の最期という大宇宙の自然の脅威を見せつけられる展開も。
  • バラン宙域「銀河侵攻作戦指令基地」
    • 原作第17~20話を再現。ドメル将軍率いるバラン星基地との決戦となる。
    • ドメルとの戦いを描いたエピソードを多く再現。マグネトロン・ウェーブ基地ではやはり古代・真田の「たった二人の決死隊」となる。
    • バラン星でも原作同様人工太陽との戦いとなる。人工太陽がヤマトに衝突するのが先か、ヤマトの波動砲が先か……。
  • マゼラン臨海宙域「勇将ドメルとの決着」
    • 原作第21~22話を再現。ドメルとの最終決戦の地となる「七色星団」が控える。
    • ドメルとの決戦状を受け取ることになるが、それに先じて真田がスターシアのカプセルを探索する装置を開発。決戦に向けてこちらも準備を整えていくことが主な目的となる。
    • 七色星団での決戦は原作同様、作中最大の山場となる。
  • マゼラン宙域「遥かなる星」
    • 原作第23~26話を再現。イスカンダルが所在する大マゼラン星雲の宙域である。
    • イスカンダルを目の前にしてガミラスが大防衛線を貼っている。原作ではセリフのみで言及されていた「親衛隊」も実際に登場する。
    • サンザー星系、その第1惑星にイスカンダルがあるが、そのレーダーには「惑星:2」という奇妙な表記が……。
    • とあるヘクスには他のイベントとは隔絶したレベルの超パワーアップが仕込まれているが、隠しイベントであるためか真田が非常にはっちゃけている。パワーアップをほとんど取っていない状態だと最終戦で詰みかねないため、その救済も兼ねているものと思われる。
  • 所定の日数以内に各ステージをクリアしてイスカンダルにたどり着くことに成功し、最後にヤマトに襲いかかる罠を乗り越えると、ヤマトは地球に帰還し見事地球は救われることになる。
  • 赤いヘクスに接触すると艦隊戦パートとなる。
    • 艦隊戦は3D空間で全方向から現れるガミラスの軍艦や艦載機と戦闘を行う。ヤマトも操縦席から移動先を指定したり、特定の敵を追尾するなどして移動しつつ、攻撃して勝利を目指す。
    • 戦闘の進行はリアルタイムだが、コマンド指示時は時間が停止する。
    • PSのスペックの都合上同時に出現する敵は最大3隻、艦載機6機まで。全滅させると増援艦隊がワープして出現する場合もある。
    • 艦隊戦に勝利すると各キャラに対して経験値が得られるが、得られる経験値の倍率は座席で決まっている。キャラがレベルアップすると最大HPが上昇する。
  • 敵として原作に登場したガミラス艦が多数登場。
    • 高速でヤマトの周りを周回しながら攻撃してくる「巡洋艦」(Cruiser)、ヤマトから距離を取り艦載機を多数射出する「宇宙空母」(FlatTop)、高いステータスを持ち積極的に同航戦を仕掛ける「戦艦」(B.Ship)が主に登場。
      稀に「強襲艦」(Charger)が出現し、ヤマトに接舷して白兵戦を仕掛けてくる場合もある(後述)。
    • 艦載機としても「戦闘機」(Fighter)、「爆撃機」(Bomber)、「雷撃機」(Attacker)が登場。いずれも原作のドメル艦隊が用いていたものがモデルとなっている。
    • 同じ艦級でも複数の種類が存在し、グラフィックや性能も細かく差別化されている。
      例えば戦艦でいえば「旗艦級戦艦」「ドメラーズ艦」など、空母で言えば「高速十字空母」「三段空母」など原作でお馴染みの面々が多数登場している。
      また、原作ではセリフで語られたのみの存在であったデスラー親衛隊も「蒼き雷光」という部隊名を得て実際の登場を果たしている。
  • ヤマトの攻撃手段としては「自動砲撃」「手動砲撃」がある。
    • 「自動砲撃」は各武装の射程範囲の中にいる敵を自動で攻撃する。武装4か所まで設定できるが、設定するごとにヤマトのエネルギーゲージ(航行速度)が下がる(解除すれば回復する)。
    • 「手動砲撃」は武装を選択肢、照準を直接操作して攻撃する。航行速度に影響を与えず、連続使用に制限もないのが強み。またそれぞれに武装に発射演出が用意されている(ゲーム内設定でON/OFF可能)。
  • ヤマトの武装は主に弾数無制限主砲・副砲のショックカノン、実弾消費制のミサイル、艦載機撃墜用の対空機銃パルスレーザーの3種。
    • 主砲・副砲は高威力・高弾速だが無誘導、ミサイルは低威力・低弾速だが誘導性能に優れる。対空機銃は対艦載機・ミサイル用の範囲攻撃だがあまり信頼は置けない性能。
  • 艦載機「ブラックタイガー」も最大6機まで出撃させることが可能。いくつかのフォーメーションを設定してヤマトに随伴させることが出来るほか、直接ターゲットを指定して敵艦に直接攻撃に向かわせることが出来る。
    • 古代の配置を変更する必要があるが、専用機「コスモゼロ」も同様に出撃させることが可能。専用機なので1機しか出せない。
    • 艦載機を出撃させている場合、ヤマト以外に艦載機にカメラを注目させることもできる。
  • 戦闘でヤマトが損傷した場合はコマンドで艦内管理席(真田志朗)より指示を出すことによって修理することができる。
    • ヤマトには数多くの武装・装甲の部位が存在するが、64名の工場班クルーを任意に配分して修理を行う。配分によって修理速度は変化する。
  • 主にイベントで白兵戦パートに突入することもある。
    • 原作では単なる艦隊戦のみではなく白兵戦も多く行われたが、本作でも例に漏れず白兵戦パートが用意されている。
      • クリア条件はイベントによって異なるため一言では説明できない。複数に渡るマップを移動しながら攻略することになるが、全体マップは移動済みのマップしか表示されない。ゲーム進行は艦隊戦同様リアルタイム。
    • ヤマトの乗組員は「攻撃兵」「工作兵」「衛生兵」の3種に分類されており、攻撃兵は更にコスモガン・ライフル・マシンガンの3種に分類されている。モブキャラ以外は艦隊戦でレベルアップした最大HPがこちらでも適用される。
      • コスモガン装備は移動速度が速く射程・連射速度は標準的。マシンガン装備は驚異的な連射速度を発揮するが射程が短く遠距離攻撃に弱い。ライフルは射程が非常に長く、異なる高さの敵も狙えるが連射速度が遅く近づかれると弱い。
        敵の攻撃兵も基本的にこの3種のいずれかに分類されているため、基本的には「コスモガン>ライフル>マシンガン>コスモガン…」の三すくみを形成している。が、実際の攻略上はあまり機能していない。
      • 工作兵は敵の機械などを破壊することができるが戦闘能力は皆無。マップによっては攻略に必須である場合も多々あるため、如何に守り抜くかが攻略の肝となる。
      • 衛生兵は回復役。回復能力は高く戦闘不能になった味方も回復することが可能だが、自分自身は回復できない。
      • イベントによってメンバーが固定されている場合も多々あり、実際はセオリー通りにメンバーを編成できない場合も多い。
    • 前述の通り敵に「強襲艦」というものが存在しており、出現は稀ではあるがエンカウントした際にヤマトへの接舷を許すとヤマト艦内での白兵戦となる(接舷前に撃墜した場合は発生しない)。ちなみにヤマト艦内の場合のみ最初から全体マップが表示されている。
    • 白兵戦中でもヤマト側の画面に切り替えることが可能。イベントによっては艦隊戦と同時進行していることもあり、適宜切り替えて戦闘や修理の指示を出す必要がある。
  • SLGでこそあるもののヤマトは単艦で旅をしているため、いわゆる「ユニット」はヤマト艦内の乗組員を操作する形で実装されている。
    • レーダー席に誰も居なければレーダーは機能しなくなるし、操縦席に誰も居なければ当然ヤマトは動かない。
    • 今作では重複する役割の乗組員は区別されておらず、例えば島と太田であればどちらを操縦席に座らせてもヤマトの性能面での差は特にない。
    • 工場長の真田志朗*1は代替要員がおらず、逆にアナライザーは大半の席に座らせることが出来る代替要員のような立場になっている。
    • また、医務室送りや白兵戦などで座席に誰も座っていない場合、その座席に座っているキャラクターがイベントに登場する場合は代わりにモブキャラがセリフを喋る。
    • 波動砲は古代でしか撃てない、ワープ前には徳川が出力アップ操作を行う必要がある、古代が艦長代理に指名されると沖田が居なくても艦長席のコマンドが使用可能になるなど、原作再現の点でも細かく設定が行われている。

評価点

  • 原作からのリファインの完成度の高さ。
    • 「松本零士作品」としての『宇宙戦艦ヤマト』を追求したリファインが施されている。
      • 原作の監督を務めた松本零士氏やメカデザインを担当した宮武一貴氏、作画監督として増永計介氏らが参加しており、原作アニメの絵柄からより松本零士タッチのキャラクターデザインにリファインされている。
    • アニメシーンは多くはないもののボイス付きであり、原作で印象的だったシーンはきっちり抑えられている。
    • 既に他界している富山敬氏(古代進*2)と当時声優業を休業していた仲村秀生氏(島大介*3)については代役となったが、それ以外のキャラは例えアニメシーンが1カットしかないキャラであっても全てオリジナルキャストの起用が実現している*4
    • デスラー役の伊武雅刀氏は既に声優業からは退いていたため当初難色を示したが、自身の役者キャリアの原点であるデスラーならばとしてオファーに応じている*5
  • 2Dならではの演出を多分に含んでいたアニメのヤマトを3Dで再現するのは不可能であるため、今作のために新たにヤマトの図面が起こされ、それに基づいてヤマトの3Dモデルが起こされた。
  • PS故にゲーム内でのポリゴンモデルはやや粗いものの、ムービーシーンでは精密なデザインを確認できる。
  • ヤマト以外の艦載機・敵艦隊も全て新規にデザインが起こされており、原作に忠実ながらも細部にリファインが施されている。特に艦載機ブラックタイガーは変化が大きい。
  • BGMについても原作のBGMを全てではないものの採用しており、PS内蔵音源レベルではあるものの概ね忠実に再現されている。もちろん主題歌である『宇宙戦艦ヤマト』や『真赤なスカーフ』も歌付きで収録されている。
  • ストーリーについても、原作で少なからず矛盾を生じていた点については整合性を取る形に変更された*6
    また本作のゲームシステム上、戦闘や旅を伴わないために再現が難しいストーリーについてはカットされ、オリジナルストーリーが代わりに挿入されている。
  • 一部は松本氏の漫画版の展開が採用されている箇所がある。
  • 上記の概要に記したゲームシステムについても、多くの面で原作再現度の上昇に寄与している。
    • 特に原作第1作においては必ずしもガミラスとの戦いに終止する内容ではなく、宇宙の旅の様々な側面が描写された作品であったのだが、本作も全体的に探索要素が強めとなっているところにその影響を感じさせる。
    • 同様に艦隊戦だけでなく白兵戦も多々行われた作品である原作を踏まえ、白兵戦のシチュエーションも多数用意されたことは特筆すべきだろう。
    • 一部カットされたエピソードも存在するが、カットされたエピソードについては本作のゲームシステム上ではただの長いイベントにしかならないものが多く、ゲーム的にはやむを得ないと思われるもの。また、全体の流れに影響がないエピソードが選ばれており、ストーリー上の矛盾もこれといって生じていない。
    • 新規追加のエピソードについても「戦闘を交えての地球人とガミラス人の類似性」「未知の宇宙という大自然の脅威」などといった内容であり、原作の空気を極力壊さないように配慮された内容となっている。

賛否両論点

  • 「艦底部の武装が薄い」「こんなこともあろうかと」*7といったファンの間で広まっていたネタを公式で回収してしまったことについては内輪ノリと捉えられなくもない。
    • ただし、実際の所ファンから不評を買っているということはなく、本作のプロデューサーもヤマトファンを公言しているだけあり無理のある設定の導入は見られない。あくまで本作からヤマトを知った人が違和感を感じるかもしれない、という程度のことである。

問題点

全体的な難易度バランスにやや難がある

  • 探索パートについては、マップ上の全ての惑星やアステロイドの行き止まりを一通り回ってやっと日程がギリギリになる程度には余裕が持たれている。
    • これについては開発サイドから「本作とPSを一緒に買ってくれるプレイヤーが多くいることに配慮した」とコメントしており、意図的な調整であることが明かされている。
  • 艦隊戦パートについても、かなり難易度が低い。
    • ヤマト・ガミラス側問わず艦上方に武装が集中しているという原作の設定を忠実に再現した結果、敵の下を取って攻撃すればほぼ安全という有様になっており、これを活用すると艦隊戦で苦戦することはほぼなくなる。
      • ちなみに作中でも沖田艦長が「ヤマトは艦底部の装備が薄い」と明言するイベントがあり、攻略法をプレイヤーに気づかせてくれるようにしつつ、ファンにとっては長年抱えていたツッコミが公認作品で実現することとなってしまった。
    • また、近くの敵をプレイヤー操作で砲撃する「手動砲撃」が非常に強力。というのも、今作のエネルギーゲージはあくまで巡航速度の表記であり、攻撃によって消耗するものではない。
      そのため照準する手間があるとはいえリキャストなしで無限に撃てる反則的な性能を誇り、主砲を連打しているだけで大抵の敵艦は沈めることが出来る。
    • また真田志朗率いる技術班の修理・生産の速度も驚異的であり、64人をフルで振り分ければ真田の体力が続く限り大抵の場合回復が追いつくほどである。真田の驚異的な技術力は原作ファンから散々ネタにされており、本作中のイベントでも拾われていることからこれも一種の原作再現と取れなくもない
    • しかし例外としてガミラス星内部での決戦はヤマトが超磁力放射装置に捕獲され回転しか出来ない状況で戦わなければならないため、手動砲撃を使っても苦戦は免れない。もっとも、最終マップにはとんでもない性能のパワーアップがあるため詰むことはないのだが。
  • 一方、白兵戦パートは少々難易度が高い。
    • まず大前提としてユニットを移動して配置するSLGである。そのためアクションゲーム的な攻略は一切通用せず、攻略手順から外れると途端に難易度が高くなる。
    • 攻撃兵は3種存在しているが、三すくみを優先するよりまとめて全員進軍させるほうがはるかに安定する。ゲーム内のチュートリアルどおりに三すくみを意識して配置すると却って手数が足りず、各個撃破されてしまうことが多々あるからである。
    • 序盤の土星・衛星タイタンの白兵戦は特に難易度が高く、コスモガン装備の古代進、回復担当の森雪、工作兵のアナライザーの3名だけで切り抜けなければならない。全体的に難易度が低い本作において大きな山場の1つとなっている。
    • オリオン宙域・コルサック艦白兵戦は「5人以下でなければ即座に自爆する」と宣言され、実際に6人で突入すると即ゲームオーバーになる。
      • 余談だが人間ではないアナライザーが混ざっていてもアウトであり、わざわざ専用のセリフが用意されている
  • ゲーム全体を通してロードが非常に長い。
    • イベント開始時、艦隊戦・白兵戦切り替え時などのたびに数十秒のロードが入る。
    • 特に本作は白兵戦中にも艦隊戦に切り替えて修理指示を出さないとヤマトにダメージが蓄積されていくシチュエーションが多々あり、切り替えるたびに長いロードが入るのでかなりのストレスになる。
    • ワープや波動砲発射時の演出でもロードが入るため、ゲーム内時間短縮の目的とはいえ実際のプレイ時間は長くなってしまうこともしばしば(特にワープ。波動砲は戦闘をカットできるので短くなることが多い)。
    • ロードを抜きにしても、ムービーこそ多くないもののイベントシーン自体は多くスキップも不可能。艦隊戦のゲームスピードの遅さも相まって全体的なゲームテンポは悪い。

総評

ストーリー・航海・艦隊戦・白兵戦と原作の見どころはほぼ完璧に抑えており、全体に渡る原作愛の存在は本物である。
ゲームとしては粗が多く良作レベルと呼ぶには難があるものの、原作のファンであれば十分価値がある作品だろう。

余談

  • 本作には後期ロットの存在が確認されており、初期ロットに存在していた一部の誤植が修正されていることが確認されている。
    • 初期ロットの誤植の中には、ゲーム開始直後に表示される本作の年代が「2119年」と表記されているというとんでもない誤植がある。誰も気づかなかったのだろうか……。
  • 本作の攻略本は数種出ているが、ローカス発売の『ビジュアルファンブック』は原作アニメの画像も満載というサービス満点の内容となっており、本作のみならず原作の理解にも一役買える逸品である。
  • 本作段階ではまだ原作の再現という域を超えていないものの、次回作『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』以降は原作における矛盾点を鋭く修正し、更に一部のストーリー展開を大胆に改変する姿勢が際立つようになり、より松本零士色が強い作品となっていく。一種のリメイク作品として総じて評価は高い。
    • 後に長くゲームシリーズが続くことになったのも、本作が約25万本の売上を記録し商業的に十分な成功を収めたことも大きかっただろう。
  • 後の『さらば』発売後に本作のファンディスクとして『宇宙戦艦ヤマト 英雄の奇跡』(PS、2000年9月28日発売、2800円)が発売されており、本作のイベントシーンを一通り収録し、本作及び『さらば』の各シーンごとのセーブデータ、設定資料などが満載されている。
    • 更に松本氏執筆のサイドストーリー『永遠のジュラ』を『さらば』のゲームシステムで再現したものが付属している。
    • これらは基本的にファンディスクの域を出ない作品だが、シリーズのファンであれば入手する価値は十分あるだろう。
  • 本作のメイン開発である株式会社ベック*8は1992年にもゲームボーイ向けに『宇宙戦艦ヤマト』を開発・発売している。
    • 本作のスタッフは92年版の開発にはほぼ関わっていない模様。設定資料集の薮崎久也プロデューサーへのインタビューでも「本作の開発に影響を与えかねないので、ほぼ見ていない」と言及している。
  • 本作のスタッフの一部は後に2012年から制作された原作のリメイク『宇宙戦艦ヤマト2199』にも参加している。本作からの影響も一部確認されており、青く塗られた艦体が特徴の親衛隊や、駆逐型デストロイヤー艦(『2199』では「デストリア級重巡洋艦」)を始めとする小型ガミラス艦の艦級が「巡洋艦」と設定されている点などが挙げられる。
    • 原作では艦名は設定されていたが艦級などの設定は曖昧であり、当時の設定資料集などでも不統一差が顕著だった。そのあたりの設定をゲーム化に当たって整理したのが本作であったと言える。
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最終更新:2022年05月11日 19:26

*1 原作では基本的に「真田志郎」だったが一部で表記揺れがあり、今作以降のPS・PS2ゲームでは「真田志朗」で統一されている。

*2 本作では山寺宏一氏が担当。以降ゲーム版はもちろん、アニメシリーズの続編である『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』でも担当した。

*3 本作ではささきいさお氏が担当。ささき氏は『宇宙戦艦ヤマト 完結編』で仲村氏が一部収録できなかったシーンの代役を演じており、本作でも引き続き担当した形となる。

*4 厳密にはスターシアも平井道子女史から上田みゆき女史に交代しているが、こちらは原作アニメシリーズの続編である『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』の時点で既に交代が行われていた。

*5 このため、次回作『さらば』以降では原作で兼役していた藤堂平九郎(地球防衛軍司令長官)については代役となっている。

*6 例として、冥王星基地のガミラス人が地球人と同じ肌色をしていた原作に対し、今作では中盤以降のガミラス人と同様青色の肌に統一されている。

*7 アイデアや新兵器の開発などで幾度となくヤマトのピンチを救った真田志郎の名言として伝わっているセリフだが、実はこのセリフそのものを発したことはアニメシリーズ通しても1度もない。似たセリフについても1度きりであり、情報共有手段が限られていた昭和の時代にいつしか生まれ、他作品の科学者キャラと混同されながら浸透してしまった二次創作的な設定であると言われている。

*8 株式会社バンダイの子会社で、キャラクターゲームの開発を担っていた会社。現在はバンプレストと統合し「株式会社B.B.スタジオ」として主に『スーパーロボット大戦』シリーズを手がけている。