タクティクスオウガ リボーン

【たくてぃくすおうが りぼーん】

ジャンル シミュレーションRPG


対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション5
プレイステーション4
Windows(Steam)
発売・開発元 スクウェア・エニックス
発売日 2022年11月11日
定価 通常版(パッケージ): 5,480円
デジタルプレミアムエディション: 8,780円
コレクターズエディション: 22,000円
判定 なし
ポイント フルボイス化と楽曲再アレンジで再リメイク
追加要素に加えてゲームシステムが再び一新
オウガバトルサーガ


概要

SFCの名作SRPG『タクティクスオウガ』がPSP版リメイク『運命の輪』を経て再リメイク。
SFC版から中核スタッフの松野泰己氏がゲームシステム調整を、崎元仁氏が音楽アレンジを担当。


ゲームシステム

  • PSP版をベースとし、SFC版とPSP版両方を参照しながら作り直した。
  • クラスレベル制からSFC版のような一般的なユニットごとのレベル制に戻る
  • 消耗品アイテム・呪文書も個々のユニットの装備スロットを占める装備に
    • 同時に扱えるアイテム・魔法は最大4つに限られる。
    • 呪文書は魔法が使用できないクラスによる消費ができなくなったかわりに、一戦ごとに他人に使いまわせるというSFC版での扱いに戻った。
      • 新たな消耗品として負傷状態のアンデッドを除霊可能な「聖水」が登場。PSP版で使われていた、呪文書を消費して除霊する対アンデッド戦術の代替手段となっている。
  • TPの概念は廃止
    • 各種スキルは必殺技同様にMPを消費して行使し攻撃などを行う「アクションスキル」、常時発動し主に自身のスペック強化を行う「サポートスキル」、コストフリーで順番に回った時確率的に発動し様々な効果を及ぼす「オートスキル」へとそれぞれ役割ごとに分類され生まれ変わった。
  • 「ボーナスタスク」
    • 一戦ごとに課せられた課題を達成することで報酬を得られる。
      • 報酬は主に追加の資金や消耗品だが、一部の戦闘では希少なアイテムが設定されている。
  • 新戦場システム「バフカード」
    • ユニットターンごとに戦場のランダムなマスからポップアップ・オブジェクトを壊すなどで出現し、ユニットがマスに移動することで取得しその戦闘中に限り高い強化効果を得られる。
      • 攻撃力の強化やスキルの発動率、MP回復速度上昇など、有用な内容しかなく各種効果は複数枚重複するので取れば取るだけ得。ただし敵軍も取得できる。
      • 1ユニットの最大所持数は4枚で、それ以上取得すると一番古いものと入れ替わる。所持しているバフカードを全て消去する「リセットカード」もある。
  • 装備カテゴリー「レリック」
    • このカテゴリーの装備は付与される攻撃属性値・エレメント属性値・種族値等が一定の範囲値からランダムに決められており、同じ品同士で合成することでその3つの値が装備ごとに決められた値まで上昇していくもの。
    • ほとんどはエンドコンテンツにあたるMAPでの入手装備へ割り当てられており、メインシナリオ中で入手できるものはごくわずか。
  • 新ドーピングアイテム「チャーム」
    • 主に死者の宮殿でのタスク達成で得られる。MP以外のステータスの底上げとユニットのエレメント変更などの品がある。
      • 他作品で例えるなら『ドラゴンクエスト』シリーズにおける「~の種」のようなものである。
    • なお、紛らわしいがSFC/PSP版にもあった魅了(強制的に同士討ちさせる)の状態異常を誘発する魔法の名称でもあるため若干ややこしい。
  • 演習
    • SFCのトレーニングに準じてマップ上のどこからも行えるが、内訳は自由に引き起こせる雑魚戦。
    • なおランダムエンカウントは一切なくなった。PSP版ではエンカウントしていても戦闘を拒否できたし、それらをより便利に統合したものといえる。SFC版のトレーニングのような自軍同士での戦いは復活せずと惜しむ声もあったが…

評価点

  • 音響面
    • ほぼすべてのセリフがキャスティングされ、マップ上で戦うユニットにやられボイスが追加。
      • 前野智昭氏やLynn氏、内田直哉氏などなど、多くのファンを擁する名優たちの熱演を楽しめる。
    • 楽曲も数曲が新作され、既存の曲もほとんどがアレンジを施された。
  • 重要キャラクターの顔グラフィック追加
    • 重要な役割を持ちながらも汎用ユニットの顔グラフィックを流用されていた「ディダーロ」と「グアチャロ」に専用グラフィックが追加され、重要キャラであることが一目でわかるようになった。
  • キャラクターのカスタマイズ性が向上
    • スキルはユニットごと最大4つに限定され、PSP版のような死にスキル・無味無臭なパラメータアップスキルも取り除かれ、ユニットにフレーバーを与えるスキルをつけて個性を出しやすくなった。
    • 『運命の輪』で一時廃止されていたユニットのエレメント(属性)のシステムが復活。オリジナル版になかった氷・雷・光・闇が追加され、さらにこれらをチャームによって後天的に変化させることができるようになった。
    • 説得で勧誘したユニットにも自由に名前を付けることができるようになった。
  • 序盤からクラスの役割分担を楽しめる
    • 一般のSRPGでは当たり前だが、PSP版ではどういうわけか2クラス縛りすることでレベルが敵を上回って圧倒でき、クラスを多く使えば使うほど苦戦を強いられる仕様だった。本作はレベル制をSFC版に寄せたことで、ゲーム序盤から1人1クラスで特に問題なくなった。
    • スキル習得にコストが要らなくなるのでクラスの特性は就いた瞬間から引き出せるようになった。唯一「武器学」は育成が必要だが、これもPSP版と比較するとかなり早く育つ。
      • 武器学スキルは攻撃魔法の使用でも上昇するようになっており、杖や魔道書などを装備した後衛ユニットが直接攻撃する機会に恵まれずとも武器学育成に支障が少ないようになっている。
    • SFC版にもPSP版にも猛威を振るった弓弩類武器は大きく弱体化され、ダメージ目的では到底期待できなくなった。アーチャーのスキル「イーグルアイ」(自身含む周囲2マス内の味方の弓弩命中率と状態異常付加率が100%に)で沈黙状態ばらまき・レア装備「ジィルガセット」などで辛うじて使い道を見いだせる程度。
    • 同様にPSP版で強い戦術の一つとされている、「アイテムスリング」を利用して消耗品を大量消費する戦法は健在だが、消耗品の所持制限のほかに「アイテムスリング」が可能なクラスはビーストテイマーなど極一部のクラスとなり大きく制限がかかった。
      • 一方で今作では回復はもちろん、消耗品によるデバフがかなり強い効果になっており、モンスターの強化もできるビーストテイマーは支援クラスとしての立場を大きく向上させている。
  • スキル、魔法の見直しにより、使い勝手が大幅に上昇したクラスが多数存在する。
    • 顕著なのは、「ニンジャ」「ソードマスター」「ネクロマンサー」や「ディーバ」など、「運命の輪」にて「触媒」と呼ばれるアイテムを必要とした固有能力を持つクラスたち。気軽に忍術や武士舞、死霊術、歌舞音曲を使えるようになったため、非常に使いやすくなった。
      • 竜言語魔法も同様だが、性能は全体攻撃であったSFC版ではなく「運命の輪」基準なことと、似たような用途でより威力のある「禁呪」よりも入手が後になりやすいこともあり、除霊も同時にできる光属性のもの以外は影が薄め。
    • また、いくつかのスキルがオート発動するようになり、この恩恵が強い一部のモンスタークラスや、「ホワイトナイト」、「ルーンフェンサー」も大きく強化されたクラスと言える。
    • デニムの専用クラスである「ロード」も、レベルを上げたうえで他の職業にクラスチェンジすれば数多くのスキルが使えるようになるため、重宝する。カチュアの専用クラス「プリンセス」も、光属性の召喚魔法「ウィスプライト」を使えるようになり、使い勝手が大幅に上昇した。
  • 戦闘処理の高速化オプション
    • これも近年のSRPGでよく見られる機能である。
    • 余談だが、PSP版ですでに没機能として存在しており、チートコードで有効化できた。
  • レベル上昇システムの改善
    • 本作のモデルとなった『運命の輪』はクラスごとにレベルが設定されており、育成が歪かつ困難という問題があった。本作は、前述したとおりユニットごとのレベル管理に戻ったため、育成がしやすくなった。
    • 演習でレベルキャップを超過した分の経験値は、経験値上昇のチャームとしてある程度還元されるため、低レベルユニットを育成する労力が緩和されている。
  • アイテム合成の改善
    • MMORPGチックな失敗判定がなくなり、一度に複数個作れるようになった。
  • 忠誠度が上げやすくなった
    • 本作では武器学を上げると、それに応じて忠誠度も上昇する。これにより、カオスルートからニュートラルルートに進んだ場合忠誠度が激減するアロセールも、その後のリカバリーがやりやすくなっている。
  • すべての追加要素が最初から実装されている
    • 本作自体の定価が安めであるにもかかわらず、『運命の輪』でのダウンロードコンテンツもすべて搭載されている。
      • 当たり前と言えば当たり前ではあるが、コストパフォーマンスが優れているという点はやはりファンから歓迎されている。

賛否両論点

  • 相変わらず存在する突出して強力な要素・戦術
    • 入手がシナリオ後半とはいえ、格闘武器の「ヴァイナテーヤ」は取得しやすさ・パラメータ・使用効果・格闘必殺技をひっくるめて異彩を放ち、レリック含めかなりの武器を端へ追いやってしまう。
    • 固有クラス「ホワイトナイト」は格闘武器を使えるだけでなく、ぶっ壊れになった専用オートスキル「ベロシティチェンジ」*1を持ち、元々強かったPSP版から更に強化された。自身の行動は阻害しない上に確率発動とはいえMPなどの消費もなく、数人が該当クラスへ就けることから他の前衛クラスの地位を脅かす。敢えて欠点を挙げるならクラスWTが遅いことだが、就けるユニットの基礎WTが速いので意外と気にならない。
    • 召喚魔法の威力及び固有クラス「シャーマン」の性能が大幅に強化された。棍武器によって魔法の射程が伸び、強力になったスキルの「瞑想」(自身のMP回復)・「精霊の導き」(精霊魔法の威力上昇)・「エクステンドレンジ」(遠距離攻撃の射程上昇)で恐ろしき殲滅力を誇る。
      • SFC/PSP版でのシャーマンは固有クラスながら使い勝手が悪かったので、この地位向上を歓迎する意見もある。
    • 召喚魔法は汎用クラスが使ってもシャーマンに少し劣るだけなので、早い話が召喚魔法を入手した瞬間に物理攻撃手段は窮地に立たされる。ヴァイナテーヤは使用効果まで召喚魔法になっているのも評価される一因。無論本職の魔法使いよりは弱い。
    • 計算式にほぼ武器学だけが重視される強力投擲武器「爆弾」が敵を倒せるように変更された。
      • 「アイテムスリング」が無いと使いにくいため有効活用できるクラスは限られるが、武器学を可能な限り上昇させて爆弾を連打するとラスボスでも倒せてしまう破壊力を誇る。しかも店売りである。
        威力強化に必要なステータスが武器学だけに等しく、ダメージを上昇させるための強力な武器や防具もさほど必要としないため、エンドコンテンツの探索価値が薄れている。救済措置と取れなくもないが、何も爆弾である必要はないだろう。
    • これらは全てシナリオ後半の要素ではあるのだが、本作が結局ハクスラの域から出ず、安定感・クリア速度的にはどうしても強力な戦術を頼りたくなることに起因している。
  • 槍や弓の使い勝手
    • 槍は射程が2あり、貫通するため通常攻撃でも2体同時攻撃や、反撃を受けない位置からの攻撃などが可能、武器性能や必殺技も強力なものばかりな両手武器、と中盤まではとても使いやすく前衛ユニット全員が槍を持っていても良いほどの性能を誇る。
      • しかし、後半の種から射程が2~3に固定されてしまうので隣接攻撃やカウンターができなくなり突然使いにくくなってしまう。当然終盤のレリックも同様なので槍に頼っていた場合は戦術の急変更を要される。「射程2~3の種類もある」ではダメだったのだろうか…
    • 弓はそれまでの作品で強すぎたため「殲滅役ではなく状態異常メインの援護武器」という調整自体は歓迎されている要素なのだが、魔法クラスを標的にしないと1ダメージしか与えられないような計算式になっておりいくらなんでも極端すぎる。
      • しかも状態異常で狙いたい対象は基本的に後方で支援しているため射程外な事が多く、弓を使うユニットがそれを狙おうとすると前線に出なければならないという矛盾も発生しやすい。
  • 補助魔法の大幅削除
    • 基本6エレメントの魔法は攻撃魔法とオート発動へ変更された*2アタッチで種類統一されており、属性が違うだけで内容の代わり映えは一切ない。
      • 計算式上、魔法攻撃に関しては防御側ユニットの所属エレメントによる相性は関与しない*3ため、行使するユニットの所属エレメントと合わせればいいだけの要素である。
    • 補助系の魔法は有用なものも多いのだが、特定のクラスでしか行使できない種類ばかりかつ、意外とあっさり効果が切れるため結果的にほとんど使わずに進めたプレイヤーも多いだろう。
  • 終盤の召喚魔法ゲー
    • 終盤は近接攻撃をするための行動がハイリスクなことに加え、本作は前述の召喚魔法と「シャーマン」の大幅強化、ホワイトナイトのスキル「ベロシティチェンジ」「ガーディアンフォース」*4がオート確率発動へ変更されたことによって一層強力な戦術と化した。
    • 例として、シャーマンになれるユニット*6を出撃させる他はホワイトナイトに武器も持たせず「シャーマンの近くで待機してオートスキルを発動させるだけ、もしくは回復行動を行う」とし行動順を早めるだけの存在とする方が強力になってしまうなど、見映えの悪い戦術が有力になってしまっている。
      • エンドコンテンツ系で入手できるアイテムやクリア後に加入する「ディーバ」クラスには、MP回復効果のあるものがこれまで同様に用意されているのでより安定するようになる。
    • 前述したように敵側が回復アイテムを使いまくってくる仕様かつ、エンドコンテンツダンジョンは敵のLvがこちらのキャップを余裕で超えている環境のためうかつに近寄れないことから、遠距離から召喚魔法で撃破していくのがベストというバランスなことも原因。
    • 原作・運命の輪共にその傾向はもちろんあったものなことと終盤の敵の強さから批判だけではないのだが、毎作召喚魔法1つで同じ結果を生み出しているのに調整していないと思われても仕方ない。
  • さらに増したクレリックの不遇
    • 本作で大幅に増えたHPやダメージとの兼ね合い調整を忘れたのかは定かではないが、ただでさえ回復量が足りていなかったのにもかかわらず特に変更がなく、単体回復魔法を使う価値がさらに低くなった。範囲回復こそ特権ではあるが、やはり回復量は物足りない。*5
      • 運命の輪から引き続き回復量が2倍になるスキルはあるのだが確率発動になった影響で「回復」という安定さや緊急さを求めた行動とまるでかみ合っていない。
    • 反面、回復アイテムはユニット毎4個までとはなったが十分な数であり、挙句の果てに「これでゴリ押ししてください」と言わんばかりに回復魔法よりも早い段階で高い回復量を誇るアイテムがショップに並ぶ*6ため、運命の輪で強力だったアイテムスリング戦術と大差ない環境になってしまった。
    • 「敵の回復ユニットがストレスになってしまう事への配慮」と言われる事もあるが、それなら敵側の回復ユニット配置を変更すればいいだけの話であるし、システムへ様々な変更を加えてる中敵一般ユニットの配置を一切の違いなく完全再現しないと納得性がないなんてこともないだろう。なんなら敵側もHP回復アイテムをバンバン使ってくるのであまり関係ない。
    • 除霊要素も魔導書使用こそなくなったが、本作から上記「聖水」がショップに安価で通常販売されており、戦闘前MAP確認さえしておけば必要な戦闘だけ持ち込んで行けるため、より汎用性が上がっている。
    • 成長率の関係で中~後半で加入する初期クラスがクレリックである固有ユニットのステータスが低く使いにくいのも相変わらずである。
  • ユニットのバフ行動
    • PSP版のようなユニット特性を度外視した補助魔法の掛け合いはなくなったが、本作は対照的に敵ユニットがステータス異常を付与する魔法をほとんど使ってこない。
    • 殆どのスキルや魔法が相変わらずマスごとの演出かつアニメーションをスキップできず、「攻撃行動ではない演出を一々見るしかない」という本質的問題は依然として残っている。
      原作再現、という説明もなくはないが魔法にはSFCから演出ごと変更されたり、一括演出も存在しているため、効果を受けているユニットに色エフェクトなどで演出くらいできるはずなのだが。
      • 発生時にいちいちカメラが移動し演出の出るバフカードのポップアップをうるさく感じるプレイヤーも少なくなく、高速化があるのにそれを無下にするような要素も追加してしまっている。
  • ユニットのステータス成長
    • 一般クラスによるステータスの成長率差は物理職や魔法職などの方向性さえ同じならそこまで大きくなくなったが、HPとMPの差は大きくLvUP時だけでも成長率の高いクラスにしておくという育成が基本になってしまった。
    • これには問題点にて後述する「命中率/回避率の形骸化」も影響しており、結果的にAGIとAVDのステータスを考慮する必要がなくなってしまっているためでもある。
      • ユニオンレベルの関係もあり演習を絡めて望んだクラスでのLvUP自体は容易だが育成の個性は出しにくい。というか必要なステータスは決まっているので出しても仕方ない。
    • 固定ドロップのない敵ユニットを撃破した時に一定率で基礎ステータスを永続で微量アップさせる「タロットカード」が出現するのは変わらずだが、アイテムとして入手し後に任意使用できる運命の輪方式はチャームへ引き継がれたためか、その戦闘で取得したユニットのステータスが上がるSFC版の仕様に戻った。
      • しかし、ステータス関連は基本運命の輪基準になっているので取得時の上昇量が低く、SFC版・運命の輪双方の良くない面だけが合わさってしまった。
  • エレメント耐性のわかりにくさ
    • 風は氷に弱く、氷は炎に弱いと攻撃する場合の相性自体は比較的わかりやすくなっているのだが、防具で耐性を付けようとするとかなりわかりにくい。
      • 風エレメントキャラが氷に弱いため防具の属性強化で耐性を付ける場合、氷属性を上げても意味がなく、氷のダメージを軽減できる炎の属性を強化する必要がある。
  • 特定防御スキルの強固さ
    • 「ドラゴン」種は受けるダメージを80%カットする「ドラゴンスケイル」、「ナイト」と「ゴーレム」種は90%カットする「ファランクス」「インビシブルロック」という強力な防御スキルを保持している。
    • 敵側にいる場合、除去できるスキルはかなり限られている上に、MP必要とするため必要な時に行使できなかったり行動順調整しないと解除したのにまた発動されたなどになりがち。
    • 力押し一辺倒でクリアができないという意味では悪くなく、ドラゴンに関しては「ドラグーン」、ゴーレムも「ウォーロック」というクラスのスキルで対策が可能なのだが、逆に言えばかなり限られている。
      • 発動率の高い後半は、これらのクラス&スキルを準備しておかないと運よく発動しないターンを待ちながら小さいダメージを重ねるしかなく面倒なシチュエーションも多い。
    • もちろん、自軍側としても効果は強力なのだが、ゲーム上敵側は倒される為の役割であるからこその脅威であるのに対し、プレイヤー側は確率発動ゆえに信頼しにくく敵は固い相手は他に対象がいるなら狙わない傾向にあり意外と活躍しづらい。
  • 自動戦闘の流行
    • 編成を強力にすれば、エンドコンテンツダンジョンにもAIによる操作で対応できるので、高速化オプションとも相まって、自身による操作さえ煩雑に思うプレイヤーが続出。昨今のソーシャルゲームで流行した遊び方は、本作にも当てはまってしまう。ご時世と言えばそれまでかもしれないし、もちろんAI任せでも攻略できるための工夫は評価点だが…
    • コンテンツをクリアできる環境ではあるが、AIはアイテムに行使可能な攻撃魔法効果が付与されているとやたらと使いたがる傾向にあり、見ているとストレスになる部分もある。
      • 前述の補助魔法連打の防止策としてか「歌舞音曲」をAIが使わないようにしているなどの設定がきちんとあるだけに、何か中途半端感がある
  • 3章以降のボスの初期所持バフカード
    • ステージ序盤から高威力な必殺技を連発しての脅威を与えてくる。バランス調整の意味合いもあるが、プレイヤー側はバフカードを初期所持させる手段がなく、不平等に感じやすい。
      • 特に、前述の「ファランクス」持ちボスがスキル発動率UPのカードを初期所持しており、大半の時間常時ダメージが入らないような環境をわざと設定されているので理不尽である。
    • バフカードを排除する方法は「リセットカード」というバフカードをノックバックなどで無理やり取らせるしかなく、カードは基本的に双方の軍の中央ライン付近軸へランダムに出現するようになっているため、遠いか乱戦箇所で運ゲーが発生するかなので戦術や技術介入でどうこうしようのない要素になっている。
    • スタッフの過去作『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』にも戦闘に様々なルールを課すロウカードというシステムに特権を持つ審判役がいたが、そちらにはストーリー上、カードの政治的活用権は主に審判にあり時には味方も使用できる上に世界観の雰囲気を出すにもちょうど良かった。しかし本作のバフカードは世界観上での意味は持たず、なんとも理解に苦しむ。
  • 一騎打ちの難易度が高くなった
    • 原作と同様に、本作でも1対1で戦うイベントがいくつか存在するが、3章以降はその相手も最初からバフカードを所有しており「そのままでは基本的に勝つことが不可能」。
    • そのため、まずはこちらも逃げ回りつつバフカードを揃えないとならず、バトル開始しばらくはバフカードの出現を待ってうろうろ逃げ回ったり、チャリオットで乱数を変えながら有効なカードを集めるという、一騎打ちシーンなのになんとも情けない戦術になる。
    • ファイナルファンタジータクティクス』でのウィーグラフ戦を彷彿とさせる高難度となっているが、あちらはユニットの強さと3連戦目という環境に問題があっただけで、本作のようにゲームシステムで戦術を強要はされていない。

問題点

  • ビジュアルの代わり映えのなさ
    • 数人のNPCキャラの固有モデルと技魔法アイコンの追加を除くと新規の絵がない。PSP版にはちょうど良かった2Dドット絵と3Dエフェクトは原作ユーザーにはある程度懐かしさも相まって受け入れられるかもしれないが、さすがに古臭さが拭えない。
    • 両手剣カテゴリーの武器は誰でも片手で振り回す・必殺技後の足踏み・魔法の単調な動きなどの問題もそのまま。この辺りは原作らしさを残したというよりは、単に過去作から流用していると感じられ手抜きと取れてしまう部分である。
  • 自軍がクラス「ローグ」を使えなくなった
    • 敵専用になり、自軍に引き入れる手段は一切なくなったことで単純に自軍の顔ぶれが汎用男女2人分減っている。
      • 運命の輪での「盗む」スキルは色々と問題があり、撤廃するならローグを残しておく理由がないのはわかるだが、単純に敵専用とするのは若干の手抜きを感じさせる部分だろう。
    • 特に選択クラスが限られるフェアリー・グレムリンの2種族は代わりとなる汎用クラスが用意されているものの、出現してもローグなので勧誘できないという状況が増えてしまった。
  • レアアイテムのランダムドロップ
    • レアアイテムは依然として倒された敵から確率的にドロップし、確実に取るためにはやはりPSP版で知られる「チャリオット回し」、つまりドロップする乱数になるまでチャリオットでのリセマラを余儀なくされる。
    • 本作のチャリオットは称号やトロフィーに縛られなくなったものの、もう1つのセーブロードであるはずのこのシステムにまだ変な使い方を強いているのは感心できない。
  • 戦闘の調整不足
    • 片手剣が運命の輪以上に使いにくい。基本性能が変わらず「両手武器とほぼ変わらない重さで、攻撃力も短剣と大差ない低さ」であることも原因なのだが、本作は基本的に耐える戦いがしにくい仕様のため、「攻撃力はそこそこの代わりにパリィが可能」というバランス的な要素はさほど活きてこない。
      • また、MPの回復を攻撃で行う事が多くなったためカウンター攻撃の有用度が上がり、それを持たない片手武器自体が劣勢になっている事、必殺技も射程1の技しかない上に初期技が消費60と非常に多いので、同じ片手武器でも軽く必殺技が非常に優秀な短剣や片手刀のほうがはっきり言って有用である事などもそれに拍車をかけている。
      • その割に初期装備で持ってくる固有キャラクターが多いので気づかずに縛りプレイ気味なことをしてしまっていたプレイヤーも多いだろう。
    • ユニットの向き等含め命中率/回避率が形骸化してしまっているため、MAPの地形効果などを殆ど気にする必要がなくなり進軍のユニット配置に意味が薄れた上、命中率に関するスキルも殆ど無意味なものとなっている。
    • 上記の関係でステータスのAGI(素早さ)、AVD(回避率)が実質死にステータスで上げる必要性がないので、それらが特徴かつ成長率の高いクラスも結果的に使いにくくなってしまった。*7
    • 原作と比べHPを大きく上げられており、それに伴って攻撃力なども再調整されてはいるのだが、どう考えても「武器学」の攻撃力上昇値部分はそれを考慮されておらず調整漏れしたとしか思えない仕様*8となっており、実質必殺技の使用条件や爆弾の威力にしか関与していないのにスキル枠の1枠を埋めがちなのはいささか疑問と言わざるを得ない。
      • その関係で、終盤に入手が可能になる「武器学」スキルを上昇させられる「ピアス」種の装飾品は要求素材の価値の割に無価値*9なものとなっている。しかも「装備で上昇する武器学分では必殺技使用条件を満たさない」という仕様も邪魔してくる。
    • サポートスキルに状態異常を防ぐものがあるのだが、ほとんど効果がなく1枠埋める価値がない。確率は変化しているのかもしれないが、体感できないほど状態異常にかかる。
    • 結局のところ「バフカード」を楽に取れるか、敵側が取れないかどうかの戦闘にしかならず極端すぎる。
      • よく言えば一筋縄ではいかない戦闘となるが、逆に言えば取ればなんとかなるので調整放棄するためのシステムとも言える。
  • 多くのMP回復アイテムの非売品化
    • 合成でマジックリーフを強化することはできるが、マジックリーフ自体は埋もれた財宝や戦利品で取得しなければならない。SFC版やPSP版では最初から店売り品だっただけに、違和感が残る。
    • こちらに入手制限がかかっているにもかかわらず、敵は潤沢に使ってくるため不公平感も拭えない。
    • あらゆるクラスがMPを消耗するようになったので、スキル「瞑想」を装着可能かどうかがクラスの強弱を決めてしまっており*10、発動するかどうかでそのMAPのクリア可否まで決まる事も。
    • 唯一残った「学者の果実」は最大値の10%回復。ユニットの平均的なMP最大値が約200なので、多くの場合の回復量は技・魔法1回にも満たない20前後。本当にMP回復アイテムがレアになってしまった。
    • 終盤になると、死者の宮殿で獲得できる秘伝書で合成可能な杖*11や、MPを全回復するアイテム「ガラスのカボチャ」、本編クリア後に手に入るクラス「ディーバ」の特殊スキル「情熱のコンガ」*12、サン・ブロンサ遺跡で獲得できる「癒しのアラベスク」*13などを頼れるが、それまでは苦労させられる。
  • ユニオンレベル(レベルキャップ)
    • 敵のレベルを上回ってヌルゲーにならないように、メインストーリー段階によって現在上げられるレベルのキャップを設けている。設定区間の幅が大きすぎて解放前は自軍より上の敵に苦戦し、解放の瞬間から急激に成長するレベルで圧勝となるなど、プレイ感覚や難易度曲線にやや疑問が残る。
      • 本作はキャップに到達していてもボスはもちろん敵軍から受けるダメージが高く、慣れているプレイヤーでも負傷者が出やすい。SFC版とは違い負傷は一定時間内であればアイテムで復帰できるためどんどん活用してくださいという意図なのかもしれないが、SLGは基本的に負傷者を出さないプレイをしたくなるのが大半のプレイヤー感情のためミスマッチである。
    • なおかつ、開放されたタイミングでその上限まで演習で上げることは攻略情報などを見ずともおそらくほとんどのプレイヤーが行うであろう手段であるため、シナリオ進行で自軍の強さが固定されているのとなんら変わらず、実質機能していない。
      • 3章終盤など一部区間においてはよほど特殊なプレイでもしていない限りシナリオ戦闘を進めるだけで途中でレベルキャップに当たり、さらに進めないとキャップ解放されない場面もあるため、演習の存在意義すら疑問視されるものとなってしまっている。
    • レベルキャップはスキルレベルにも適用されるため、武器学スキルを上げて攻撃力を上げたり新たな必殺技を習得したりして突破するという手段も取れなくなっている。
    • SFC版やPSP版と同じように1レベルごとに大きなステータス差がある故の問題は確かにあったため難易度を調整したかったのだとは想定できるが、だったら個々のステージデザインに力を入れて、キャップを細かく解放させるなどの方法はあったのではないだろうか。
  • エンドコンテンツダンジョンでのレベルシンク・装備効果アジャスト
    • 主にクリア後で挑み続ける「死者の宮殿」の道中、プレイヤー軍のユニットはレベル40を越えればステータスが40基準に抑えられ、レア装備も基礎性能が高ければ高いほど効果の下方修正幅が大きい。収集したプレイヤーに徒労感を与える。
      • 結果的にクリア後のキャップ50かつ強力な装備を持ち込むほうが難易度が上がる環境まであり、「死者の宮殿はキャップ40である本編クリア前に一度制覇するのが安定」とまで言われるほど。新規要素ならまだわかるが、既存のやりこみ要素をこのようにするのは歪さを感じるだろう。
    • 本編クリア前ならこの自軍弱体化システムは適用されないが、クリア前はレベルキャップも40のまま。そこにキャップの影響を受けないレベル50の敵ユニットを勧誘して死者の宮殿に行かせるというシステムの穴を突く裏技もある。
    • 上記ユニオンレベルもそうだが、どうにも「開発側が用意したレールから外れないでください」という意思がくみ取れる要素が多いのも不満がでる部分である。
    • だというのに新規追加要素の「チャーム」は事前知識や時間などを必要とするものの、理解してしまえばストーリークリア前でもこのダンジョンでいくらでも増やせてしまう。
      救済措置の面もあると思われるが、それまでユニオンレベル等で戦闘の難易度を半固定化させているというのに、急に破壊できるようになっているアンバランスさは否めない。
  • ショップで資金の無限稼ぎが可能
    • ある時期から登場する店売りの素材で合成可能な武器を売り買いすると少額ながら差額で無限に資金を稼ぐことができてしまう。ショップで購入できるものは普通に終盤まで有用なので難易度が大幅に変わる。
    • 資金のやりくり要素が破壊されるのはもとより、他の用途もあるとはいえ資金稼ぎに使えるフリーダンジョン的MAPの必要性も薄れてしまっている。
      • 後のアップデートでも修正されなかったため救済措置とも取れるが、バランス調整を放棄したと思われてもおかしくない内容である。
  • 相変わらず残っている取り返しがつかない要素
    • 前述の通りチャリオット関係の称号は削除されたものの、戦死者・負傷者関係の称号は据え置きのまま。クリア前に戦死者・負傷者を出してしまうと称号を狙うことはできなくなってしまう。
    • チャリオットによる巻き戻しが可能とは言え、バフカードの関係で運要素が絡み戦況が安定しないことから意外と取得が楽ではなく、この点には批判が多い。*14
  • 影響の大きいバグの存在
    • 物理攻撃属性が「防御側の右手に装備している武器の属性で固定」されてしまうため防具の3種ある物理耐性値が本来の役割を果たしておらず、「どの武器属性を装備すると物理防御力を上げられるか」という謎の要素になってしまっている。*15
      • 上記により武器種や必殺技で自身の「攻撃属性を使い分ける」という戦術は一切成り立たず、上記ドラゴンが倒しにくくなっている*16原因にもなっている。
    • 魔法攻撃を行う際、何故か右手、左手の両方が片手装備で埋まっていないと装備のステータス補正が一切機能しないため魔法ユニットは右手に片手杖、左手に盾または最も軽い短剣を装備することを強制される。
      • このため、両手杖と魔導書に関しては終盤のステータスアップが多量に付与されているレリックであろうとほぼ何の価値もなくなってしまっている。*17
    • これらに関しては明らかなバグなのだが、公式より「ゲーム進行に関わるバグ以外は修正しない」との告知が出てしまっており改善も見込めない。*18

総評

SFC版とPSP版のいいとこ取りと言えるシステム改編がなされ、確かにPSP版のおかしさから脱却したものの、凡百のSRPGのアタリマエに近づいただけで、SFC版から進化した面白さというのは未だに薄い。
またグラフィックもPSP版はおろかSFC版から見てもそこまで変化が見られず、「リボーン(生まれ変わる)」と名付けられた割に大きな変更はなくリマスターに近い作品である。
本作の仕様に合わせた調整がされていない部分も目に付くうえ、目玉の新要素も開発側の想定から逸脱させないための仕様が多く古参・新規どちらにも受け入れがたい。
このことは、クォータービューウェイトターン制SLGの元祖は、生みの親である松野氏の手でこれまたクセモノになってしまったという声がある。一方で、レベルシンクに関する面など、FF12のように、松野氏と他スタッフの食い違いが生じていた面も多く見られる。*19


余談

  • 松野氏はtwitter(現X)にてたびたび本作のプロモーションを行っていた。
    • その際、スナップドラゴンで生成した剣が「ヒゲ坂口脊髄剣」となっており、ファンを爆笑させた。
      • 語源は漫画「チェンソーマン」で登場した「田中脊髄剣」で、坂口博信氏本人もこの話題に乗っかっている。
最終更新:2024年08月07日 23:39

*1 自身含む周囲2マス内の味方の行動順を早める。所持者同士での早回しができ、後記の魔法使いへの補助としても有用

*2 おそらく運命の輪で問題となった、敵AIが無意味に連打してしまうことを防止するための苦肉の策

*3 防具等による耐性は関与する。

*4 発動時、周囲2パネル内の味方ユニットが受けるダメージの50%を肩代わりする。

*5 基本の回復量にMNDの値*0.05が「足される」だけなので雀の涙ほどしかステータスによる変動がない。

*6 高性能な品は合成品なのだが、材料が全て購入できるので実質ショップに陳列しているのと全く変わらない。

*7 命中率に関わるDEX(器用さ)はまだ特定武器の攻撃力にも関与するため面目を保っている。

*8 敵HPが4桁にもなるゲーム性なのに、武器学をMAXまで上げてもダメージ30変わるかどうかである。命中率にも関与するが上記の通り殆ど変わらない。

*9 種族耐性が付いているとはいえ、再序盤から手に入る装飾品のほうが攻撃面での影響力は高いので微妙。

*10 なお、前衛系の一般クラスで唯一「瞑想」をセット可能な「ルーンフェンサー/ヴァルキリー」がこれに加え召喚魔法と各種アタッチが行使可能、という他クラスでは成しえない強味を持ったことで評価を急上昇させており、不遇だったSFCから大躍進を遂げている。

*11 道具で使用することにより、3回までMPを100チャージできる。

*12 周辺3~4マス内の味方のMP回復及び魔法攻撃力上昇

*13 周辺3~4マス内の味方のHP、MP回復

*14 そもそもこの称号難易度を別にしてもバフカードへの肯定意見はほとんど見られないが。

*15 狙って設定されたのかと考えられなくもないが、弓(突攻撃属性)セット装備である「ジィルガ」シリーズの籠手や、明らかに弓等と合わせて使ってほしい意図が見える「スナイプブレイサー」に突耐性が付いていないことを考えると、バグである可能性のほうが圧倒的に高い。

*16 本来これらの種族は「耐久力がとても高いものの、一部の攻撃属性ならダメージが通りやすい」というステータスが設定されているのだが、このバグのせいですべての物理攻撃属性のダメージを軽減してしまっている。

*17 一応HPやMPの上昇に影響はないので無価値ではないが、片手杖にほぼ同等性能以上のものがあるのでそちらを使わない理由がない。

*18 おそらくは、一つを直してしまうとあれもこれも直すべき、と連鎖してしまうので明確に商品問題が出る部分以外は直さないで通す方向で可決したと予想される。

*19 実際、氏はSNS上でのユーザーからの質問に、どこか喰い違う返答がなされており、いずれもスクエニの被害者と言えるような結果を産んでいる。