本項では『テトリス エフェクト』と、その強化版である『テトリス エフェクト:コネクテッド』の両方を紹介します(判定は共に「良作」)。


テトリス エフェクト / Tetris Effect

【てとりす えふぇくと】

ジャンル パズル
PS4版
対応機種 プレイステーション4
Windows(Epic Games Store)
Meta Quest
発売元 Enhance
開発元 Monstars
Resonair
発売日 【PS4】2018年8月25日
【Win】2019年7月23日
【Quest】2020年5月14日
定価 【PS4】4,584円(税込)
【Win】4,180円
【Quest】2,990円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 良作
備考 各種VR機器対応
ポイント 秀逸な演出面
VR前提で作られている部分もチラホラ
テトリスシリーズ

概要

もはや知らない人の方が少ないであろう有名落ち物パズルゲーム『テトリス』。
本作は『Rez』や『ルミネス』などで知られている水口哲也氏がプロデューサーを務め、Enhanceから発売された。


特徴

  • ゲーム性・スコアなどの基本システムは『テトリス』のガイドラインに沿ったもの。
    • 公式システムとしておなじみの「ハードドロップ」や「ホールド」も搭載。
  • ゲームモード
    • 「Journey Mode」
      • テトリミノのデザインや演出が様々なステージをプレイしていくモード。3段階の難易度に分かれ、それぞれ必要ライン数とスピードレベル、クリアランクごとのスコアボーダーが異なる。
      • このモードは一定ライン消去でZONEゲージが1/4ずつ溜まり、ゾーンボタンを押すと一時的にピースの自然落下が停止するZONEモードに入る。
      • ZONEモード中は揃えたラインが下部に溜まっていき、時間が経つか上まで積み上がると一気に消え、溜めていたゾーンゲージとライン数に応じて高スコアが手に入る。
      • ZONE中のラインはクリアノルマにカウントされないため、スコアアタックにはT-SpinだけでなくZONEの活用も必須となってくる。
      • 一度クリアすると「Theater」モードが解禁。背景演出とBGMのみを楽しむことができる。
  • 「Effect Modes」
    • ガイドラインに存在するおなじみのルールで遊ぶ「クラシック」(6種目)、難易度設定が低く演出を楽しむ「リラックス」(4種目)、一定時間内での特定記録を目指す「フォーカス」(3種目)、特殊なルールが目白押しの「アドベンチャラス」(3種目)の4つに大別された、合計16のルールでプレイできるモード。
    • 一部ルールを除きZONEを使うことはできない。
  • VR機器にも対応
    • PS4版はPSVR、Win版はOculusRiftとHTCViveなど、基本的なものは一通り揃っている。
    • QuestはVR専用機器なので言わずもがな。

評価点

  • 「エフェクト(演出)」のタイトルに偽り無き、綿密に作られた秀逸な演出。
    • テトリミノを「動かす」「回す」「落とす」「消す」といったプレイヤーが操作できるほぼ全ての動作に合わせ、BGMの音、背景の演出、コントローラー振動がシンクロしている。
      水口氏の作品としてもはやおなじみの演出だが、その快感はあいも変わらず優秀。
    • 「Journey Mode」ではステージを進めていく度にテトリミノのデザインやサウンド、演出が変わっていき、プレイヤーを飽きさせない。さらに落下を止めつつ一気にラインを溜めることで、まとめてそのラインが弾け飛び高得点になるZONEシステムが爽快感を引き立たせる。
      • それ以外のモードでもその殆どに美麗な背景と楽曲にシンクロするサウンドなどの演出がしっかりと作り分けられており、幅広いモードへと誘う要素となっている。
    • 前述した通り基本的なシステムはワールドルールのテトリスそのままなので、テトリスの経験者であれば、大きな問題もなく本作の凝った演出を楽しむことができる。
    • VRでプレイすれば、上記の演出により一層没入することができる。
  • 簡易ではあるがちゃんとしたチュートリアルがある。
    • テトリスの基本的なルール説明や操作方法はもちろん、「T-Spin」「Back-to-Back」「All Clear」などのテクニックの存在や、マルチプレイヤーの各モードのルールそれぞれの説明を動画と文章で完備している。
    • チュートリアルはオプションから見ることができるため、一度は見ておくとよい。
  • Effect Modesの種目は多彩。
    • 前述の通り16の種目が用意されており、それぞれで異なったゲーム体験を楽しめる。そのどれもスコアアタックが熱く、やりこみ要素としてはかなりのボリュームである。
    • 一部モードは練習にも役立つ。
      • 例えば「オールクリア」では操作の最適化の技術が、「コンボ」ではコンボ(REN)を繋ぐ技術が必要になっており、これらのモードを遊ぶことで自然とプレイが上達するようになっている。

賛否両論点

  • 良くも悪くも感性に左右されるゲーム内容
    • 水口氏がプロデューサーを務めた『Rez』などと全く同じで、本作は演出に重点を置いたゲームデザインとなっており、いわゆる「雰囲気ゲー」としての側面が相変わらず強い。
    • サウンドやコントローラーの振動といった演出部分には力は入っているが、テトリスゲームに置いての独自性はZONEシステムぐらいなうえに、ZONEは使用できるモードも限られる。
    • また、演出もVRでプレイする前提で作られている節もあり、VR機器を持っていないプレイヤーには本作の魅力の全てを味わうことはできないかもしれない。

問題点

  • 「Journey Mode」の難易度設定がやや高め
    • 「Journey Mode」の難易度は意外と手応えのあるスピードになっており、テトリスをあまりプレイしたことのないプレイヤーからは「Normal」はおろか「Beginner」でも全面クリアはキツイかもしれない。
      • 無論、これらも演出の一部であり、開発者曰く「落下速度がゆっくりになったタイミングで背景に目を向けてほしい」(意訳)とのこと。
    • 焦ってハードドロップを使いすぎなければ失敗することは少ないが、テトリミノの落下が高速化してくると、前述の演出がむしろ邪魔に感じてくる可能性もある。
    • 本作の演出を存分に楽しみたいなら身の丈に合った難易度を選ぶことを推奨する。

総評

テトリスというシンプルなゲームにミュージックビデオ風演出を巧みに組み合わせ、1つの芸術作品へと昇華させた一作。
その秀逸なサウンドや演出はVRでプレイすれば、より一層楽しむことができる。
ただVRでプレイすることを前提とした面も少なからずあり、VR無しだと本作の魅力の全てを味わうことができないのが、惜しいところか。
本作をプレイするならばVR機器も購入すべき…とまでは言わないが、ヘッドホンでサウンドを楽しむくらいの準備はしておいた方が良いかもしれない。


その後の展開

  • 2020年11月10日に『テトリス エフェクト:コネクテッド』がMicrosoft StoreにてXSX/One/Win 10共通対応で発売。詳細は後述。
    • 2021年夏には無印版にも『コネクテッド』同様の要素を追加するアップデートがされた。

テトリス エフェクト:コネクテッド / Tetris Effect: Connected

【てとりす えふぇくと こねくてっど】

ジャンル パズル
Switch版
対応機種 Xbox Series X
Xbox One
Windows(Microsoft Store / Steam)
Nintendo Switch
プレイステーション5
発売元 Enhance
開発元 Monstars
Resonair
発売日 【MS】2020年11月10日
【Steam】2021年8月19日
【Switch】2021年10月8日
【PS5】2023年2月22日
定価 【MS/Steam/Switch】4,500円(税込)
【PS5】4,499円(税込)
プレイ人数 1~4人
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 良作
備考 各種VR機器対応
ポイント マルチプレイモードが追加
1人用モードも変わらず収録
テトリスシリーズ

概要

前作「テトリス エフェクト」にマルチプレイ等の新要素を追加した強化版。 前述の通り、2021年夏の無料アップデートにより、前作もこちらと同等のゲーム内容になっている。


特徴・システム

ソロプレイについては前作と変わらないため、新要素についてのみ記述する。

マルチプレイの方法は以下の3種類。

  • RANK MATCH
    • 所謂レート戦。インターネット通信を使用して、世界中のランダムなプレイヤーと一緒に遊べる。対戦モードについては各モードにレート(ランク)があり、勝敗によって変動する。
  • FRIEND MATCH
    • 所謂プライベートルーム。インターネット通信を使用して、任意のプレイヤーと一緒に遊べる。レートは変動しない。
    • ルームには同じプラットフォームのフレンドを招待できるほか、ルームコードを共有すればフレンド以外と繋がることも出来る。
  • LOCAL MATCH
    • インターネットを使用しないローカルマルチプレイ。コントローラーを分け合って一緒にプレイしたり、CPU相手に対戦することが出来る。
    • CPUはレベル1からレベル10までの10段階用意されている。

プレイモードは以下の5種類用意されている。

  • コネクテッド
    • 3人で協力して、CPU操作のボスを倒していくモード。全5ステージで、ボスは合計13体。
    • 3人側はラインを消してゲージを貯めることで「コネクテッドゾーン」を発動させることが出来る。
      • コネクテッドゾーン中は 3人のフィールドが繋がり、横30マスの広大なフィールドとなる。 1人ずつ交代でミノを置いていき、終了時に消したライン数および残り人数に応じてボスに攻撃が送られる。
    • 逆にボスはそれを防ぐため、様々な特殊能力を使用してこちらを妨害してくる。
      • ボスの攻撃は「ラインがせり上がる」といったシンプルなものから、「一定時間フィールドが見えなくなる」といった独特なものも。
  • ZONEバトル
    • 1vs1のシンプルなバトル。ラインを消すと相手にお邪魔ミノが送られ、先にゲームオーバーになったほうが負け。
    • 特筆すべき点として、ZONEが使用できることが挙げられる。ZONEを使用すると相手からの攻撃を一時的に保留にすることができ、沢山のラインを消せば一気に大量のお邪魔を送り込める。
      • 場合によっては大逆転のチャンスにもなり、立ち回りの要となる。
    • FRIEND MATCHおよびLOCAL MATCHのみ、オプションでZONEを無効にして通常の対戦にすることも可能。
  • スコアアタック
    • 2人でスコアアタックを行い、点数が高かった方が勝利。
    • オンライン対戦の場合、片方がゲームオーバーになると、残ったプレイヤーには2分間の時間制限が課せられる。どちらかの勝利が確定するか、時間切れになるとゲーム終了。
    • レベルシステムがあり、次第に落下速度が上がっていくため永久にプレイし続けることはほぼ不可能。初期レベルはゲーム開始時に1P側のプレイヤーが決める。
  • クラシックスコアアタック
    • 基本的なルールは「スコアアタック」と同じだが、このモードでは NES版テトリス に準拠したゲームルールとなっている。
      • すなわちテトリミノの降ってくる順番は完全ランダムで、ミノ回転時の壁蹴りも無く、横移動は極端に遅いのである。
    • Iミノが連続で来ない際の表示など、「Classic Tetris World Championship(CTWC)」を意識したと思われる要素が散りばめられている。
  • コネクテッドバトル
    • 「コネクテッド」とほぼ同じだが、大きな違いは ボスキャラクターもプレイヤーが操作する こと。すなわち1vs3で対戦することになる。
    • ボス担当のプレイヤーは好きなボスキャラクターを選ぶことが可能で、選んだキャラにより使用される特殊能力などが変化する。
    • RANK MATCHでは週末のみプレイ可能。FRIEND MATCHおよびLOCAL MATCHではいつでもプレイできる。

評価点

  • 待望のマルチプレイヤーモードの実装
    • 前作「テトリス エフェクト」ではマルチプレイヤーモードが用意されておらず、1人用モードしかなかったため、少なからず不満の声もあった。
    • 今作では対戦モードが4種類、協力モードが1種類追加されており、ボリュームとしても十分。
  • 全プラットフォームでクロスプレイに完全対応
    • ハードメーカーの商業的都合やサーバー維持費との兼ね合いなどもあり、オンラインゲームの中には異なるハード間のクロスプレイには非対応、もしくは限定的というケースも少なくない。
    • 本作では 全てのプラットフォーム間でクロスプレイが可能 であるため、そういった仕様に悩まされることもない。
  • ZONEバトルのバランスは良好。
    • 攻撃力やZONEの仕様などは念入りに調整されており、上位プレイヤーの中でも大きな不満はないとされている。
    • なかなかの戦略性もある。例えば大量の攻撃が送られてきたときに「自力で受けきるか、ある程度受けてからZONEを使うか、それとも先にZONEを消費して相殺しに行くか」といった判断が発生し、その選択次第でゲームの状況が大きく変わることも。
  • クラシックスコアアタックの存在
    • 「CTWC」などの動画を見て実際にプレイしたいと思ったプレイヤーも決して少なくないだろうが、今の時代にNESテトリスのプレイ環境を揃えることは非常に困難とされていた。
      • このモードの存在により気軽にNESテトリスを遊ぶことが可能になり、挑戦する敷居はかなり低くなったと言えるだろう。
    • また、オプションも豊富であり、例えば7-Bag System*1をオンにする等の変更が可能。クラシックテトリスは難易度が高いため、徐々に体を慣らしていくということもできる。
  • CPUは公式作品の中では最強レベル。
    • テトリスDS』のような速度のゴリ押しではなく、戦略の工夫での押し切りを狙ってくるため、理不尽さもほとんどない。
    • 特にレベル10のCPUはNEXTの先読みを行う、自力でT-Spinを組む、回転入れを駆使して的確に掘る等、かなり賢いプレイを高速で繰り出すため、勝つためにはかなりの実力が必要。
      • トップクラスのプレイヤーの中でも「ハンデ設定を1加えるだけで普通に対戦が成立する」等の声があり、相当の実力であることがうかがえる。

賛否両論点

  • コネクテッドの「ハードモード」を遊ぶ敷居が高い。
    • コネクテッドではオプションで「ハードモード」という項目があり、これをオンにするとボスが強化され、さらに難易度の高い戦いを楽しめる。
      • しかし、このオプションはRANK MATCHでは選択不可能。そのため挑戦メンバーは自力で集める必要があり、気軽に遊ぶことが出来ない。
    • ただし、ハードモードは非常に難易度が高いため、精鋭メンバーを募ることが事実上必須である。そのため、ランダムにマッチングするRANK MATCHとは相性が悪い面もあり、仕方がないという見方も出来る。
  • ZONEバトルの「フェーズ」と呼ばれる仕様
    • ZONEバトルには「フェーズ」と呼ばれる仕様があり、長期戦になってどちらかのスコアが一定以上になると、2段階でお邪魔ミノの穴の位置がばらつきやすく、ZONEゲージが貯まりづらくなる。
    • この仕様自体は試合が長期化することを防げるため好評なのだが、問題は この仕様をゲーム内で知る方法が無い こと。
      • 一応、FRIEND MATCHおよびLOCAL MATCHのルール設定の項目の中にはフェーズに関するものもあるため、存在を認知することは不可能ではない。しかし、他に知る方法が無いというのはいかがなものか。
  • 前作同様、雰囲気については好みが分かれ、人を選びやすい。

問題点

  • コネクテッドでは乱数次第で突破困難になることがある。
    • 例えば、敵の特殊能力の1つ「NO SPIN」を使われた場合、一定時間ミノを回転させることが出来なくなる。ご想像の通りかなり強力なスキルであり、これを連続して使われるとまともにプレイすることが困難となる。
    • 敵は攻撃のたびにスキルを1つランダムに選ぶため、運が悪いと突破困難どころか「詰み」状態に陥ることも。
  • スコアアタックは長期戦になりやすい。
    • 少なくとも片方がゲームオーバーにならない限りゲームが終了しないため、上級者同士の対戦だと長期戦になりやすい。開始レベルを上げれば多少マシにはなるが、焼け石に水である。
    • その関係か、このモードを遊ぶプレイヤーは少なく、RANK MATCHでプレイしようとしてもまともにマッチングしない。
  • BGMが各対戦モードにつき1種類ずつしかない。
    • プレイヤーの操作により音が変化する仕様であるため、試合ごとに多少の違いは感じられる。しかし何戦も続けていれば流石に飽きる。新曲の評価が全体的に良いだけに勿体ない。
    • 1人モード用に豊富なBGMが用意されているのだから、せめて選曲のオプションなどがあればよかったのだが。

総評

前作から順当な進化を遂げた完全版。
雰囲気については人を選ぶ面があるものの、テトリス作品として素晴らしい出来であると言えるだろう。


余談

  • マルチプレイ部分のリードデザイナーを務めた立島智央氏は、過去にCTWCの大会で3位に入賞した実績がある*2
    • 本作に「クラシックスコアアタック」モードが用意されているのもその影響かもしれない。

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最終更新:2024年03月18日 22:06

*1 7手ごとに各種類のミノが1つずつ出現する、標準仕様の抽選方式。日本語では「7種1巡」などと呼ばれる。

*2 2018年の大会でGreentea名義で出場している。CTWCの公式YouTubeチャンネルでその様子を視聴することが可能。