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  • 55 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 17:03:52.27 ID:kaBaLdHG0

「ゾーン、士官でなくても兵士はみんな立派な戦士なんだ。士官にこだわるな」
 少し強い口調で言う教師にホライは心底嫌気がさした。
「話はそれだけですか?」
 そう言いながらホライは立ち上がる。
「おい、待ちなさいゾーン」
 そう言って制止する教師を無視してホライは相談室から出た。

 校門を出たところで、ホライは一人の女子を見つけた。
「いっしょにかえろっ!」
 そう言いながらホライの背中をパンと叩くレイ。
「暗い顔してるねぇ。また受験の事で先生に何か言われたんでしょ?」
 そう言いながらレイは何でもお見通し、と言った顔でホライを見つめる。
「しょうがないよね、今ジオンは兵士不足だから。先生も大変なんだよ」
 だから先生を恨まないで、と言いたげな様子のレイ。
 ジオンから学校に圧力がかけられてる事は、この学校の生徒ならみんな知っている事だ。
 だけど、だからといってホライにとっては教師の言動は煩わしいものでしかない。
「俺のことは俺が決める。俺は別にジオンの為に士官学校を受けるんじゃない。俺のために受けるんだ」
 ホライはムスッと言い放った。
「それが何で軍なの?」
 理解できない、と言う風にレイが尋ねても、ホライはそれに何も答えようとしなかった。

  • 67 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 17:16:42.23 ID:kaBaLdHG0

「なぁところで」
 ホライはこの話題に嫌気が指したのか別の話題を切り出した。
「レイ、お前日本語分かるか?」
 結局教師に聞きそびれた疑問を、仕方なくレイに投げかける。
「日本語? ううん。日本なんて何処にあるかも知らないよ。なんで?」
 不思議そうな顔で聞き返すレイ。
「嫌別に。でもジオンってさぁ日本でもジオンって呼ぶよな?」
「?? 他に何か呼び方があるの?」
「知らないから聞いてるんだろ」
「私だって知らないわよ」
 レイが少し怒ったように言う。ホライは、はぁとため息をついた。

 ホライが家に戻ると、リビングではホライの母がのび太としずかに言葉を教えていた。
「まぁシズカは本当に頭が良いわね! もうこんなに言葉を覚えちゃうなんて!」
 ホライの母がそう言うとしずかは嬉しそうにニコニコと笑った。
 しかしそれと対照的にのび太の方はどんよりとした暗い顔をしている。
「ノビタはもう少し頑張らなくちゃだめねぇ。まだ単語を一つも覚えられてないじゃない」
 のび太は泣き言を喚いたが、それは全て日本語なのでホライの母はのび太をただの可哀想な子としか思わなかった。

  • 128 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 18:32:09.36 ID:kaBaLdHG0

 そのまま特に変わったことも無く夜になった。
 例によってホライはのび太をベッドに寝かせると、自分も布団に横になった。
 手を頭の後ろに組んで仰向けに寝るホライ。
 電気の消えた部屋の天井を眺めていると、望んでもいないのに今日の学校でのことを思い出した。
「一般兵じゃダメなんだよ」
 ホライは小さく呟く。
 のび太が来てから僅か数日。その間にホライの心に大きな変化が起こりつつあった。
 ホライはただ金と名声が欲しくて、勝ち馬に乗るつもりでジオンの士官を志望した。
 だから名声も金もろくに貰えない一般兵なんて眼中に無かった。
 だけどその心が変わっていた。
 今でもホライは一般兵になるつもりは無い。
 しかし士官学校を受ける動機は大きく変わっていた。
「最低でも士官にならなきゃ戦争を終わらせる力なんて持てやしねぇ」
 ホライは静かにのび太の寝ているベッドを見る。
 やがてのび太がいびきをかき始めたのを確認すると、ホライはのび太に光が当たらないように勉強机のスタンドに明かりを灯した。
 そして勉強道具を並べると、黙々と勉強を続けた。

  • 141 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 18:56:00.18 ID:kaBaLdHG0

 それと同じころ、ジョルジュは一人地下の工房でPC画面と向き合っていた。
 あれから一晩かけてのび太のデータを解析し、ツィマッド本社にそのデータを送っていたのである。
 それは別にのび太を企業に売ろうと思っての行為ではない。
 彼はMSという兵器に携わる一人の人間として、ただ純粋にのび太の能力を放っておくのがもったいないと思ったのだ。
 ジョルジュだけではない。
 軍に携わる者なら誰だってのび太の素質を無視することは無い。

 そして当然の如くツィマッド本社はこの未知のエースの能力に飛びついてきた。
 特に一騎当千の実力を持つエースパイロットは、様々な資源の乏しいジオンにおいて渇望される存在である。
『ジョルジュ、これは大変な逸材だぞ。この数値をたたき出したのはフラナガン機関の例の奴だけだ』
 PCの画面越しにツィマッドの社員は非常に興奮していた。
『それがどういうことか分かるか? このシミュレーターを行った人間がニュータイプかもしれないと言う事だ!』
 そういう社員の顔は生き生きとしていた。
『なんせ現在確認されてるNTは殆どフラナガンに抑えられているからな。もしもこのパイロットが本当にNTなら、我々が独自でサイコミュについて研究する事が出来る!!!』
「しかしニュータイプというのはスペースノイドからしか生まれないんだろう? 今回のデータを出した人間はどうみてもアースノイドだが」
『ふん、ニュータイプについてはまだまだ研究が進んでいない。必ずしもアースノイドから出ないとは限らない』
 社員はジョルジュの冷めた言葉に少し機嫌を悪くしたようだった。
『ともかく我々がサイコミュ兵器の開発すればジオニック社など敵ではない。今回の件はMS産業におけるわが社の社運がかかっているのだ。是非そのパイロットに協力を要請しろ!』
「彼は一般人だ。協力してくれるかはまだわからん」
 ジョルジュがそう言うと社員は激怒した。

  • 162 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 19:20:40.59 ID:kaBaLdHG0

『分からないじゃない! するんだ! これは会社命令だからな!』
 ジョルジュはそんな社員の様子を見てやれやれ、と思った。
「まぁ、この話はまた後日連絡する。ところで例の奴は調べてくれたか?」
『例の奴? あぁ、ドラえもんとか言うロボットか。一応有名どころのロボット企業の製品に検索をかけてみたが、そんなものは1件も見つからなかったぞ』
「そうか」
 残念そうに肩をすくめるジョルジュ。
「ゴウダタケシやホネカワスネオ。デキスギエイサイはどうだ?」
『どうだと言われてもな。情報が少なすぎる。一応ジオン当局に問い合わせてみるが、期待はするな』
「あぁ、すまんな」
『本当に感謝するなら、例のパイロットを必ず連れて来い』
「だから、それはまだ分からんと言っただろ」
『チッ、たくお前と言う奴は。もういい、とにかくまた連絡を入れろよ!』
 社員はそう言うと通信の接続を切った。
 そんな社員に、まったく無駄に熱い奴だ、とジョルジュはため息を付いた。
「さて、しかし面倒な事になった」
 MS開発者としての彼はのび太を放っておけなかったが、その反面ジョルジュは自分がのび太を企業の為だけに利用するような人間になってしまわないかと怖くなった。
「あくまで協力を要請するだけだ。強制なんかしない」
 かれはそう自分に言い聞かせた。
最終更新:2006年11月07日 18:36