- 192 名前: VIP村人h 投稿日: 2006/11/22(水) 19:41:24.03 ID:p3Xl6f440
フレンには打つ手が無かった。
ヒートサーベルしか武装の無いMSなど、距離をとられて砲撃されればお終いである。
それでも、突撃して格闘戦を仕掛ければフレンが勝利したであろうが、ライ機を防衛するためにそれすらも出来ない。
フレンは判断を間違えていた。
フレンはライを見捨て敵に突撃すべきだったのだ。
そうすれば被害はライだけで済み、フレン自身は生き残れる可能性があるのだから。
しかし、このままではフレンもライも共倒れだった。
もう何度目の被弾だろうか。
コックピットの激しい揺れに耐えながら、フレンはモニタに映ったその文字を眼にした。
『マニュピレーター破損』
『ホバーユニット破損』
『メインカメラ破損』
モニターにはそんな文字ばかりが並ぶ。
それ以外のものは、もはや何も映し出されなかった。
苦笑するフレン。
「このまま死ぬのか、捕虜になるのか」
絶望を口にしてみる。
次の瞬間、戦場に爆音が響いた。
- 200 名前: VIP村人h 投稿日: 2006/11/22(水) 19:58:30.36 ID:p3Xl6f440
あぁ、僕は死んだな、とフレンは思った。
しかしフレンのコックピットには何の変化も無い。
それもその筈である。
被爆したのはフレンのドムでは無く、連邦の61式戦車だった。
ジャイアントバズの射程は長い。
そしてドムは地上において最大の機動力を持つMSだった。
そこにのび太の射撃能力が加われば、それは道理だったのかもしれない。
5台の61式戦車が、一瞬の内にのび太の射撃に飲み込まれていた。
一斉に砲撃の照準をフレンからのび太へと変える戦車。
だが遅い。
のび太は弾切れを起こしたジャイアントバズを捨てると、ヒートサーベルを手に取り戦車に格闘戦を仕掛けた。
最高速度で走行するドムは、戦車の迎撃を許す前に彼らに取り付いた。
残り5台の内、前衛の戦車に切りかかる。
格闘戦となればもう結果は誰の目にも明らかだ。
一方的に戦車達をなぎ倒していくのび太のドムに、連邦の戦車兵達はなす術が無かった。
- 208 名前: VIP村人i 投稿日: 2006/11/22(水) 20:12:16.05 ID:p3Xl6f440
正確無比な射撃で一瞬の内に5台の戦車を破壊し、高速の突撃で格闘戦に持ち込んだドムを見て、連邦の戦車兵の一人が呟く。
「まるで、流星――」
それが、その戦車兵の最期の言葉だった。
10台の戦車を全て破壊すると、のび太はフレンに無線を入れた。
「フレン、ダイジョウブ!?」
のび太の無線を聞いて、フレンは初めて先ほどの爆音がのび太の射撃であった事に気付いた。
「のび太君、戻ってきてくれたのか」
フレンはとても嬉しかった。
「ありがとうノビタ君」
そう感謝の言葉を口にする。
だけど、それと同時にフレンは罪悪感を感じた。
殺したくないと言ったのび太を、フレンは自分のせいで戦いに駆り立ててしまったのだ。
ごめん。
そんな言葉ばかりがフレンの胸に溢れる。
だけどフレンはそれを口に出すことが出来なかった。
そんなフレン達に新たな無線が入った。
「フレン! ライ! ノビタ! 平気か!?」
とても焦った口調で言う声マグ。
- 230 名前: VIP村人i 投稿日: 2006/11/22(水) 20:43:49.79 ID:p3Xl6f440
「僕達なら何とか平気さ。ノビタ君以外は機体を大破させちゃったけどね」
ばつが悪そうにそう言うフレン。
そんなフレンの言葉にマグは、ほっと肩を撫で下ろした。
「よかった。戦車達が突破して来た時はもうだめかと」
それを聞いてフレンはハッとした。
「それで、僕らを突破した戦車達は? たしか7台ほどいたはずだけど」
「安心して。それなら私とナシーで返り討ちにしたわ」
そう言ってマグは笑った。
「私たちの勝利よ」
それに、フレンも笑顔で返す。
「あぁ」
そう、フレン達は13基地の防衛線に成功したのだ。
ナシーもノビタも、そしてライまでも笑顔を作る。
「それじゃあ基地に戻ろう。ノビタ君。悪いけど僕とライを君の機体のマニュピレーターに乗せてくれ」
そう言うとフレンはコックピットハッチを開いて外に出る。
外は荒れ果てていた。
戦いが終わった町は不気味なくらい静かだ。
ただ、弾薬や、大破した機体から出る煙の臭いがフレンの鼻をついた。
- 280 名前: VIP村人j 投稿日: 2006/11/22(水) 21:30:45.67 ID:p3Xl6f440
第13基地は連邦との戦闘に勝利したが、その代償は大きかった。
基地周辺の町はこの戦闘により壊滅状態となり、13基地自体も大きな被害を受けた。
司令や、のび太達の級友であるサイゾーをはじめ、数多くの人が死んだ。
むしろ13基地では、生き残った人間の方が少ないくらいである。
フレン達が基地に帰還すると、勝利を祝う間もなく戦死者に対する追悼の為に集められた。
基地の生き残った兵士全員が集まる。
全員勝利の安堵を口にすることも無く、一様に俯いていた。
皆口をつぐんでいる。
そしてしばらくするとダディが口を開いた。
司令も副指令も死亡し、今この基地で階級が最も高いのはダディであり、彼が生き残った兵士をまとめる必要があるのだ。
「みんなの知っての通り、司令は戦死なされた。最期まで我々の為に指揮を執ろうと司令室に残られ、そして栄誉の死を遂げられたのだ」
そう言ってダディは眼から涙を流した。
兵士達もそれに一斉に顔を伏す。
「司令だけじゃない。みんなこの基地の為に堂々と死んでいった。まだ兵士ですらない訓練生までも戦いの中で死んだ。みんな、この英霊達に黙祷を捧げよう」
そう言ってダディは眼を閉じ、胸に手を置いた。
ダディだけじゃない。
この場に居る人間全てがそうした。
「この戦いで死んだ全ての者達よ。我が戦友、そして連邦の兵士達よ。永遠に、その魂が安らかであれ。――黙祷」
英霊に黙祷を捧げる13基地の兵士達。
味方であれ、敵であれ。
その全ての魂がソラへ舞い上がり、神の祝福を受けますように。
そして神よ、どうか戦士達の罪を赦したまえ。
ダディはそう願った。
最終更新:2006年11月23日 00:27