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  • 55 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 20:00:08.83 ID:xjiYhv20

 ジャブロー。
 それは南米アマゾン川流域の地下に広がる地球連邦軍の大本営である。
 巨大な鍾乳洞を無数に連結させた巨大な基地には地球連邦軍総司令部が入っており、大本営の名に恥じぬだけの防衛能力を備えている。
 また、上空からの視認ではその入り口を見つけることが出来ないほど巧みにカモフラージュされており、ジオン側はその進入経路の解明に躍起だった。
 さらにジャブローは兵器の開発・生産能力や食料自給能力まで備えており、名実共に地球連邦軍の最大かつ最強の要塞である。

 そのジャブローの潜水艦用ドッグにこの日もまた一隻のU型潜水艦が入港した。
 即座に2人のジャブロー守備隊の兵士がドッグの橋渡し部の前に走りこんでくる。
 片方の兵士が手に持ったトランシーバー様の通信機器でU型潜水艦の所属を確認した。
「ただいま貴艦のドッギングを確認。貴艦はカラカス基地所属のU32514で間違いありませんか」
 兵士の言葉に対し、トランシーバーから応答が帰ってきた。
『U32514で間違ありません』
「了解です。それではどうぞこちらへ」
 兵士がそう言うとジョウコウの上部ハッチが開いた。
 中から出てきたのは5人の人間で、その内3人が子供だった。
 残る2人の大人も一人はいかにも兵士らしい風情だが、もう一人の方は兵士にしては頼りない痩躯で肌も白い。
 それでも肩章を見たところ大尉であるらしかった。
 おそらく、兵士は兵士でも技術士官といったところだろう。
 変わった連中だな、と守備隊の兵士達は思った。
 ジャブロー守備隊の2人には、カラカス基地からやってきた彼らについての情報は殆ど与えてられていなかったのだ。

  • 56 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/04/11(土) 20:09:08.48 ID:xjiYhv20

「やあ、出迎えご苦労。私はカラカス基地司令部所属のショー=ボーン大尉だ。よろしく頼む」
 色白の大尉はそう名乗ると笑顔で右腕を差し出した。
「はっ、こちらはカーバ一等兵であります」
 ジャブロー守備隊の一人はそういって手をとった。
「同じくホーア二等兵であります」
 もう一人の守備隊も同じく手をとる。
 そうして互いに眼を合わせると、ふと兵士の目が少年達へと向けられた。
 守備隊の兵士が少年達について尋ねようかと一瞬だけ戸惑った瞬間、色白の大尉の方から口を開いた。
「君はこの少年達について何か聞かされているかね」
 守備隊の兵士はそう言われ、男に連れられてきた3人の子供を見た。
 東洋人らしき黒髪の男の子と、貴族のような髪型をした金髪の女の子と、明るい茶色をしたショートヘアーの女の子。
 正直、兵士にはただの子供にしか見えなかったし、そもそも子供達がこの潜水艦に乗っている事すら聞かされていなかった。
「いえ、私は皆様が重要な任務に携わる方々という事意外は何も聞いておりません」
 兵士は一瞬言葉に窮したが、正直にそう答えた。
「そうか」
 そういうと大尉は子供達の肩に手を置きニカッと笑った。
「それなら覚えておくといい。この子達はいずれアムロ=レイをも超える救国の戦士になるかもしれないのだからね」
「は、――戦士、ですか?」
 元気良く返事を返したもの、兵士にはいったい何の事だか分からない様子である。
 そんな兵士の察するように大尉はまた笑った。

  • 60 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/04/19(日) 23:42:02.91 ID:myFL5KE0

「ははは、ピンとこんかね。ニュータイプなんだよこの子達は。君もニュータイプという名前くらい聞いたことくらいあるだろう。わが軍ではあのアムロ=レイもニュータイプだ」
「ニュータイプ、ですか」
 兵士は戸惑った様子で相槌をうつ。
 そんな彼らの様子を見かねたように、大尉に付き添ってカラカスからやってきた兵士が大尉を小突いた。
「いいんですか大尉。そんなにベラベラと話してしまって」
 小さな声で耳打ちする。
 なにせNTの少年達に関する情報は軽々しく口にするなとスカルチノフ司令からの直々の御達しなのだ。
 しかしそんな事を大尉は全く気にしていないようだった。
「いいんだよ君、例え今隠したところですぐに世界中がこの子達の才能に気づくことになるのだから」
 そう言ってガハハと大尉は大きく笑った。
「それではそこの君、早く我々を案内してくれたまえ」
 大尉がそう言うと、防衛隊の兵士は「はっ」と返事を返し彼らを基地の内部へと案内した。

  • 61 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/04/19(日) 23:42:56.42 ID:myFL5KE0

 どれほど歩いただろう。
 とにかく、ジャブローというのは巨大な基地である。
 すでに出来杉達は車両を用いて10分ほど移動し、車両から降ろされたと思うとその上さら10分ほど歩かされている。
「さっきまで酷い揺れの潜水艦に乗せられて、今度はウォーキング? もう無理。疲れたわ」
 ツンは心底疲れた様子でそう言った。
「ね、あなた達もそう思うでしょ? エイサイ、アリア」
 ツンはそう言って2人の顔を覗き込む。
「あたしも疲れたよー、ツンちゃん」
 アリアもへばった様子で言った。
「きっともうすぐだよ。もう少しだけがんばろう」
 出来杉はそんな二人に笑顔を見せながらそう励ます。
「もう、エイサイはこんな時まで優等生ぶるんだから」
 ツンはそんな出来杉に不満げの様子だった。
「いい子ぶるのなんて必要な時だけでいいのよ。こういう時は自分に正直になりなさい」
「ツンちゃんの言うとおりだよ、エイサイもたまには『疲れたー』とか、『だるいー』とか文句言わなくっちゃ」
 そんなツンとは対照的に、アリアは優しい口調で返す。
「はは、なにも優等生ぶってるつもりじゃないよ。我慢が少しだけ得意なだけだよ」
「その口ぶりが優等生だってのよ」
 ツンはやはり不満げだった。

  • 62 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/04/19(日) 23:46:48.84 ID:myFL5KE0

「ところで、ねぇ、カーバ一等兵さんでしたっけ? あとどれくらいで目的地に着くのかしら」
 わざとらしく大人ぶった口調で、ツンは守備隊の兵士にそう尋ねた。
「え、あ。そうですね、あと10分ほどで着くと思いますよ」
「いやあ~! あと十分も歩かなきゃならないなんて」
 やってらんない、と嘆くツン。
「デーレラ、少し静かにしていたまえ」
 そんな彼女を見かねてショー大尉がツンを諌めた。
 それに「チェッ」と拗ねた様子のツン。
 守備隊の兵士には、とてもこの子供たちが救国の戦士などとは信じられなかった。

 ようやく目的の場所に着いたのは軍用港から移動を始めて30分以上が経過していた頃だった。
 ふと、基地施設の狭い通路の行き止まりで兵士は歩くのを止めた。
「こちらです皆さん」
 そう言って彼が案内したのは基地施設の中の小さな扉だった。
 扉の外見を見るに、とても他の基地からきた人間をもてなすような部屋には見えない。

  • 63 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/04/19(日) 23:47:54.52 ID:myFL5KE0

「やれやれ、天下のジャブローだから大理石のオフィスに出迎えくらいはしてくれると思ったのだが」
 などと冗談交じりに大尉が文句を垂れる。
 ここには大理石どころか鉄とコンクリートしか見当たらなかった。
 守備隊の兵士が部屋の扉の通信ボタンを押す。
 すると通信機器のスピーカーから『はい』という言葉が聞こえた。
「Dブロック防衛中隊所属のカーバ一等兵と申します。ただ今カラカス基地からお越しいただいたショー=ボーン大尉とそのお連れ様を案内してまいりました」
『ご苦労。扉のロックを開けるから中にお連れしてくれ』
「はっ」
 そういうと先方は通信の回線を切った。
 それと同時に扉のロックが解除されたようだった。
「どうぞ中へ」
 兵士が扉を開き大尉たちを案内する。
 大尉たちは誘われるままその中へと入っていた。

  • 64 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/04/19(日) 23:49:28.26 ID:myFL5KE0

 部屋の中には背の高い男がいた。
 見たところ30代くらいの、まだまだ若さを感じさせる体躯の良い男だ。
「皆さん始めまして。私がこのジャブローでNT研究の責任者をやっている、グン少佐です」
「ショー=ボーン大尉であります。こちらこそよろしくお願い致します」
 ショーに続いて彼の付き添いの兵士が敬礼をした。
「レーマー軍曹です。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします」
 そう言ってグン少佐は2人に改めて笑顔を送った。
「それで、この子達が件の」
 グン少佐は今度は出来杉達に目をむけて言った。
「はい、NT適正者の子供たちです」
 ショー大尉がそういうと、出来杉たちも順に挨拶をした。
「流石にNTの素質があるだけあって皆良い目をしているね」
 グンがそういうと、出来杉達はグンに真剣なまなざしを向けた。
「そう緊張しなくてもいいよ、遠慮せずそこへかけたまえ。大尉と軍曹もどうぞ座ってください」
 そう言ってグンは全員をソファーに座らせ、自らもソファーに腰を下ろした。

  • 65 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/04/19(日) 23:52:46.99 ID:myFL5KE0

「せっかく足を運んでもらったのにこんな小汚いところで申し訳ないね」
 グンは苦笑交じりににそういった。
「まったくですよ少尉。なにせカラカスは殆ど難民キャンプみたいになっとりますからね。ジャブローなら高級ホテル並みのもてなしを受けられるんじゃないかと思ってましたが」
 ショーがそう言うとグンは高々と笑った。
「それは失敬した。いやなに、確かにジャブローには高級ホテル並の施設もあるけれどね。しかしそういう処は全て総司令部の幹部達に占有されてしまっているよ。私みたいに幹部から疎まれている人間にはこの程度の施設しか与えられないんだ」
「疎まれてる、とはどういうことです。今回のNT研究はレビル将軍直々の計画だと伺いましたが」
 レビル将軍と言えば、今大戦の実質的総指揮官だ。
 そのレビル将軍直下の士官が左遷的な扱いを受けるのはおかしい、とショーは思った。
「確かにレビル将軍の勅命で私は動いているが。しかしジャブローも一筋縄じゃない。ジャブローに篭っている将校達と第一線で指揮を執り続けているレビル将軍とではだいぶ認識の差があるんだ」
 そう言ってグンは自虐的に笑った。
「認識の違いといいますと」
 ショーが尋ねる。
「要するにジャブローの古株はNTなんて信じていないのさ。レビル将軍のように広い見地を持った将官は稀だよ。MSの量産計画が軌道に乗っただけまだマシだが、まったくレビル将軍のような将官がいなければ我が軍はどうなっていたか」
 グンの表情は険しかった。
 その表情からも、総司令部の内部がショーの想像以上に混乱しているのが見て取れる。
「ま、そういう訳もあって我々は片隅でほそぼそNT資質者を収集しているわけだ。本部からは正式にNT研究機関を設立するほどの金も権限も回ってこない。実際、現状ではレビル将軍やレビル派の高官の名で出される特務として活動するのが我々の限界だ。無論、いつまでもこのまま黙っているつもりも無いがね」
 そこまで言ってグンはその場に出来杉達が居る事を思い出した。
 苛立ちながら話をしている自分に気づき、グンは熱くなりすぎた自分を恥じた。

  • 66 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/04/19(日) 23:55:06.77 ID:myFL5KE0

「すまないね君達。若干口が過ぎた。確かに現状の連邦ではNT研究に対する体制が整っていないが、しかし必ず時は来る。君達は何も不安になる必要は無い。君達は私が責任を持って必ず送り出す」
 そう言うとグンは書類を取り出した。
「私達は互いに時間が無い。迷っている暇は無いんだ。ジオンに決定打を打たれる前に我々が先手を取らなければ、連邦に未来は無いのだよ」
 グンはショーや出来杉達を真剣な眼差しを向けた。
「本題に入ろう。件のルナツー行きだがね、君達にはここに2日ほど滞在してもらった後ルナツー行きの戦艦に乗ってもらう事になる。君達が搭乗する船については極秘事項の為詳細は控えさせてもらうが、頑丈な船だ。ソラへ行くに当たっての心配はない。ルナツー到着後は向こうの責任者から改めて説明があるだろう。今のところはルナツーに長期滞在する事になると思うが、場合によってはサイド7へ移るかもしれないな。とにかくだ、君達の本格的な訓練がそこから始まるという事だ」
「あの」
 アリアがおもむろに口を開いた。
「何だい」
 グンが優しく返した。
「訓練というのは具体的にどのような事をするんですか」
「ふむ」
 それを聞くとグンは考え込むように腕組をした。
「実NTについて我々は分からない事だらけだ。はっきりと言えばどのような訓練を施すべきか手探り状態だ。君達は宇宙での生活に慣れることだけ考えればそれでいい。それがひと段落すれば君たちの先輩であるWB隊のデータを参考にシミュレート訓練を行なうだろう。しかし、それはもう少し先の話だ」
 彼の説明を聞いても、アリアも出来杉もツンも不安を払拭できなかった。
 むしろ釈然としない説明に不安が増すばかりである。
「大丈夫だ、我々が全力で君達のバックアップを行なうから。君達は安心して空へ行けばいい」
 しかしグンがそう言ってもアリア達の顔は一向に晴れなかった。

  • 67 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/04/19(日) 23:57:35.92 ID:myFL5KE0

 それから30分ほどグン少佐によりルナツーへの移送手順を詳しく説明され、出来杉達はそれぞれ分厚い報告書を手渡された。
 グンからは各自それらを読んでおくようにと言われると、出来杉達はそれぞれうんざりしたように苦笑いを浮かべた。
 そうしてそろそろグン少佐の施設から出る頃合という時、グンの無線が鳴った。
「こちらグン少佐」
 そういって無線をとると、グンはいくつか無線と言葉を交わし、驚いた表情をした。
「本当に手配が出来たのか。よかった、WBがジャブローに到着していたのは知っていたが、彼らは多忙だからな」
 そう言ってグンは再びいくつか言葉を交わすと無線をきった。
「いい知らせだ」
 グンは出来杉達へ顔を向けると笑顔でそう言った。
「もうすぐここに連邦を代表するNTが来てくれる」
「NTというとまさか」
 ショー大尉は興味深げな顔で言った。
 それにグンは得意げな表情で返した。
「そうだ、アムロ=レイだよ」
最終更新:2009年09月28日 10:44