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  • 155 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/04(土) 14:21:39.63 ID:5fX5OR20

「それで、これからどうするの?」
 ガンダムがジムのレーダー圏外になった頃アリアが呟いた。
「どうするって……」
 アリアの言葉を聞いて難しい顔をするツン。
 その表情には不安が見て取れる。
 それもその筈だった。
 例え3人がNT適正者として特別待遇を受けているとはいえ、許可無くMSを操縦した罪は無い。
 当然、何かしら罰せられるのは目に見えていた。
 しかしツンはそれ以上その事を考えなかった。
 フン、と一度鼻を鳴らすツン。
「どうするもこうするも無いじゃない。私は私のしたいようにするだけよ」
 ツンは自分がジムに乗った事を全く後悔してはいなかった。
 それだけじゃない。
 ツンは出来杉とアリアが自分について来てくれた事が凄く嬉しかった。
「もう、ツンちゃんはほんとに考えなしなんだから」
 アリアはやれやれというようにそう言った。
「でも私、ツンちゃんのそういうところが大好きだな」
 満面の笑みを浮かべるアリア。
「そんな言い方されても素直に喜べないわよ」
 そう言うツンの顔もまた笑顔だった。
 出来杉もまたそんな2人をみて笑顔になった。
 タイムマシーンの事故に遭ったあの日。
 あの日以来、突然今までと違う世界に紛れ込んだ出来杉は、難民キャンプではその日を生きるだけで精一杯だった。
 毎日不安と孤独に押しつぶされそうで、笑顔を見せる余裕なんてあるはずも無い。
 そんな彼がこうして笑顔を取り戻せたのは紛れも無くアリアとツンのおかげなのだ。
 出来杉は2人が傍に居てくれることが本当に嬉しかった。

  • 156 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/04(土) 14:23:06.30 ID:5fX5OR20

「でも、確かに勝手に乗った事がばれたら面倒ね」
 そう言うツンに出来杉は微笑んで返した。
「ジムに乗った事なら大丈夫さ。今回は事が事だからね。ジムのパイロットが死亡していた事を説明した上で、”ジャブローの防衛を最優先考慮した上で最良と思われる措置を講じました”、とでも言っておけば注意勧告くらいで済むと思うよ。もしもそれでも済まなかったらアムロさんを頼ってもいいし」
 そんな出来杉の言葉に、ツンも微笑んで返した。
「そうよね。むしろシャアを撃退した功績で勲章くらい貰えるかも」
「そうだよー。アッガイもやっつけたし!」
 ツンの言葉にアリアが嬉々として付け足す。
 そんなアリアにあきれたように、」ツンがため息をついた。
「本当にアッガイが好きなね」
「だってかわいいんだもん」
「そんなにかわいいかしら」
 よく分からないわね、とツンが首を傾げる。

 そうやって3人がやりとをしていた時、突如コックピットに無線の音が響いた。
『緊急報告! 緊急報告! 現在ジャブロー上空にジオン軍攻撃空母が複数接近中! 繰り返す、現在ジャブロー上空にジオン軍攻撃空母が複数接近中!』
 その無線を聞くとツンは顔を引き締めた。
「私は戦うわ。もちろん2人とも着いてきてくれるわよね?」
「うん」
 出来杉とアリアは2人とも頷いていた。
 そして3人は地上でのジオン軍の迎撃にむけて機体を発進させた。
 ふと、出来杉は思う。
 僕は苦しむみんなを救う為に僕は軍に入った。
 その決断が間違いだったとは思わない。
 だけど、誰しも救う事なんて不可能な事くらい分かってる。
 だからせめて、この2人だけは何があっても守り通す。
 出来杉はそう決意していた。

  • 157 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/04(土) 14:26:24.94 ID:5fX5OR20

 UC0079 11月7日

 ゴオオオオオオ

 高速航行するガウ攻撃空母の中では風の音が鳴り響いていた。
 そのガウに格納されているのは2機のグフと1機のドムである。
 各機とも迫り来る出撃に備え、既にパイロットが乗り込み機体の最終調整を行なっている最中だった。
『君達053小隊には先陣を切ってもらう事になる。この戦いの命運は君達に懸かっていると思ってくれ』
 ガウの艦長から直々の入電が入る。
「はっ、任せてください」
 小隊の隊長であり、ドムのパイロットであるドムカッテ=ハ=ゲール中尉が小隊を代表してそれに答えた。
『期待しているよゲール中尉。北米で荒野の狼とまで呼ばれた君の実力、遺憾なく発揮してくれたまえ』
 そう言うと艦長は通信回線を切った。
 完全に通信回線がオフになったことを確認すると、ゲールは頭の後ろで腕を組みシートに背中を預けた。
「気楽な事を言ってくれる」
 艦長の言葉が彼は気に入らなかった。
 いや、艦長というよりは今回の作戦を立案した上層部の人間が気に入らなかった。
 オデッサでの敗北以来、ジオン軍は地上での劣勢を強いられている。
 その形勢を一挙に逆転すべく敵の大本営であるジャブローに大打撃を与える。
 それが今回の作戦だった。
 作戦の重要性から今作戦には、地上の主力部隊の大半が回されているという。

  • 158 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/04(土) 14:26:43.83 ID:5fX5OR20

 しかし、だ。
 ジャブローは連邦の隠蔽工作によりその殆どが秘密のベールに包まれている。
 よってジャブローがどれほどの防衛能力を備えているかは未知数である。
 だが、どれほどジャブローの防衛力を過小評価したとても、ジャブローを落とすには戦力不足なのは明らかだった。
 上層部とてそんなことは百も承知である。
 よって実際に各部隊に出されている命令はジャブローの宇宙船ドッグの破壊だった。
「まったく、馬鹿らしいな」
 要するにこの作戦の目的は連邦の宇宙侵攻の時間稼ぎという事だ。
 ジャブロー攻略作戦と銘打たれた割りに、あまりに陳腐な内容である。
「第一、水陸両用機は別として。地上を歩く事しか出来ないMSをガウから投下させてその後はどうする? 相手はジャブローだというのに」
 もとよりこの作戦にはMSの回収など考慮に入れられていない。
 ゲールは前世紀の戦争における特攻隊という言葉を思い出していた。
 そう考えるとゲールの怒りは収まらなかった。
「我が軍はこんな無意味な作戦の為に地上戦力の大部分を失おうというのか」
 怒りを鎮める為に彼は瞳を閉じた。
 グフに乗っている2人の部下の事を思う。
 2人とも死ぬにはまだ若すぎる。
 やるせなかった。
最終更新:2009年09月28日 10:58