- 566 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:59:38.88 ID:1ydZOty90
10月の中旬を過ぎた頃から、北米のジオン基地に対する連邦軍の攻撃が激しさを増してきていた。
連日のようにジャブローから爆撃機が飛び立つ。
ガルマが死んで指揮系統が動揺しているところを一気に制圧しようという思惑なのだと殆どの人間は思っていた。
しかしそれは間違いである。
連邦軍の雌雄を決するオデッサ作戦まで僅か20日と迫っていた。
連邦の北米に対した一連の攻撃はこれのカモフラージュのためだった。
連邦軍カラカス基地。
北米のジオン軍基地攻撃の為の連邦の拠点のひとつであり、空軍の拠点としては非常に大きな意味を持っている。
その基地の司令であるスカルチノフ大佐はコンピュータ画面で連邦軍総司令部との情報交換を行っていた。
「この頃北米におけるジオン軍は相当弱体化してきています。ホワイトベース隊の活躍が相当堪えたんでしょうな」
『どうです、1つや2つくらいなら連中の基地を制圧できませんかね?』
そう言って総司令部の司令官は笑った。
「まぁ現実的にはなかなか難しいですな。今のところ地上戦ではやはりMSには敵いませんよ」
と言ってスカルチノフは苦笑する。
『しかしそれももう少しの辛抱です。こちらのMS量産体制も殆ど整いつつある。GMが量産されればジオンなど敵ではありません』
「そうですな」
とスカルチノフが言うと、2人は笑った。
『あぁ、それと例の件ですが。どうです、素質のありそうな人間は見つかりましたか?』
「残念ながら一向に進みませんな。やはりNTはアースノイドからは生まれないのでしょう」
- 611 名前: kaba ◆LFo7ovRW0Q 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:28:37.41 ID:LVwK0Oq50
『ふむ』
そう言うと総司令部の士官は難しい顔をした。
『完全なNTでなく、あくまでも素質を持った人間でいいんです。素質を持っただけの人間ならアースノイドにもいる可能性はあります』
そう言う総司令部の士官にスカルチノフは頷いた。
2人とも連邦軍内でいわゆる”レビル派”と呼ばれている派閥の人間だった。
特にスカルチノフは熱心なレビルの支援者であり、MSやNTの軍事利用に積極的に賛成していた。
「MS開発においてもNT研究においても我々はジオンに遅れていますからな。出来る限りの事はやります」
『どうかお願いします。WB隊を見ての通り、計画が上手くいけばNTは相当な戦力になりますから』
「えぇ」
『それでは、また何か情報が入り次第連絡をお願いします。それでは』
と言うと総司令部の士官は通信の電源を切った。
ふぅ、とスカルチノフはため息を付く。
「NT部隊の創設か」
と呟いてみるスカルチノフ。
それに必要なNT資質者を一体何人集めなければならないのだろうか。そう考えるとスカルチノフは頭が痛くなった。
しかしこれは必ずやらなければならない。
ジオンは既にNTを研究し軍事転用するための機関を設立したという。
それに比べると連邦のNT研究はあまりに遅れていた。
というより、まだ始まってすらいない状態である。
だから連邦はダメなのだ、とスカルチノフは思う。
- 647 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 00:54:23.90 ID:LVwK0Oq50
地球連邦のいつまで旧態依然とした体制がジオンなどという物を生み出したのだ。
レビル将軍が台頭してからは大分変わってきつつあるが、それでも連邦の士官には古い頭の人間が多すぎる。
MSにしても、もっと早く開発計画に移っていれば地上の3分の2を支配されるなどと言う失態を犯さずにすんだはずだ。
そう考えるとスカルチノフの血圧は急上昇した。
「ぐぬぬ、いかんいかん」
スカルチノフは慌てて血圧を下げる薬を飲んだ。
気分が落ち着くまで安静にするスカルチノフ。
とにかくである。
今の連邦軍内では殆どの士官は役に立たない。
ここは自分達レビル派が頑張らなければならない、とスカルチノフは決意した。
「明日にでも難民のNT適性試験でも見学に行くべきか」
戦時とは言え一般市民にNT適性を試験を受けさせる事は難しい。
だからこそ、難民と言う特殊な状況下の人間を利用する必要があった。
難民を登用する理由などはいくらでも捏造できるからである。
それは確かに汚い手ではある。しかしこの戦争に負けるわけにはいかなかった。
スカルチノフは深夜までNT適性についての資料を読みふけっていた。
- 693 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:31:53.44 ID:LVwK0Oq50
地球上のほぼ全てが戦場となった今大戦において、それによって生じた難民の数は既に連邦政府の管理力を遥かに超えていた。
誰が死んで、誰が生きているのか、そんなことすらも定かでない状態である。
だから連邦の難民管理局は当たり前のように出来杉を難民として処理していた。
南米北部にあるとある難民収容所の中で、出来杉は一人頭を抱えていた。
彼がこの世界に迷い込んでから既に2週間。
だと言うのに彼はドラえもん達の情報を得るどころかこの収容所から外に出ることすら出来なかった。
その上にいくら自分の事情を説明しようとしても、連邦の当局者達は子供の戯言と取り合ってくれない。
治安が悪く、食事すらもまともに支給されないここは出来杉が暮らすにはあまりに辛すぎた。
さらにこの収容所には各地から難民が送られてくるのか、言語もバラバラであり日常会話程度の英語ならマスターしている出来杉でも困る事が多かった。
ただ一つの利点は、難民達の会話からこの世界については色々と知ることが出来た事だろう。
アースノイドとスペースノイドの対立、コロニー落し、MS。
これらについて出来杉はかなりの事を知っていた。
つまるところジオン公国は悪である、と出来杉は思う。
理由はどうあれジオンが武力攻撃を仕掛けたのが発端である。
おまけにコロニー落としという無差別殺戮。
連邦もとても善とは言えないが、ジオンの存在は出来杉の知る限り確実に悪でしかない。
難民で溢れかえる収容所を見渡す。
この人達を救う方法は無いのだろうか、と出来杉はそんな事を考えていた。
- 760 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 02:04:09.59 ID:LVwK0Oq50
いつものように食事の配給が終わると、出来杉はひとまず今日も食事を確保できた事にほっとした。
なにせこの収容所に支給される食事の量は明らかに難民の数に対して不足している。
おまけに1人で数人分の食事を取ろうとする人間も居るので、何も食べられない日も珍しく無い。
出来杉が収容所の片隅で食事を取っていると、一人の女の子が出来杉に話しかけてきた。
「はぁ、私今日も食事取り損ねちゃったよ」
と言いながら女の子は出来すぎを羨ましそうに見つめる。
彼女の名前はアリア。
この収容所で知り合った数少ない出来杉の友人である。
「残念だったね。僕のを半分あげるよ」
出来杉は笑顔でそう言うとアリアに自分の食事を差し出した。
「本当にいいの?」
すまなそうな顔でそう尋ねるアリアに出来すぎは「うん」と答えた。
「ありがとうエイサイ」
そう言って微笑みながら出来杉の食事を受け取るアリア。
出来杉はそんなアリアを優しい目で見つめる。
アリアには両親が居ない。
彼女の両親は戦争に巻き込まれて死んだ。
アリアは戦争孤児である。そんな子供がここには数多く居る。
出来すぎも周りの人間からそのように見られていたが、現実は違う。
孤児である彼らは、出来杉が今までに体験した事の無い恐怖の中を渡り歩いてきたのだ。
最終更新:2006年11月07日 18:39