アットウィキロゴ
  • 483 名前: VIP村人a 投稿日: 2006/11/13(月) 21:09:20.53 ID:OhDAvG4Z0

 出来杉の心の中に軍に対する怒りが渦巻く。
 そんな出来杉の表情を見て、そっと出来杉の手に自分の手を重ねるアリア。
「ねぇ、エイサイ」
 小さくそう言うとアリアは出来杉の目を見つめた。
「私はエイサイと居られるだけで嬉しいんだよ?」
 そして微笑むアリア。
 だからそんな顔をしないで、と無言で訴えるアリア。
 その言葉を聞いた瞬間、出来杉の怒りは消えていった。
 黙ってそれに頷く出来杉。
 この世界に迷い込み、ドラえもん達とも逸れ、出来杉は何も持っていなかった。
 だから今、アリアのこの笑顔が出来杉の全てなのだ。
 アリアは戦争で親を失い、その上軍隊に引き込まれてしまった。
 しかし運命はこうして2人をここに引き合わせている。
 もしも戦争で危険が迫っても、必ずアリアだけは守り通してみせる。
 出来杉は心の中で、かたくそう誓った。

  • 514 名前: VIP村人a 投稿日: 2006/11/13(月) 21:30:52.28 ID:OhDAvG4Z0
やがて他のNT適性者達という人間達が10人ほど集められると、全員がそれぞれ自己紹介をさせられた。
 そして全員一通りの自己紹介が終わると、責任者の士官が口を開いた。
「どうだ君達。お互いに何か特殊なものを感じたりするかね?」
 と適性者達に尋ねる士官。
 しかし適性者たちは士官の言葉を聞いても何の事やらという顔をするだけである。
 そんな様子を見て士官は肩を落とした。
 こんな状況を予想はしていたが、実際になんの反応も無いと落胆の色を隠せない。
 はぁ、と一度だけため息をつくと、士官は気を取り直して話を続けた。
「まぁ何も感じないのも仕方が無い事だ。君達はNT適性者ではあるが、今現在NTであるわけではない」
 士官がそう言うと、また適性者達の大半が不思議そうな顔をする。
「そもそも君たちにはまだNTとは何なのか、それについて説明していなかったな。まずはそこから始めよう」
 そう言うと士官は部下の研究員に命じてプリントを適性者達に渡させた。
 そのプリントにはNTについての簡単な説明が書かれている。
「NTとはジオン=ズム=ダイクンが提唱した人類の革新を指す。宇宙に進出した人間が、今まで地上では使う事の無かった脳の機能を活性化させ、新たなる能力を手に入れるというものだ。その辺りの事はプリントに書いてある通りだ」
 士官がそう言うと、適性者の一人が挙手した。

  • 523 名前: VIP村人a 投稿日: 2006/11/13(月) 21:45:14.00 ID:OhDAvG4Z0
 士官がそう言うと、適性者の一人が挙手した。
「なんだ?」
「私はアースノイドです。今まで宇宙に出たことはありません。それでもNTの適性者なのですか?」
「うむ」
 そんな適性者の疑問に士官が頷く。
「確かにNTはスペースノイドから生まれる。しかし、それは人間が宇宙に出たことで脳に特殊な変化を起こした、という事とは少し違う」
 そう言うと士官は難しい顔をして腕を組んだ。
「我々の考えでは、おそらく人類は本質的にNTとなる素質、言ってみればNTの種のような物を持っている。アースノイドだとうと、スペースノイドだろうとな。
NTとは宇宙に出てその種を開花させた人間、だと我々は考えている。君達はさしずめ”開花しやすい種”を持っている人間、といったところだ。まぁ、NTについての研究はまだ始まったばかりで、詳しい事はよく分からんがね」
 そう説明する士官。
 その言葉に、質問をした適性者は複雑な表情をした。
 いや、その適性者だけでなく、この部屋に居る人間はみな俯いている。
 結局、彼らはNTを研究する為のただの実験体でしかない。
 普通の人間よりは勘の鋭い彼等であるから、それがどういうことかは言わずとも分かっていた。

  • 540 名前: VIP村人b 投稿日: 2006/11/13(月) 22:13:15.91 ID:OhDAvG4Z0
「それでは本日の説明は終わりだ。明日からは機動兵器の適性を測る。自室に戻ったらよく休んでおけ」
 士官は一通り説明すると、敬礼をした。
 適性者達も既に連邦軍の軍人であるからそれに敬礼で返す。
 そして士官が部屋から出ると、適性者達も基地内で割り当てられた自室に戻るべく歩き出した。
「ねぇねぇ、エイサイの部屋番号は何番?」
 歩きながら出来杉にそう話しかけるアリア。
「僕の部屋は017番だよ」
 出来杉が答えると、アリアは「やった」と喜んだ。
「私は016番なんだ。隣だね!」
 そう言うアリアの姿は本当に嬉しそうである。
 出来杉はそんなアリアの存在が本当に嬉しかった。

「それじゃ、また後でね」
「うん。ばいばいエイサイ」
 2人はそう言うと部屋の前で別れた。
 カードキーで自室のロックを解除して部屋に入る出来杉。
 出来杉は部屋に入るなり連邦の軍服を脱いでハンガーにかけると、すぐにベッドの上に横になった。
 この世界に来てからと言うもの、出来杉には心休まる時間が無い。
 体力的にもかなり辛かった。
 特にここ数日は目まぐるしく自分の置かれる状況が変化したために、出来杉の精神は大分やられているのだ。
「僕はこれからどうすればいい?」
 出来杉は天井を眺めながら、そんなことを呟いてみた。
 このまま軍人として生きるのか?
 脱走してドラえもん達を探すのか?
 しかし、どんな事を考えてみたところで、軍という巨大な流れの前に出来杉は流されるしかなかった。
 今自分に出来ることなど何も無い、と出来杉は思う。
 それならせめて、自分の信念だけは守り通さなくてはならない。
 今はアリアの為に、そして戦争で苦しんでる誰かの為に軍人であろう。
 そんな事を考えながら、出来杉の思考は眠りの中へ落ちていった。
最終更新:2006年11月14日 10:54