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  • 11 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/03/28(土) 20:09:36.83 ID:VdfoLAo0

「むー」
 研究員が部屋を出て行くと、アリアは残念そうにそう唸る。
「私、MSの操縦なんてやだ」
 そう言うアリアを見ると出来杉はそんなアリアを励ました。
「いいんだよ、気にすることは無いさ」
 実際出来杉はそう思った。
 むしろ「MSの操縦なんてやだ」と言ったアリアを嬉しいとさえ思う。
 アリアはとても純粋な性格をしている。
 そんな彼女に、MSなんて兵器を好きになって欲しくは無いのだ。
 アリアに笑顔を投げかける出来杉。
「ほら、元気を出してアリア」
 そんな出来杉にアリアも少しだけ明るさを取り戻す。
「うん」
 小さく頷くアリア。
 そんな彼女にツンも声をかける。
「確かにシミュレーターの結果なんて気にする必要ないわ。あんなものはNTの素質と何にも関係ないもの」
 そう言ってアリアに向き合うツン。
「NTの能力は人と深く共感しあう事の出来る力なのよ。あんなコンピューターのMSを撃破するシミュレーションなんて、本質的には関係ない事よ」
 ツンが言うと、出来杉もそれに同意する。
「僕もそう思う」
 そう言って少し難しい顔をする。
「そもそも、NTの能力は戦争になんて使われるべきじゃないんだ」
 その出来杉の言葉を聞くと、ツンとアリアも複雑な表情をした。


  • 13 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/03/28(土) 21:20:39.91 ID:VdfoLAo0

 地球連邦軍統治下のタイ国境。
 ここにジャイアン達を連れてたどり着いたホイは、翌日には自慢のその料理の腕で定食屋で働いていた。
 その店はホイの専門である中華料理の店ではなかったが、ホイにはどんな料理でも作る自信がある。
 実際、店長はホイの作った料理を試食すると即採用を決めた。

 昼になって店が込んでくる時間帯になると、厨房は大忙しになる。
 決して大きな店ではないが、それでも40人程度の客は入れるし出前もある。
「本当にホイ君がうちの店に来てくれてよかったよ」
 休む暇なく料理をしてるホイをみて店長がそう声をかける。
「手際がいいし腕も確かだ。客の間じゃホイ君が来てからウチの料理が美味くなったって評判だ」
 そう笑いながら話す店長。
「いえ、お礼を言うのは僕のほうですよ。こんな世の中で俺みたいな男を雇ってくれる人なんて店長くらいなもんです」
「ハッハッハ。こんな時世の中に、か。むしろこんなご時世だからこそ君を雇ったんだよ」
 そう言いながら店長は料理を一品作り終え、それを皿に盛り付けた。
「お~い、タケシ! この品をアッチのお客さんに持って行ってくれ!」
 店長がそう言うと、カウンターからジャイアンが入ってくる。
 店長はそんなジャイアンに皿を渡すと、客の居るテーブルを指差す。
 それに分かったと頷くと、ジャイアンは皿を持って歩いていった。

  • 14 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/03/28(土) 21:49:56.61 ID:VdfoLAo0

「やはり子供だよ。頭がやらかい。なんだかんだで言葉もすぐに飲み込んじまう。あの子達は確か日本人だっけか?」
「えぇ、そうです」
「日本の方じゃあ結構な激戦だそうだからな。島国だけにでかい戦闘が起こると逃げ場が無い。この辺りにもかなり日本人が逃げてきたが、口をそろえて酷い惨状だったと言ってるよ。あの子達もきっと相当な苦労をして来たんだろうな」
 そう言いながら悲しそうな顔をする。
「日本に限ったことじゃねえ。戦争ってのは子供だろうと容赦はしてくれん。そんで、いつだって一番辛い思いをするのはなんの罪も無い子供達だ。だからこそ大人がしっかりして子供を守らなきゃならんというのに」
 そういうと店長は何かを思い出すような遠い眼をしてた。
 ホイにはその眼がとても悲しそうに見えて、きっとこの人にも何か辛い過去があったのだろうだろうなと彼は思った。
「子供を守るどころかこんなご時世じゃ自分一人食いつなぐどころか精一杯だ」
 店長は乾いたように「ヘッ」と笑った。
「精々、こうしてフライパンをひっくり返すくらいしか出来やせん」
「店長、そんなことなんて無いです。俺はそれはとても素晴らしいことだと思います。現に俺もタケシもスネオも、そしてここのお客さん達だってみんなこの店に助けられてるんですから」
「ありがとうホイ君。そう言ってくれると本当に嬉しいよ」
 そういうと店長は寂しげに笑顔を作った。
「だけど、俺は自分の息子が殺されたとき何も出来なかった。ただ銃撃とか砲弾の爆発に怯えてただけだったんだ。俺はたった一人の息子さえ守れない糞野郎だ」
「店長……」
 ホイは店長の肩にそっと手を差し出した。
 店長の目には涙が浮かんでいた。

  • 15 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/03/28(土) 22:25:27.35 ID:VdfoLAo0

 連日ホイ達は忙しなく働いていた。
 タイ国境の周辺には数え切れないほどの難民が集まっていたが、軍から至急される食料は明らかに不足している。
 その為食料を求める人達は数多くおり、殆ど原価と変わらない値段でメニューを出しているこの店にはひっきりなしに客がやって来ていた。
 気が付けばあっと言う間に閉店の時間というのがホイ達の毎日だった。
 店長は客が全員帰ったのを確認すると、いつものようにジャイアン達に店の掃除を命じた。
 ふと思い出したように店長が「そう言えば」とホイに話しかけた。
「ホイ君。君も聞いてると思うが最近ここいらは大分治安が悪い。兵隊の目を掻い潜って薬やなんやで商いしてる連中が増えた」
 そう言って顔をしかめる店長。
「難民の多くには職もなければ金も無い。連中はそういう人達に付け込んで利用しようとする。君にも妙な話を持ちかけてくる人間が居るやもしれんが気をつけてな」
 そう言う店長にホイは頷いた。
 こういった事情は何処にいても同じなんだな、と思う。ホイが住んでいたシーエンは、確固とした統治が無かった分もっと酷かった。
 戦争はあらゆる物を奪う。
 財産を奪い家族を奪い、人の心も奪う。
 誰だって生きるだけで精一杯になって、食っていくためには善も悪も言ってられなくなる。
 そういう人間たちをマフィアが顎で使って、麻薬や覚せい剤をばら撒く。
 そして最後にはチンピラや難民の命そのもので金を稼ぐ。

 それはきっと何処に行ったって変わらない。
 今は世界中が戦争で荒廃している。
 真っ当に生きられるほど優しい世界じゃない。

 だからこそだ、とホイは思う。
 不意に掃除しているジャイアン達をホイは見つめた。
 ホイにはいま4人の子供の命が圧し掛かっている。
 だからこそホイが真っ当に生きなければならなかった。


  • 16 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/03/28(土) 22:43:39.74 ID:VdfoLAo0

 キャリフォルニア第一MSパイロット養成学校の校長室で、校長は椅子に座りながら軍から送られてきた書類に目を通していた。
 そして資料に一通り目を通すと、書類を両手でトントンと揃える。
 資料は全てのび太達訓練生による第13基地防衛戦に関するものだった。
「訓練生のノビタ=ノビを送り出す件だが、どうやら一週間後という事で決定したらしい。それも月へではなくフラナガンの本部があるサイド6にだそうだ。わざわざ本国より通達が来たよ」
「なんですって」
 初学年Aクラスの担当教官は驚きのあまりついそう漏らした。
 そんな彼を尻目に、校長は話を続けた。
「あの活躍だ、軍が固執するのも無理は無い。何せ今のジオンにとってもっとも足りないものは人的資源だからな。その上彼は”若き救世主”としてジオン全土から注目を浴びつつある。ここから送り出すには彼は若すぎるが、この流れを我々が止めるなどできんよ」
 校長は教官をなだめるように、優しげに話す。
 しかし、教官の眼光は厳しかった。
「ですが学校長、ノビをフラナガンへ送り出すのはせめて基礎訓練を終えてからという条件だったはずです!」
 教官は厳しい口調でそう言った。
 校長はその教官の顔を見て、若いな、と思う。
 生徒を想う情熱は理解できるが、しかしそのような情は時としては組織を乱し、瓦解させる。
 教官とてそのくらいの事は百も承知だろう。
 その上でこのようなことを口走ってしまうのは、やはり彼がまだ若いからに違いない。
 だが校長として、彼はそんな甘さを容認するわけにはいかなかった。
 校長は複雑な気持ちで一度だけため息をついた。

  • 17 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/03/29(日) 02:33:43.10 ID:wfvQbqU0

「君の気持ちは分かるがね、作戦というものも命令というものも流動的なものだ。我々はその歯車のひとつでしかない」
「しかし校長。彼にはまだ戦士として生き残る術も、志も、まだ何も教えられていません。いくら操縦技術に秀でていたところで、このままでは彼は――!」
「それ以上は慎みたまえ」
 怒りの感情をあらわにする教官を、校長は鋭い目つきで睨み付けた。
「分が過ぎるぞ。君は一人の人間である以前にジオンの兵士だ。君も私も所詮は軍の資源にすぎん。それは生徒とて同じことだ」
「では、みすみす犬死させろと? エースなどとはやし立てられたところで、その実情は常に苦しい任務に回されるだけの、いわば上層部の尻拭い役ではないですか! そんな役をあんな年端も行かない子供に担わせろと?」
「黙らんかっ!!」
 教官の言葉に、今度は校長が激昂した。
 その剣幕に、教官も一瞬怯んだ。
「慎めと言っただろう。上層部の決定は絶対だ。それに逆らうというのなら、ジオンに逆らう反逆者と同義。一介の兵士風情に許されたことでは無いぞ」
 怒りのこもった校長のまなざしに、教官は俯く。
 教官は怒りをかみ締め、強く腕を握った。
「――、すみませんでした校長」
 教官は顔を伏せながらそう言った。
 彼にはそう言うしかなかった。
「分かればいい。このご時世どこで誰が聴いているかもわからんぞ。売国奴のレッテルを貼られたくなければ今後も口には気をつけることだ」
「はい」
「それでは、ノビタ=ノビの件は後はこちらで処理する。君は準備だけさせておけばそれでいい」
「はい。それではノビタ=ノビには、サイド6への移動の件を早速伝えます」
 そう言うと教官は敬礼した。
 その表情はひたすらに厳しかった。


  • 18 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/03/29(日) 02:34:55.23 ID:wfvQbqU0

 のび太がサイド6へと移送されることを聞いたのはつい先日のことだった。
 その日の朝、のび太は一時間目の訓練が始まる前に突然教官に呼び出された。
 そして突如一週間後に宇宙へ行ってもらうと告げられたのだ。
 当然のび太は驚いたが、教官はそんなのび太を労わる様子も無く、早々に荷物をまとめておけ、とだけ言ってのび太を返した。
 教室に戻るなり、のび太は早速フレンやライ達にそのことを打ち明けた。
 みんな複雑な表情だった。
 フレンやマグは「宇宙行きはジオン兵にとって光栄なことだよ」とのび太を称えたが、その顔はやはり寂しげだった。
 みんな口々にのび太を勇気付ける言葉を口にする。
 最初はこのクラスでのび太を認めているクスメートなんて居なかった。
 しかし今はみんながのび太を仲間と認めていた。
 特にフレンやライ達にとってのび太はただの友達ではない。
 共に命を懸けて戦った戦友なのだ。
 それはのび太にとっても同じである。
 のび太は感情を抑えきれず涙を見せた。

  • 19 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/03/29(日) 02:37:15.19 ID:wfvQbqU0

 それが昨日のことだった。
 のび太は自室のベッドの上でそのことを思い出していた。
 窓からは朝日が差し込んでいて、意識もしっかり起きている。
 だけど、のび太はどうしても起き上がる気になれなかった。
 授業は明日まで通常の訓練を受けるが、明後日からは宇宙への打ち上げに際するを教習を受けなければならない。
 つまり、これまでのようにみんなと授業を受けられるのは明日で最後なのだ。
 それを考えると胸が張り裂けそうだった。
 もともとこの学校だって来たくて来た場所じゃない。
 それでもフレンやライ、そしてマグ、ナー。それ以外のたくさんの生徒達と友達になれた。
 そんな仲間達が居たから今まで頑張ってこれたんだ。
 その仲間達と離れるのは本当に辛かった。
 まして、今度の行き先は宇宙である。本当の孤独だ。
 いくら[たぬき]だって、宇宙まで探し当てるとなると簡単な事じゃない。
 もしかしたらもう[たぬき]達に合うことも、もとの時代に戻ってパパやママに会う事もできないのかもしれない。
 そう思うとのび太は嗚咽を漏らした。
 しかし、そんなのび太の悲しみを砕くように、今朝も部屋の中へ授業開始を告げるブザーが鳴る。
 のび太は目から溢れた涙を袖でぬぐうと、教材を鞄に詰めて部屋を出た。

  • 20 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/03/29(日) 02:38:56.52 ID:wfvQbqU0

 教室に入る。
 生徒達は一瞬のびたへ視線を向けると、すぐに教官へ視線を戻す。
 教官がのび太に厳しい目つきで「また遅刻だぞノビ! 罰として腹筋300回!」と怒鳴る。
 いつもと同じ光景だった。
 MS戦術の基礎を説く授業は、いつも通りに坦々と進められる。
 なのに、クラスの皆、教官までもがどこか悲しげな顔をしていた。

 今日の教習と実技訓練が全て終わり、のび太は自室に戻った。
 部屋の明かりも付けずに、ひとまずベッドの上に転がる。

 二時間目の軍事近代史も。
 三時間目の身体訓練も。
 昼食の時間も。
 四時間目のMSシミュレートでも、皆がのび太を気遣って優しく声をかけてくれる。
 そしてのび太の宇宙行きを喜び、寂しがってくれている。
 その度のび太はやっぱり皆と別れるのがとても辛くて、怖くて、考えるだけで泣きそうになってしまう。
 だけど、とのび太は思う。
 こんな僕でも皆は認めてくれた。
 僕は胸を張って宇宙へ行かなくちゃいけないんだ。
 のび太は心に誓った。
 僕はもう泣かない、と。
 窓の外を見る。
 日は既に傾いていて、月が美しく輝き始めていた。
最終更新:2009年09月28日 10:38