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  • 871 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 02:13:56.65 ID:1ydZOty90

「よしっ! いいぞのび太君っ!!」
 ガッツポーズをとるジョルジュ。
 戦車は爆発こそしないもの、もはや使い物にならない損傷を被った。
「さぁ、2つ目に行くぞ!」
 そう言うとジョルジュはソナーに映った2台目の戦車を機体操作で正面に捉える。
 その動きはただの科学者の操縦に留まらない域だった。
 のび太もソレを即座にロックオンし、次の瞬間には射撃を命中させまたもや戦車を大破させた。
 そして、それと同時に3台目の戦車に対して側面に回りこむ運動を取る。
 2人はただ目の前の戦車に夢中で殆ど気付いていないが、それは正しくエースパイロットそのものの動きだった。

 それを見た連邦の兵士は、きっと誰もがそのMSに恐怖しただろう。
 第13基地から試作型ドムが出撃してから僅か20分もたたない間に、連邦の戦車部隊の半数以上が既に飲み込まれていた。
 ザクマシンガンの連射される重低音に続いて、戦車が被弾する鈍い音が鳴り響く。
 それが絶え間なく繰り返される。
「14!」
 ジョルジュがそこまで数えた所で一斉に連邦の戦車達が後退を始めた。
 それを追おうとした瞬間、警告音と共にモニターにエネルギーの残容量が少ないことを知らせる表示が現れた。
 このまま追うかどうか思案するが、ジョルジュはここで基地に帰還することに決めた。
 敵を逃したのは惜しいが、敵が後退したということはジョルジュの勝利である。
 それを危険を冒して追う必要は無かった。
 それに、ジョルジュはのび太の事が心配だった。

  • 910 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします[] 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 02:32:42.94 ID:1ydZOty90

「のび太君、本当にありがとう。君のおかげで俺達は」
 そう言って安堵の表情を作るジョルジュ。
 冷や汗で汗だくになったのび太は、額の汗を拭うと照れた様に笑った。
「僕はただ射撃をしただけです」
「何を言うんだ。君があれだけの射撃が無ければ俺は今頃あの世さ。俺には実戦レベルで射撃と機体の運動を同時にこなす事なんて出来ないらな」
 ジョルジュがそう言うと、2人は目を見合わせて笑った。
「それじゃあ、基地に戻ろう」
 そう言って操縦桿を倒すジョルジュ。
 そんな時のび太の目に大破した戦車の姿が目に映った。
 その瞬間、のび太は自分がやってしまったんだと一気に恐怖に支配された。
 戦っている間は夢中で相手のことなんて考えられなかったけど、終わった後にその惨状を見ると辺りはまるで怪物に蹂躙されたかのようになっている。
 ジョルジュはそんなのび太の姿を見ると口を開いた。
「ザクマシンガンの威力じゃ戦車の中の人はそうそう死んだりはしないよ。気にする必要は無い」
「だけど……」
「それに、もし死んだとしてもそれは君のせいじゃない。責任は全て俺にある」
 のび太はそれでも俯いた。
「のび太君。それは相手だって同じさ。これは戦争なんだ。彼らだって俺達を殺すつもりだったし、死ぬ覚悟があってここまでやって来た」
 ジョルジュはそう言ってのび太を慰める。
 それは確かに正論なのかもしれない。
 しかしそんな言葉で庇うにはのび太は純粋すぎた。

  • 226 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 19:45:41.97 ID:1ydZOty90

 ジョルジュとのび太が基地に帰還すると、2人は英雄のように出向かわれた。
 それも当然だろう。
 第13基地の全戦力はMS小隊1部隊、戦車小隊2部隊、戦闘機小隊1部隊。
 その内戦車小隊は全滅。戦闘機小隊もドップが2機残っただけである。
 もしも彼らが出撃していなければ基地は確実に全滅していただろう。
 13基地の兵士達はジョルジュとこの若きエースを称える祝賀会を開いた。

「いやぁ~、見直しましたよぉジョルジュ先輩! あの操縦技術ならウチの会社をリストラされてもパイロットとして食っていけますね!」
 と言いながらジョルジュのコップに酒を注ぐ科学者。
「ケッ、余計なお世話だ」
 科学者の言葉に悪態をつくジョルジュだが、その顔は笑っていた。
「それに俺は機体の運動操作をしただけだ。全てはのび太君の力だよ」
「意外と謙虚なんですね、ジョルジュ先輩」
 そう言うと、2人はパーティー会場の中央で兵士たちに持てはやされているのび太を見つめた。
「こんな小さい坊主が、戦車を14も墜とすとはな。坊主すごいぞ!」
 と言いながら、がっちりした体格の兵士がのび太の頭を撫でる。
「まったく、こんな子供にあんな射撃を見せられちゃ商売上がったりだぜ」
 と、今度は予備MSパイロットの男が苦笑する。
「ほらほら、ノビタもっと飲め! 食え!」
「これも食べろ!」
 そう言いながらお菓子やジュースを次々差し出す。そんな言葉も通じない屈強な男たちに囲まれるのび太。
 最初はそんな兵士たちに慣れなかったが、のび太はここがとても心地よい場所だと感じた。


  • 238 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 20:01:33.86 ID:1ydZOty90

「本当に凄い子だよ」
 そう言いいながらジョルジュはコップの酒を呷った。
「それでどうするんです彼」
 科学者はそんなジョルジュに問いかけた。
「どうするって?」
「ですからテストパイロットの件ですよ」
 その言葉を聞くなりジョルジュは目を細めた。
「もうここまで来たんだ。ちゃんと後で説明して頼んでみるさ」
 と言いながらまたもや酒をあおるジョルジュ。
「それで断られたらどうするんです?」
「そうしたら仕方が無いだろう。彼は一般人だ」
 そのジョルジュの言葉に科学者は、はぁと肩を落とした。
「まぁそうですけどね、子供だし。でもそんな事だと軍にとられちゃうかもしれませんよ」
 と兵士に囲まれたのび太に視線を向けたままいう。
「そん時はそん時だ。彼のことは彼が決めればいい」
 ジョルジュもまた、そんなのび太を見つめながら言った。
 兵士達に囲まれたのび太はおどおどしながらもとても楽しそうである。
 意外とのび太には軍隊は似合っているのかもしれない、とそんなことをジョルジュは一瞬思った。
 しかし、すぐにそんな考えを否定する。
 軍隊はそんな甘い所ではない。こんな楽しい時間はほんの一瞬。それに比べて辛くて苦しい時間は永遠のように続く。
 それならまだ、自分の会社でテストパイロットとして活躍して欲しいとジョルジュは思う。

  • 250 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 20:17:34.58 ID:1ydZOty90

 そんなジョルジュのもとに酔っ払ったダディが酒瓶を持ってやって来た。
「なあああに沈んだ顔してるんだあい、英雄さん? ほらほらもっと飲んでえぇ」
 そう言いながらダディはコップではなくジョルジュの頭に酒をぶっ掛けた。
「ぐわっ!! 何しやがる大尉!!!!!」
「ガハハハハ!!! 酒は上手いだろう!!」
 ダディは大笑いしながらそう言うと、科学者の頭にも酒をかけた。

 祝賀会はそのまま夜中まで続いた。
 辺りの兵士達は殆ど酔いつぶれるか眠ってしまっている。
 さすがにそろそろゾーン家にのび太を届けなければならないと思い、ジョルジュはのび太としずかを連れてそこを出ようとした。
 その時一人兵士がジョルジュに声をかけた。
「ジョルジュさん、司令がお呼びです。その少年を連れて私について来て下さい」
 兵士の言葉を聞くとジョルジュは非常に嫌な予感がした。
 しかし司令直々の御呼びとなれば断るわけにはいかない。兵士が歩き出すとジョルジュはその後をのび太達の連れて歩いた。

「失礼します司令!」
 兵士は2度司令室のドアをノックすると、大きな声でそう言った。
「入れ」
 部屋の中から司令がそう返事をすると兵士はドアを開いた。
「どうぞ」
 そういざなう兵士に言われるままジョルジュ達は司令室に入る。

  • 268 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 20:46:49.56 ID:1ydZOty90

 中に入ると司令官が立派な椅子に座っていた。
 その男はいかにも司令と言った風の老人で、ジョルジュ達が入ってくるなり彼らに厳しい視線を向けた。
「ようこそジョルジュ君。そして君はノビタ君と言ったかな」
 司令はのび太を見つめながらそう尋ねる。
 しかしのび太は司令の言葉が分からずただ固まっているだけである。
「すみません司令。彼は日本語しか通じないんです。よければ私が通訳しますが」
 その様子をみて慌ててジョルジュが注釈を入れる。
「彼は日本人なのか?」
 司令はジョルジュの言葉を聞いて不思議そうな顔をしたがそのまま話を続けた。
「さて、今回の件だがひとまず君達には感謝する。あのままでは我が基地は連邦に占領されていたかもしれん」
「光栄です」
 司令の言葉にジョルジュはそう答える。
「しかし」
 司令が今までよりも強い口調で言うと、ジョルジュは一気に緊張した。
「軍属とは言えパイロットでない科学者と、一般人の子供がMSに乗り戦場に出る。これがどういう事だか分かるかね?」
 何も答えられずに黙っているジョルジュに、更に司令は話を続ける。
「大変な軍規違反だ。いいか? 軍規は命よりも大事なものだ。君も軍属の人間ならそれくらい分かっているだろう」
 ジョルジュの顔に大量の汗の粒が浮かぶ。
「目先の命に捕らわれて全ての兵士が軍規を犯すようになればどうなるか? それは部隊全体、時には軍全体の作戦を乱し、より多くの死を生む」
 司令はこれ以上無いというほどの険しい目でジョルジュを見つめる。
「我々はどうなるのでしょうか?」
「今回の件は軍法会議にかけなければならないだろうな」
最終更新:2006年11月07日 18:38