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  • 98 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/05/16(土) 02:20:30.83 ID:mnMWaFs0

 どれほど経っただろうか。
 施設のドアの通信機のブザーが鳴った。
 グンがそのブザーに出ると、施設のドアが開いた。
 施設の中にいる全員がその方向に視線を向ける。
 ドアの前に立っていたのは守備隊と思しき兵士と、彼に連れられて来た青い軍服の少年兵だった。
 栗毛色のパーマがかった髪に、十代らしいあどけなさのある顔をしている。
「WB隊所属のアムロ=レイ曹長です」
 そう言ってアムロは頭を下げた。
「ようこそアムロ軍曹。僕はここの責任者のグン少佐だ。そしてこの子達が……」
 そう言ってグンは出来杉たちを手のひらで指し示した。
 とっさに出来杉達は姿勢を正す。
「この子達が君と同じ素質を秘めた子供達だ。君達、自己紹介をしたまえ」
 グンがそう言うと3人とも「はい」と答えた。
「エイサイ=デキスギと申します。よろしくお願いします」
「アリア=シェイナーです。どうぞよろしくお願いします」
「私はツン=デーレラです。よろしくお願いします」
 3人がそう言うと、アムロは戸惑ったような表情をした。
「よろしくお願いします」
 アムロもまたそう返す。

  • 99 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/05/16(土) 02:24:52.85 ID:mnMWaFs0

「今回君達を引き合わせたのは他でもない。NTであるアムロ君と同じ素質を持ったこの子達を合わせることで互い何か感じるものがあればと思ってね」
「はあ。感じるもの、ですか」
 アムロは一応相槌を打ち、少年達を見渡した。
 NTと言われて紹介されたのはまだ10歳前後の子供である。
 アムロはここにいる兵士達に言いようの無い嫌悪感を覚えた。 
 アムロ自身、民間徴用された十代の少年兵である。
 しかし、彼はここに来るまでに数多くの仲間の死を体験してきている。
 多くの敵兵を殺し、リュウやマチルダなど多くの仲間も失った。
 そうして凄惨な戦いを生き抜いてきた彼に与えられた称号は何か?

 ――ニュータイプ、だ。
 マチルダさんやレビル将軍はNTを認識力の向上した人間、つまり人類の革新と説明した。
 だがアムロは知っている。
 軍人達の殆どが、NTというのをMS戦闘の便利屋程度にしか考えていない事を。
 彼らにとってNTとは戦車やMSのと同じ様に兵器の一種に過ぎないのだ。
 そんな彼に、グンは目の前にいる少年達にもNTの素質があると言った。
 それがどういうことか、わざわざ説明されなくてもアムロには分かる

  • 100 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/05/16(土) 02:29:31.73 ID:mnMWaFs0

「みんな、まだ随分若いようですけど」
 毒づきたくなる衝動を抑えながらアムロは言った。
 そうして3人の子供達に視線を向ける。
 その瞬間、アムロは不思議な感覚に襲われた。
 少年達にとっても同じだったのだろう。
 少年達もまたアムロの目を真っ直ぐに見つめた。
 互いに瞳を覗き込む。
 その間、彼らにはまるで時間の流れが止まっているように感じられた。
 懐かしいような、それでいて斬新な不思議な感覚。
 ふと、アムロの脳裏に不思議な情景が浮かんだ。
 花園に佇み花の中に埋もれる甲冑の青年と、その周りを遠巻きに飛び回る一羽の小鳥の姿である。
 しかし、それはまるで霞む蜃気楼のように朧であっという間にそのイメージは消えてしまった。
 アムロにはそれが何を意味するのかは分からなかった。
 ただ、アムロの経験上こういう感覚を感じたときはあまりよくないことが起こる。
 今の情景がそういった予知的なものでは無ければいいのだが、とアムロは思った。

  • 103 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/05/16(土) 02:47:32.97 ID:mnMWaFs0

「何だろうこの感じ」
 アリアは小さく呟いて出来杉を見た。
 アリア達もまた、アムロと同じように不思議な感覚に襲われていたのだ。
「分からない。なんだろう、これは――」
 アムロと出来杉達は初対面である。
 しかし出来杉達はアムロに対して、なぜか昔から知っているような親近感を感じていた。
「どうだい、君達は互いに何かを感じるかい」
 アムロ達の様子がおかしくなったのを見て、グンが声を発した。
 しかしグンの問いかけには4人とも答えなかった。
「私としてはぜひ、NTたる君にこの子達の感想を聞きたいのだが」
 グンがアムロに急かすように尋ねた。
「そうですね」
 グンの言葉にアムロはゆっくりと口を開いた。
「NTかどうかはわからないですけど、利発そうな子達だと思います」
 アムロの言葉にグンは笑顔を見せた。
「利発そう、か。君がそう言ってくれるとこの子達を送り出す私としても安心だよ」

  • 104 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/05/16(土) 02:49:25.94 ID:mnMWaFs0

「あの」
 アムロが小さく呟いた。
「この子達と4人だけで話をしたいんです。少しの間だけこの子達を連れ出してもいいですか?」
 アムロがそう言うと、グンとショーが視線を合わせた。
「少佐にお任せいたします」
 私は構いませんという風にショーは言った。
 グンもまたそれに頷く。
「もちろんかまわんよ。ぜひこの子達を連れて行ってくれたまえ」
 グンがそう言うと、ショーが出来杉達の背中を押した。
「さあ、エイサイ、アリア、ツン。アムロ曹長に着いて行きたまえ」
「はい」
 ショーの言葉に、3人とも元気よく返事をした。
 3人ともアムロと話せることが楽しみだった。
「護衛に着きます」
 3人を連れ出すアムロに守備隊の兵士が声をかけた。
 しかしアムロは「すぐ戻るのでお構いなく」とそれを拒むと、そのまま施設の外へ出た。


  • 105 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/05/16(土) 03:23:24.77 ID:mnMWaFs0

 施設の外にはバギー車が停車していた。
 アムロはバギーの運転席に座ると出来杉達に向かってシートを指差した。
「さあ、乗って。こんな場所で話すのもなんだろう」
 アムロがそう言うと、お礼を言いながらツンが助手席に陣取り、出来杉とアリアもそれに続いて後部座席に座った。
 エンジンをかけると、アムロはバギーを発車させた。
 基地内、といってもジャブローは広大な基地であり、岩場が剥き出しの鍾乳洞の中を道路が網の目の様に走っている。
 スピードを出すと風が出来杉達を吹き抜けた。
「気持ちいいわ」
 ツンはそんな風の流れを楽しんでいる様子だった。
 アリアもまた気持ちよさそうに髪の毛を風になびかせている。
 アムロはそんな彼女達の様子に優しく笑みを浮かべた。
「君達はどこから来たんだい?」
「僕達カラカス基地から来たんです」
 出来杉が答える。
「カラカスって南米の北の端っこにあるんだけど、アムロさん知ってる?」
 それに付け加えるようにツンがはしゃぐ様子で言った。
「僕はあまり地理に詳しくないんだ。どういう所なんだい? カラカスって」
「なーんにも無いとこよ。あたし基地に閉じ込められてたし、その前は違うところに居たから詳しくは知らないけど。エイサイとアリアの方が詳しいわよね?」
 そう言ってツンは後部座席に振り返った。

  • 106 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/05/16(土) 03:24:05.04 ID:mnMWaFs0

「ね、2人とも。カラカスって連邦軍の基地と瓦礫以外に何かあるの?」
「うーん。僕達もずっと難民キャンプに居たからね、あまり詳しい事は……」
 出来杉は片手をあごに当てて考えてみた。
 思えばあの日、[たぬき]のタイムマシーンがワープ空間の中で渦巻きに巻き込まれた後、出来杉が意識を取り戻したのがカラカスの郊外だった。
 地理的に北米に近い為か、カラカスは頻繁にジオンからの空爆やミサイル攻撃の対象にされていた。
 その為にカラカス基地の周辺は瓦礫の山だった。
 そうして周りに人をみつける事も出来ず、途方にくれながら瓦礫の山を彷徨った。
 時より人々の亡骸を目にしても、生きている人は見つけられずにいた。
 そうしてどれほど歩いたか、初めて出合った人間は巡回中の連邦軍の兵士で、そのまま出来杉は有無を言わさず難民キャンプ送りにされたのだ。
 出来杉にとってのカラカスの街での思いではそれしかない。
 だから基地とガラクタ以外にあるものと問われても出来杉もツンとさほど知識は変わらない。
「仮に何かがあったとしても、今はもう残っていないと思いますよ」
 何かが残っているとすれば、それは戦争で命を奪われた人々の怨念くらいだろう。。
「そうか」
 アムロは小さく返した。
 まるで出来杉の心に同調するような声だった。
「デキスギくんにアリアちゃん、そしてツンちゃんと言ったね」
 アムロはそういうと、3人が頷く間をとって話を始めた。

  • 107 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/05/16(土) 03:24:54.77 ID:mnMWaFs0

「君達とは出会ってばかりだけど、君達が才能ある子供ってことは分かるよ。ニュータイプだなんて言われるのも無理はない。ただね、僕も君達と同じようにニュータイプだなんて言われてるけど、やってることは毎日MSに乗って戦うことばかりさ。僕はそんなのってニュータイプのあるべき姿でもなんでもないと思う」
 今までの優しい口調に打って変わり、真面目な口調でアムロはそう言った。
 そんな彼の言葉に出来杉達も静かに耳を傾けた。
「それを皆分からないんだ。皆NTを殺し合いの道具としか考えていない。このまま軍にいれば君達もそういう扱いをされる」
 アムロの言葉に3人とも黙り込んだ。
 重たい空気がバギーの4人の周りに立ち込める。
 アムロが再び話し始めた。
「だけど君達が望むなら僕は君達をここから逃がしてみせる。君達はこんなところに居るべきじゃない」
 そう言うとアムロはバギーの速度を緩め、道路脇に車を止めた。
 アムロはこの言葉を言う為に出来杉達を連れ出したのだ。
 カツ、レツ、キッカの3人が出来杉達の姿に重なったのもあるし、NTとしての自分の境遇と3人を重ねたのもある。
 とにかく、アムロは出来杉達のような子供が軍に利用されるのは我慢がならなかった。
 純粋にこの子供達を救いたいのだ。
 しかし、出来杉達は相変わらず緊張した面持ちで何もしゃべろうとしなかった。
 そのまま沈黙が流れた。
 そんな彼らの横に一台のバギーが止まった。
 バギーには2人の若い兵士が乗っている。
 一人は小柄の東洋人で、もう一人は紫がかった髪の細身の青年である。
 アムロを見ると、紫がかった髪の青年が口を開いた

  • 108 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/05/16(土) 03:25:41.83 ID:mnMWaFs0

「よお、アムロ。なにこんなところで油売ってんだよ」
「カイさんこそ。どうしたんですこんなとこまで」
「何お気楽言ってんだ。こっちはキッカ達が居なくなっちまって必死で探してるってのによ」
 カイという名の青年は皮肉っぽく毒づいた。
 そしてアムロから出来杉達へと視線を移すと興味有り気な表情をした。
「どうしたんだそのガキどもは。なんか訳ありか?」
「いえ別に。それよりカイさん、キッカ達が居なくなったって」
「ああ、このあたり一周したけど見つからねぇんだ。アムロも探すのを手伝ってくれ」
 アムロは一瞬戸惑った。
 しかしキッカ達を探さないわけにはいかない。
「わかりました。キッカ達がどの方向へ行ったのかは分からないんですか?」
「さっぱりだ。あいつら何かやらかしてなきゃいいんだけどよ」
「大丈夫ですよ。キッカ達はしっかりしてますから」
 そう言うとアムロは出来杉達に振り向いた。
「ごめん。子供が3人ほど行方不明になってしまったんだ。悪いけど、君達にもこのまま探すのを手伝って貰ってもいいかな」
「僕達でよければ」
 出来杉は快くそれに頷いた。
 アリアとツンもアムロに頷いて返す。
「ありがとう、恩に着るよ。さっきの話は後でまた話そう」
 そう言うと、アムロは隣のジープの2人に声をかけた。
「どうだいアムロ、どっちを探せばいいと思う」
 運転席に座っている小柄の青年がアムロにそう尋ねた。
「たぶんあっちの方角だと思う」
 アムロはそう言って指差した。
「よお、アムロ。そりゃニュータイプの勘てやつかい?」
 カイは微笑を浮かべながらそう行った。
「からかわないで下さいよ」
 アムロがそう言うとカイは「うひゃひゃ」と大きな声で笑った。
最終更新:2009年09月28日 10:47