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  • 645 名前: VIP足軽s 投稿日: 2006/11/21(火) 00:33:02.32 ID:mx/LVJry0

 残った戦車3台は1km程後退すると、申し合わせたかのように停車した。
 そして突然、ライ機の方向に前進を始める。
「何だ? 戦車で特攻のつもりか!?」
 ライがそんな事を呟いたちょうどその時、ライのソナーに新たなる敵影の姿が映った。
 それは丁度ライ機の両側から、ライを取り囲むように現れた援軍だった。
 左翼、右翼の援軍共に数は10。
「罠かっ!!」
 そう叫ぶと同時に目の前に前進してきた3台の戦車を一気にヒートサーベルで破壊する。
 そしてとっさに右翼に現れた新手に狙いを変え、その部隊めがけて突撃を始めるライ。
 しかし、ライ機の武装はヒートサーベルのみ。
 もはやフレンの援護射撃も無い。
 回避運動を取りつつ、機体を前進させるが、10台の戦車の射撃を避けきれる筈も無かった。
 ライの機体を61式戦車の砲撃が容赦なく襲う。
「グッ! クソッ!!」
 そう言いながら、必死にコックピットの揺れを堪える。
 そして瞬時に機体の損傷状態の情報を表示させた。
「この損傷度ならまだいける!」
 右翼の増援部隊まで残りの距離800m。
 これなら、ギリギリ取り付けるはずだ。
 だが取り付けたとして、その後はどうする。
 左翼の部隊は?
 そんな考えが一瞬で頭の中を駆け巡るったが、ライは「ええい!」と怒鳴ってそんな不安を吹き飛ばした。

  • 670 名前: VIP足軽s 投稿日: 2006/11/21(火) 00:56:14.06 ID:mx/LVJry0

「目の前の敵をぶっ倒す。それだけだ!!」
 言うと同時、ライは操縦桿を大きく倒す。
 ライ機は更に被弾を受けながらも、機体運動やマニュピレーターによる防御によって致命的なダメージを何とか避ける。
 おかげで武装していない方のマニュピレーターは完全に破壊されたが、そんなことにライは構わなかった。
 あと100m……50m。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
 そしてとうとう戦車部隊に辿りつき、前衛の戦車を切りつける。
 だが切りつけると同時に、ライ機は脚部に戦車の砲撃を喰らってしまった。
 ライのコックピットのモニターに警告音と共に『ホバーユニット損傷』の文字が映し出される。
「なっ! ここまで来て!」
 機体操作を試みるライ。
 しかしドムは彼の思うようには動かなかった。
 一斉にライ機に砲撃の照準を合わせようとする61式戦車。
「く、くそおおおおおおおおおおおおおお!!」
 ライはそう叫んだ。
 死ぬ。
 そう思ったときだった。
 すんでのところで、フレンのドムが連邦の戦車達を薙ぎ払っていた。
「大丈夫かライ!?」
 61式戦車を破壊しながら、フレンはそう声をかける。
「クッ……すまねぇ」
「損傷率は?」
「右足のホバーユニットが完全にイカレちまった」
 そう言って悔しそうに歯を食いしばるライ。

  • 674 名前: VIP足軽s 投稿日: 2006/11/21(火) 00:59:05.96 ID:mx/LVJry0

 それはつまりライはもうここから動けないと言うことだった。
 そしてフレンもライ機防衛の為にここを動けなくなったのだ。
 右翼の増援部隊はフレンが全滅させたものの、連邦の戦車部隊はまだ最初の部隊が7台残っており、左翼の増援部隊も10台丸まる残っている。
 それに対してジオン側のマゼラアタックは完全に沈黙。
 連邦の残存戦車部隊の7台は13基地への進撃を再開し、左翼の増援はフレン達に向かって前進してきた。
 ライ達の防衛線は突破された。
「畜生!」
 悔しさのあまりコックピットの側壁を叩きつけるライ。
「大丈夫だ。まだマグ達がいる。それにのび太君だって」
 そう言うフレンだったが、今の状況はかなり厳しかった。
 向かってくる戦車10台をヒートサーベル一本で返り撃つ。
 それもライ機体を庇いながらである。
 フレンは額に汗を垂らしながらモニタに映る敵を見据えた。

  • 704 名前: VIP足軽t 投稿日: 2006/11/21(火) 01:29:36.22 ID:mx/LVJry0

 ライが敵にホバーユニットをやられ、フレンは一人で10台の戦車を倒さなければならない。
 のび太はそんなフレン達の姿をずっと眺めていた。
 このままではライもフレンも死んでしまうかもしれない。
 そう思うとのび太の体の震えが止まらなかった。
「なんで、なんで戦争なんか」
 一人そう呟くのび太。
 なぜ皆殺しあう必要がある?
 フレンやライ、いや、この世で戦う兵士全員が誰かに殺されなきゃいけない理由でもあるのか?
 殺さなきゃいけない理由があるのか?
 そんなことを考える。
 だがそんなのび太のコックピットにフレンの声が入ってくる。
『うおおおおおおおおお!』
 フレンは確かに戦っているのだ。
 戦う理由、その本来の理由なんてのび太には分からない。
 でもフレンが戦わなければライが死ぬ。
 そしてのび太が戦わなければフレンもライも死ぬかもしれなかった。
 のび太の心臓の鼓動が早くなる。
 死ぬのが怖い? 人を殺すのが怖い?

  • 707 名前: VIP足軽t 投稿日: 2006/11/21(火) 01:30:24.90 ID:mx/LVJry0

 そしてフレンの死は、のび太にとって最も恐ろしいものなのだ。
 のび太が戦おうと、逃げようと、連邦の戦車部隊は全力でフレン達を殺しにかかる。
 いやきっとフレンだけじゃない。
 ダディや科学者達、基地の人たちも殺されるに違いない。
 それでものび太は敵を殺したくは無い。

 でものび太は仲間を守りたかった。

 のび太のコックピットにフレンの苦しむ声が聞こえてくる。
 頭の中にフレンが優しくしてくれた時の記憶が蘇った。
 手遅れになる前に助けなければ。
 そう決意するとのび太はフレン達の居る方向に向かって、最大速度でドムを走らせた。

 殺す理由を見つけたわけでは無かった。
 ただ守る理由だけがそこにあった。

 それだけで人は戦えるのだ。
 いや、だからこそ人は戦える、なのかも知れない。
 少なくとも今は、殺す罪を問うべき時ではなかった。
最終更新:2006年11月21日 09:05