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 砂埃を上げて地面に倒れるジャイアン。
「ガキが大人をナメんじゃねえぞ!!!」
 そんなジャイアンにジオン兵が吐き捨てる。
 だが。
「てめぇらっ! ウチの皿洗いに何をしやがるっ!!」
 そんなホイの怒号と共に、今度はジオン兵達が吹っ飛ばされていた。
「ホイさんっ!!」
「タケシ、スネオ、アレニノレ!!」
 ホイはそう言いながらジオンのジープを指差した。
 そのジープの運転手はゲリラの奇襲で既に死亡している。さらに同乗していた兵士は今ホイが吹っ飛ばしていた兵士だったので、そのジープは無人の状態だった。
 それを見ると、ジャイアンとスネ夫は急いでそれに乗り込んだ。
 ホイもすぐさま男の子と女の子を担ぎ上げて、そのジープの運転席に座る。
 ジープはエンジンがかかったままで、今すぐに運転できる状態である。
「タケシ、キカンジュウウテ!」
 ホイはそう言いながら、ジープの後部に取り付けられた機関銃に目を向けた。
「お、俺が!?」
 ジャイアンはその言葉を聞くなり動揺する。
「ヤレ!!」
「ちっくしょう、やってやろうじゃん!?」
 ジャイアンがそう言いながら機関銃を構えたのを確認すると、ホイはめいっぱいジープのアクセルを踏んだ。
 だがその進路にジオン兵達が立ちはだかっている。
「タケシッ!!」
 ホイはとっさにそう叫んだ。
「わかってるよ!!」
 ホイの声を聞くとジャイアンは機関銃をめちゃくちゃに連射した。
 その攻撃にジオン兵達がちりじりになる。
 ホイはジオン兵達を突破すると、戦場から脱出するべくそのままアクセルを踏み続けた。




 ジオン軍 キャリフォルニア第1MSパイロット養成学校。
 ここはジオン地球攻撃軍が北米を制圧して以降、最初に創設された地上のMSのパイロット学校である。
 兵員不足故の短い養成期間でありながら、この学校は良質なパイロットを多く輩出している事で有名だった。
 当然志願者も多く、倍率も尋常ではない。
 普通の人間なら入りたくても入ることの出来ない学校なのだ。
 そんな学校に、ただ一人の少年だけは望んでも無いのに入学を果たした。

 養成学校の校長室。
 そこには校長と、一人の教官が話をしていた。
「初学年A組の新入生のことなんだがね。彼のデータを本国に送ったらフラナガン機関から連絡が来たよ」
 校長がそう言うと、教官は「は」と口を濁す。
「フラナガン機関、ですか?」
「そうだ」
 そう言うと、校長は教官にフラナガン機関から送られてきた書類を渡した。
「NTについて研究している機関だ。そしてそのフラナガン機関からノビタ=ノビの基本訓練が完了次第、すぐに彼を月へ送るようにとの要請が来た」
 教官は校長の話を聞きながらフラナガン機関から送られてきた書類に目を通す。
「しかし校長。私にはとてもあの生徒がNTとは思えません。彼の体力や学力はあまりに酷い」
 教官がそう言うと、校長は「ふむ」と頷いた。
「私も一通り彼についての書類は読ませてもらったよ。とても人類の革新だとは思えない成績だ。NTは勉学にも秀でると聞く」
 そう言いながら、校長は悩むような顔をする。
「だがしかし、シミュレーターでの彼の結果は初学年としては本校始まって以来のものだ」
「確かにそうですが……」
 そう言うと教官は顔を曇らせた。
「ノビタ=ノビは様々な意味で実戦に対応できる状態ではありません。それを基礎訓練だけで送り出すなど」
 教官は俯く。
「だからこそのフラナガン機関ではないのかね?」
「ですが、フラナガン機関からはあまり良い噂が聞こえてきません」
 不安そうにそう言う教官。
 実際、それが教官にとっての一番の懸念だった。
 フラナガン機関。
 ニュータイプを研究する為に設立されたその機関は、様々な方法で実験体となる人間を集めている。
 特に集められるのは発達段階の子供だ。
 フラナガン機関の主な活動内容は、そんな子供たちに様々な実験を施しNTへの覚醒を促す事である。
 その実験にはとても表社会には発表できないものが数多くあるという。
 そして、挙句の果てには軍事転用。
 人間をモルモットのように扱う人間の巣窟、それがフラナガン機関への教官の印象だった。
 指導者である彼が、自分の教え子をそんなところへ送り出すのを懸念に思わないはずが無い。
「どうにかなりませんか校長」
 その教官の言葉に、校長は首を振った。
「君の言わんとすることも分かるがね。しかしフラナガン機関と言えば我が軍の最重要機関だ。むしろ我々が自発的に協力すると言うのが筋だろう」
 教官は肩を落とす。
 しかし、何とか思い直すと教官は校長を見据えた。
「分かりました。それでは基礎訓練の間で、必ずノビタ=ノビを一人前のパイロットに育てて見せます」
 声を張ってそう言う教官に校長は頷いた。
「頼んだよ」
「それでは失礼します校長」
 そう言って校長室を出ようとする教官の背に、校長は一言「ジークジオン」と投げかけた。
 それを聞くと、教官はすぐに振り返り彼も「ジークジオン」と返した。

 養成学校の初学年A教室では生徒達がザワザワと雑談に耽っていた。
「なぁ、あの”青い巨星”が連邦の白い奴にやられたって話知ってるか?」
 そんな話を生徒の一人が口にする。
「まじかよ?! 青い巨星って、宇宙攻撃軍のランバ=ラル大尉のことだろ?」
 その言葉に生徒達が一斉に驚きの表情を作る。
「あぁ。今朝、教官達が話してるのをこっそり聞いたんだよ」
「なぁ、嘘だろ? ラル大尉って言えばルウム戦役の大英雄だぜ?」
「嘘じゃねぇって。本当に聞いたんだ」
 一人の生徒がそう言うと、辺りに居る生徒達は絶句した。
「一体、どれだけ連邦のMSは強いんだ」
 と、恐怖の表情を作る生徒。
 そんな騒然としている生徒達の集団から少し離れた場所で、一人の青年が「フン」と鼻を鳴らした。
「青い巨星も大した事ねぇな」
 そう言って笑う青年。
 彼の名前はライ=バール。
 このカリフォルニア第一養成学校の初学年で最も優秀な生徒の一人である。
 勉学、体力、操縦技術。どれに於いても彼はトップクラスである彼は、そのおかげで若干自信過剰な性格だった。
「お前なら連邦の白い奴に勝てるって言うのかよ、ライ」
 そんなライに、生徒の一人が怒りのこもった目でそう言う。
 そんな生徒にライは笑って返した。
「当たり前だ。俺が連邦のMSなんかに負けるわけがないね」
「へっ、よく言うぜ。ノビタなんてガキにも勝てねぇ癖によ」
 ライを嘲笑するように言う生徒。
 それを聞くとライの表情が突然豹変した。
「おい、お前。もう一度言ってみろ」
 そう言ってライを嘲笑した生徒の襟首を掴む。
「何度でも言ってやるぜ。ノビタにすら勝て無いお前が連邦のMSと戦ったって、あっと言う間におっ死んで終わりだ!」
 そう言って教室の隅の席で俯きながら座っているのび太を指差す生徒。
 それはライには言ってはならない禁句だった。
 ライは確かにあらゆる分野で学年のトップクラスの生徒である。
 特にMS操縦は彼の得意分野であり、ライがシミュレーターで他の生徒と対戦して負けることはまず無かった。
 だがそれはのび太がこの学校に編入されてくるまでの話だ。
 のび太がこの学校に編入してきてからというもの、MSのシミュレート戦闘においてライはのび太に惨敗を喫した。
 特例措置で入ってきた生徒とは言え、のび太は僅か11歳である。
 ライとは6つ以上も歳が離れているのだ。
 そんな子供に得意分野のMS戦で負けた事が、ライのプライドをどれほど傷つけたのかは想像に難しくない。
 ライはこめかみに血管を浮かべながら、生徒を睨みつけた。
「そういうお前はよ、この俺にただの一度でも勝ったことがあんのか?」
「あ? テメェこそ調子のんじゃねぇよ。いつまでも自分がトップだと思って思ってんじゃねぇぞ」
「言ったなっ!!」
 そう言って拳を振り上げるライ。
 しかし丁度その瞬間、教室のドアが開いた。
「お前ら何をやってる!!」
 教室に入るなり、ライ達が喧嘩しているのを見つけると教官はそう叫んだ。
「チッ」
 そんな教官の言葉に渋々手を放すライ。そんなライに生徒が「ヘッ」と鼻で笑う。
 教師は教卓の前に立つと、そんな2人を更に怒鳴りつけた。
「おまえら、そんなに元気があるならグラウンドでも走ってこい!」
 まったくこいつらときたら、とイラつく教官。
 ここ最近、このA教室ではこんな喧嘩が頻発していた。特にライの周辺が酷い。
 のび太が来てからそれはより深刻化していた。のび太の席を見る教官。
 のび太自身は温厚すぎるくらい大人しい生徒である。別の意味でのび太は色々問題のある生徒だったが、決して性格自体は悪くない。
 教官ははぁ、とため息を付いた。
 ライ達の方がよほどのび太よりも子供に思えたが、教官はあえてそのことは口にしない。
「まぁいい。さて、お前等。今日の一時間目の授業は分かっているな?」
 教官が気を取り直しながらそう言うと、教室の中の空気が一気に重苦しくなった。
 生徒たちはみんなくらい顔をしている。
 特にのび太にいたっては今にも泣きそうな表情である。
 それもその筈である。
「一時間目は耐G訓練だ。準備が出来たらすぐに5号棟の訓練教室に向かえ」
 のび太は”耐G訓練”という言葉を聞いただけで震え上がった。
 耐G訓練、それはこの学校の様々な訓練の中でも最も辛い訓練のひとつである。
 空間先頭も視野に入れた360度全方位にグルグルと回される特殊な機械や、遠心力による加圧でMSの最大出力を仮想した重力を体に与える機械。
 そんな物にただ延々と乗らされるのである。
 のび太は今すぐにでもこの養成学校から逃げ出したい気分だった。


「はぁはぁ……きょ、教官。もう…もうだめです」
 のび太は耐G訓練機から降りるなり地べたに倒れこんだ。
「何だと? まだ一週目だぞ! 甘ったれるなノビ!」
 養成学校の特別措置で、常駐している日本語の通訳官から話を聞くと教官はそう怒鳴った。
 訓練は耐G訓練機及び空間戦訓練機のメニューをそれぞれ5週づつである。
 のび太はその最初の耐G訓練で早くも音を上げていた。
「立て、立たんか! そんな事でMSのパイロットになれると思っているのか!?」
 そう言いながらのび太の腕を掴み、無理やり立たせる教官。
「む、無理で…うぇ、おええええ!」
 のび太はそんな過酷な訓練のあまり、胃の中にあるものを全て吐き出してしまった。
「ええいっ!」
 その様子を見て教官は仕方なくのび太から手を離す。
「5分だけ休憩をやる。5分だけだ! そうしたらすぐに訓練を再開するぞ!」
 そう言ってのび太を再び怒鳴りつける教官。
 しかしのび太は疲労のあまりそれに返事をすることすら出来ない。
 こんな子供がニュータイプだと?と、心の中で呟く教官。
 そんな筈は無い、と教官は思う。
 仮に本当にのび太がNTだとしても、教官にはのび太をフラナガン機関に送るのはあまりに心配だった。
 だからこそである。
 だからこそ教官はのび太をどんな過酷な状況下でも耐えられる人間に育てなければならなかった。
 期間は短い。
 教官にはのび太に優しさを見せている暇なんて無かった。
「お前らも休むんじゃないぞ! すぐに次の訓練機に乗れ!!」
 教官はのび太から視線を離すと、生徒たちにそう叫んだ。
 他の生徒たちもかなり辛そうだが、脱落する生徒は一人もいない。
 彼らはまだ10代半ばとは言え、この学校に自力で受かった人間たちである。
 この程度で音を上げる人間など、本来ならこの学校に受かるはずが無いのだ。
 のび太はそんな辛い気持ちや悔しい気持ちがない混ぜになって、どうしても溢れる涙をとめることが出来なかった。
 ドラえもん。
 その名前を心の中で何度も連呼する。
「助けてよ、ドラえもん」
 そう呟くのび太。
 のび太が辛い時にその名前を呼べば、いつもドラえもんが助けに来てくれた。
 だけど、今日はいつまで経ってもドラえもんは現れなかった。


「よし、一時間目の耐G訓練は終わりだ。全員教室に戻っていいぞ!」
 教官がそう言うと、生徒たちは安堵の表情を浮かべながら耐G訓練室から出て行く。
 しかしのび太だけは疲労のあまり立ち上がる事すら出来ない。
 そんなのび太に振り向く生徒は殆ど居なかった。
 11歳にして特例措置で入学を果たしたのび太の存在は、エリート意識の高いこの学校の生徒たちにとって疎ましいものでしかない。
 特にこのAクラスは学年の優秀な生徒が集められたクラスであり、生徒間の競争心が強かった。
 そうして一人耐G訓練室に残されるのび太。
 だけど、そんなのび太にただ一人の青年だけが手を差し伸べた。
「大丈夫かいノビタ君。君の歳でこの訓練は辛いだろうに、ちゃんと乗り切っただけでも凄い事だよ」
 そう言って青年、フレン=ドリーはのび太の手をつかんで起こし、自分の肩に寄りかからせた。
 そんなフレンに助けられながら教室に続く廊下を歩くのび太。
 言葉こそ通じないが、のび太はそんなフレンの優しさを感じて嬉しく思った。
 フレンは学年でライに続く優秀な生徒である。
 だけれどフレンはそれを鼻にかけることが無く、こうして常々のび太にも助けの手を差し伸べていた。
 クラスの中にはそんなフレンを変わり者と揶揄する人間も居たが、大多数の生徒は彼の性格の良さを認めている。
 そうして、フレンは教室に着くまでのび太の体を支えて歩き続けた。

 教室に着くと、フレンはのび太の席の前でのび太の腕を肩から離した。
「よし、ちゃんと戻れた。次の訓練までゆっくり休むんだよ。そうしたら、次の訓練は君の得意なMSのシミュレートだ」
 フレンはのび太があまり言葉が通じないと分かっているが、そう言いながらジェスチャーで次の授業について説明する。
 のび太は次の授業がMSのシミュレートだと理解すると、フレンに笑顔を見せた。
 それを見るとフレンも笑顔でのび太に返す。
「次のシミュレート戦闘は負けないからな、ノビタ君」
 笑いながらのび太にそう言うと、フレンは自分の席へと歩いて行った。


 二時間目のMSシミュレーターの訓練の時間には、何とかのび太は体力を回復していた。
 MSシミュレーターの置いてある訓練室に着くと、生徒達の列に並ぶ。
 全員が揃った事を確認すると教官が口を開いた。
「よし、それではこれよりMS操縦訓練を行う。今回のシミュレーターの設定はグフにしてある。全員ザクとの操作の違いは覚えてきたな?」
 教官が生徒たちにそう問いかけると、生徒たちは一斉に「はい」と返事をする。
 それを聞くと、教官は「よろしい」と答えた。
「それでは今日の戦闘訓練の組み合わせを発表する。まずは、マグ=ウィキカンリオツとナー=ナシー。お前達は1番のシミュレーターを使え。次――」
 そう言って教官は手に持ってるリストを見ながら次々とシミュレート戦闘を行わせるペアを発表する。
「ノビタ=ノビ、フレン=ドリー。お前たちは5番シミュレーターだ」
 そう言うと、他の生徒たちが「おお」と沸いた。
「ノビとフレンのシミュレートだぜ。こいつは面白い組だ」
「なんせ、学年でライに勝ったことがあるのはあの2人だけだからな。な、お前どっちが勝つと思う」
「そりゃノビだろう。しかしフレンならかなりいいところまで行くな」
 そんな話でざわめく生徒たち。
 のび太とフレンの二人はそんな生徒達の話し声を背に5番シミュレーターへと向かう。
 シミュレーターの前に到着するとフレンは笑顔でのび太に手を差し出した。
「お互い全力で戦おう。手加減は無しだ」
 のび太はやはり言葉が良く分からなかったが、ニュアンスは何となく分かったので、のび太も笑顔でフレンの手を取り握手をした。
 そして二人はシミュレーターに乗り込む。

 シミュレーターの画面が映ると、フレンはすぐに機体情報を確認した。
「機種は先行量産のA型か。装備はザクマシンガンとヒートソード、あとはシールドもあるな」
 さて、と戦法を練るフレン。
 フレンはずば抜けた操縦センスというより、相手に対する戦法を思案して今まで勝ち抜いてきた。
 彼はまず相手の短所と長所を考えてから戦う。
 個人の癖に合わせて戦う戦法は実戦では無意味だと思いつつも、今ある材料の中で最良の結果を得ることが彼の信条だった。
 のび太の長所。
 それは言うまでも無く射撃能力である。
 その異常なまでに正確な射撃は圧倒的だ。
 模擬戦闘開始から僅か数秒で頭部や脚部の間接を破壊されのび太に敗北した生徒が一体何人居る事か。
 しかし、それは今までのザクでの話である。
 今回使用する機体はグフ。
 ザクとは違い装甲が厚く、機動性も上がっている。
 更にシールドもザクのように肩に固定されているのではなく、マニュピレーターに装備する仕様だ。
 これらのアドバンテージを上手くのび太の弱点に捻り込む。
 のび太の弱点、それははっきりと言ってしまえば”射撃以外全て”だ。
 決して機体運動や格闘戦闘の操縦が下手という訳では無い。
 しかしフレンが知る限り、射撃以外の能力では確実にフレンが勝っていた。
 つまり、のび太に勝つには射撃能力を封じてしまえばよい。
 と、フレンは結局そんな誰もが既に周知している結論に至る。
 つまり、その射撃の封じ方が問題なのだ。
 並みのパイロットが相手ならいくらでも方法がある。
 しかし、のび太の射撃は射撃のかく乱を行おうとする暇すらも与えない。
 そうして、有効な対処法が浮かばない間に模擬戦闘開始の10秒前となった。
 シミュレーターの画面に仮想の戦場が映し出される。
「市街戦か」
 あたりの様子を確認すると、フレンはそう呟いた。
 これなら射撃を防御する壁が多い。
 よし、とフレンが思ったその瞬間、模擬戦闘開始の合図が画面に表示された。

 模擬戦闘開始の合図を確認すると、のび太はすぐさまザクマシンガンを構えた。
 敵が何処に居るかは分からない。
 索敵用のセンサーを見つめながら、のび太はゆっくりと自分の機体に仮想の町を歩かせる。
 のび太とて、今までそれなりの数のMSシミュレートをこなしてきた。
 MSは背後を取られれば終わりである。
 のび太は巨大なビルを見つけると、それを背にして立ち止まり、射撃の構えをした。
 この大きさのビルならば、まずザクマシンガンの威力で倒壊する恐れは無い。
 更に他の建物が盾となるように、別のビルに近い位置に微妙に移動する。
 こうする事によって背後は巨大なビルに守られ、前方に敵が現れれば即座に射撃が出来る。
 のび太には、前方に敵が現れた瞬間に相手を瞬殺する自信があったし、仮に相手に先手を取られても1・2撃なら前方のビルが防いでくれる。
 のび太にとってはこのままここで待てばいいのだ。
 敵のMSの移動音を察知するパッシブソナーも同時起動させるのび太。
 そんなのび太を、フレンは既に発見していた。
 パッシブソナーの有効範囲を最大まで拡張し、敵を確認した方向を画面拡大で確認する。
 フレン機の画面で拡大された映像には、確かにのび太のグフが映しだされていた。
「待ちぶせか。しかし、こちらにはまだ気付いていない」
 と、自分の機体とは違う方向を向いているのび太の機体を見ながら呟くフレン。
 市街戦と言う戦場がフレンに好機を与えていた。
 行ける。フレンはそう確信した。
 相手のパッシブソナーに掴まらないように、出来る限りゆっくりと機体を操作する。
 そして相手のセンサーの有効範囲のギリギリまで進めると、フレンは射撃の構えをした。
「背後からの攻撃に備えたのが逆効果なんだよっ、ノビタ君!」
 フレンはのび太が背にしている巨大なビルの上部にザクマシンガンを連射した。

「しまった!」
 その瞬間のび太はそう叫んでいた。
 ビルから落ちてくる瓦礫がメインモニタの視界を邪魔し、フレンの攻撃に対する反撃が出来ない。
 だが何とかしてパッシブソナーの反応を頼りに、相手の機体を正面に捕らえる。
 しかし、そこにあったのはのび太が盾にしようと思っていたビルだけだった。
「ビルを盾に?」
 今ので仕掛けてくるんじゃないのか、と疑問に思うのび太。
 例えビルに隠れたとしても、そんなものは一時しのぎに過ぎない。
 ビルから出てきた瞬間に射撃して終わりだ、とのび太が思った瞬間に目の前のビルが倒壊した。
 それは予想外だった。
 なぜならザクマシンガンの威力では、こんな短時間でビルを倒壊させることなど出来ないからだ。
 しかし砂煙を上げながら倒壊したビルから現れたグフが手に持っていたのはヒートソードだった。
「格闘戦っ? この距離でっ?」
 のび太機とフレン機との距離はおよそ100m。
 この距離なら、相手が格闘可能な距離まで間合いを詰めてくる間に急所を狙う事が出来る。
 突進してくるフレン機は、シールドで頭部を含む上半身を防御していた。
つまり、一撃で相手をしとめるのに狙うべきは脚部の間接部分。
 そう思ってすぐさま脚部に射撃の照準を合わせた瞬間、のび太は目を疑った。
 モビルスーツの脚部は倒壊したビルの煙で視認が困難なのだ。
「どうだノビタ君、いくら君だってこの土煙の中で絶えず動いている脚間接を狙うのは無理だろう!」
 シールドの覗き穴からのび太機の様子を見てそういうフレン。
 のび太はすぐさま狙いを間接から、グフの腰の辺りに照準を変え射撃をしてきた。
 フレンのシミュレーターが激しく揺れる。
 だが、急所で無い部位にザクマシンガンが数発あたった程度ではグフは倒れない。
「もらった!」
 そう言ってフレン機がヒートソードを振り上げた瞬間、フレン機のモニター画面は真っ暗になった。

「何!」
 驚きの余り、頭が真っ白になるフレン。
 しかし直ぐに気を取り直して自身の機体情報を確認する。
「頭部損傷? そんな馬鹿な」
 頭部は確かにシールドで防御していたはずだ、と信じられない気持ちでモニターを見つめる。
「まさか」
 考えられない予想がフレンの頭をよぎった。
 それは普通の人間にはまずあり得ない。
 しかし、のび太になら可能かも知れなかった。

 シミュレーターから出るとフレンはのび太と握手をした。
「さすがノビタ君だよ。まさかシールドの覗き穴へ銃弾を打ち込むとは」
 そう言って苦笑するアレン。
 のび太はやはり言葉は分からないがそれに一礼して返した。
 だが、流石に今回ばかりは困ったものである。
 あんな小さな穴に銃弾を打ち込むことなんて、狙撃仕様のMSですら不可能であろう。
 こんなパイロットには敵わないな、と思うフレン。
「あと少しだったんだけどなぁ」
 と残念そうに言いながら、彼は戦場でこんな敵に出会わないことだけを願っていた。




 連邦軍カラカス基地に暫定的に設立されたNT研究所。
 その施設の一室で出来杉は絶句していた。
「アリア――」
 研究所の責任者である士官が、連れてきた新たなるNT適性者の少女を見てそう言う出来杉。
 出来杉は自分の目を疑ったが、しかし連れてこられた少女は確かにアリアだった。
「エイサイ!」
 アリアもまたこんな場所で出来杉とであった事に驚きを隠せないようだった。
 しかしアリアの顔は出来杉とは違い、戸惑いではなく喜びの表情である。
「なんだ。お前たちは知り合いだったのか」
 そんな二人の様子を見てそういう士官。
 しかし、二人が同じ難民収容所に居た事は知っていたので士官はそのことを特には気に止めなかった。
「まぁいい」
 と士官は話を区切ると、部屋の中に並べられている椅子を指差した。
「二人とも適当に椅子に座りなさい」
 士官がそう言うと、すぐに出来杉は近くの席に座る。
 アリアも出来杉の隣の席に座った。
「これから君たちには他の適性者との顔合わせをしてもらう予定だが、若干遅れてしまっているようだ。それまで少し待っていてくれ」
 士官がそう言うと二人は「分かりました」と返事をする。
 そして返事が済むと、アリアは出来杉に振り向いて話しかけた。 
「よかった、またエイサイに会えて」
 そう言って満面の笑みを作るアリア。
「エイサイが収容所に戻って来なかった時は、もう会えないと思った」
 アリアは本当に嬉しそうな顔だ。
 そんなアリアに言葉を返す出来杉。
「僕もまた会えて嬉しいよ、アリア。だけど――」
 しかし出来杉は素直にアリアにあえた事を喜べなかった。
 君はここが軍の施設で、自分が軍人になった事を分かっていないのか? そんな言葉が喉まででかかる。
 だが、部屋の入り口に立っている士官の姿に、出来杉はその言葉を飲み込んだ。
 士官の手前下手なことは言えない。
 しかし出来杉は、アリアに軍人になんてなって欲しくはなかった。
 難民や孤児になってしまった人達を守りたいと。
 守らなくてはと思い、自らの心情を偽ってまで出来杉は軍人になった。
 しかし、軍はそんな出来杉が守ろうとした人間までも軍に引き入れたのだ。
 出来杉の心の中に軍に対する怒りが渦巻く。
 そんな出来杉の表情を見て、そっと出来杉の手に自分の手を重ねるアリア。
「ねぇ、エイサイ」
 小さくそう言うとアリアは出来杉の目を見つめた。
「私はエイサイと居られるだけで嬉しいんだよ?」
 そして微笑むアリア。
 だからそんな顔をしないで、と無言で訴えるアリア。
 その言葉を聞いた瞬間、出来杉の怒りは消えていった。
 黙ってそれに頷く出来杉。
 この世界に迷い込み、ドラえもん達とも逸れ、出来杉は何も持っていなかった。
 だから今、アリアのこの笑顔が出来杉の全てなのだ。
 アリアは戦争で親を失い、その上軍隊に引き込まれてしまった。
 しかし運命はこうして二人をここに引き合わせている。
 もしも戦争で危険が迫っても、必ずアリアだけは守り通してみせる。
 出来杉は心の中で、かたくそう誓った。

 やがて他のNT適性者達という人間達が10人ほど集められると、全員がそれぞれ自己紹介をさせられた。
 そして全員一通りの自己紹介が終わると、責任者の士官が口を開いた。
「どうだ君達。お互いに何か特殊なものを感じたりするかね?」
 と適性者達に尋ねる士官。
 しかし適性者たちは士官の言葉を聞いても何の事やらという顔をするだけである。
 そんな様子を見て士官は肩を落とした。
 こんな状況を予想はしていたが、実際になんの反応も無いと落胆の色を隠せない。
 はぁ、と一度だけため息をつくと、士官は気を取り直して話を続けた。
「まぁ何も感じないのも仕方が無い事だ。君達はNT適性者ではあるが、今現在NTであるわけではない」
 士官がそう言うと、また適性者達の大半が不思議そうな顔をする。
「そもそも君たちにはまだNTとは何なのか、それについて説明していなかったな。まずはそこから始めよう」
 そう言うと士官は部下の研究員に命じてプリントを適性者達に渡させた。
 そのプリントにはNTについての簡単な説明が書かれている。
「NTとはジオン=ズム=ダイクンが提唱した人類の革新を指す。宇宙に進出した人間が、今まで地上では使う事の無かった脳の機能を活性化させ、新たなる能力を手に入れるというものだ。その辺りの事はプリントに書いてある通りだ」
 士官がそう言うと、適性者の一人が挙手した。
「なんだ?」
「私はアースノイドです。今まで宇宙に出たことはありません。それでもNTの適性者なのですか?」
「うむ」
 そんな適性者の疑問に士官が頷く。
「確かにNTはスペースノイドから生まれる。しかし、それは人間が宇宙に出たことで脳に特殊な変化を起こした、という事とは少し違う」
 そう言うと士官は難しい顔をして腕を組んだ。
「我々の考えでは、おそらく人類は本質的にNTとなる素質、言ってみればNTの種のような物を持っている。アースノイドだろうと、スペースノイドだろうとな。NTとは宇宙に出てその種を開花させた人間、だと我々は考えている。君達はさしずめ”開花しやすい種”を持っている人間、といったところだ。まぁ、NTについての研究はまだ始まったばかりで、詳しい事はよく分からんがね」
 そう説明する士官。
 その言葉に、質問をした適性者は複雑な表情をした。
 いや、その適性者だけでなく、この部屋に居る人間はみな俯いている。
 結局、彼らはNTを研究する為のただの実験体でしかない。
 普通の人間よりは勘の鋭い彼等であるから、それがどういうことかは言わずとも分かっていた。
「それでは本日の説明は終わりだ。明日からは機動兵器の適性を測る。自室に戻ったらよく休んでおけ」
 士官は一通り説明すると、敬礼をした。
 適性者達も既に連邦軍の軍人であるからそれに敬礼で返す。
 そして士官が部屋から出ると、適性者達も基地内で割り当てられた自室に戻るべく歩き出した。
「ねぇねぇ、エイサイの部屋番号は何番?」
 歩きながら出来杉にそう話しかけるアリア。
「僕の部屋は017番だよ」
 出来杉が答えると、アリアは「やった」と喜んだ。
「私は016番なんだ。隣だね!」
 そう言うアリアの姿は本当に嬉しそうである。
 出来杉はそんなアリアの存在が本当に嬉しかった。

「それじゃ、また後でね」
「うん。ばいばいエイサイ」
 二人はそう言うと部屋の前で別れた。
 カードキーで自室のロックを解除して部屋に入る出来杉。
 出来杉は部屋に入るなり連邦の軍服を脱いでハンガーにかけると、すぐにベッドの上に横になった。
 この世界に来てからと言うもの、出来杉には心休まる時間が無い。
 体力的にもかなり辛かった。
 特にここ数日は目まぐるしく自分の置かれる状況が変化したために、出来杉の精神は大分やられているのだ。
「僕はこれからどうすればいい?」
 出来杉は天井を眺めながら、そんなことを呟いてみた。
 このまま軍人として生きるのか?
 脱走してドラえもん達を探すのか?
 しかし、どんな事を考えてみたところで、軍という巨大な流れの前に出来杉は流されるしかなかった。
 今自分に出来ることなど何も無い、と出来杉は思う。
 それならせめて、自分の信念だけは守り通さなくてはならない。
 今はアリアの為に、そして戦争で苦しんでる誰かの為に軍人であろう。
 そんな事を考えながら、出来杉の思考は眠りの中へ落ちていった。


 夜が明けると、早朝から出来杉達は士官によって呼び出されていた。
 軍用の戦闘シミュレーターなど様々な特殊器機が並べられている部屋に整列するNT適性者達。
 全員が揃うと士官が口を開いた。
「それでは適性者諸君、これより君達の機動兵器との適性を測る試験を行う」
 そう言うと、士官はそばにある巨大な機械を叩いた。
「ジオンには遅れをとったが、我々連邦軍もMSの量産計画を着々と進めている。そして現状で量産型の試作であるG型やE型は完成し、実戦に配備されつつあるのだ」
 と、握りこぶしを作りながら言う士官。
「そして君たちには、それらの機体のパフォーマンスをどれだけ引き出せるかの実験を行ってもらう。そしてこれがそのシミュレーターというわけだ」
 士官はもう一度巨大な機械、ジムのシミュレーターを叩く。
「君達がどれほどこの機体の能力を使いこなせるか、そのテスト結果が新型の設計に大きな影響を与える。心してかかりたまえ」
 その言葉を聞くと、適性者たちは全員緊張した面持ちになった。
 その様子を見て士官は少しだけ柔和な表情になる。
「ま、とは言え今回が最初のシミュレートだ。我々もたいした結果は望んでない。今日はとりあえず操作になれることだけを考えろ。それではまずシミュレーターの説明から始める」
 そう言うと士官は適性者達を連れてシミュレーターのハッチを開き、操作系統など様々な説明を始めた。

 士官が説明を終えると、適性者たちはすぐさまシミュレートに移る。
 そんなNT適性者達のシミュレートの様子を、スカルチノフは別室でモニター越しに見ていた。
 モニターには格適性者たちのシミュレート状況の様々な数値が表示されている。
 被弾率、撃墜数、エネルギー残容量。
 それ等の数値が次々と変化していく。
「どうですスカルチノフ大佐。彼らはこれで初めてのシミュレートなんですよ?」
 モニターの数値を見つめるスカルチノフに、研究員の一人が彼に話しかける。
 シミュレートの状況は個人によってそれなりの幅があったが、一つだけいえるのは全員がMSの基本操縦を完全に習得しているという事である。
 これが最初のシミュレートだということを考えれば、それは驚くべき事だ。
 スカルチノフはそんなモニターの様子をみながらニヤリと笑った。
「素晴らしい。これで本当にまだNTに覚醒していないと言うのかね?」
「えぇ。彼らはまだNTではありませんよ。彼らの覚醒は、おそらく宇宙での本実験が始まってからになるでしょう」
「まったく恐ろしいよNTと言うものは。見たまえ君。エイサイ=デキスギに関しては、既に正規パイロットと比べても何ら遜色の無いレベルだ」
 スカルチノフは喜びの余り、笑いをとめることが出来ない。
 この時点で並みのパイロットと同等の能力なら、訓練をつめばNTに覚醒しなくても優秀なパイロットになれる。
 それが更にNTに覚醒したらどうなるか?
 彼はそれを考えると楽しくて仕方がなかった。
「ナンバー2の適性者ですか。彼は確かに、適性者の中でもずば抜けたセンスを感じますね」
 実際、出来杉のスコアは適性者の中で最も高い。
「彼は私が目をかけた適性者だからね」
 そう言ってスカルチノフは笑い続けた。




 連邦軍の東アジアにおける戦線を維持する主力基地の一つ、コジマ基地。
 コジマ基地では来るべき連邦軍のMS量産の試験も兼ね、既に先行量産型のMSが配備されている。
 そんなコジマ基地に所属する第17MS小隊は、戦線維持を兼ねブータン地域の一角でMSの操縦試験を行っていた。

 ブータンの荒野に佇む第17小隊の先行量産型ジム3機とホバートラック。
 そんな3機の先行量産型ジムの一つに、渋沢少尉は乗っていた。
「MSの乗り心地ってのも悪くないな。ま、戦車の方が俺の性には合ってるが」
 小隊長の渋沢はそう呟くと操縦系の動作を確かめる。
「操縦系、及び計器の数値はすこぶる好調、と」
 機体に異常が無いことを確認すると、渋沢は無線のスイッチを入れた。
「各機、準備はいいか?」
 渋沢がそう言うと、「はい」と他のパイロットから返事が返ってくる。
「よし、それではこれより先行量産型のテストと同時並行で、この地域のジオン軍を掃討する。覚悟はいいな?」
『はい』『了解です』
 部下たちの返事を確認すると、渋沢は操縦桿を握りそれをゆっくりと倒す。
「それでは俺の後について来い。敵の規模は小規模だろうが、油断はするな」
 渋沢の言葉に他のジムとホバートラックも動き始めた。
 この地域では3日ほど前にジオン軍との衝突が起こった場所である。
 ジオン軍側はザク3機とマゼラアタック4機の戦力だったが、その内ザク1機とマゼラアタック3機は連邦の攻撃で大破している。
 ザク2機とマゼラアタック1台はそのまま退避したが、連邦がジオンの補給所も押さえた事からそう遠くへ逃げたとは考えられなかった。
 所々に61式戦車やザクの残骸が落ちている荒野の中を進んでいく渋沢達。
 渋沢はそんな戦場の光景に、ゴミ捨て場を連想する。
 実際俺らのような末端の兵士なんざ使い捨てのゴミみたいなものだ、とそんなことを思いながら渋沢は苦笑をした。
 そもそも予想される敵の戦力はザク2機とマゼラアタック。ないしそれ以上。
 こちらの戦力が先行量産型のジム3機と考えれば、決して渋沢の小隊が相手に対して優位と言うわけではない。
 戦闘になれば渋沢達も相当な被害が出るのは確実だった。
 そしてそれこそが上層部の望みなんだろうな、と思う渋沢。
 現在連邦軍にあるMS対MS戦闘のデータは、実質WB部隊からのデータ以外には存在しない。
 そしてWB隊のMSは量産型ではないのだ。
 連邦軍にはこれから主力となるジムの性能が、実戦レベルでジオンのMSと比較してどの程度なのかを知る必要があった。
 それには極力同数に近い戦力を衝突させる必要がある。
 そこまで考えると、渋沢はヘッと鼻で笑った。
「分を過ぎた考えだ」
 小さくそう呟く渋沢。
 そう、所詮渋沢は末端の一兵士に過ぎない。
 軍隊という巨大な機械の内の小さな歯車でしかない彼に、上層部の思惑を詮索する意味も必要も無かった。

 そうして渋沢率いる第17小隊が付近の地域を捜索していると、渋沢機にホバートラックから通信が入った。
『隊長、北東の方向から反応です』
「何?」
 小隊が敵軍捜索を開始してからまだ大した時間が経っていない。
 余りに早過ぎると思い、渋沢はついそう漏らした。
『数は一つです。反応からすると軍用ジープだと思われますが』
「ジープ? MSじゃないのか」
『はい』
 その言葉を聞いて首をかしげる渋沢。
 事前に得た情報には敵の戦力にジープの情報などは無かった。
 しかし、ジープ程度のものならいくらでも隠しておけるし、渋沢達の追っている部隊以外のジオン兵のものかもしれない。
 連邦の車両ではないかとも考えてみたが、この辺りに友軍が駐留していると言う情報は無かった。
「よし、それではそのジープを先回りして捕らえる。だが、まだ敵さんと決まったわけではない。早まった行動はするなよ」
 そう言うと、渋沢はホバートラックから送られてきた情報を元にジープの進行方向に向かってMSを走らせた。
最終更新:2009年10月15日 10:55