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  • 633 名前: VIP皇帝 投稿日: 2006/11/27(月) 02:57:19.92 ID:YM3IEbmf0

「凄いな、僕らがTVだってさ」
 フレンが心底驚いたように言う。
「ま、当然だろ。そこら辺の正規兵よりも、俺の方が圧倒的に有能なんだからな」
 ライはいつものように口の端を歪めて笑った。
「でもジオン国営放送って言ったら全国ネットよ?宇宙でも放送されるんだから」
 ナシーがそう言うと、ライは更に笑う。
「エースの船出としちゃあ、悪くはないな」
 そんな自信満々のライ。
 ライだけではなく、フレン達もみんな誇らしく思った。

 丁度正午になった頃、ジオン国営放送のスタッフの乗った車が養成学校の駐車場に到着した。
 車のドアを開くと4~5人のスタッフが降りてくる。
 その中に1人の記者の女性が居た。
「やっとついたわね」
 と言いながら養成学校の校舎を見上げる記者。
「ここが例のパイロット候補生のいる学校、か」
 思っていたよりも小さいな、と彼女は思う。
 そんな彼女の後ろではカメラマン等のスタッフが色々と機材の準備を始めた。
「少し時間がかかりそうね」
 その様子を見ると、彼女は今回の取材の資料に目を通す。

  • 640 名前: VIP足軽の子 投稿日: 2006/11/27(月) 03:13:04.72 ID:YM3IEbmf0

 取材企画のタイトルは『明日のジオンを担う若き戦士たち』だ。
 その資料を見て、記者は頭を悩ませた。
 これは軍からの圧力で生まれた企画だからである。
 軍人・文民を問わず、有能な戦士の存在は国民からの人気を博す。
 実際に赤い彗星や青い巨星、白狼等のエース達は国民から熱狂的な支持を得ている。
 そういったエース達の存在を高らかに宣伝することは、兵士や国民の士気を高揚するのに非常に有用だ。
 更にエースの価値はそれだけではない。
 名の通ったエースの存在は敵軍に対しても大きな影響を与える事ができる。
 恐怖や戦慄である。
 それが故にエースパイロットは自機に固有のカラーリングを行い、わざわざその存在を誇示しているのだ。
 そのメリットは決して小さくない。
 いや、それこそが軍の狙いなのかもしれない。
 とにかく、エースの存在は軍にとっては非常に大きいのだ。
 そしてその宣伝塔としの国営放送である。
 そこまで考えて、彼女はふぅ、とため息を付いた。
「報道の中立性、独立性……か」
 ジャーナリストなんてものも地に堕ちたものだ、と思う。
 独立の名の下に行われる先軍政治。
 もはやジオンのメディアなど、軍のスピーカーでしかない。

  • 656 名前: VIP足軽の子 投稿日: 2006/11/27(月) 03:28:40.84 ID:YM3IEbmf0

『ネバダ基地で訓練生がMS操縦訓練を行っていた際、偶然連邦軍の部隊と衝突。数で勝る連邦の部隊を訓練生達は類稀なる操縦センスでこれらを撃退した。しかし、訓練生一名が戦闘で死亡』
 まだ兵士ですらない子供が、戦争で命を落とした。
 その報告書の文字に記者は眉をひそめる。
 更に報告書に記載されている情報は何度見ても信じられないものだ。
『訓練生。ノビタ=ノビ 11歳』
 11歳の子供がMSに乗って戦場で戦った。
 それもこのノビタ=ノビに関しては今回が初めての戦闘ではない。
 非公式だがこれ以前にも一度MSでの戦闘を経験しているというのだ。
 ありえない、と彼女は思う。
 しかしそれは紛れもない事実だった。
 だからこその今回の企画である。
 若き天才。
 その存在は国民を強く勇気付けるだろう。
 子供が命を賭して戦った姿に、戦士達もより一層戦いに励むだろう。
 そして、その為に子供を利用する。
 僅か11歳の子供すらも、戦争の為に骨の髄まで利用する。
 その手伝いを彼女は率先して行わなければならなかった。

  • 663 名前: VIP足軽の子 投稿日: 2006/11/27(月) 03:39:11.77 ID:YM3IEbmf0

 それはとても報道のあるべき姿とはとても思えない。
 そんな体制を変えることすら出来ないでジャーナリストを続けている自分に、彼女は自己嫌悪を感じた。
 しかしこれは仕事だ。
 好き嫌いなど言っていられない。
「オネイ、準備が出来た。行こう」
 機材の準備を終えたスタッフがそう言う。
「ええ」
 そして彼女達は訓練学校の中へと入っていった。

 のび太達が第2会議室に入ると、そこには既にジオン国営放送のスタッフが待ち構えていた。
 全員が会議室に入り終わると、スタッフの一人の女性が立ち上がる。
「訓練生の皆さん、こんにちは。私はジオン国営放送の記者で、オネイ=サーンといいます」
 オネイがそう挨拶すると、のび太達も一斉に礼をした。
「皆さんには幾つか質問をさせていただきます」
 そう言いながらオネイは会議室の椅子に座る。
 のび太達も椅子に座った。
「皆さんはこの学校でとても優秀な生徒さんだそうですね」
 オネイの言葉にみんな照れたような顔をする。
「皆さんは普段学校ではどんな訓練をされてるんでしょうか?」
 そんな質問を皮切りに、オネイは何気ない質問を次々としていく。

  • 677 名前: VIP足軽MS 投稿日: 2006/11/27(月) 04:01:08.48 ID:YM3IEbmf0

やがてのび太達が慣れてきたのを確認すると、オネイは本題の質問に移った。
「ところで、皆さんはネヴァダ州の基地で訓練中に連邦軍の部隊に襲われたそうですね」
 今まで和やかに質問をしていたオネイの顔が変わる。
 そんなオネイにのび太たちの表情も真剣になった。
「連邦は訓練生であるあなた達を容赦なく攻撃してきた。そして皆さんは戦わざるを得なくなった。その時の気持ちはどうでしたか?」
 直球すぎるオネイの質問に、一瞬全員言葉を失う。
 しかしライだけはそんな雰囲気に構わず口を開いた。
「連邦の連中を倒せると思うとワクワクしてましたよ」
 そんなライの言葉に、わざとらしく感嘆の声を漏らすオネイ。
「とても頼もしいですね。恐怖はなかったのですか?」
「そんなものはありません」
 ライは即答する。
「素晴らしいですね」
 そう言うオネイ。
 オネイはあえて他の生徒の意見をこの場では求めなかった。
最終更新:2006年11月27日 10:08