- 293 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/03(火) 02:27:50.93 ID:r516qBM0
タイ国境付近の荒れた道路を走る一台のジープがあった。
ドラえもんの運転するジープである。
余程荒れた道を走ってきたのだろう。
傷だらけの車体は厳しい長旅を物語っている。
しかし、それももう限界なのだろう。
ジープのエンジンからはガスンガスンという音が鳴り響き、その度に車体が大きく揺れる。
ガスンッ!!
一際大きな音を立てて、急速に減速する。
エンジン部分から黒煙が立ち込めると、とうとうジープは動かなくなった。
すぐさま運転席からドライバーが降りてきてくる。
ドラえもんはエンジンをチェックすると顔をしかめた。
「今まで騙し騙し乗って来たけど、こりゃあもうダメだぞ」
ジョンの電気屋を出発して以来、長旅の中でこのジープが故障する事は幾度となくあった。
その度何とか修理してきたドラえもんだった、流石に限界が来ていた。
- 294 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/03(火) 02:38:25.06 ID:r516qBM0
「仕方ない、ここからは歩いていこう」
そう言うとドラえもんはジープの荷台からリュックサックと一本の杖を取り出した。
リュックサックを背負い、杖を地面に突き立てる。
ドラえもんは緊張した面持ちで杖を見つめていた。
その杖は言わずもがな、たずね人ステッキである。
この世界でたった一つ、ドラえもんとのび太達をつないでくれる道具だ。
「頼むよ、たずね人ステッキ」
そう言っていつもの様にステッキを倒す。
カランと音を鳴らしてステッキの倒れた方角をドラえもんは眺めた。
その先は木々の茂る険しい道である。
しかし逃げるわけには行かなかった。
今この瞬間も、のび太やしずちゃんやジャイアン達はドラえもんの助けを求めているのだ。
この世界に迷い込んでから一月もの間苦しい思いをしている皆を思えば、それ以上の辛さなど彼には無かった。
少しの間、決意を固めるようにステッキの先を眺めると、ドラえもんは黙々と歩き出した。
- 295 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/03(火) 02:57:54.29 ID:r516qBM0
もう半日は歩きとおしただろうか。
日はとうに落ちたが、道は更に険しくなり、殆ど森の中のような状態だった。
これ以上歩く事は危険と判断したドラえもんは、今夜はもうこの場に野宿しようと決めていた。
適当に落ちている枯れ木を集め、火をつける。
焚き火の前に腰を下ろすと、ドラえもんは水筒の水を呷った。
ドラえもんは憔悴しきったように焚き火を見つめる。
ゆらゆらと揺れる炎だけがドラえもんを照らしていた。
一体こんな夜を何度すごしたのだろう。
ドラえもんの胸は強い不安に覆われていた。
果たして、こんな事をしていて本当にのび太たちを見つけることが出来るのだろうか?
ジープが壊れ、徒歩になってしまった今となっては、改めて途方も無いことに思える。
唯一のたずね人ステッキの性能も、的中率は70%。
こうして歩いている道が正しいという確証も無いのだ。
そもそものび太達が同じこの世界に居るとも限られない。
もしかしたら亜空間で離れ離れになって、全く別の世界に飛ばされている可能性もある。
再び水筒の水を呷る。
水筒の水も尽きようとしていた。
- 296 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/03(火) 03:16:55.42 ID:r516qBM0
こんな事を考えるのは止めよう。
考えたってどうしようもない事じゃないか。
僕に出来る事は、最善を尽くす事だけ。
弱音なんて吐いてる場合じゃない。
それにしても静かな夜だった。
パチパチと、焚き火の燃える音だけが辺りに響く。
「それにしてもおなかが減ったなあ」
ドラえもんの呟きとほぼ同時に、彼のおなかがグ~と鳴る。
「まだ保存食が少しあったかな」
そういってリュックサックを漁る。
そこで、ん? とドラえもんは呟いた。
なにか触りなれない感触のものがあったのだ。
触ったところ、ひも状の物のようだった。
「なんだこれ」
そう言ってリュックの中からその”何か”を摘み上げるドラえもん。
ドラえもんが見たのは、彼の手に尻尾をつままれ、乾パンをかじりながら宙ぶらりんに鳴っているねずみの姿だった。
「う」
一瞬世界中の空気が凍りついた。
そして……、
「うぎゃ嗚呼ああアアア汗rtfxcgsふぇういいdrftgy藤子l@sdふぁえ!!”!!W?!!!!??!?!??”えwq!!!」
まるでビックバンのような叫び声をあげてドラえもんは駆け出していた
- 297 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/03(火) 03:32:17.93 ID:r516qBM0
昼間は有象無象の難民達で賑わうこの難民キャンプも、夜の帳が落ちれば静けさに包まれる。
そんな難民キャンプの片隅を、少年は全力疾走していた。
「くそっ、しくじった!」
そんな少年の100mほど後ろをライトを持った兵隊2~3人が追いかけている。
少年は手に持った札束をギュッと握り締めた。
「せっかくこんだけ稼いだのに捕まってたまるか!」
それは麻薬を売り捌いて得た収入だった。
少年のズボンのポケットの中にも札束が顔をのぞいている。
一見して相当な金額である事は間違いない。
よほどの数が売れたのだろう。
ただ少年にとって捌く商品が多すぎたのは逆に不運だったと言える。
いつもなら麻薬は品薄で、一人のバイヤーが捌く薬の量は精々7~8人分。
それがなんと、50人分も手に入ってしまったのである。
おかげで大金は舞い込むだろうが、反面リスクも大きい。
それだけの数を捌けば、周りの目に付く可能性も高まるのだ。
おかげで少年は麻薬を売る場面を兵隊に見つかってしまった。
普段はスリや万引きで生計を立てているこの少年には荷が重すぎたのだ。
- 298 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/03(火) 03:37:38.71 ID:r516qBM0
「ちっくしょおお! なめんなよ! こちとら走りだけは自信があんだ!!」
そう言って少年は走るスピードを更に速めた。
少年の走るスピードは、確かに目を見張るほど速かった。
武装した兵隊達は、徐々に少年に引き離されてゆく。
すると少年はすぐさま、建物の陰に隠れた。
少年は走りだけでなく、土地勘でも兵隊達に負ける気はしなかった。
なにせこの難民キャンプの裏道や隠れ家を少年は殆ど全て熟知しているのだ。
「くそ! あのガキどこへ行きやがった!!」
「ちょこまかとすばしっこい野郎だ」
兵士達は少年が隠れた場所辺りで足をとめ、辺りをキョロキョロと見渡した。
「ちっ、逃がしたか」
「だが、諦めるわけにはいかん。あんなガキがあれだけの量のヤクを持ってるなんて尋常じゃない。間違いなく裏には巨大な犯罪組織がある」
「マフィアとかか?」
「さあな、ともかくあのガキを捕まえて全てを吐かせる事だ」
「そうだな。よし、俺はあっちの方を探す」
「じゃあ俺は反対側に行くよ」
そう言うと兵士達は散り散りに走り出した。
少年は少し間を置いてから、物陰からその様子を覗き込む。
既に兵士たちは何処かへ行ったようで、そこには誰も居なかった。
- 299 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/03(火) 03:41:21.68 ID:r516qBM0
「ふう、どうにか命拾いしたぜ」
片手で腰の辺りを叩きながら、物陰から出てくる少年。
両手を夜空に掲げ、んーっと間延びをする少年。
「だけど、厄介なことになったぞ」
少年は考えこむ。
この様子じゃ明日から難民キャンプ中の監視は大変な事になるだろう。
ここの難民キャンプはかなり巨大だが、所詮は閉鎖された空間だ。
永遠に逃げ切れるものでも無いだろう。
そう考えながら、少年は夜空を見上げた。
もう潮時かな、と夜空に浮かぶ月を見上げながら少年は思う。
家族はみんな戦争で死んだし、自分を可愛がってくれた兄貴分の青年もいざこざに巻き込まれて死んだ。
今仲間と思えるのは犯罪を斡旋してくるじじいだけだ。
そもそも仲間と言ったって、そこにはお互い情なんて有りはしなかった。
生きる為に、ただ互いを利用しあっていただけなのだ。
いい機会だ、と少年は思う。
もうこの難民キャンプを出よう。
ラッキーなことにとりあえず金だけはあった。
これだけの金があれば当分は困らないだろう。
そう決意すると、少年は秘密の抜け道を通り、難民キャンプの外へと逃亡したのだった。
最終更新:2009年11月27日 11:01