- 309 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/04(水) 23:35:37.25 ID:JgNOJFw0
難民キャンプも静かだったが、キャンプの外は余計に静かだった。
荒れ果てた道を歩いてゆく。
勿論、少年には行くあてなどなかった。
ずっと歩き続ければいずれは何処かへたどり着くだろう、その程度の考えで少年は歩き続ける。
考えなしではあったが、たどり着く場所がどんな場所だって少年には生きてゆく自信があった。
そうしてしばらく歩いていると、少年は「う~」という何かの鳴き声を聞いた。
「……野良犬か?」
咄嗟に身構え、耳を澄ます少年。
しかし、その声は野犬の鳴き声と言うには随分弱々しかった。
なんというか、弱って誰か助けを求めているような、そんな声だった。
少年はなんだかその声の主が気にかかった。
同時に、厄介ごとに巻き込まれたくない、とも思う。
その声を発するのが何者なのか。
確かめようか、確かめまいか、少年は少しだけ考え込んだ。
「まあ、あんな弱ってる声の奴じゃなんかあってもすぐに逃げられんだろ」
そう思うと少年は声のする方向へ歩き出した。
- 310 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/04(水) 23:59:40.04 ID:JgNOJFw0
「なんだ、人の声かこれ?」
近づいてゆくにつれ、少年にはその声が人のうめき声のように聞こえていた。
歩けば歩くほど、その確信は強まっていく。
そして、遂に声の主の目の前に到着し、少年は絶句した。
「な、なんだコイツ!?」
少年が驚くのも無理は無い。
少年の目の前に倒れているのは、予想外のものだった。
そこに居るのは明らかに人間ではなかった。
かといって、それは少年の知るどの動物とも違う。
肌は毛が全くなくツルツルしていて、そして真っ青だった。
少年は何かのロボットかとも思ったが、ロボットにしてはやたらと有機的すぎる。
少年にはこの生き物が何なのか全く見当がつかなかった。
あえて例えるなら、耳の無い青狸と言ったところだろうか?
しかし、例えそういう動物だとしても、明らかにこの生き物は人の言葉のようなものを呻いている。
人の言葉を操るツルピカ青狸。
果たしてそんなものがこの世に存在してもいいのだろうか?
- 311 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/05(木) 00:07:50.69 ID:t0YRNO60
「ま、まさかUMA!?」
そんなことを呟きながら、少年は不思議な生き物を眺める。
しかし不思議な生き物は依然として唸るばかりで一向に起き上がる気配が無かった。
「お~い、大丈夫か」
そう言いながら、少年は小枝で不思議な生き物をつっつく。
「おあdじえごぇ@おぃ……ムニャ」
不思議な生き物は何か寝言のようなものを呟いた。
しかし、少年にはその意味が分からなかった。
「起きないなら俺は行くぜ」
少年はこの不思議な生き物に興味を引かれてはいた。
ただ、どうすればいいのかも分からない。
ま、あの変な生き物も目が覚めれば自分の力でどうにかするっしょ、きっと。
そんな思いで、不思議な生き物に背を向ける。
その時。
「ウニャムニャ……ノビタ……ノビタ……クン…ムニャ」
そのうめき声だけがやけに寂しそうで、少年はその生き物に振り向かずには居られなかった。
- 312 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/05(木) 00:19:15.63 ID:t0YRNO60
「ワン、これはどういうことだ。説明しろ」
そう言ったのは昼間ワンに仕事を斡旋していた男だ。
男は深夜に自分の隠れ家へやって来たワンを睨み付けながら言った。
「オメエ、今日の昼間に兵隊どもにヤク捌いてるところをバレたらしいじゃねえか」
「すまねぇ」
「すまねぇで済むかボケェ! てめぇ一人のミスでここいらの仲間全員の足引っ張る事になったんだぞ!」
そう言って男は鋭い眼光でワンを睨み続けた。
無言のまま時が流れる。
ふと、男はワンから視線を逸らし、彼の足元に倒れている青い狸のようなものに目を落とした。
「それに、そこにいるわけの分からん青狸は何なんだ? 着ぐるみか?」
「いや、それは俺にも分からねぇんだ。たぶん生き物だと思うんだけど……」
「生き物ぉ? そんな気持ち悪い生きもんがいるわけねぇだろ!」
「本当なんだ、信じてくれ」
ワンは真剣な眼差しで男を見つめた。
「コイツ、さっき人間の言葉みたいのをしゃべってたんだ。寝言みたいで何言ってるか分かんなかったけど、凄い寂しそうだった。きっと仲間と逸れたんだよきっと!」
- 313 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/05(木) 00:41:59.25 ID:t0YRNO60
「仲間って、狸仲間とか? 赤狸とか」
「たぶん……」
「バカらしい」
ワンの事は早熟な子供だと思っていたが、所詮はちょいと擦れただけのガキか。
そんなことを思いながら、男はため息混じりに背を向ける。
しかし、ワンは男の背中にしがみついた。
「なあ、頼むよジジイ! この青狸をジジイの家で匿ってくれよ!!」
「だめだ」
「頼むって! 金ならあるから!!」
「生憎。稼業以外でガキから金巻き上げるほど腐ったつもりはねぇよ」
「お願いだよジジイイイイイイイ!!」
「静かにしろ! 兵隊に怪しまれんだろ!!」
男はワンに振り返って怒鳴りつけた。
しかしそれでもワンは怯まない。
- 314 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/05(木) 00:44:22.27 ID:t0YRNO60
「コイツが元気になるまででいいんだよ」
「しつけぇな! 大体おめぇはなんでそこまでコイツに――」
そんなに肩入れしてやがるんだ。
男はその言葉を言おうとして、それを飲み込んだ。
ワンの瞳を見れば、それは聞くまでも無いことだった。
きっと、戦争で親を亡くしてさまよっていた自分を、この青狸と重ねているのだろう。
「チィッ」
男は舌打ちすると、片手で頭を掻いた。
ただでさえ禿げ散らかった頭が、余計に無造作になる。
「しかたねえな。少しの間だけだぞ」
「本当!? ありがとうジジイ!!」
ワンは本当に嬉しそうな顔をして男に抱きついた。
そんなワンとは対照的に、俺も焼きが回ったもんだぜ、と男はため息をついていた。
- 315 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/05(木) 00:46:03.64 ID:t0YRNO60
『おーい! みんなー! 助けに来たよー!』
ドラえもんは真っ暗な闇の中でそう叫んでいた。
『のび太くーん! しずちゃーん! ジャイアーン! スネ夫ー! 出来杉くーん!』
そう叫んでも、何の返事も無い。
ドラえもんの声だけが虚しく響き渡る。
それでもドラえもんは叫び続けた。
『おーい! みんなどこだー! おーい!』
必死で叫ぶドラえもん。
するとその願いが通じたのか、ふと遠くの方にのび太らしき姿が見えた。
『おーい、のび太くーん!!』
ドラえもんは渾身の力で叫んだが、のび太はその声に気づいていないようだった。
のび太はそのままドラえもんに背を向けると、何処かへ向かって歩き出した。
『待ってえ~!!』
ドラえもんは全力でのび太を追いかける。
しかし走っても走っても何故だか距離は近づかず、のび太の姿はどんどん遠ざかっていく。
ドラえもんはもう一度大声で叫んだ。
『のび太く~ん! ここだよ!!!! 僕はここに居るよ!!」
ドラえもんはベッドから飛び起き、そして辺りをキョロキョロと見渡した。
そして「あれっ?」と呟いた。
- 316 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga] 投稿日:2009/11/05(木) 00:48:51.41 ID:t0YRNO60
「――のび太くん?」
しばし呆然と辺りを見渡す。
ここにはのび太はおらず、あるものといえば汚い生活用品とガラクタのようなものばかりだった。
見たところ、どうも廃品などを利用して作られたテントのようである。
その光景を見て、自分が見ていたのが夢であった事に気づく。
「…のび太くん」
寂しそうにそう呟いて、ドラえもんは再び部屋を見渡した。
見覚えの無い場所だった。
何故こんなところに居るのだろう。
必死に記憶を手繰る。
僕はずっとジープに乗って皆を探してて。
そうだ、ジープが壊れて僕は徒歩で旅を続けてたんだ。
そして、夜になって歩きつかれて、焚き火をして、それで――。
「そうだ、ねずみ!」
ドラえもんは、思い出した! というように両手をポン、と叩いた。
次いで絶叫した。
「居ないっ!?!? ここにはねずみ居ないっ!?!?」
慌てて布団から這い出て、血眼で辺りを探るドラえもん。
しかしあたりにねずみの姿は見つからなかった。
「ふぅ……良かった」
ほっと胸をなでおろすドラえもん。
しかしこれでドラえもんは合点がいった。
僕はねずみに驚いて急いで走り出したのだ。
そして何かに足をとられて転んだんだった。
きっとその時に気を失って、そこを誰かに助けられたのだろう。
そうしてドラえもんが自分の置かれた状況を飲み込みつつあった頃、テントに一人の少年が入ってきた
最終更新:2009年11月27日 11:03