- 789 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 02:30:40.43 ID:LVwK0Oq50
出来杉がそんな事を考えながらアリアと時間を過ごしていると連邦軍の兵隊が収容所の中に入ってきた。
これもいつものことで、難民の健康状態の調査の為に毎日数人ずつ難民を連れて行くのだ。
伝染病など健康状態に問題のある人間は別室に隔離されると言う噂であるが、今までのところそういった人は殆ど居ないみたいであった。
兵隊は手に持ったリストのような物を見つめると、大きな声で点呼を取った。
「エイサイ=デキスギ! エイサイ=デキスギはいるか!」
自分の名前が呼ばれるのを聞くと、出来杉はすぐに返事をした。
「次は君が身体検査をする順番だ。検査室に行くので私についてくるように」
「はい」
出来杉はやっと自分の番か、と思いながらそう返事をした。
「それじゃ行って来るね」
出来杉がアリアにそう言うと、アリアも出来杉に「いってらっしゃい」と言って手を振った。
やけに時間がかかるな、と出来杉は不安に思った。
巨大なスキャナーのような機械にかけられたかと思うと、検査官達がざわざわと騒ぎ出し、それから彼らの様子がおかしくなった。
入念に体のあちこちを調べられた上に、反射神経を確かめるテスト。
さらに何故か学力を測る筆記試験のようなものまで受けさせられた。
もしかして体のどこかに異常があったのかもしれない。
体調が悪いわけでは無いが、なれない生活環境におかれてどこかを悪くしている可能性は大いに考えられた。
そうしてドキドキしながら出来杉が検査結果を待っていると、白衣を来た男が出来杉のもとにやって来た。
- 97 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 18:51:07.33 ID:LVwK0Oq50
「デキスギ君だね?」
白衣の男は神妙な顔つきでそう尋ねた。
「はい」
「君に大事な話がある。だがここでは話せない、ついて来たまえ」
深刻な声でそう言う白衣の男に、出来杉は最悪の結果を覚悟した。
だが、現実はある意味で出来杉の想像した結果よりもより悪いものであったかもしれない。
出来杉やアリアの難民収容所から少し離れた場所にある連邦軍の施設でスカルチノフは胸躍る思いだった。
彼がNT資質者の選別を始めて一ヶ月、とうとうNTの素質が濃厚と思われる人間を見つけたのだ。
スカルチノフにとってこれ以上に喜ばしい事は無い。
スカルチノフは改めてこのNT適性者の報告書に目を通す。
エイサイ=デキスギ。
2週間ほど前に軍に保護された難民で、まだ10歳程度の子供である。
しかしそれ以上の彼についての情報は殆どなかった。
なぜなら軍が調べた限り、彼の戸籍はこの世には存在しないのである。
スカルチノフは口元を歪めた。
それは彼にとって非常に都合の良い事である。
難民の上に戸籍も存在しないとなれば、出来杉の事など軍の権力を使いどうにでもする事が出来るのだ。
「絶対に我が連邦に入ってもらうぞ、デキスギ」
そう呟きながらスカルチノフは笑った。
- 107 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 19:09:56.34 ID:LVwK0Oq50
スカルチノフがそんな待ち遠しい思いで出来杉を待っていると、彼の居る部屋の戸がノックされた。
「大佐。適性者の少年を連れてきました」
それを聞くとスカルチノフはやっと来たか、と胸を撫で下ろす。
「うむ、入れ」
スカルチノフがそう言うと、ドアを開いて白衣の男と一人の少年が入ってきた。
その様子を見ながら、この子か、と思うスカルチノフ。
少年の利発そうな顔つきで、その姿はスカルチノフの予想を裏切らなかった。
実際、NT適性と併用して行われた学力検査に於いて、出来杉は11歳の少年とは思えない結果をたたき出している。
「ようこそデキスギ君。私がここの司令のスカルチノフだ」
そう言いながらスカルチノフが笑顔で握手を求めると、戸惑いながらも出来杉はそれに応じた。
「突然の事で驚いているだろう。無理も無い。健康診断という名目でここに連れてこられたんだからね」
スカルチノフがそう言うと出来杉は訝しげな表情をする。
「健康状態の検査では無かったんですか?」
「そうだ。まぁ確かに健康状態の検査もしたが、君の健康状態には何ら問題は無い」
出来杉はスカルチノフの言葉にきな臭さを感じ取った。
「では一体なぜ?」
出来杉が不安そうな顔で尋ねる。
スカルチノフはそんな出来杉に笑顔を見せた。
「君はNTかもしれないのだよ」
そう言ってスカルチノフは出来杉の肩に手を掛けた。
- 118 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 19:31:43.34 ID:LVwK0Oq50
「ニュータイプ?」
出来杉はスカルチノフの言葉の意味が分からず、そう繰り返した。
スカルチノフはそんな出来杉の姿を見て更に笑った。
「戸惑うのも無理は無い。NTというのは軍事機密の一つだからね」
そう言うとスカルチノフは出来杉から手を離して近くにある椅子に座った。
「長い説明になる。君もそこにかけたまえ」
そう言って別の椅子を指し示すスカルチノフに、出来杉は訳も分からないまま従うしかなかった。
出来杉にとって、スカルチノフの言葉は様々な意味で信じられないものだった。
まずNTについて彼は説明を始めた。
それによればNTとは言わば新人類の事であり、普通の人間では考えられない能力を持っているという。
ただ、NTについては現在研究が全く進んでおらず、具体的にどのような能力を持つのかはよく分かっていない。
しかしただ一つ、NTがパイロットとして非常に高い能力を持っていることは確実らしい。
そして出来杉はそのニュータイプである可能性が高いとスカルチノフは言う。
その話はあまりに突拍子がなくて、出来杉には冗談としか思えなかった。
だが出来杉が最も驚いたのはその事ではなかった。
スカルチノフは出来杉に連邦軍に入隊し、NT研究の為に協力するよう要請してきたのである。
そんな話は出来杉にはとても飲み込めるものではない。
出来杉はドラえもん達を探さなければならないし、そもそも軍隊と言うものがあまり好きじゃなかった。
- 135 名前: 以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日: 佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 19:53:44.49 ID:LVwK0Oq50
だがしかし、スカルチノフはそんな出来杉に冷たく言い放った。
「君が大事な友人と逸れてしまったと言う話はよく分かった。しかしデキスギ君。今この地球上にどれくらいの難民が居ると思う?」
スカルチノフの言葉を聞くと出来杉は俯いた。
「想像も出来無いような数だよ。戦災孤児も含め、我々はその数を正確に把握することすら出来ていない。デキスギ君、はっきり言おう。何の情報も無く、一般人の君が友達を見つけることは不可能だ」
スカルチノフがそう言うと出来杉は完全に黙り込んだ。
「君が連邦に入ってくれれば、私も出来る限り君の友達の捜索を手伝おう。どうだ。君にとってこれは決して悪い選択ではないはずだ」
「……だけど」
それでも出来杉は頷く事が出来ない。
「デキスギ君」
スカルチノフはそんな出来杉に肩を落とす。
「それでは君はあの難民収容所に戻ると言うのかね?」
その言葉を聞いて出来杉は激しく動揺した。
「あんな場所では明日の生活すらも分からないんだぞ? しかし、我が軍に入れば厚遇を約束する」
そう言って、答えは得ているはずだとスカルチノフは諭す。
それは確かに事実だった。
正直なところ出来杉にはこれから先、あの収容所で生活していく自信は無い。
スカルチノフはそんな出来杉を見て後一押しだ、と踏んだ。
「では少し話を変えよう」
そう言ってスカルチノフは立ち上がると、窓辺に立ち外を眺めた。
「君も難民収容所に居たなら、ジオンとの戦いがどれだけ悲惨なものかはしっているだろう」
そう言うとスカルチノフは遠い目をする。
そんなスカルチノフの言葉に出来杉はすぐにアリアや他の孤児達のことを思い出した。
最終更新:2006年11月07日 20:52