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  • 165 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 02:06:18.79 ID:BWZqNqE0

『もうすぐ降下ポイント上空に差し掛かります。各機降下準備に移ってください』
 オペレーターからの通信が入る。
「1番機、既に準備は完了している」
 ゲールがそう応答すると、続いて『2番機、準備完了です』『3番機も準備OKっす』と通信を返した。
 その声を聞いてゲールは意を固めた。
 少し間をおいて、ゲールはMS間の秘密回線を開いた。
「お前達、作戦のことよりも生き残る事だけを考えろよ」
 それは彼の正直な気持ちだった。
 部下達はその言葉を聞いて少しの間黙っていたが、やがて「はい」と答えた。
 ちょうどその時ガウのカタパルトハッチが開いた。
 オペレーターから再び通信が入る。
『降下ポイントまであと10…08…06…04…02…各機、出撃してください!!』
「1番機、出るっ!」
 ゲールがそう言った瞬間、カタパルトが勢い良く加速し彼の乗るドムは中空に放り出された。

  • 166 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 02:07:35.40 ID:BWZqNqE0

 澄み渡った青空と、熱帯雨林の緑がモニター一杯に映る。
 とても美しい景色だった。
 その美しさに彼は一瞬だけ目を奪われた。
 もしも。
 もしもこれが戦いの最中でなければ、どれほど美しい景色なのだろう。
 そんな言葉が頭を掠めたが、すぐさま彼は気持ちを切り替えた。
 彼に続いて2人の部下達も順調に降下を開始している。
 今考えるべきは、どう生き残るか。
 そして自らの部下をどのように生き残らせるか。
 それだけだった。
 それだけを考えて、ルウム戦役から今日まで彼は生き残ってきたのだ。
 だがしかし、自分の力だけではどうする事も出来ないこともある。
 それもまた、今日まで生き残ってきた彼の教訓だった。

  • 167 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 02:08:31.22 ID:BWZqNqE0

 それまで沈黙を守り通してきたジャブローの対空防衛網が突如として火を噴いた。
 ゲール達の母艦であるガウは一瞬にしてその弾幕の餌食となった。
 黒煙を上げたかと思うと急速に高度を落とし爆発したのだ。
 ジャブローの対空砲火はガウだけでなくMSも襲っていた。
 既に何十機もの友軍のMSがジャブローに降下を始めていた。
 だが、その3割ほどがすでに降下途中で爆破しているのが見て取れる。
 こればかりは神に祈るしかなかった。
「どうか、地上にだけは降ろしてくれよ、神様」
 その祈りが叶ったのか彼のドムは無事ジャブローの地に降り立った。
 すぐさま戦闘の構えを取り、計器に表示された各種の情報を確認する。
「問題は無いな」
 そう呟いて、もうすぐ降下してくる筈の部下の姿を確認しようと空を見上げる。
 そうして部下の乗る2番機と3番機の姿を確認した瞬間だった。
 2番機がジャブローの対空砲火に被弾し、爆発した。

  • 168 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 02:09:29.38 ID:BWZqNqE0

「!!」
 ゲールは険しい表情のまま固まった。
 そうして何も言わずその爆発を見つめていた。
 パイロットが脱出した様子は無い。
 あれほど急な出来事だ、脱出できるはずが無い。
 そもそも、敵地に降下しようとする兵士が脱出の準備などしているはずも無かった。
 ゲールはただ黙っていた。
 彼は今まで何度も仲間を失ってきたが、仲間を失う辛さに慣れることは無かった。
 胸が張り裂けそうな思いに苛まされる。
 だがしかし、彼は小隊長である。
 3号機が地上に降下する。
 その機体に乗っている部下の命運は自分に懸かっているのだ。
 その責任が彼を冷静にさせた。
 しかしまだ若い3号機のパイロットはそうはいかなかった。
「ちくしょおおおお、よくもシーラを!!」
 そう言って3号機のパイロットはコックピット内の壁を拳で力一杯殴った。

  • 169 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 02:38:23.89 ID:BWZqNqE0

「落ち着けシンゴ!」
 ゲールがそう言っても、彼の怒りは収まらなかった。
「落ち着いていられるわけ無いじゃないすか! シーラが殺されたんですよ!!」
「分かってる。だが、だからこそ今は冷静になるんだ。さもなくば次はお前が死ぬことになるぞ」
「っ!!」
 3号機のパイロットは言葉に詰まった。
 ゲールの言葉がどういうことか分かっているからだ。
「とにかく今は目的を遂行することだけに集中しろ」
 ゲールがそう言うと3号機のパイロットは静かに頷いた。
「それでいい。俺達には迷っている暇は無いんだ。無心で突っ込むぞ!!」
 そういうとゲールはドムをホバー走行させた。
 彼の部下もまた「はいっ!」と返事をし、その後を追った。


  • 170 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 02:45:35.54 ID:BWZqNqE0

 ゲールがドムを走行させてから程なく、ドムのレーダーは敵機の存在を告げていた。
「この反応からするに……さてはMSか」
 レーダーの反応を見ながらゲールはそう呟いた。
 嫌な予想だった。
 物量に勝る連邦に対してジオン軍が今まで戦ってこれたのはMSという兵器のおかげだ。
 そのMSを連邦軍が量産し始めていたとすれば、ジオン軍にとって致命的な仇となるのは目に見えている。
 敵の反応がMSでないことを祈りながらゲールと彼の部下はその反応へ向かって突撃を開始した。
「ちっ、やはりMSか」
 ソナーより敵機の駆動音がMS特有のものであることを確認するとゲールは舌打ちした。
「まぁいい、相手が誰であろうと打ち倒すだけだ!」
 そう言うと、ゲールは部下に通信を入れた。
「いいか、相手はMSだ。気を抜くなよ」
「はいっ!」
「我々ジオンの底字から、連中にとくと思い知らせてやるぞ」
「ええ、連中を血祭りにあげてやりますよ!」
 そう言うと、ゲールとシンゴという名の部下は機体のバーニャ推進を最大にした。 

  • 171 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 03:00:45.82 ID:BWZqNqE0

「死にやがれ連邦の糞野郎おおおおっ!!」
 先行したシンゴのグフが左手に内臓されたフィンガーランチャーを乱射しつつ右手にヒートサーベルを持たせる。
 白熱化したサーベルが煙を纏いながらぼんやりとした光を放った。
 シンゴのグフのモニターに連邦軍の量産型MS『ジム』の姿が映ったのはその時だった。
 即座にフィンガーランチャーの標準をジムに合わせる。
 5連のランチャーの射撃は見事にジムに命中した。
 だが、フィンガーランチャーの威力だけではジムを大破させるには至らなかった。
 咄嗟にシールドを構えるジム。
 大型のシールドを装備するジムは、いったん防御体勢をとると前面に隙が無くなる。
 そしてまた、グフのフィンガーランチャーでそのシールドを打ち貫くのは困難だった。
「チッ! 防御しか能が無ぇのかよ!!」
 モニター越しにジムを睨み付けるシンゴ。
「だったらこいつでぶった切ってやるぜええええええ!!」
 そう叫ぶとシンゴは、ジムに対して突撃したままヒートサーベルを振り上げた。
 シンゴの動きに対して、ジムも咄嗟にシールドを捨てビームサーベルを抜こうとする。
 だが、遅かった。
 ジムがランドセルからビームサーベルを抜く前に、シンゴのグフがジムの頭部にヒートサーベルを振り下ろしていた。

  • 172 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 03:01:55.40 ID:BWZqNqE0

「これがジオンの力だ!!」
 シンゴは怒涛と歓喜の入り混じった表情で声を張り上げた。
 しかしゲールは彼が勝利の余韻に浸ることを許さなかった。
「たかが一機潰したくらいではしゃぐな、シンゴ。次の敵が来ているぞ」
「はいっ!」
 シンゴはそう返事を返すと、レーダーで敵影を確認する。
 レーダー上の反応では戦車の部隊が近づいてきているようだった。
「戦車、か」
 小さくそう呟きながらシンゴはグフを戦車部隊の方向へ走らせる。
 戦車部隊との距離はかなり近い。
 みるみる内にその距離が縮まってゆく。
「蹴散らしてやるよ!」
 そう言ってフィンガーランチャーを連射する。
 被弾した戦車たちが次々と大破していった。
 瞬く間に4台の61式戦車がその餌食となっていた。

  • 173 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 03:11:48.18 ID:BWZqNqE0

「ハハハハハハハハハハッ! ざまあみろっ!!」
 フィンガーランチャーの連射する音。
 61式戦車の砲撃音。
 そして大破し爆破する音。
 それ以外にもジャブロー一帯から激戦を示す絶え間なく鳴り響く。
 それらの音に半ば洗脳されるかのように、シンゴは恍惚の表情を浮かべていた。
「シーラの恨み! いや、これはスペースノイドを虐げてきた貴様ら地球連邦への正義の鉄槌だ。死んで償えっ!」
 そう言いながらシンゴの顔は怪しい笑みを作る。
「アハッ! アハハハハハハハハ!!」
 61式戦車が大破するたびにシンゴが笑い声を上げた。
 しかし、それが隙を生んだのだろう。
 彼は突如現れたジムに気がつくのに一歩遅れた。
 ジムのビームスプレーガンがグフのコックピットを狙う。
 だがしかし、ジムがビームスプレーガンのトリガーにマニュピレーターをかけた瞬間、大破したのはジム自信だった。

  • 174 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 03:17:45.73 ID:BWZqNqE0

 シンゴには何が起こったのか一瞬分からなかったが、レーダー上で自機の後方にいるゲールのドムを確認したことで、それがドムのジャイアントバズによる射撃の結果である事を知った。
「周囲への注意を怠るな」
「……はい、すみません」
 ゲールからの無線に浮かない表情で答えるシンゴ。
 自信の気の緩みで招いた危機。
 その危機を自分の力でなく、他者の力により免れた事。
 シンゴの表情にはその事に対する苛立ちが見て取れた。
 彼には、自信の未熟さを認められ無かったのだろう。
 そんなシンゴを若いな、とゲールは思う。
 恐らくは劣等感の裏返しから来る怒り。
 自信を向上させるモチベーションにはなるが、実戦に置いては激情を呼び起こし冷静な判断を失わせる感情でもある。
「いいか、相手に勝利する事は確かに重要な事だが、最も大切な事は自分自信が負けない事だ。それを忘れるな」
 ゲールはシンゴをなだめるべくそう言った。
 シンゴは時間を置いてから小さく「はい」とだけ返した。
 明らかにゲールに対して不服を持っている返事だった。

  • 175 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 04:24:13.29 ID:BWZqNqE0

 出来杉達は無断で搭乗していたジムから降ろされ、グン少佐の下へ召集されていた。
「無断でのMSの搭乗、そしてその機体を中破され、なおも新しい機体に乗り換えて出撃しようとしていたそうだな」
 グンは出来杉達3人に厳しい目を向ける。
「そのような事は本来許される事ではない、それは君達も分かっているな?」
 強い口調でそう問いかけるグンに、出来杉は小さく「はい」と返した。
「しかし今回は緊急事態だ。十分な操縦技術をもったパイロットが不足している我が軍において、十分な訓練を積んでいる君達は子どもとはいえ重要な戦力足りえる。私とて無意味な軍規を振りかざすつもりは無い」
 軍は少しの間、沈黙のまま出来杉達を見据えた。
「そういう訳だ。改めて君達に出撃命令を出そう。各人、ジムに搭乗しジャブローに侵攻してきた敵機を撃退せよ」
『はい!』
 3人が息をそろえて返事をした。
 そしてすぐに踵を返すと、それぞれが支給されたMSへ向かって駆け出した。
 出来杉がジムに乗り込みシステムを起動すると、すぐさまアリアから無線が流れてきた。
「凄いね。私たち1人1人にMSなんて」
「うん」
 出来杉は微笑みながらそれに返す。
 するとツンが無線に割り込んできた。

  • 176 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[] 投稿日:2009/07/25(土) 04:29:30.47 ID:BWZqNqE0

「ま、当然のことよね。NT適正者である私たちは常に最新鋭のMS操縦訓練を受けてきてるんですもの。並みのパイロットとは訳が違うのよ」
 そういうツンはとても得意げだった。
 そんなツンのことがアリアは大好きだった。
 弱気な性格なアリアあなだけに、ツンの強気な性格に惹かれるのだろう。
「うん。そうだよねツンちゃん。私たちNTの種だもんね」
 そう言ってアリアは笑顔を作った。
「ええ」
 ツンはそう相槌を打った。
 そう、まだ私たちは種に過ぎないのだ、と彼女は思う。
 だからこそ彼女はMSに乗ってより多く戦わなければならなかった。
 MSでの戦いこそがNTの能力を強化する要素である、というのが彼女達の教わった事だったからだ。
 一機でも多く敵と戦わねば。
 それはもはや脅迫に近い彼女の義務感だった。
 ”わたしをメチャクチャにして”、”私を利用した奴らをやっつける”為の力を手に入れること。
 それこそがツンを支える原動力だった。
「私はアムロさんだって超えてみせるわ」
 ツンは誰にも聞こえないようにそう呟いた。
 そうしている内に3人のコックピット内にグンからの無線が入った。
『それではこれより各機、B-126-Dブロックへ向かい敵機を迎撃せよ』
『了解!』
 3人は同時にそう答えると目的地へ向かって移動を開始した。
最終更新:2009年09月28日 11:01