- 116 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 05:23:13.34 ID:TCSZU0U0
アムロの指差した方向を進むと、程なくして前方に巨大な倉庫のような建物が見えてきた。
しかしその建物以外には何も無い。
カイはそれを見て、探す場所を間違えたのだろうかと思った。
しかしアムロはその建物を見つめると、小さく「あっ」と呟いた。
瞬間、倉庫の入り口のをぶち壊して一台の軍用車両が飛び出してきた。
「うおお、なんだありゃあ!」
その車両の勢いにおどろいたカイがそう漏らした。
「あれに乗ってるのはキッカ達じゃないか」
運転席の小柄な青年が言った。
「よし、ハヤトあの車の横っちょにつけろ」
「おっけーカイさん」
ハヤトと呼ばれた小柄の青年は、そう言うと思い切ってバギーのハンドルを切った。
アムロもそれに続いてバギーのハンドルを切る。
「おーい、お前ら! 車のブレーキを踏め!」
カイが大きな声で飛び出してきた車両にのっている子供に叫んだ。
「だめだよー! この車止まんない! それより大変なんだ。僕達さっきのとこでジオンの爆弾見つけたんだ!」
「ジオンの爆弾だあ!?」
そう言ってカイは子供達の乗っている車両の後部座席を見た。
すると10個はあろうという時限式の爆弾らしきものが確かにあった。
- 117 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 05:36:32.66 ID:TCSZU0U0
「げぇっ! マジじゃねえか。よーし、まってろよ! 今から俺がそっちに行くからな! ハヤト、もっと車寄せろ。飛び移るぞ」
「はいっ」
そう言うと早とはギリギリまで車間距離をつめた。
「いいぜハヤト。それとアムロ! 危ないから、おまえはいったんここから離れろ! 誰だかしらねえけど、その子供達にケガさせるわけにはいかねぇだろ!」
ハヤトが大きな声でそういうと、アムロは頷いて返した。
「分かりましたカイさん。すぐにまた戻りますから」
「ああ、こっちのことは俺達にまかせとけ!」
「はい!」
アムロはそう言うとバギーの進路を変更し、来た道を戻っていった。
そして少しすると、基地施設の通路近くでバギーをとめた。
「この通路をずっと行けば、君達がさっきいた施設へ戻れる。君達は施設へいったん戻るんだ。いいね?」
アムロがそう言うと、ツンが不満げに言い返した。
「アムロさん、私達も手伝うわ!」
「だめだ」
「でも!」
食い下がるツンの言葉にアムロは耳を貸さなかった。
- 118 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 05:37:20.86 ID:TCSZU0U0
「また後で君達のところに行くよ。それまでは施設に居るんだ」
そういってアムロはバギーを発進させた。
そんなアムロのバギーを見送ると、ツンは怒鳴った。
「なによあの人! 私達を何にも出来ない子どもみたいな扱いしてた! あんな人ほかの大人と変わらないわ!」
「ツン、アムロさんは僕達のことを気遣ってくれてるんだよ」
出来杉は優しくそう行ったが、ツンにかえって逆効果だった。
「そんなこと分かってるわよ! でもね、私は誰かに守られる為にここに居るんじゃないの。誰かの言いなりになる為にここに居るんでもないのよ!」
ツンは泣きそうな顔で言った。
「ツン――」
そんなツンになんて声をかければいいか、出来杉にもアリアにも分からなかった。
そうして戸惑っているとき、基地内に大きな爆発音が響いた。
「何かしら?」
アリアがそう呟いた。
「アムロさん達が行った方向みたいだけど」
爆発音のした方向を心配そうに眺めるアリア。
「心配ないよ。きっと爆弾の処理に成功したんだ」
そんな彼女の心配を和らげるように出来杉が声をかけた。
「そうだよね」
アリアがそういって笑ったとき、今度は基地内に緊急事態を知らせる警報が鳴った。
- 119 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 05:43:12.90 ID:TCSZU0U0
「今度は何?」
アリアが心配そうな口調でそういった。
警報が鳴ると、とたんに基地中が騒がしくなり、どこからともなく「敵襲だ!」という怒号が飛んできた。
「敵襲?」
ありえない、と出来杉は思った。
他の基地ならいざ知らず、ここは難攻不落のジャブローである。
間違いなく地上に存在する軍事基地の中で最強の防衛力を誇る。
そのジャブローにこのような奇襲をかけて来る敵など考え難かった。
「なにかの間違いじゃないのか」
そう呟く出来杉をあざ笑うかのように、再び基地の中に大きな爆発音が鳴り響いた。
しかも爆発は一度ではなく、まるで敵のMSと交戦しているかのような連続した爆発音である。
まずい、と思った。
そう思っている間に、今度はさっきよりも近くで爆発音がした。
「ここにいるとまずい。アムロさんの言うようにさっきのところに戻ろう!」
出来杉が沿う言った時、ツンが「あっ!」と叫んだ。
「どうした、ツン?」
出来杉の言葉にツンは爆発のした方角を指差して言った。
「見てエイサイ。今の爆発、さっき子供達が飛び出してきた格納庫みたい。ねえ、あの格納庫の中から連邦軍のMSが見えるよ」
ツンの指先を見る。
確かにそこにはツンの言うように連邦軍の量産型MS『ジム』があった。
そのMSはシミュレーターで何度も使ったことがあるので、すでに出来杉達は見慣れていた。
- 120 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 05:47:28.63 ID:TCSZU0U0
「ねえ、エイサイ、あのMSに乗って戦おう。私このまま逃げるなんてイヤ!」
ツンが叫んだ。
しかし出来杉はそれに頷くわけにはいかなかった。
「だめだ、危険すぎる」
そんなツンを止める為に、出来杉もまた声を張り上げた。
しかし、ツンは聞かなかった。
「嫌よ! 私はう人形に戻りたくないの! 私は私でいたいの! 私は戦うわ!」
ツンの様子は明らかに普通の彼女ではなかった。
「ツン落ち着いて。僕達と一緒にいこう、ね?」
「嫌よっ!」
そう言うとツンは走り出した。
「ツン、待って!」
すぐさまそんな彼女をアリアと出来杉が追いかける。
しかしツンの走るスピードが早く、なかなか彼女に追いつけない。
結局2人がツンに追いついたのはツンが格納庫に到着し、ジムの前に立っている時だった。
ツンはジムの前に立ってはいたが、彼女の目線は足元に伏せている連邦の兵士に向いていた。
パイロットスーツを着ているところから、その兵士がジムのパイロットであることが見て取れる。
「この人さっきの爆撃に巻き込まれちゃったみたい」
ツンはそう言うと、その兵士の体を探った。
- 121 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 05:53:36.61 ID:TCSZU0U0
「死んでるわ」
そう言って彼女が兵士から手を離したとき、彼女の手には兵士の亡骸から奪ったキーらしき物が握られていた。
「ツン、止めろ!」
出来杉の言葉にツンは首を振った。
「ここで逃げたくないの。私が私である為に、私の力でジオンを倒すわ」
そう言うツンの目には決意の色があった。
こうなるとツンはテコでも動かないことを出来杉は良く知っている。
はあ、とため息をつくと出来杉は降参した。
「分かったよツン。君がジムに乗る事には反対しない。その代わり、僕も一緒にジムに乗る」
そう言う出来杉にアリアも続いた。
「アタシも乗るわ」
決意の篭った瞳でツンを見つめるアリア。
「エイサイ。アリア……」
そんな2人を前にして、ツンの胸にこみ上げるものがあった。
泣きそうなのを堪え、出来杉とアリアにツンは笑って返した。
「冗談じゃないわ。あの狭いコックピットに3人で乗る気? 一人の方がマシよ」
フン、と顔を背けると、ツンはジムのコックピットへ乗る為に歩き出した。
「シミュレーターと実機は違う。一人で行かせるわけには行かない」
「そうよ。私達仲間じゃない」
そう言ってアリアと出来杉はツンの傍に駆け寄る。
「――仕方ないわね。せいぜい足手まといにならないでよね!」
そう言うツンの声はどこか嬉しそうだった。
- 122 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 06:04:01.74 ID:TCSZU0U0
そうしてジムのコックピットに3人で押し入った。
「シミュレーターと大分仕様が違うじゃない」
入るなりツンが呟いた。
確かにジムのコックピット内はシミュレーターのものとは大分異なっていた。
慌てるツンに出来杉が微笑んで返す。
「大丈夫、基本的な操作は同じはずだ。ツン、ロック解除用のキーを貸してくれ」
「うん!」
そう言うとツンは出来杉にキーを手渡した。
「ありがとう」
出来杉はそれを受け取ると、シートに座りGMの起動準備にとりかかった。
「ここが各種エネルギーの調節で、こっちがメインシステム起動用の装置だな。それならここをこうして……と」
そう言いながら出来杉がコックッピットを弄ると、正面のメインモニタにヴンと光が入った。
メインモニタをみると、『システム正常起動』と表示されている。
どうやらジムの起動に成功したようだった。
「さっすがエイサイ!」
「ふんっ、ありがと」
アリアとツンは二人して笑顔で言った。
「喜ぶのは早いよ二人とも」
出来杉が言った瞬間、モニタのレーダー部分に敵機の反応が映った。
レーダーを見るに敵機はこちらに向かって来ている。
- 123 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 06:04:37.76 ID:TCSZU0U0
「この距離、やるしかないみたいだな」
出来杉は覚悟を決めると、機体の基本操作用の調整を始めた。
「僕は機体の基本操作をするからアリアとツンは武器の照準と攻撃をやってくれ!」
「わかった」
そう言ってアリアはすぐさま左の操縦桿を取った。
「右は私に任せて」
そう言ってツンは右の操縦桿を取る。
「よし、それじゃあ行くよ!」
3人の駆るジムは急速に敵方向へ旋回し、敵を正面に捕らえた。
「あの機体、シミュレーターでは見たことがないな」
メインモニタに映る敵機を目にした出来杉がそう呟いた。
「ほんとだ。なんだか丸っこくて可愛いね」
アリアはクマのぬいぐるみでも見るようにそう漏らした。
「何が可愛いよ。言ってる傍から攻撃してきたわよ!」
アリアが怒鳴った。
敵のMSはこちらに腕を向けると、その腕に内臓されているミサイルを発射してきた。
出来杉は咄嗟にバーニャの推進を使って回避を行なう。
「かわいい顔して怖いね!」
アリアが面白そうにそう言った。
「緊張感ないわね」
「だってかわいいんだもん」
出来杉は苦笑しつつもこんな状況で余裕を失わない2人が頼もしくもあった。
と同時に抜かりなく相手のMSをデータ照合させる。
- 124 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 06:05:31.77 ID:TCSZU0U0
「水陸両用のMS、アッガイか」
データを見ながら出来杉が呟いた。
「水陸両用? どうりで変な形なわけだわ」
「えー、変じゃないよ。かわいいじゃない。ツンちゃんはアッガイ嫌いなの?」
「あんたねぇ、相手は敵なのよ、敵! かわいいとかかわいくないとそんなのはどうでもいいのよ!!」
そんな2人のやり取りにわって入るように出来杉が口を開いた。
「2人とも、次にあのアッガイの攻撃を避けたら相手に突撃しようと思う。2人はそれと同時にビームサーベルで切りつけて欲しい。いいね」
出来杉がそう言うと2人とも頷いた。
「大丈夫、私達ならやれるわ」
「うん、ツンちゃんと私に任せてエイサイ」
「頼もしいな」
出来杉が2人の言葉に返した瞬間、アッガイがまたもやミサイルを発射してきた。
瞬時にミサイルを回避する運動を取らせる出来杉。
そしてそれと間髪入れずにバーニャの推進をフルに活用しアッガイへと突撃する。
アリアとツンはその動きにあわせて操縦桿を使い、GMの両手にビームサーベルを持たせた。
「アリア!」
ツンがそう叫んだ。
「うんっ!」
アリアもまたそれに大きな声で応えた。
- 125 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 06:06:26.95 ID:TCSZU0U0
『せぇ~のっ!』
2人の声が重なる。
『いっけええ!』
瞬間、ジムは両手を振り下ろし、×の字にアッガイを切り付けた。
アッガイはなす術なく両断され、爆発した。
「やったねツンちゃん!」
へへん、と得意げにアリアが言った。
「ま、このくらい当然ね」
たいした事じゃないわね、と言いたげな表情でアリアが返す。
「ね、ね、今のに何か名前つけよう!」
「何バカなこと言ってるのよアリア」
「えー」
なんて言って2人はぶーぶー言い合っている。
出来杉はそんな2人に笑顔になった。
だが、気の緩みは厳禁である。
「2人とも。まだ敵はいるんだ、気を抜いちゃいけない」
「わかってるわよ。あ、エイサイ見て」
そう言ってツンはレーダーを指差した。
「あっちでMSの戦闘があるみたい。私達も援護に行きましょう」
「わかった」
出来杉が応える。
「必ずジオンを滅ぼしてみせる。私の力で」
ツンは得意げに言った。
- 127 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 23:28:43.86 ID:TCSZU0U0
しかしジムを移動させ、友軍の援護に向かった瞬間、コックピットの中に張り詰めた空気が広がった。
3人とも一様に何か不穏なものを感じ、顔を曇らせている。
「ねえ、なんだかやな感じがしない?」
アリアが少しだけ怯えるような声で言った。
「ニュータイプがいるんだわ、きっと」
ツンが呟いた。
その顔は3人の中で最も険しい表情を浮かべている。
「ニュータイプってことはアムロさんなのかな」
ツンの言葉にアリアが問いを返す。
「違うわね。あの人よりももっと歪な感じ。ねえ見て」
ツンがそういった瞬間、モニターに映る景色の奥の方に交戦している友軍のジムの姿が見えた。
「あの機体を援護しないと」
しかしツンがそう言った次の瞬間だった。
突如として彼らのモニター内に通常のMSとは比較にならないほどのスピードで動くMSが現れた。
全体的に丸いフォルムをしているMSで、両手にはカニを連想させるようなクローを備えている。
なにより機体の全身に施された真っ赤なカラーリングが出来杉達の目を引いた。
- 128 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/24(日) 23:39:45.50 ID:TCSZU0U0
その機体は瞬く間にジムの胴体ををクローで突き刺していた。
途端に突き刺されたジムが爆発する。
「な、今の敵の動きは――!?」
出来杉は絶句した。
今のMSはアッガイとは違う種類のMSだが、恐らくはアッガイと同じく水陸両用MSと見て間違いない。
にも関わらず、その動きの速さは陸専用MS以上のスピードで動いていた。
その動きの裏には当然MS自体の性能があるだろう。
しかし、あのMSの動きが性能の問題だけではない事は明白だった。
驚異的に熟練した操縦技術を持つパイロット――。
何より機体全体に施された赤いカラーリングがそのパイロットがエースであることを証明している。
赤い機体を駆るジオンのエースパイロット。
そんなパイロットはそう居ない。
3人とてその名前を思い浮かばない筈がなかった。
- 129 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/25(月) 00:46:27.18 ID:0OaZLSQ0
「まさか、赤い彗星なのか?」
「嘘でしょ……」
出来杉の言葉にツンは硬直した
「よりによって赤い彗星だなんて」
ついてないわね、と舌打ちをするツン。
その表情には焦りと戦慄の混ざりあったものだ。
自信家であるツンがそのような表情を浮かべる事は本来は珍しい。
しかし今回は仕方の無い事だった。
赤い彗星に出会うと言うことは連邦兵にとって死神に出会うことと等しいのだから。
「あのMS、なんだか嫌……」
アリアが言った次の瞬間。
赤いMSは腕に内蔵されたメガ粒子砲を発射すると、それと同時に頭部からミサイルを放ちながら突撃してきた。
「来るっ!!」
出来杉はとっさにバーニャの推進と、機体運動によるフットワークで攻撃を避ける。
それに合わせてツンは右手にもたせているビームサーベルを捨てた。
と、同時に背部にラックされていたビームスプレーガンを腕に持たせる。
「上等だわ。赤い彗星なんて私が潰してあげる。――当たれっ!」
ビームスプレーガンを連射するツン。
しかし、赤いMSはその全てを紙一重で避けると再びメガ粒子砲を発射してきた。
「くっ!」
またも機体運動で敵の攻撃を避ける出来杉。
しかしその動きは相手に読まれていた。
- 130 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/25(月) 01:03:13.52 ID:0OaZLSQ0
出来杉たちのジムを翻弄する赤いズゴック。
そのコックピットの中では一人の男がほくそ笑んでいた。
敵の本拠地であるジャブローに乗り込んでおきながら、男はパイロットスーツでは無く赤い士官用の軍服を着用している。
それだけで十分に特異であるが、なにより顔の眼より上を仮面で隠しているのが眼を引いた。
仮面で顔を隠し、赤い軍服を身に纏うパイロット。
彼が誰であるかは聞くまでも無い。
赤い彗星、シャア=アズナブル。
言わずと知れたジオン軍最強のMSパイロットである。
シャアはモニターに映る”ガンダムもどき”を見ながら不敵に笑っていた。
「なかなかいい動きをするパイロットだな」
他のガンダムもどきが反撃する間もなくシャアに撃破されていったのに比べ、この相手の動きは目を見張るものがある。
何よりシャアは相手に対して何か特別なものを感じていた。
「ガンダムのパイロットが乗っているというわけではないだろうが、あるいはニュータイプやもしれんな」
確信ではないが直感的にシャアはそう思った。
が、相手が敵であることに代わりは無い。
むしろ相手が本当にニュータイプだとするのなら、ガンダムのパイロットのように巨大な壁となる前にその芽を摘むべきである。
シャアは自分の動きをここまで避けた相手を称えつつも、次の攻撃で勝負を決めるべく再びジムへの突撃を試みた。
- 140 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/29(金) 00:23:04.39 ID:wmeZR.g0
「これは避けられまい」
相手のガンダムもどきはとっさにビームスプレーガンで迎撃の構えを見せた。
しかしその動きもシャアの想定内である。
シャアの駆るズゴックは微妙な回避で相手の射撃線上から逸れる。
”ガンダムもどき”の射撃はズゴックの真横で機体を掠っただけだった。
このままクローで胴体を突き刺して終わる、とシャアは思った。
しかし次の瞬間、ガンダムもどきは上半身を捻ると左手のビームサーベルを振り上げた。
その動きにシャアは驚いた。
普通のパイロットならああも射撃と格闘武器を同時に使いこなせない。
このまま突撃すれば切られるのはシャアの方だった。
シャアは機体のバーニャ推力に微調整を加えた。
刹那、シャアのズゴックはガンダムもどきの右腕の下方に潜り込んだ。
ガンダムもどきのビームサーベルは空振りし、同時にズゴックのクローがガンダムもどきの右腕をもぎ取っていた。
が、間髪おかずもなくガンダムもどきは体勢を立て直す。
そしてもう一撃ズゴックへ切りかかった。
シャアは反射的にズゴックを前方に大きく跳躍させ、その攻撃をかわす。
着地し、間をとったままシャアは相手を見据えた。
- 131 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/25(月) 01:05:02.39 ID:0OaZLSQ0
「大した腕だ」
シャアは賞賛と苛立を込めてそう言った。
今の攻撃でシャアは確実にガンダムもどきをしとめる筈だったのだ。
しかしズゴックのクローは相手の右腕をもぎ取るに留まり、自らも逃げる形で距離をとらざるを得なかった。
屈辱である
相手を仕留めそこなったところでシャアの有利に揺るぎは無い。
だとしても、己の調子を崩された事はシャアにとって屈辱である。
「ジャブローにああいうパイロットがいるとはな」
シャアは次こそ確実にしとめるべくズゴックをスタンバイさせる。
この攻撃は絶対に外してはならない。
相手が非凡な操縦技術をもつパイロットであっとしても、赤い彗星との間には越えられない壁があるのだ。
目の前のガンダムもどきを仕留めることは確信を超えた、いわば決められた未来と言ってよい。
そのような予定調和を乱すイレギュラーは”ガンダム”だけで十分なのである。
だからこそ、自らが赤い彗星たる為に、目の前のジムは次の刹那には倒されねばならない。
- 132 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/25(月) 01:05:59.81 ID:0OaZLSQ0
しかし、その自信を揺るがすイレギュラーであるからこそ、奴はやはり白い悪魔なのである。
突如レーダーに一機のMSが現れた。
そのMSは瞬く間に間合いを詰めてきたかと思うと、電光石火の速さでシャアのズゴックへとビーム射撃を行なってきた。
その攻撃は前回奴と戦ったときよりも”また一段と”素早くなっていた。
「くっ!」
咄嗟にその攻撃を避けるシャア。
「してやられたか」
怒りのあまりシャアは眉間に皺を作った。
赤い彗星ともあろうものが背後を取られる形で奇襲を受けたのだ。
並みのパイロットなら間違いなく被弾していただろう。
シャアがその攻撃を避けたとはいえ、相手の攻撃に対して後手に回った形である。
当然、シャアにとって面白いことではない。
第一、問題なのは増援として現れた連邦のMSである。
それは間違いなくあの”白い悪魔”ガンダムだった。
「また会ったな、ガンダム」
愛憎をこめてシャアはそう呟いた。
状況はシャアにとって芳しくない。
相手はガンダムであり、そしてニュータイプかもしれないパイロットの乗ったガンダムもどきである。
が逆に考えれば好機である、ともシャアは思った。
今度こそガンダムを仕留め、そしてこれから連邦のエースになるかも知れない芽を摘み取る事が出来るのだ。
- 139 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/29(金) 00:20:20.04 ID:wmeZR.g0
互いに隙を伺うように、一瞬の沈黙が流れた。
そんな沈黙を突き破ったのは一機のファンファンだった。
「なんだ」
シャアが呟いた。
シャアは知る由もないが、それは婚約者をジオンに殺された連邦士官の決死の突撃だった。
だが当然、そんな勢いだけの攻撃が赤い彗星に通ずるはずもない。
「冗談ではないぞ」
そう言うとシャアは瞬時にクローを振り下ろし、ファンファンを叩き落していた。
「ウッディ大尉!」
そう叫んだのはガンダムのコックピットの中のアムロだった。
「シャア!!」
怒声と共にアムロはズゴックに切りかかった。
だが、その攻撃を予想していたとばかりにシャアのズゴックはそれを避ける。
しかし、その先に出来杉達のジムが先回りした。
「邪魔だ!」
シャアはクローでジムを一突きにしようと操縦桿を操作する。
が、そのクローの動きに合わせるように、ジムは左腕のビームサーベルを突き出した。
不味い、とシャアは思った。
ズゴックのクローにビームサーベルが突き刺さる。
- 133 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/25(月) 01:08:33.22 ID:0OaZLSQ0
「ちぃぃっ!」
呻くシャア。
だが怯むことなく咄嗟に体勢を整える。
「堕ちろっ!!」
シャアはそう吐き捨てると、さらにビームサーベルで突き刺されたクローを前へ突き出した。
力任せに自分のクローごとジムの左腕をもぎ取る。
だが、その隙にズッゴクの後ろからガンダムがビームライフルを発射した。
シャアは瞬時にそれを避けようとしたが、遅かった。
ガンダムによって放たれたビームの閃光が、ズゴックの残りのクローに命中する。
「ぐっ!」
シャアは歯を食いしばった。
彼の乗るズゴックは両腕をもがれた状態である。
「まさかこの私がクローを両方やられるとはな」
シャアは苛立ちの表情を浮かべた。
もはやこのまま戦っても勝ち目はない。
シャアはこの戦況に見切りをつけると、この場から撤退すべく推進力を最大にして大きくジャンプした。
すぐさまガンダムがそれを追い、出来杉達のジムもそれに続いた。
だが、ジャブローの地形は非常に複雑である。
その地形はMSの操縦技術に勝るシャアにとって有利に働いていた。
ズゴックとガンダムとの距離が開く。
その瞬間ズゴックの頭部に内臓さえているミサイルが連射され、ジャブローの天井部に直撃した。
- 134 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/25(月) 01:09:37.24 ID:0OaZLSQ0
「しまった!」
アムロが叫んだ。
ズゴックのミサイルによって天井部から瓦礫が崩れ落ち、ガンダムとジムの行く手を阻んだのである。
「逃げられたか」
間に合わない、と判断したアムロは深追いする事をやめ、ジムに対して通信を行なった。
「大丈夫ですか」
アムロは通信を通してそう呼びかけた。
一体どのようなパイロットが乗っているのだろうか。
アムロがそう思ったとき、モニタに映ったジムのパイロットは彼にとって驚愕だった。
ガンダムのモニタに出来杉達の顔が映る。
3人ともバツの悪そうな顔をしていた。
「君達は!」
アムロは驚きのあまり一瞬言葉を詰まらせた。
「なぜ君達がMSに」
出来杉達の危険な行為を嗜めるように、アムロはモニター越しに厳しい視線を向けた。
そんな彼を察して、出来杉が口を開いた。
「ごめんなさい、アムロさん。約束を破ってしまって」
そう言って頭を下げる。
「でも僕達は後悔してません。僕達は逃げたくないんです」
そう言って出来杉はアムロを見据えた。
- 135 名前:旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv[] 投稿日:2009/05/25(月) 01:15:32.01 ID:0OaZLSQ0
「デキスギくん」
アムロは一瞬言葉を失った。
しかし少し間をおくと笑顔を作った。
「シャアを撃退できたのは君達のおかげだ。ありがとう」
アムロがそう言うと、3人の表情が途端に明るくなった。
「こちらこそ助けていただいてありがとうございます」
出来杉が言う。
しかし、その直後出来杉の表情が再び曇った。
しばしの沈黙の後出来杉が口を開いた。
「アムロさん、僕達はルナツーに行きます。僕は皆を守る力を手にたい」
その言葉を聴いてアムロは俯いた。
もはやアムロには戦士として3人を認めることしか出来なかった。
「頑張って」
アムロは優しい表情をした。
「幸運を祈ってるよ」
アムロは別れ際にそう言い残した。
「アムロさんも」
そんなアムロに、出来杉もそう返した。
最終更新:2009年09月28日 10:57