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  • 720 名前: VIP村人a 投稿日: 2006/11/14(火) 20:53:20.40 ID:6Oe/YvO30

 ブータンの荒野を走るジープ。
 それに乗っていたのはホイ達であった。
「ホイさ~ん、もう1日中ジープの上だよ? もう兵隊も追って来ないよ。少し休もうよ」
 食事や仮眠の為に少しの休憩は取っていたが、それは長くても3時間程度で、ホイは直ぐに運転を再開していた。
 それも4日間である。
 運転しているホイは当然の事ながら、搭乗しているジャイアン達にも相当な疲労が溜まっていた。
 だがそれでもホイは運転を止めなかった。
「アトスコシアル」
 そう言ってハンドルを握り続けるホイ。
 この辺りは未だジオン軍と連邦軍の紛争が耐えない地域である。
 もしもこの地域で軍隊に見つかったら、相手が連邦軍であれジオン軍であれ厄介な事だ。
 何せホイ達が乗っているのはジオンの軍用ジープ。
 ジオンに見つかれば、即捕まるのは当然だが連邦に見つかっても下手をすれば攻撃される危険性があった。
 まずはこのまま連邦軍の占領地域の目の前までジープを走らせ、そこからは連邦の統治で安定した地域まで歩くのが得策だろうとホイは考える。
 それまで気を抜く事は出来なかった。
 ガソリンの残容量からも道草を食っている暇は無かったし、この辺りはMSや戦車の残骸が多い。
 それもかなり新しい残骸である。
 ホイは一刻も早くこの地域を通り過ぎなければならなかった。

  • 738 名前: VIP村人b 投稿日: 2006/11/14(火) 21:10:44.87 ID:6Oe/YvO30

 だが、そうしてホイがジープを走らせているとホイ達のジープに遠くから巨大な音が迫って来た。
 ズシン、ズシンと連続して鳴り響く地響きにホイ達は全員顔を強張らせる。
 MSだ、と全員そう思った。
 MSの走行音はジープの進行方向から聞こえてくる。
 不味い。
 そう思ってとっさにジープのハンドルを切るホイだが、既に遅かった。

「そこのジープ、今すぐに止まれ! さもなければ攻撃する」
 拡声用のボタンを入れると、渋沢はホイ達のジープにそう叫んだ。
 渋沢の声が聞こえたのか、ジープはすぐに停車する。
 それを確認すると、渋沢はメインカメラのデジタル望遠を使ってジープに乗っているホイ達の姿を確認した。
「軍服を着ていないな。それに子供が乗っている。民間人なのか?」
 しかし、彼らが乗っているのは明らかにジオン軍のジープである。
 何か訳ありだな、と思う渋沢。
 そんな渋沢に他のジムの操縦者が通信を入れた。
『彼らは民間人のようですね。どうします隊長?』
「どちらにせよ事情を聞く必要がある。これから俺が確保に向かうが、まだ彼らが文民と決まったわけじゃない。対人兵器の準備をしておけ」
『了解です』
 渋沢は部下の返事を確認すると、ジープのもとへMSを歩かせる。
 そしてジープの目の前でMSを止めると、渋沢は拳銃を手に持ちコックピットのハッチを開き、地上へと降りた

  • 781 名前: VIP村人b 投稿日: 2006/11/14(火) 21:32:53.88 ID:6Oe/YvO30
「両手を頭の後ろから動かすな」
 拳銃の銃口をホイに向けたまま、渋沢はジープに近づいていく。
「所持品を確認させてもらう」
 そしてジープの目の前に来ると、運転席のホイに手をかけた。
 その瞬間、渋沢は己の目を疑った。
「あなたは」
 渋沢には確かに、ホイの顔に覚えがあった。
「あなたはまさかコジマ大隊の歩兵部隊に所属していた、コーロウ曹長では?」
 そんな渋沢の意外な言葉に驚くホイ。
「俺を、知っているのか?」
「当然です。コジマ基地の格闘技大会で5年連続優勝。あなたの事を知らない人間はコジマ基地には居ません」
 格闘技大会とは、毎年コジマ基地に所属する兵士の中で格闘技に優れた者が行うトーナメントである。
 体が資本の兵士にとって、その大会で良い成績を収める事は大変な名誉だ。
 ちなみに渋沢は今年の準優勝者である。
「意外と俺は有名人なんだな」
 そんな渋沢の言葉に笑って返すホイ。
「えぇ、しかしあなたは軍を抜けたという話ですが。それがなぜジオンのジープなどに」
 渋沢の言葉にホイは苦笑した。
「色々とあったもんでね」

  • 812 名前: VIP村人b 投稿日: 2006/11/14(火) 21:57:09.10 ID:6Oe/YvO30

 ホイはこれまでの経緯を渋沢に説明した。
「シーエンの辺りで連邦派のゲリラと、ジオンの小規模な戦闘があったと言う話は聞きましたが。それがまさかあなただったとは」
 渋沢はホイの話を聞くと驚いたようにそう言った。
「俺たちはただ逃げてきただけさ。それと少尉さんよ、敬語は止めてくれないか? 軍人の頃の癖で違和感がある」
「ですが、今あなたは民間人です。コーロウさんの方が目上なので、そういうわけにはいきません」
「ま、それもそうかね」
「それで、これからどうするんです?」
「タイの国境あたりまで行こうと思ってるんだが。あの辺りなら戦況は安定しているだろう?」
 ホイがそう言うと、渋沢は少し困った顔をした。
「確かに大隊の基地付近は連邦の統治下にありますが。まさかずっとそのジープで行くつもりですか」
「そのつもりだ。コイツ以外に移動手段が無いもんでな」
「まったく、そんなものに乗っていたらいつ攻撃されても文句は言えませんよ。そもそも、基地周辺の町へ外部から入るには許可証がなければ無理です」
 渋沢はホイに呆れながらそう言う。
 その時、渋沢の胸に付いている無線機が鳴った。
 すぐさまそれを手に取る渋沢。
「なんだ」
『敵の反応を感知しました。これは間違いなくMSです』
「MSだと? 分かった、すぐに戻る」
「おいおい、ジオンのMS部隊がこの近くに居るのか?」
 そんな渋沢の様子を見ながらホイが言った。
「そうです。戦闘に巻き込まれたくなければ早くここから離れてください。コジマ基地にはあなたたちの事は連絡しておきますから」
 そう言うと渋沢は急いで自分のMSへと戻って行った。
「武運があんたに味方する事を願う、少尉さん」
 そんな渋沢の背中を見ながら言うと、ホイはジープを再び発車させた。

  • 26 名前: VIP村人b 投稿日: 2006/11/15(水) 20:53:56.00 ID:c7mDnuUs0

 渋沢はMSに乗り込むと、すぐさまホバートラックの乗員に連絡を取る。
「敵の位置と数を教えてくれ」
『北北東です。敵戦力はMS2機、戦車一台。目的の部隊と見て間違いないかと』
「距離は」
『直線距離にして、およそ2.5kmです』
「了解だ」
 その距離なら、MSや戦車の索敵機能ではこちらの存在は恐らく悟られない。
 ならば渋沢の部隊が圧倒的に有利だ。
「よし、それでは敵さんに気付かれないように回り込んで奇襲をかける。全員気ぃ引きしめろ!」
 そう言うと渋沢は操縦桿を傾ける。
 何となく、渋沢はホイと一緒に居た子供達のことを考えた。
 あの子達はホイの家族なのだろうか? それとも孤児なのだろうか?
 どちらにしろ、ホイはあの子供達を守るために彼なりに戦っている。
 俺がジオンと戦って勝つことは、彼らを救う事になるのだろうか?
 そんな事を渋沢は考える。
 もしもそうなら、こんな場末の兵士にもちゃんと戦う意味があるということだ。
 そう思うと渋沢は少し嬉しかった。
最終更新:2006年11月15日 21:04