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THE HOUSE OF THE DEAD
【ざ はうす おぶ ざ でっど】
概略
ハンドガンを使用する一人称視点ガンシューティング。
バーチャコップをベースとしたセガ製ガンシューに、『バイオハザード?』のテイストを導入した作品。
しかし単なる模倣や追従に終わっておらず、演出やボスキャラのデザインなども評価が高い。
ストーリー
国際諜報機関AMSのエージェント「トーマス・ローガン」と「G(コードネーム)」は、AMSからの指令により、ある施設の研究員失踪事件を調べ始める。
その結果、研究員の一人「Dr.キュリアン」がマッドサイエンティストに変貌し、非人道的な人体実験を行っていることを突き止めた。
キュリアンはローガンの協力者であり、フィアンセである「ソフィー・リチャーズ」を含めた研究員たちを拘束、その野望を剥き出しにする。
1998年12月18日、2人は調査のため、彼が実験を行っていた洋館を訪れる。そこで目にしたモノは…。
システム
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専用のハンドガンを用いて襲い掛かるゾンビなどの怪物を倒してゆくという内容。
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弾は最大6発、画面外に引き金を引くと弾が補充される。
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ライフ制で、敵の攻撃を受けてしまうと1回の攻撃につき一律1ライフを失う。ゼロになるとゲームオーバー。
特徴
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基本的には「自分で移動するのではなく勝手にスクロールしていく」「敵の攻撃を受ける前に素早く敵を倒す」ことが求められるゲームで、これまでのガンシューティングとルール的に大差のあるものではない。本作の妙は巧みに作られた演出である。
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ポリゴンを駆使して作られた敵ゾンビは非常にグロテスクで、怖がりの小さい子供が見たら泣きだしてしまいそうなレベル。当時としてはテクスチャも最大限にリアリティを追及されている。
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さらに専用筐体のスクリーンがとても大きく、ゾンビ達は奥からのしのし歩いて間合いを詰め、どアップになって攻撃してくる。これだけでもインパクトは大であった。
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欠損描写もかなりえげつない。さすがに内臓が飛び散ったりはしないが、銃で狙い撃てば血が飛び散り、頭や胸に穴が開く。腕を撃てば捥げてなくなり、狙い撃ち方によっては上半身が丸ごと無くなることも。しかしそれでも生きていて下半身で蹴って攻撃しようとする敵がいるのも、「しぶとさ」を見事に表現している。
評価点
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シリーズの基本ラインは本作でほぼ固まっている。
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非戦闘員の救出による回復。逃げ遅れた研究員などがあちこちでゾンビに襲われており、助けることにより情報やライフアップを貰えたりする。逆に誤射してしまうと自らのライフを失ってしまう。
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ステージをクリアした後のリザルト確認時に、助けた非戦闘員の人数が規定値以上だとライフアップのチャンスがあるため、助けても御礼しか言われない人にもちゃんと意味を持たされている。展開を少しでも楽にしたければ、とにかく気合いを入れて救わなければならないのだ。
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ルート分岐。本作はガンシューティングとしては珍しく分岐がかなり多い。しかもそのほとんどが安易なコマンド選択式ではなく、プレイヤーの直前直後の行動が反映されるようになっているのだ。分岐条件もかなり多彩で、全てを見るには一筋縄ではいかない。
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例として『廊下の先に落とし穴があり、振り返ると背後に敵が迫っている』場合。素早く敵を倒すと「道を引き返し、何事もなく館の中を探索する」。しかし「敵を倒せず(倒さず)にダメージを喰らう」と、穴の中に突き落とされ、地下道を探索する破目になる。…と言った具合。
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倒す順番・部位狙いの戦術。
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本作では意図的に飛び道具を持つ敵が少なく設定されており、ほとんどが肉弾戦を挑んでくる。このため、近くにいる敵から倒していけば、攻撃体勢に入るまでの時間的余裕を得られる。
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頭を撃ち抜くのが最も効率良く敵を倒せる手段で点数も高いが、どうしてもキツければ先に腕を撃っておいて殴り攻撃をできなくしておく、という戦術も取れる。敵もそうすると噛みついたり体当たりしてくるが、腕よりも間合いが短いためより近づかれなければならず、時間の猶予を貰える場面が多いのだ。
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遠距離攻撃は物品をぶつけてくる(ナイフ、ドラムカン、斧など)のがほとんどであるため、何回か銃撃で相殺してしまえばタネ切れとなり、ダメージを受けずに先に進めることが多い。
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キャラ造形の上手さ。
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主人公達は凄腕のエージェントという設定で、渋い容姿を持つ外国人である。
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タロット・カード大アルカナのコードネームを持つ存在感溢れるボス達も、生理的嫌悪感を出しつつもどこか格好良い。製作者たちのセンスの良さが伺える。
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ゾンビ群は先述の通り科学的に作られた生物兵器だが、ラスボスだけ全力でオカルトになっており、「どうやってこんなの科学で作ったんだ?」と思わずにはいられない。しかし見た目はむしろ「高貴さ」「格好良さ」に溢れており、「汚さ」を感じさせない数少ない敵となっている。リアル路線に微妙に混在したこのケレン味が良いアクセントになっている。
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敵の種類や攻撃手段は多種多様で、臨場感を感じさせるカメラワークも好評。「こっちに来るんじゃない!」と思わず言いたくなる、ゾンビ映画のような世界観を完璧に表現している。ただの薄っぺらい追従で終わらなかった好例である。
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難度がかなり抑え目。絶妙のランクシステムも相まって、やりこんでいけば充分にワンコインクリアを目指せる程良さを持っている。シリーズ中でもかなり簡単な方なので、興味があるなら本作から入るのがベスト。現在プレイできる環境があればだが…。
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BGM・SEが非常に出来が良い。
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BGMは屈指の良曲揃いである。ホラーゲームとは思えないような派手な曲調のものもあるのだが、雰囲気に見事にマッチしているのは素晴らしい。
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特に「Chapter 1 惨劇 〜Tragedy〜」の曲はガンシューティング史上に残る良曲であり、有名曲である。勇壮ながらどこかおどろおどろしく、未知への恐怖が入り混じった曲調である。
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後のシリーズでも使われ続けただけでなく、本作の外伝であるゾンビリベンジ、あるいは世界観だけを共有している別作品プロジェクトクロスゾーン?にも、この曲のアレンジが採用されている。
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SEも実にリアリティがあり、BGMの邪魔をしない音で作られており世界観を盛り立てている。
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1Pと2Pで拳銃の発砲音が違うなど、随所に細かいこだわりも見える。
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普通にプレイしていると「まるでBGMの合いの手として、これらのSEがタイミングよく挟まる」ようになり、何ともいえないプレイ中の昂揚感を作り出すことに成功している。
賛否両論点
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グロが苦手な人にとってはキツめの面があること。
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シリーズ中最も人体欠損描写が激しく、さらに設定で敵の血の色を「赤」にもできた作品であるため、そういうのが生理的にダメ、という人には向かない・楽しめない可能性が大きい。
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槍で串刺しにされている惨殺死体や、おびただしい量の血だまり、食肉フックに無造作に吊るされた人間の上半身などのオブジェクトも存在する。
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マスコミにそのグロテスクさを取り上げられテレビ放映されたり、新聞の読者投稿欄に「(HODは)人殺しの訓練をしているようなもの」などの意見が載ったこともあった。
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成績やコンティニュー回数に応じてEDが変わる(全3種類)。
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ネタバレ注意
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ノーマルエンド…車に乗る前に洋館の方を振り返ってEND。
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バッドエンド…振り返った直後、洋館の入り口までスライドし、ドアを開けるとゾンビになったソフィ(主人公の恋人)が出てくる。
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ハッピーエンド…↑と同じだが、ドアを開けると人間のソフィが「Thank you」と言いながら駆け寄ってくる。
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3では主人公の娘を操作することになるので、事実上、ハッピーエンドが正史ということになる。バッドまたはノーマルエンドしか知らないプレイヤーも安心。
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グッドエンドを見るにはかなり点数を稼がないとならず、必然的にルート選択も限られたものとなってしまう。ルートによっては絶対にグッドエンドを出せなくなってしまう(点効率が悪いため)ものも存在する。
問題点
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どんなに稼いでも、全クリしないとスコアランキングに載らない。
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「載せたければまずクリアをしろ」というわけで、初心者にとっては長い長い壁となる。
総評
本作は概略の通りバーチャコップとバイオハザードを合わせた訳だが、単なる模倣に終わらず新たなる面白さを作り出している。
人間サイズの敵に対し「部分欠損」「数発打ち込む必要性と爽快感」をガンシューに導入した点も大きい。
撃ちこみについては、バーチャコップでも3ポイントシュートと3発までならできたが、更に発展させたものといえる。
また部分欠損により攻撃をスカらせたりなどのアクションも斬新。
それらも敵がゾンビなので、という説得力がある。
演出も徹底しており、暗く重い、何がいるか解らない雰囲気がグラフィックからも見えてくる。
これらもあって好評を博し、以降のシリーズ化や様々な展開に繋がることになる。
ガンシュー史において、『リーサルエンフォーサーズ』『バーチャコップ』などに続き記される名作といえるだろう。