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デストロイ オール ヒューマンズ! - (2021/08/28 (土) 15:15:07) の編集履歴(バックアップ)


デストロイ オール ヒューマンズ!

【ですとろい おーる ひゅーまんず!】

ジャンル サードパーソン・シューティングゲーム
対応機種 プレイステーション2
発売元 セガ
開発元 Pandemic Studios
発売日 2007年2月22日
定価 6,800円
判定 バカゲー
ポイント セガの本気(で別物に)
後半の難易度は洋ゲーらしく高め
無駄に豪華なスタッフとキャストが魅力
気分はさながらビーストウォーズ
アータマがグーシャーリー♪
誰が火星人やねん!


おことわり

このゲームは1950年代のアメリカ合衆国を舞台としております。
世界観の背景にあるのは米ソ両超大国の対立を軸とした冷戦構造です。
この作品は、当時の異常な社会状況を宇宙人の立場で体験するという構成上、
われわれ人類に対する批判もこめて、ブラックな装いのセリフも存在しています。

しかし、このゲームの製作にかかわるすべての企業・団体・スタッフも、
特定の主義主張にくみしたり、または貶めたりするような意図をもっているものではありません。
もしも私たちに特定の立場があるとしたら、核や極端なイデオロギーを乗り越え
恒久的な全人類の融和と幸福が訪れることを願うことです。
  <デストロイオールヒューマンズ!日本語版「ご注意」より抜粋>


概要

アメリカで2005年に発売されて人気となったゲーム。
しかし、その中身は宇宙人が地球人を虐殺しては脳みそを奪って行く超ブラックな不謹慎ゲーであり、SCEは「こんなもの日本で出させるワケにいかない」という態度をとっていた。
そこで、セガが悪名高きソニーチェックを掻い潜るためにとった秘策は『ビーストウォーズ*1』を思わせる翻訳…を通り越した「超訳」によりバカゲ―扱いにして通してしまおうという斜め上の手段であった。
以下、特筆しない限りは日本語版に基づく内容を記述する。


特徴・システム

  • ゲームは基本的に「母船でミッションを選択してUFOで出撃」→「3Dアクションマップで、主人公のクリプトナイト137(時にはUFO)を操作しミッションをクリア」→「母船に帰還してミッションをまた選択」~という流れ。
    • 母船ではミッションの選択以外にも武装を強化したり、資料の観覧やオプションの設定ができる。
    • 当ゲームでは「エンドルフィン」という物が通貨のような扱いになっており、倒した人間から集めていく。
      • アクションマップにて、倒した人間の近くで○を連打することでエンドルフィンを抽出できる。
      • ちなみにエンドルフィンとは人間の脳内に存在する神経物質のこと。
  • ミッションではR1+他のボタンで4種の武器を使い分けて進む。
    • ザッパー:ベーシックな電撃銃。
    • イチジクビーム:チャージして撃つ必要があるが、人間に命中すればその都度抽出作業をしなくてもエンドルフィンを取り出せる。
    • 分解レーザー:ザッパーより強力だが、弾丸を補充する必要があり、人間が塵になってしまうのでエンドルフィンを回収できない。
    • イオンランチャー:放物線状に飛ぶ弾を発射後、任意のタイミングで起爆できる。威力も申し分ないものの弾数が極端に少ないのが欠点。
  • また、L1ボタンを押すことで以下の4つのPK技*2が使える。PK技を使うためには精神力が必要で、精神力が無い場合は脳波スキャン以外の技が使えない。
    • 脳波スキャン:生物の心を読み、自分の精神力を回復できる。
      • 人間の思考を読むことで攻略情報をゲットできる…が、どちらかというと関係ない小ネタが多い。
    • サイコキネシス:オブジェクトを近くに寄せたり遠くに投げ飛ばしたり振り回せる。
    • 変身:人間の姿になる。変身中は人間に見つからないが、代わりにジェットパックと各種武器が使えなくなる。また変身中は精神力をだんだん消耗する。
      • ただし変身中もPK技は使えるので、うまく組み合わせればゲームを楽に進めることができる。
    • 催眠術:人間を眠らせて無防備にするか、騒がせて周囲の人間の目をそちらに向けることができる。
      • また、ストーリー上の重要人物にはこれ以外の特殊な催眠術を使用することもできる。
  • 上述の通り人間に変身してない状態のクリプトが発見されてしまうと、警官や軍人が集まってきてクリプトを攻撃してくる。警戒レベルが高くなると、戦車やロボットといった強力な兵器まで投入される。
    • しばらく身を隠せば警戒状態は解除される。
    • ゲーム中盤からは、範囲内に入ると変身解除・武装が一定時間使用不可能になる設置物「EMP」等が増えていくので気をつける必要がある。
  • クリプト及びUFOにはシールドの耐久値が設定されている。攻撃を受けても時間経過で回復するが、0になればもちろんゲームオーバーである。
    • 案外脆いので無茶は出来ない。変身や催眠術などを活用して上手く立ち回ろう。
    • またクリプトは水に弱く、水地形に踏み込むと一発でアウト。
  • ミッションによってはUFOに乗り込んで戦うこともある。武装は以下の通り、
    • 熱線砲:弾数無限の熱線を照射する。UFOを冷却する必要があるので連射できない。
    • ソニックブーム:弾数制。熱線砲より威力が高い。
    • 量子分解砲:弾数が少ないものの威力は凄まじい。但しゲーム終盤にならないと使えない。
    • 牽引ビーム:オブジェクトや人間を運べる。白兵戦時のサイコキネシスと比べるとあまり使う場面はないが。

バカゲ―要素

  • 日本語版限定主題歌がある。その名も「馬鹿がUFOでやってくる」である。
    • 曲調もさることながら映像も際どいどころではなく、某光の巨人のOPを大胆にパクっている。
    • さらに当ゲームと一切関係ない「檄!帝国華撃団」のフレーズが入っていたり、本編に登場しない謎の影絵が混じっていたりとカオス極まりない。
+ こちらがその映像である

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  • シナリオ毎につけられているサブタイトルはすべてパロディ。
  • 学会会長(当時)・山本弘氏を中心とした翻訳スタッフによる数々のネタ。
    • セガが本作をバカゲーにする上で白羽の矢を立てたのは山本弘氏・佐藤大輔氏・ムトウユージ氏・大倉雅氏・氷川竜介氏と実にクセの強い面子豪華なメンバー。彼らの尽力により、セガの目論見通りにシュールギャグとパロディまみれのバカゲーが生まれることになった。
    • ちなみに彼らが好き勝手やったようにも見えるが、実はオリジナル版ではクリプトの侵略目的やエンドルフィンを集める理由がはっきりしておらず、その設定の補完等もちゃんと行っている。
      • そもそも山本氏は『時の果てのフェブラリー』『MM9』『神は沈黙せず』等で知られるハードSF作家であり、そこら辺のアイデアは氏の専門分野である。
  • 暗号や催眠術を駆使して進むステージではあからさまに失敗するであろう珍妙な選択肢も登場する。しかし反応がどうなるか気になってしまいつい選んでしまうことも。
  • 豪華声優陣による全力のおふざけ。
    • 主人公クリプト137とその上司オルソポックス13はそれぞれ山口勝平氏と大塚芳忠氏が担当。この二人の掛け合いだけでもう十分笑える。
      • 山口氏が収録中に入れたアドリブ*3も収録されており、ここも笑いどころになっている。
    • 黒幕の「少佐」の担当声優は田中敦子氏。お察しの通り某メスゴリラネタである。
      • 容姿はバタくさくて全く萌えないが。そのことに対して作中でも突っ込まれる始末。
      • 山口氏と田中氏、という組み合わせで本作の製作の上で意識された『ビーストウォーズ』を思い出す人も多いだろうが、ちゃんとそのネタも入っている。
    • その他声優も豪華。特に往年の洋画吹き替えでよくその活躍を拝見出来る大御所声優が多数。
      • 今は亡き広川太一郎や青野武氏。舞台女優かつ『チップとデール』のチップ役で有名な滝沢ロコ氏。チョーさんこと長島雄一(現:チョー)氏。果てはバカボンのパパ(2代目)などでお馴染みの富田耕生氏などなど、声優だけでもとんでもない予算になりそうなメンバーが顔を揃えている。
      • そんな豪華メンバーが演じるキャラが、次々とおバカなセリフを全力で(雰囲気はさながら洋画な部分もある)しゃべってくるのはもう笑うしかない。
  • その一例。第一話開始イベントの時点でこれ。
    + 超訳
  • 「Orthopox to Cryptosporidium-137. Come in, Cryptosporidium…」
    →「あーあー、マイクテスト。マイクテスト。ちゃんと聞こえとるんか?クリプト」
  • 「Crypto here. How’s the view, from the safety of the mothership?」
    →「ああもう近い近い、恋人の距離や。べつに博士のアドバイスなんかなくても、わいだけでやれるーちゅうの。」
  • 作中で上映される実在の映画が丸一本入っている。もちろんオプションで観覧可能。
    • 『宇宙から来たティーンエイジャー』という作品が収録されているが、この作品は監督が脚本や撮影、特撮の編集、音楽までも担当した超低予算の映画として有名。無論クオリティはそれ相応の作品である。
    • また、ガメラシリーズ第一作の『大怪獣ガメラ』と史上最低の映画として有名な『プラン9』も一部のみだが収録されている。

評価点

  • この手の箱庭ゲー全般に言えることだが、圧倒的な力で町と人類を蹂躙していくのはとにかく爽快の一言。
    • あまりにひどいことをしても、クリプトとオルソボックスのゆるーい掛け合いや各種パロディネタのおかげでプレーヤーが引いてしまうことはない。
    • (ストーリー上は)クリプト側から先制攻撃は行っておらず、人類を攻撃するのはあくまで正当防衛や義憤に駆られた場合などちゃんと納得できるだけの作劇上の理由も作っている。
      • この辺りも訳者たちがクリプトが悪人に見えないように配慮したらしい。もっとも多くのプレイヤーはそんなこと気にせず蛮行に走るわけだが。
  • 単純に虐殺するだけのゲームではなく、潜入ミッションや特定キャラをキャトルミューティレーションするなどミッションのバリエーションが豊富。
    • ステージによっては催眠術等を活用すれば楽できる場合もあるが、ゴリ押しのジェノサイドプレイでクリアすることも可能。ある程度各々のプレイスタイルに合わせてゲームを進行できる。
  • どうしてもクリアできない人のためにエンドルフィン増加の裏コマンドもある。ただやるとすぐゲームが終わってしまうので自己責任で。
  • BGMを初めとした全体の雰囲気は良い意味でB級洋画らしさ全開。
    • ストーリーも一言でまとめれば「さらわれた兄を助け出すため悪の秘密結社と戦う宇宙人」とB級そのもの。
    • ご丁寧に解説してくれる悪役、巨大な陰謀、唐突なグロシーン、核兵器、そして大爆発とこの辺のB級洋画のお約束はしっかり押さえている。
      • あえて言うならブロンド美女のセクシーシーンがないのが残念か。

賛否両論点

  • 小ネタが大量且つ濃いので分かる人なら楽しめるが、分からないと面白さが半減。
    • アニメ・漫画や特撮等のサブカルネタは理解出来ても、洋画やアメリカの常識等幅広いジャンルに精通していないと今一つ面白さが伝わらないネタも多い。
    • 例えば警官が言う「アンパンが好きだ」というセリフ。アメリカでアンパンは売ってない…というネタに見せかけてアンパンはシンナーの隠語であり*4、それを警察が言っているというブラックなネタである。
    • 逆に言うとハマる人はとことんハマる。「クリントって俳優は、クモの怪獣に爆弾を落とすパイロットの役なんかやってて将来性がない」なんてセリフでニヤリとできる人にはぴったりのゲームである*5
  • 恐らく全てのネタが分かるのは、本作の制作に携わったSFマニアでサブカル通の山本弘だけかも知れない。
    • しかし、氏曰く自身が関与しなかった収録現場のアドリブで入れられたネタもあるので、もはや初見で全て分かる人はこの世にはいないかもしれない。もし全て分かったならば相当な好事家である。
    • もちろんネタが分からなくても本筋を楽しむ分には問題ない。
  • 主人公であるクリプトとその上司オルソポックスの関西弁が胡散臭い。関西出身の人は気になる。
    • もっとも担当声優は二人とも関西出身ではなく、山本氏曰くわざと胡散臭い演技にしたようだ。こういう点も含めてバカゲーということだろう。なお、氏自身は関西(京都)人である。

問題点

  • ×ボタンで決定・△でキャンセルという洋ゲー式の操作なので、慣れるまでボタンを押し間違えがち。
  • ゲーム後半の敵の攻撃はかなり苛烈。笑って楽しむということからは程遠くなってしまう。
    • 重ね重ねになるが、オリジナル版はバカゲーでは無い*6
  • 今ひとつゲームとして不親切な部分が目立つ
    • 照準補正がなく狙いを定めにくい、体力が低すぎてほぼ即死ゲー、UFOの駐車(?)箇所が限られている、移動速度と広さがあっておらず移動が地味に疲れる、などなど。
    • ただしこれはオリジナル版準拠の仕様であり、「洋ゲー的」と言える部分でもある。

総評

他国で発売されたゲームが規制の影響で台無しに…という例は数多くあるが、ニュアンスを変えて別の面白さを生み出したという稀有な作品。
洋画ファンや昭和特撮好き、声優マニアなどにはぜひ進めたい一作。
もっともネタが分からなくても虐殺プレイと軽快な掛け合いである程度楽しめなくもない。
逆に分からなかったギャグの元ネタを探してみるのも楽しみ方の一つだろう。


余談

  • 公式サイトは、立ち上げた直後に諸般の事情により閉鎖し、その後何者かが海賊版サイトを立ち上げた…という設定となっている。要するに、海賊版サイトはれっきとした公式サイトである。
  • 翻訳の力ではどうしようもない場面も存在しており、さすがに日本語版ではそこの修正が余儀なくされた。
    • それはエンドルフィンの抽出シーン。日本語版ではエンドルフィンはひし形の物体として描かれ、抽出しても死体はそのままだが、海外版では頭がパックリ割れて、そこから脳が出てくるという演出だった。
  • 海外では続編が4作目までリリースされているが、残念ながらいずれも日本未発売となっている。
    • シリーズの2作目まではPandemic Studiosが開発を担当していたが、2007年1月にBiowareとともにEAの買収を受け、EA傘下のデベロッパーになったため、3作目以降は別のデベロッパーの製作となっている。尚、Pandemic Studiosは2009年11月にスタジオが閉鎖された。
  • 元々オリジナル版発売元のTHQは雰囲気を損なうとしてこのゲームのバカゲー化に反対していたが、セガの交渉スタッフが「田中敦子に会わせてやる」という殺し文句で承知させた、というがある*7
  • 本作のオリジナルを含めたシリーズの版権は、2011年のTHQ倒産により競売にかけられ、オーストリアのゲームパブリッシャーであるNordic Games(現:THQ Nordic)が落札して現在に至っている。
    • ちなみに競売の際、買い手がつかなかった版権のうち本作を含め約30作の版権を半ば抱き合わせの形で獲得している。

帰ってきたリメイク版

  • 2019年のE3に先駆けて、THQ Nordicから本作のリメイク版が2020年に発売されることが発表され、2020年7月29日にリリースされた。プラットフォームはPS4/One/Winで、開発はTHQ Nordic傘下のBlack Forest Gamesが担当。グラフィックが進化した他、操作を現代向けに調整し、更にオリジナル版未収録のミッションも追加されている*8
    • PS2版発売当時とのゲーム事情の違いもあり、今回は日本でもオリジナルのままのゲーム内容で発売された。PS2日本語版のようなストーリーを書き換える程の超訳は行われず、英語音声で字幕のみを原語版に忠実に日本語化するという通常のローカライズとなっている*9。ゴア表現も原作そのままで、それに伴ってレーティングはCERO:Z(18歳以上のみ対象)に引き上げられた。
      • 案の定、日本のプレイヤーからは落胆の声も多いが、逆に言えば本来の『デストロイオールヒューマンズ!』を正式に(実に15年越しで)日本でプレイできる機会ができた、真のクリプトの姿を見られる、と言う事でもある。また、ゲームとしての完成度は当然こちらの方が高い。
      • しかし、発表時から日本のユーザー間で出るのは超訳の話ばかりで、AUTOMATONGame*Sparkと言ったゲームサイトでも長所を紹介しつつ「残念ながら吹き替えは無い」「もし今後オリジナルの翻訳が提供されるならば、これ以上ない作品になるだろう*10」などとも記述されている。それほど超訳のインパクトは大きかったのだ。
    • 本来の『デストロイ オールヒューマンズ!』をプレイしたい、宇宙人の侵略を存分に楽しみたい、プレイ環境重視ならリメイク版。超訳目当ての人はPS2日本語版を選択しよう。もちろん両方プレイして、オリジナル版と超訳版との違いを調べてみるのも大いにアリ。
    • ちなみに、THQ Nordic Japanの公式Twitterで公開されている日本語版スペシャル映像のナレーションとして山口氏が出演。エセ関西弁ではなく「クリプト本来の姿である悪の宇宙人」として喋っている。PS2日本語版のクリプトを偽物呼ばわりするなどPS2日本語版のネタも拾っており、最後には18禁である事をアピールしている。
      • 動画作成は元セガの小堤正人氏、本作(つまり当ページであるPS2日本語版)のプロデューサーだった人物である。
    • なお、2021年8月26日にはSwitchでもこのリメイク版が発売された。
+ リメイク版の日本限定PV