ウルトラマン

【うるとらまん】

ジャンル 3D格闘ゲーム
対応機種 プレイステーション2
発売元 バンダイ
開発元 KAZe
ビットステップ
発売日 2004年5月20日
定価 7,140円
レーティング CERO:全年齢対象
廉価版 PlayStation2 the Best
2005年7月7日/2,800円
判定 良作
ウルトラマンゲーム・リンク


概要

  • 1966年に放映された特撮TV番組『ウルトラマン』のゲーム化。格闘アクションゲームというよりは原作再現を念頭に置いたゲーム。
    • 条件を満たせば「帰ってきたウルトラマン」もプレイ可能である。

ゲームシステム

  • 基本はウルトラマン(プレイヤー)と怪獣が戦う格闘パートだが、ビートル(戦闘機)を操作するパートや、ハヤタ(主人公)を操作してスーパーガンで怪獣を攻撃するパートもある。
  • ウルトラマンには体力ゲージの概念がなく、格闘パートでは一定時間後に攻撃を受けるとカラータイマーが点滅、そこから一定時間たつとウルトラマンが敗北する(TIME UP)、というシステムになっている。
    • このシステムにより、TVのウルトラマンのピンチ感が表現されている。
  • 『Fighting Evolution』シリーズとは違い、格闘ではなく「初代マンの雰囲気を再現」することに重きを置いている。
    • このため挙動などが若干重くなっており、初代マンのスローモーな戦い、着ぐるみ怪獣の質感が演出されている。
    • 移動は前後左右と側転や後転、それと短距離ラン。ジャンプはできない。打撃のバリエーションは少なく、連携も数えるほどしかない。投げは自分で技を選ぶのではなく、相手の状況によって変わるようになっている。実はこれ、原作での格闘の流れに重点を置いた作りなのである。
      • カメラの位置は固定されているが、向きとズームはウルトラマンと怪獣に合わされている。ただし投げの時だけはアップとなる。
    • 必殺技はちょっと癖のあるシステム。βエネルギーというゲージを使って出すのだが、ゲージの状態によって出せる必殺技が固定されている。好きなタイミングで好きな必殺技を出せないようになっているのである。
      • 例えば、ゲージが満タンまで溜まっている時はスペシウム光線しか出せず、ゲージ2/3の時は八つ裂き光輪しか使えないという具合。このため各必殺技の使用タイミングは限られる。

評価点

  • 独特な存在感を持ったウルトラマンと怪獣達。
    • キャラクターの動きは重々しいが、『Fighting Evolution』シリーズよりも滑らかに動く。
      • この重さと滑らかさがキャラクター達に独特の存在感を与えている。ただ格闘アクションゲームをプレイするというより、怪獣ごっこを楽しんでるかのような雰囲気の演出に一役買っている。
    • 常に一定だが状況に合わせて向きとズームが変わるカメラによって、あたかも戦闘シーンを撮影しているかのような画面となっている。当時放映されていた番組の雰囲気を味わえること請け合い。
  • 原作を忠実に再現した「ストーリーモード」
    • ステージ開始直前では当時の写真とともにストーリーが紹介される。
    • ステージは劇中のミニチュアセットの雰囲気を良くとらえており、触れることでミニチュアが崩れる演出や砂埃の巻き上がる演出も秀逸。
    • 登場する怪獣もバルタン星人やゴモラなどの人気怪獣から、他作品では中々お目にかかれないアボラス&バニラ、グビラ、ペスターなども登場する。
    • もちろんif展開も抜かり無し。スペシウム光線を使わなければあのゼットンを倒す事だって可能。簡単ではないが、倒した際の夢の勝利とでも言うべき感動は筆舌に尽くし難い。
    • 周回にかかる時間は40〜50分前後で丁度よい塩梅となっており、遊びやすい。
  • 数々の小ネタ
    • このゲームの特徴として、原作の再現を中心とした多種多様な小ネタがある。
+ 劇中再現の数々
  • ハヤタパートの際に△ボタンを押すと通信ができ、ムラマツキャップかフジ隊員が出てくれる。
    • しかしハヤタの状態で怪獣から攻撃を受けると、ベータカプセル(変身アイテム)を這って取りに行かなければならなくなる。変身アイテムを必死に取りに行くのも劇中あるあるの1つ。
  • 細かな劇中再現。
    • バルタン星人(ハサミ)、ゴモラ(角、尻尾)などの劇中での部位破壊が再現されている。主に投げ技で折れるが、「帰ってきたウルトラマンモード」に登場するキングザウルスIII世は劇中通り流星キックによって破壊することが可能となっている。
    • また、バルタン星人(2代目)、レッドキング等の怪獣にはスペシウム光線や八つ裂き光輪で専用フィニッシュ演出がある。
    • 他にも“ジェロニモンの背中の羽をむしり取る”“グビラに馬乗りになる”など、ファンならニヤリとする場面が多々存在。
  • 『空の贈り物』では本当にスプーンで変身しようとする。
    • スカイドンが重くて投げられないという、設定や描写をきちんと踏まえた原作再現要素も。
  • 必殺技ゲージがない状態で必殺技を出そうとすると、ウルトラ水流が出る(帰ってきたウルトラマンは流星キック)。
    • 劇中ではウルトラ水流で火災を消し止めたり、水の苦手な怪獣に浴びせるなどしていたが、本作では全く無意味である。
  • ちゃんとストーリー最中でA,B,Cタイプが切り替わる。
    • 「A,B,Cタイプ」というのは、ウルトラマンのスーツの種類のこと。撮影時期によって顔の形や体つきが変化していたのを、ストーリーモードにて再現している。
    • なお、ウルトラマンを操作し3分間での怪獣撃破数を競う「ウルトラ総進撃モード」では、それぞれのタイプを選ぶことができる。
  • 帰ってきたウルトラマンモード
    • マウント攻撃が出来なくなってしまっているが、格闘や投げ技が初代とは全く異なっており、また違った操作感を味わえる。
    • スペシウム光線の効果音、流星キックでキングザウルスⅢ世の角を折る、グドンに殺されるツインテール、ナックル星人を背後から掴むとウルトラ投げなど、このモードの演出にもある程度のこだわりを感じられる。特にツインテールの死に様は妙に再現度が高い。
  • ミニゲーム
    • ゲームに出てきた怪獣の情報が見れる「怪獣墓場」、怪獣を操作し次々現れる怪獣を倒していく「怪獣天下」、レッドキングとなり岩を投げる「岩投げ」など様々。
    • やはり小ネタがきいており、「岩投げ」ではレッドキングがラインを越えるとマグラー*1が出てきたり、「怪獣墓場」はビートルを操作して怪獣墓場を探索できる。
      • 特に「岩投げ」の本編に似つかわしくないテンションの高さは必見。操作説明の枠いっぱいに表示される「 投げろ! *2に始まり、マグラーにつまずいて地団駄をふむレッドキングなどは見ていて楽しい。
      • なお「怪獣墓場」モードでは一定の条件を満たすことで、このモードの舞台となっている怪獣墓場出身の怪獣、シーボーズが登場する。ストーリーモード、及び後述の「怪獣天下」、「怪獣大乱闘」にも登場しないこのモードのみの要素である。
  • 「怪獣天下」及び2P対戦の「怪獣大乱闘」では条件を満たせば本作に登場している怪獣の内、シーボーズを除く全てが使用可能。
    • 何とピグモンも使用できる。巨体ではないので1回攻撃を喰らったら即敗退かつ攻撃力も非常に弱いという完全なネタキャラだが。
  • 変身シーンは当時の映像を使用。しかも最終回はきちんと逆再生でハヤタに戻り、ちゃんと当時の映像で光の国へ帰っていく。
  • 台詞は当時の番組で使用された実際の音声をライブラリー使用している。ただしナレーションやウルトラマンの声、ゾフィーの声は新録。
    • ウルトラマンの声を担当しているのは稲田徹氏。
  • 本編でのBGMは実際に劇中で使用された音楽を原曲に忠実なアレンジしたものが使われている。
    • ピンチになるとさらにBGMが変化し、ウルトラマンの代名詞的な戦闘BGM「激闘! ウルトラマン」に至っては原曲がそのまま使用されるという豪華さ。
    • 初期しか使用されなかった怪獣出現のBGMやAタイプのウルトラマンの戦闘曲「戦い」までもチョイスされており、巨大感を存分に表現している。

問題点

  • ゲーム性に乏しい。
    • 必殺技の使用がかなり制限される。通常技のバリエーションも少ない。特別変わったシステムもないと、アクションゲームという観点からはゲーム性は限られる。
      • 前述の通り格闘ゲームよりも「原作の再現」を重視しているので、『Fighting Evolution』のようなイメージをすると肩透かしを食らう。ウルトラマンのファンでない場合、飽きが来るのは早いだろう。
    • ミニゲームもやり込むには内容が薄い。
      • 「怪獣墓場」モードは、ビートルを操作して怪獣墓場を探索するのだが、見たい怪獣がいる場所に行くのに結構迷う。ワープ機能もほぼ意味無し。
      • 「怪獣大乱闘」モードではよりにもよってウルトラマンが使用できない。
      • 「岩投げ」もやることが少なく、飽きが早い。
  • ボリューム不足&原作との矛盾
    • ストーリーモードは全11話構成。周回プレイではその内4話が隠しと入れ替わる仕様。隠しモードはあるものの、やりこみ要素は皆無のため、腕が良ければ数時間程度で完全クリアできる。
    • 「故郷は地球」(ジャミラ)、「禁じられた言葉」(メフィラス星人)などファンから人気が高い名エピソードが収録されていないのも残念。
      • 周回のエピソードを含めても全15話中、Aタイプのウルトラマンが登場するものが7話と偏っており、Cタイプのエピソードはたった3話とかなり少なめ。下記の『帰ってきた』モードで費やさなければBタイプ、Cタイプのエピソードがちょうどバランスよく揃ったので惜しまれる所*3
    • なぜかウルトラマンと戦っていない怪獣との戦闘がある。しかもバニラとペスターの二種類*4
      • バニラはやや細いが典型的ゴジラ体型怪獣なので「アボラスのおまけ」と捉えることも可能だが、特殊な体型で専用にプログラムを組まねばならないはずのペスターをわざわざ出す理由は謎。
    • ゲームの仕様上、仕方がないがウルトラマンが直接倒せなかった怪獣を倒せてしまうために原作を再現しきれていない部分がある。
      • ゼットンは一種のおまけであるが、アントラーとケムラーはウルトラマンのスペシウム光線が効かず科学特捜隊の手によって倒された相手であるものの、スペシウム光線で特に問題なく倒せてしまう。
      • ゼットンに負けた場合は原作同様にシューティングパートが始まるのだが、ほぼ同じシチュエーションであるアントラーとケムラーにはそれがないのは不自然である。
      • 帰ってきたウルトラマンモードのブラックキングも、本来スペシウム光線が通用しない設定なのに、問題なく効いてしまう。と言っても原作での決戦時は、ブラックキングに対してはスペシウム光線を使っていないので、再現にこだわるなら縛る方が正解……と言いたいところだが、このバトルで完璧な再現は不可能(詳しくは2個下の見出しにて後述)。難易度の高いバトルなので救済措置とも言える。
  • システム
    • フリーモードがない 。ストーリーモードと怪獣天下(サバイバルモード)しかなく、好きなキャラで好きなステージを選んで闘うことはできない。ステージの出来がいいだけに残念の一言。
      • また、ストーリーモードで好きなエピソードを選ぶことも出来ず、再戦したい場合は適宜周回するしかない。
    • 操作にやや難アリ。画面に対してのレバー操作となるのだが、カメラが固定されているため対戦格闘ゲームのように常に両者が左右に表示されている訳ではなく、手前と奥など目まぐるしく位置が変わる。
      • 微妙な角度の操作を要求される場合もあり、慣れるまでは操作ミスが多発する。
  • 『帰ってきたウルトラマン』モード
    • コンティニュー不可。一度倒されればそこまでだが、なにせ最後の敵「ナックル星人」と「ブラックキング」が強い。
      • 2体同時に出現するのだが、システム上ウルトラマンは1体しか相手にできないので、1体に集中するとすぐにボコられる。
    • ウルトラブレスレットが使えない*5。使えずともせめて取得済み以降のエピソードには腕につける位して欲しかった。
    • いろいろ端折っており、ストーリー解説もなくいきなり怪獣出現→またいきなり新マン登場…この間、変身シーンすら存在しない。
      • 変身シーンはモード開始時に1回だけ出てくるのだが、出し惜しみもいいところである。
      • 何より登場怪獣をすっ飛ばしすぎており、タッコング→キングザウルスⅢ世→グドンと来て、 いきなりナックル星人&ブラックキング という有様。看板クラスのベムスターすらいないのは寂しすぎる。
    • また、バトルの再現が何かと中途半端。タッコング戦の劣勢時とナックル星人&ブラックキング戦の開始時はオリジナルBGM。上記のようにウルトラブレスレットを装備すらせず、ウルトラ投げがある一方で、ブラックキングを倒したスライスハンドが無い。何故かスライスハンドの前に出した投げ技は再現されているのだが……このためブラックキングは各種必殺技や通常技でトドメを刺すしかない。
      • ウルトラ投げも背景が真っ赤にならず、モーションのアレンジも強い。アレンジ自体は格好いいが、原作再現に重きを置いた本作に於いては残念。
      • そもそもナックル星人たちと決着をつけたときの時間帯は夕方ではなく昼間である。夕方なのは初戦時。
    • 「こんなの作るくらいなら、本編をもっと充実させて」という声がユーザーの間で木霊したのは説明するまでも無い。
  • 最後のゾフィーとウルトラマンの会話において「ハヤタに命をやってくれ」「そんなに地球が好きになったのか」「いいだろう、私は命を2つ持ってきた」というやり取りがカットされている。
    • 快適な周回性を重視するため、ムービーを長くしても仕方ないという判断なのかもしれないが、ゾフィーの対応が強引極まりなく ハヤタのことなど知ったものか と言わんばかりのものになってしまっている。
    • もちろん、分離後のハヤタはポーズを取りながら立っているので、実際には生存していると思われる。
  • 肝心の主題歌が未収録。更に、何故か「科特隊の歌」がEDである。

総評

原作の再現を主体とした本作は、言わばウルトラマンシミュレーターとでもいうべきもの。
一般の格闘アクションゲームとは一風変わった楽しみ方が本作最大の特徴であろう。ウルトラマンの世界観を堪能するには申し分ない一作である。
対戦格闘として見た場合はどうしても物足りなさは否めないが、光の巨人と共に育ったファンであればその欠点すら気にならない程に楽しめるだろう。



余談

  • 本作発売の約半年後にウルトラゲーの傑作『ウルトラマン Fighting Evolution 3』が発売されている。
    • どうにもこの作品の陰に隠れてしまっている本作ではあるが、 劇中シーンの再現については、ほぼ確実に『Fighting Evolution 3』に勝っている
+ タグ編集
  • タグ:
  • FTG
  • 3D格闘
  • バンダイ
  • ウルトラマン

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年02月06日 14:36

*1 レッドキングが初登場した「怪獣無法地帯」の回に登場した怪獣。

*2 本当にそれしか書いていない。ただし操作が単純なのであまり気にはならない。

*3 ただし、Cタイプのエピソードは上記のメフィラス星人などウルトラマンが直接怪獣を倒さない特殊なエピソードが多いのでゲームの仕様上、扱いにくかった部分も考えられる

*4 この二体は実質、科学特捜隊の手によって倒されておりペスターは死にかけの所にトドメを刺したのみでまともに戦っていない。

*5 その代わりの最強技は何かと言うと「シネラマショット」である。設定上はおかしくないとはいえ、本編ではキングザウルスIII世戦にただ一度だけ使われ、なおかつ防がれて効いていないマニアックな技をチョイスするとは…