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Until Dawn -惨劇の山荘- - (2019/05/31 (金) 22:18:04) の編集履歴(バックアップ)


Until Dawn -惨劇の山荘-

【あんてぃるどーん さんげきのさんそう】

ジャンル ホラー/アドベンチャー


対応機種 プレイステーション4
発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元 Supermassive Games
発売日 2015年8月27日
定価 パッケージ版:6,900円
DL版:5,900円(共に税別)
廉価版 Playstation Hits
パッケージ版/DL版共に1,990円(共に税別)
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定 劣化ゲー
ポイント グラフィック・演技共に高水準
思わぬ結果をもたらす選択肢も
思っていたより分岐しない。というより話自体は一本道
暗転ドーン
公式サイト


概要

ハリウッドで活躍する役者やスタッフを起用し、海外映画・ドラマの演出を織り交ぜながらゲームへと昇華させた作品。
『惨劇の物語を追体験しながら生き抜くアドベンチャーゲーム』という公式サイトの謳い文句の通り、プレイヤーに大きな臨場感を与える「プレイする映画」ともいうべき出来に仕上がっている。
……が、国内版においてはあまりにも擁護しきれない問題点を抱えてしまっている(後述)。

  • 本作のデベロッパーであるSupermassive Gamesは過去に『リトルビッグプラネット(2)』のDLCや、イギリスの長寿SFドラマシリーズ『ドクター・フー』のゲーム化作品の1つである『Doctor Who:The Eternity Clock』*1、『Killzone HD』の開発などを手掛けたイギリスのデベロッパー。

システム

  • バタフライエフェクト
    • 所謂バタフライ効果。プレイヤーの選択が後々思わぬ形で登場人物に降りかかることになる。メニュー画面では特定の場面ごとにバタフライエフェクトの展開が区切られており、その周回で選択した行動と発生した結果を確認出来る。
  • トーテム
    • 収集要素の一つ。移動パートにてトーテムのパーツを拾えるのだが、それらを取得した時に未来の情景の断片を見せられる。トーテムの種類は拾った本人が息絶える瞬間を見せる「死」や、特定の場面でのヒントを見せてくれる「導き」など様々で、その情報を活かせるかはプレイヤー次第。

問題点

共通

  • それほどシナリオは変化しない。
    • 膨大な選択肢を仕込んでいるが、変化するのは個々の生死や場面の描写程度で大筋に大きな影響はほとんどない。かまいたちの夜のような展開の分岐を期待すると肩透かしを食らう事となる。
      • 物語のラストではロッジに生き残りの一部が逃げ込み、襲い掛かってくる存在と最後の駆け引きをするのだが、どんな分岐を選んでもラストはこのシチュエーションで、登場人物の生死を除いて舞台・展開共に変化が起こらない
    • 人物の死亡するフラグも数が限られており、フラグそのものの出来は良いとはいえ「あの時の行動が後々大きく影響」している感じは薄い。
      • 例えば序盤でカップルが雪合戦を始める場面の最後で、「キスをする」か「雪玉をぶつけるか」の選択を放置すると頭上からつららが落下するのだが、その際に発生するQTEに成功しても失敗しても(描写に多少の差こそあれど)カップルはつららを避けるため負傷ないしは死亡したりしない。
    • もっとも、かまいたちの夜を始めとする豊富な分岐を持つ作品は、基本的に「テキスト主体のサウンドノベル」であるのに対し、本作はモーションキャプチャーを前提とした「3Dムービー主体のアドベンチャー」だという点を踏まえると、多数の展開を用意するのは難しいであろう事は想像に難くない。そういう意味では本作の出来不出来というよりも作品ジャンルの限界といった方が正しいのかもしれない。
  • QTE
    • よくある「テンポを損なう」という問題はないのだが、物語の後半辺りからはかなりの頻度でシビアなQTEが出てくるので、反射神経などに自信のない人には厳しい。
      • 特に話題に上がるのは「動くな!」のQTE。PS4コントローラーのモーションセンサーを利用したもので、画面に表示される枠から逆三角形のマークがはみ出ない様に一定時間コントローラーを動かさないようにするのだが、これが非常に難しい。
      • QTEが発生する直前に机や床の上にコントローラーを置けばほぼ無効化出来るほか、物語の展開などから「そろそろ発生するだろうな」と予想を立てやすいのが救いではある。
    • 本作は本来話を見て楽しむゲームなので、これらの高難度QTE引っかかる人も少なくはないだろう。
  • 周回プレイでの快適さを損なう仕様
    • 本作ではプレイヤーの行動の成否や選択により登場人物の生死が左右されるので、一度ストーリーを最後まで進めた後も周回プレイでまた異なる展開を見て行く事が出来る。が、その肝心の周回プレイを妨げる要素が多数存在している。
    • まず問題となるのが移動速度。本作では「常に走りながら探索をする事など出来ない」との理由から、急いで移動しようと思っても早歩きしか出来ない。初回プレイならばそれも雰囲気作りとして十分に機能しているのだが、2度目3度目のプレイでも歩きでしか移動できないというのはマイナスといえる。
    • また、ムービー形式で会話を挟みつつ時には選択肢やQTEが発生するイベントもスキップの類は一切出来ない。選択肢やQTE自体をスキップ出来ないのは当然としても、直前までスキップするといった工夫が欲しかったところである。
  • 有耶無耶に終わる伏線がいくつかある。
    • 代表的なのは中盤のとあるシーンで失くしたスマホが音楽再生中の状態で窓から投げ込まれるシーン。その後の描写から察するに投げ込んだのは直後に襲ってきた存在なのだろうが…。その存在に見た目以上の知能が備わっている事を示す資料は存在するのだが、投げ込んだ存在にスマホを扱うほどの知能があるようには見えない。
    • 他にも序盤から意味ありげに挿入されるカウンセリングシーン*2も明確に説明されることはない。終盤の描写から察するに、とある人物が(その人物にカウンセリングを受けた過去を基にして)見ている幻覚と予想出来るのだが、確定はしきれない。
  • 肩透かしな「過去の出来事」。
    • 条件を満たすことで断片的に映像がアンロックされ、最終的に一つのムービーが完成し物語の裏が明かされるというもの(あえて例を挙げるなら、アサシンクリード2の隠された真実に近い)。
    • しかし、ほとんど作中で集める資料でわかることの再確認に近く、このムービーそのものの意味がかなり薄い。ここで初めて出てくる情報もあるにはあるが、わざわざ伏せるような内容でもない。
    • また、例に挙げた「隠された真実」と違い断片状態でも音声などもばっちり流れるため、完成させなくても内容がだいたいわかってしまう。

国内版について

  • 残虐描写への規制
    • 国内での本作の評価を徹底的に貶めた最大の問題点
    • 人体欠損を伴う死亡シーン・欠損した人体を発見するシーンなどで問答無用で画面が暗転する。しかも暗転の入り方がかなり雑で場面がぶつ切りになったりすることもしばしば。
      • 残虐描写が規制されること自体はあまり問題ではなく、「規制が加えられるのは仕方ない」と考える人も多いのだが、カメラワークで映さないようにする・モザイクや謎の光で隠すといった手法をとらずに、全画面を真っ黒にするという力技を通り過ぎた手抜きに走った事に対し大きな非難の声が上がる事となった。
    • 物語終盤の場面では、具体的に何が起こっているのかさっぱりわからないことも*3。特定の人物が死んでいる場合は生存者がその人物の名前を言うので一応は状況の把握が可能だが、あまりにもプレイヤーに与える情報が少なすぎる。
    • そのくせ、プロローグの時点で死亡した人物の死体(生首)を見つけるシーンや、(幻覚とはいえ)左記の人物が自分で顔面の皮膚を覆面の様にはがして「中身」を見せつける場面は、暗転どころか全くの無修正だったりとかなりいい加減。本来ならば「規制を免れた場面は余すところなく見せてくれている」と評価すべきなのだろうが、皮肉な事に雑な暗転規制をより引き立てる結果しか生み出していない。
    • また、トーテムでの予言映像で映っているにもかかわらず、実際のプレイでは規制されているケースもある。簡単に言えば、何かが起こる前からもう暗転が始まるという始末である。
      • 直後に首を捻じ切っているとはいえ「床の扉から何かが飛び出して登場人物の首をつかむ」という予言映像が、プレイ画面では飛び出す瞬間から暗転しているという意味が分からない規制のねじ込み方を見せている。
    • このような有様なため、チャプター間に挟まれる「これまでのあらすじ」も散々なことになる。せっかく海外ドラマのそれを思わせる構成に仕上げられていても雰囲気はぶち壊しである。
    • これらの規制が元でついた蔑称が「暗転ドーン*4。まさに言い得て妙。
    • 極めつけに、この手抜き臭がすさまじい規制の仕様に関して公式サイトなどでの事前告知の類は一切なかった。さらに発売後にブーイングがあっても公式はだんまりを決め込み続けている。
      • 一応、発売直後に行われた公式ニコ生にて参加していたソニー社員が一言謝ってはいるが、焼け石に水としか言いようがない。
  • この規制は2018年現在になっても未だに改善されていない。

賛否両論点

  • シナリオの方向性。
    • 殺人鬼から逃げ回るor対決するサスペンスもの、あるいは怪奇現象に悩まされる心霊ものかと思ったら モンスターパニック (要反転)だった…という展開は、結構な数のプレイヤーが(良い意味でも悪い意味でも)裏切られたと感じたことだろう。
    • もっともこれは、(狙ってやったかどうかは別として)誤解を招くような宣伝の仕方の問題ではある。

評価点

  • 抜群の雰囲気作り
    • 登場人物はそれぞれキャラが立っており、洋画や海外ドラマで見るような等身大な米国の若者がよく作られている。
    • グラフィック・サウンドも完成度が高く、夜の雪山の情景は見ているこちらも寒さを感じてしまいそうになる。
    • 白石涼子女史や阪口周平氏といった吹き替え声優陣の演技も極めてクオリティが高い。
  • 意外な結果をもたらす分岐
    • シナリオに関して前述した問題点こそあるが、バタフライエフェクトが絡む(シナリオに変化が生じる)選択肢の中にはプレイヤーの予想を上回る結果と驚きをもたらす物が存在する。
+ 分岐の具体例 ※中度のネタバレ注意
  • 「毛むくじゃらのねずみ」
    • チャプター1の冒頭、ケーブルカーが来るまでの時間つぶしに射撃場でライフルを撃つ際、目の前に現れたリスをあえて「撃つ」
    • その場に居合わせた女性が撃った男性と口論している所を鳥が襲い、女性が目の上に「軽い傷を負う」
    • 場面が移り、上記の女性が殺人鬼から逃げ回るシーンの途中、扉を開けた拍子に転倒した際傷口から「出血する」*5
    • 直後に逃げるか隠れるかの選択肢が発生する(逃げると捕まり、隠れてQTEも成功させるとやり過ごせる)が、隠れる選択をしても血の跡が原因で「見つかってしまう」
      • 上記の隠れる選択が殺人鬼から逃げ延びる唯一の選択肢だが、リスを撃つという一見無関係な行動が「どう選択しても殺人鬼に捕まってしまう」という結果をもたらす事となる。
  • 「意思疎通」「自分を守れ」
    • カップルの女性が助けを呼ぶために通信塔へ行くべきと主張し、片割れの男性(プレイヤー操作)が「賛成する」を選択して、通信塔へ向かう(この時反対してもどのみち通信塔へは向かう)。
    • たどり着いた通信塔で女性(プレイヤー操作)がとあるアイテムを手に入れた際、自分が持つか男性に渡すかの選択が発生するが、この時男性に渡すと男性は「助けを呼ぶ為に使う」と判断して「その場で使用する」
    • 場面が変わって、今にも崩れそうな足場で女性が転落しそうになる場面にて、男性(プレイヤー操作)は安全策を取って逃げ出さずに「救おうとする」も奮闘むなしく女性は転落し、男性自身も崩れる足場から飛び降りた衝撃で負傷・気絶してしまう。
    • 目が覚めた男性は何とか脱出しようと歩き出すもすぐに何者かに襲われ、抵抗も空しく「殺されてしまう」
      • この時、上記の選択肢で「反対する」を選択していれば、あるアイテムを渡されても使わずに所持し続けるので、そのアイテムで反撃する事が出来る。また、女性を救おうとせずに「安全策を取る」を選択すれば襲われるイベント自体発生しない。
      • だが、上記の選択通り付き合っている女性の意見を尊重し献身的に尽くし続けた場合、「避けられない自分の死を招く」というなんとも皮肉の利いた展開を見せる。

総評

「規制さえまともであれば…」本作を評する言葉でこれ以上に適切なものはないだろう。
(ホラー・スプラッタ風味の)物語を楽しむ事に重きを置いたタイプのゲームでありながら、その雰囲気を台無しにする様な規制が施されていてはその魅力は半分にも満たないと言えよう。
洋ゲーのローカライズで問題になりがちな翻訳・吹き替えは素晴らしいクオリティであるため、このような形で評価を落としてしまうのは非常に残念でならない。
演出や映像の美しさは目を見張るものがあり、分岐を含むストーリーの構成や周回プレイの煩わしさに目をつぶれば十分に楽しめるクオリティであるため、無修正の原語版をプレイする環境が整っているのならそちらをオススメしたい。

余談

  • 本作でジョッシュを演じたラミ・マレックはドラマ「Mr. Robot」でエミー賞主演男優賞、映画「ボヘミアン・ラプソディ」でアカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した俳優として知られている。
  • その後、本作のスピンアウト作である『Until Dawn:Rush of Blood』がPlayStation VR用ソフトとしてリリースされた。物語上の繋がりはないが、本作後半のモンスターとの対決シーンを元にしたジェットコースタースタイルのガンシューティング(レールシューター)となっている。スピンオフでありながら、実際は本作と並行で開発されたものであることがインタビューで明らかにされている。
  • 本作の開発スタッフはその後本作の発展型ともいえる『The Dark Pictures Anthology:Man of Medan』(PS4/One/Win)を手掛けている。