ゴースト トリック
【ごーすと とりっく】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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ニンテンドーDS
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発売・開発元
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カプコン
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発売日
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2010年6月19日
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定価
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5,040円
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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廉価版
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NEW Best Price! 2000 2011年5月26日/2,100円
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判定
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良作
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概要
『逆転裁判』シリーズを手掛けた「巧舟」氏の新作ということで話題になったりならなかったりした新感覚ミステリー。
タイトルは「トリック」と「
憑
りつく」のダブルミーニングである。
そこからも分かる通り、プレイヤーは主人公のタマシイとなって、様々なものに憑りつきながら自らの死の真相を追うこととなる。
基本的に一本道のアドベンチャーゲームだが、会話パートの間に、主人公のタマシイを操作して移動や問題解決を行う、パズル要素を含んだパートが挟まれる。
ストーリー
…しばらく 気を失っていた…
気がついたら、女が立っていた
知らない女だ…たぶん
その横に、男がヒトリ
やはり、知らない男だ…たぶん
…そして、私はといえば…
すでに、死んでいた
「アナタ様は"死者のチカラ"を得た。
しかし、それはほんの"一時"
夜が明けて、明日の朝日がさすとき…
アナタ様は"消滅"いたします。」
今夜。街の片隅で、命と記憶を奪われた"私"は、タマシイとなって目覚めた。
私は、なぜ殺されたのか?
私は、誰に殺されたのか?
そして…私は、誰だったのか…?
…タマシイは、明日の朝"消滅"する…
一夜かぎりの
"孤独な追跡劇"
が、今。始まる!
(公式ホームページより)
登場人物
一部を紹介する。なお、登場人物の多くは死にまつわる単語から付けられている。
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シセル
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自分でも何者なのかわからない本作の主人公。気がついたら死んでおり、生前の記憶が全くない。
自分の死の真相を探るため、命と引きかえに得た"死者のチカラ"で多くの死者を救いながら夜の街を奔走(?)する。名前の由来は「死せる」。
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リンネ
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本作のヒロインで、シセルの死体の第一発見者になった刑事。目的のためならば何度でも死ぬ、歩く死亡フラグ。名前の由来は「輪廻」。
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カバネラ警部
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リンネの上司。ユニークな人物だが、自身の真っ白な経歴を守るためには何でもするという一面を持つ。名前の由来は「屍(かばね)」。
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クネリ
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ゴミ捨て場で出会った謎の電気スタンド。くねくねするのが好き。シセルに死者のこと、チカラのことを教える。どうやらシセルのことを知っているようだが…。
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ミサイル
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リンネが飼っているポメラニアン。主人のために頑張る忠犬。
特徴
シセルは一晩のうちに、様々な"死"と巡り合うことになる。
本作は、そんな死者たちの運命を"死者のチカラ"による過去改変能力によって死から救いつつ、シセルを取り巻く事件の真相を突き止めるのがゲームの主な目的となっている。
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シセルの能力は主に4つ。
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《トリツク》
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物体に文字通り取り憑くことができる。ただし、コアと呼ばれる光球の見える物体にしか取り憑くことができない。
コアを持つ様々な物体を乗り継いで行くことが、本作での主な移動手段となる。ただし、現在位置から一定の範囲内にある物体にしか移動することはできない。
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副次効果としてこの能力の使用中は時が止まる。
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シセルは死んでいるので生きている人間と話すことは原則的にできないが、死の運命を改変された人物にはコアが出現し、人物のコアと接続することで会話できるようになる。
実際は会話というよりも念話に近く、互いの心が読めるようになる(=互いに嘘がつけない)という特徴がある。
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《アヤツル》
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取り憑いた物体を文字通り操ることができる。
なお、効果は物体によって異なる。現在取り憑いている物体に《アヤツル》を使うとどのような効果が発動するかは、上画面で確認することができる。
死者であるシセルが現世に直接介入する唯一の手段であり、死の運命を直接妨害する他にも、物体の配置を変えて《トリツク》を使うための道を作ったりと、攻略上重要となるアクションである。
積極的に《アヤツル》ことが突破口を開くことに繋がる。
あまりやりすぎると初見殺しの罠にほぼ確実に引っかかるが。
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《死の4分前》
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死んですぐの亡骸に《トリツク》ことで、その人物が死ぬ4分前に戻ることができる。
戻ってから4分の間に別の人物が死亡した場合、その人物の亡骸に《トリツク》ことでさらに過去に戻ることができる。
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《デンワ線》
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電話に《トリツク》ことで、遠く離れた場所にある電話に電話線を伝って移動することができる。
番号が分かっていればどこにでも移動できるが、《死の4分前》の世界に来ている場合は通話中の電話線しか使えない。
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《死の4分前》では移動と同時に電話が切られてしまうため、事実上の一方通行になっている。
それまでのやり取りや表示される通話先の状況などを参考に、通話先へ移動するか留まるかを決めなければならない。
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死の4分前に戻り《トリツク》そして《アヤツル》ことで死の運命を変える。
ゲーム的には、画面上の物体を動かし、ギミックを発動させ《運命の更新》というゴールに辿りつかせるという、
ピタゴラスイッチ
的なパズルゲームとなっている。
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なお、制限時間は現実世界での4分ではない。これはあくまで物語の設定上の数値である。
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画面は完全に立体感を消し、世界を舞台を見る観客のような視点で平面的に描いたもの(一部のムービーを除く)となっており、キャラクターは全身で演技するため小さい。
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視点が完全に固定されているため、建造物や車両などは中が丸出しになっている。
一定以上の年齢の人ならば、「『全員集合』で屋内を舞台にしたコントをやる際に使われるセットのような感じ」と言えば分かりやすいだろうか。
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ストーリーは全18章で構成されている。
「それは死から始まる一夜の追跡劇」という本作のキャッチコピーに合わせ、各章のタイトルは時刻となっている。(最終話を除く)
ゲーム開始時点の時刻は午後7時頃であるが、ストーリーの進行に合わせて時間が経過していき、終盤になると明け方近くの時刻になる。
評価点
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《トリツク》と《アヤツル》を使った独特の操作感
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前述のように、このゲームは《アヤツル》でギミックを発動させ、移動手段を確保したり死の運命を妨害することが主な目的となる。
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「リアルタイムで変化していく状況を観察し、特定のタイミングで特定の物体に《アヤツル》を使う」「まず仕掛けを動かし、その仕掛けによって移動していく物体にタイミングよく《トリツク》を使って一緒に移動する」など、チャンスが1回しかなく咄嗟の判断が求められるというシーンも多く、リトライしながら試行錯誤することが基本となる。
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ステージに仕掛けられたギミックはどれも非常に個性的であり、クリアに関係なさそうなものでもついつい《アヤツル》を使ってみたくなるような不思議な魅力を発している。
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単体では何の役にも立たないように見えるギミックでも、組み合わせることによって状況を大きく変えることが可能。
物語が進むに従って難易度が上がる分、ギミックが上手く噛み合ってゴールに到達した際の快感は絶大である。
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ミステリーとオカルトが融合したシナリオ。
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謎が謎を呼び、増えていく登場人物を巻き込んでどんどん展開されていくミステリー。それが後半に入り一気に収束していく様はまさに圧巻。
予想しえない展開が立て続けに待っており、質は高い。
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終盤の展開については序盤から丁寧に伏線が張られており、2周目をプレイするとまた新たな発見がある。
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テキストは、シナリオ担当である巧氏の魅力がいかんなく発揮されており、特に『逆転裁判』シリーズで氏のファンになった層からは好評。
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ところどころで登場する、真面目な内容のはずなのに思わず吹き出してしまうユーモアに富んだ言い回しの数々は、どことなくポップなキャラクターデザインと相まって、「『死』の運命の改変」というともすれば重くなりがちなストーリーの雰囲気を明るくしている。
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失敗パターンには、救うはずの相手をプレイヤー自ら死へと導いてしまったり、より酷い死に方をさせてしまう物もある。文にするととんでもなく酷い展開だが、実際の内容はコメディ色溢れる展開で笑いを誘う物ばかりとなっており、本作の魅力に貢献している。
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ドット絵で描かれたキャラクターが滑らかに動く。
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最初に3Dで大きなポリゴンモデルを作って、それに動きを付けたものを縮小して、ドット絵に起こしたという(参照)。
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このため、全てのキャラクターがとてもドット絵によるアニメーションとは思えないほど滑らかに動く。
個々の動作も細かく作り込まれており、芝居がかったオーバーアクションが特徴のカバネラ警部などは、見ていて飽きないほどによく動いてくれる。アニメ映画並の動きを魅せると評価されることも。
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中盤に出てくる「テンテコの舞」は印象に残りやすく、評価する声も多い。
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BGMのレベルが高い。
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作曲は初代『逆転裁判』の杉森雅和氏。ミステリアスかつ熱い曲調は雰囲気に見事に合っており、ゲームを盛り上げてくれる。
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キャラも濃く、クセモノ揃いで魅力的。
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全体的にいわゆる萌えキャラとは違うデザインでアメコミ風の全年齢層に受け入れやすいデザインである。
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特に主人公シセルは見た目やパッケージ、広告などにも載っているマヌケな死に様とは裏腹に、作中では非常にカッコイイ。
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性格は基本的にクールなのだが、リンネたちの頓珍漢な発言にはしっかり突っ込みを入れたり、かと思えば記憶喪失の影響で常識に疎い一面があって突っ込みを受けたりと、様々な顔を見せてくれる。
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作中には『逆転裁判』シリーズを連想させる発言や人物も。
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仲間はもちろん、悪役も嫌味がなくコミカルで憎めないキャラクターばかり。
問題点
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操作がかなり独特な割に、ゲーム中に示されるヒントが不親切気味。
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序盤は慣れないので苦労するが、総当たりで行けるので何度か繰り返せばクリア可能。後半は慣れてくるがその分仕掛けの難易度も増し、初見殺しも多い。特に中盤の山場である第9章などはかなりの難関。
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《アヤツル》後に出る吹き出しや死亡後のメッセージなど、失敗時にメッセージでヒントが与えられる事は多いが、その操作性により解り辛い事が多々ある。
また、移動方法に気付かないと身動きが取れない場面では、ヒントが無く、プレイヤー自身が気付くまで進められない事もある。
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前述のようにリアルタイムで状況が変化する都合、気付いた時には既に手遅れということもしばしば。
チャンスが一度きりの場合は基本的に「手遅れなのでやり直さなければならない」ということをヒントメッセージで提示してくれるのだが、そうでない場合は曖昧なヒントしか得られず、先に進むのに苦戦することも多い。
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それまでのヒントの不親切さとは逆に、最終話はヒントが過剰な部分も。
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やり直しながら試行錯誤していくのが前提の作りとなっているが、やり直しの度に時間を取られる要素が多い。
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やり直す度に強制会話を聞かされる場面が多々ある。
リアルタイムで状況が変化していく関係上、タイミングを見計らうための時間が短縮できないのは致し方ない部分もあるが、「せめて、メッセージの早送りがもう少し快適だと良かった」という意見は多い。
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同様にやり直す度に登場人物が行動を取るまで何もせず待たされると言う場面も多く、「時間を早送りするボタン等があれば良かった」と思わされる事も多々ある。
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セーブ関連が不自由。
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セーブファイルは1つで、常に上書きになる。
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セーブできない時間が長い。ゲームの大半はテキストによるキャラクター同士の会話に費やされるため、プレイヤーがセーブするタイミングの判断を誤った場合、一度見たテキストをダラダラと見ることとなる。
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色々できそうな割に、やり込み要素や別解が一切無い。
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このためパズル部分の楽しみを求めると、2周目以降は決まった一本道の解法をなぞるだけなので物足りなくなってしまう。
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ゲームジャンルは「パズル」ではなく「アドベンチャー」なので、公式としてもメインはパズルより物語ということなのだろうか。
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各所に小ネタは多く仕込まれているので、それを探す楽しみはある。
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デンワ線を使っての移動では、その時点で行く必要のない場所に行くと、事件の核心と関係あったりなかったりする話が聞けることも。
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失敗パターンの解法にユーモアやヒントが仕込んであるところがあり、あえて失敗して登場人物たちのやり取りを見る、という楽しみ方も可能。
総評
リアルタイムでピタゴラスイッチを作り上げていくような独特なゲーム性を持つ本作。数少ないオカルト×ミステリーを融合した質の高いシナリオに滑らかに動く独特な雰囲気を持つキャラクターが物語に入り込む魅力は兼ね備えている。
しかしシナリオが進むにつれて難易度上がる影響か不親切なヒントや独自の操作性が原因で苦難を強いられる事が問題。
決してボリューム豊富では無いがその雰囲気には『逆転裁判』シリーズに通じる部分も多く、シリーズのファンであればより楽しめるかもしれない。
移植・リマスター
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iPhone/iPodtouch/iPad向けに移植されている(2010年12月16日配信)。
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数章ごとにまとめた分割販売で、全章購入で1,500円。
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第1章・第2章はお試しで無料。
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発売後半年で移植版リリースに至った経緯について、プロデューサーの竹下博信に対するインタビュー記事が公開されている。
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長らくOSのバージョンアップ対応がされておらず、バグや不具合なども散見されていたため最新OSへのバージョンアップを求める署名活動も行われていた(参照)。
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その後、2021年1月に一旦配信を停止し、5月に最新OSまでの対応をされて配信が再開されたが、2024年3月25日をもって配信終了の発表があった。
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配信終了後はそれまでにデータを保存した端末で遊ぶことはできるがそのデータが消去した場合はそれっきりとなる。また2024年に後述のHDリマスター版を基準とした新バージョンを配信すると発表したが、別ソフト扱いとなるため旧作購入者もあらためて購入しないと遊べない模様。
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2012年11月1日にはAndroid版も配信されたが、こちらは現在配信を停止している。
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2023年2月9日に本作のリマスター版が発表された。対応機種はPS4/One/Switch/Win(Steam)で、2023年6月30日に発売された。
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いくつかの追加機能もあり、今プレイするならこちらだがリマスター特有の難点も生じている。
余談
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『逆転裁判』の巧舟によるゲームという謳い文句は、パッケージにまで記している。
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実際の中身はというと、数多く織り込まれた小ネタなどに、同シリーズを思わせる雰囲気はある。
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しかしゲーム性の方は大幅に異なるため、「関連を強めてアピールしたのは逆効果では?」とも言われている。
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登場キャラクターの「ミサイル」は巧氏の愛犬がモデルで、『逆転裁判』シリーズにも同名の犬が登場している。
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また、アニメ『逆転裁判 ~その「真実」、異議あり!~』には、本作のミサイルがゲスト出演している。
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さらに、発売から3周年を記念して巧氏自らミサイルのオリジナルソングを趣味で制作した。その歌がこちら。
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劇中に登場する「テンテコの舞」を打ち上げでディレクターの巧舟自ら踊った動画がネットに上がっている。
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サウンドトラックはカプコンの通販サイトの限定版の購入特典のみ。
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一度は再販されたが即完売、現在サウンドトラックは入手困難である。
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2013年6月19日からiTunes Musicで、2023年6月30日からイーカプコンで、サウンドトラックの配信がそれぞれ開始された。
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本作は当時、ネタバレや著作権に対して非常に厳しいゲームとして知られており、プレイ動画はもちろんサウンドトラックまで削除されるという徹底ぶりで、後にCAPCOMが動画配信用のガイドラインを制定するまでは、いわゆる「ゲーム実況」はほぼ不可能であった。
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事実として2020年、事前の許可を取らずに本作のプレイ動画を配信してしまったホロライブ所属のVTuber・大神ミオがその動画を削除されてアカウントBAN寸前まで追い込まれ、1ヵ月に渡って活動休止した事がある。
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他にも逆転裁判シリーズの投稿を行っていたとある実況者が、本作の投稿を始めた途端すべての動画が削除されたという様な出来事も。
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とはいえネタバレや著作権に厳しいゲーム自体は珍しくなく、『ペルソナ』や『ダンガンロンパ』などもネタバレ防止のため一部場面の配信が禁じられている。
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逆に言えば、一切声明を出さないままここまで厳しさだけ強調されるのは珍しいとも言える。
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2023年のガイドラインからは発売前のリマスター版以降、実況可能へ緩和している。しかしプロデューサーの和泉真吾氏は「ガイドラインを守っていただくと同時にサムネイルやタイトルには注意喚起などを記載してほしい」と述べている。
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リマスター版発売時にファミ通にインタビューが掲載された。
最終更新:2024年06月23日 23:31