スーパーオートサロン ~カスタムカーコンテスト~

【すーぱーおーとさろん かすたむかーこんてすと】

ジャンル スロットルカードバトル(アクション)
対応機種 ニンテンドーDS
発売元 Genterprise(現:グッドビジョン)
開発元 RIZE DRAGON
発売日 2009年4月9日
価格 5,040円
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 クソゲー
ポイント ひたすら単調な作業
どこの国でも商用バンが大人気


概要

いわゆるモーターショーをテーマとした作品。「車ゲー」と言えばレースゲームが大半の中、本作はカスタムカーによるデザインの良さを競う事を目的としている。
カスタムカーの祭典「カスタムスーパーショー」に参加し、その最大級のイベントである「スーパーオートサロン」での優勝を目指す。
ジャンルも「スロットルカードバトル」であり、レース要素はあるものの一般的なレースゲームのようなドライビングテクニックは一切必要無く、気軽な操作で楽しめるとされていたのだが…。


ストーリー

念願のGTレーサーとなった主人公タクヤ。
彼は突如スポンサー企業の会長からカスタムスーパーショー への参加を命じられた。
しかも、優勝を義務付けられたのだ。カスタムスーパーショーとは、
有名カーデザイナーや大手企業が参加する世界有数のカスタムカーショーである。
中でもスーパーオートサロンと呼ばれるショーは、開催各国で最大の規模を誇り、
初参戦、初優勝は不可能といわれている。

その開催国となるスイスの都市、ジュネーブへ飛んだ主人公を待っていたのは、
若きカーデザイナー「葉山エリカ」であった。
自分のデザインしたカスタムカーでの優勝へと情熱を燃やす彼女であったが、
車は速さを求める為の道具と割り切るタクヤにとっては、
カーデザインなど興味のないことであった。
全くかみ合わない二人がコンビを組んで、不可能への挑戦が始まった!!

(公式サイトより)


特徴

  • ショーが行われるのは全5ヶ国。各4回のローカルショーで優勝することで、その国のスーパーオートサロンに参加できる。つまり1国につき5回のショーに、全体では25回のショーに参加することになる。
    • ストーリーは1国につき1章の全5章構成。各章はそれぞれのショーに挑む5つの節に分けられる。
    • 1国につき、1台の車で勝負する。各章が始まると、軽自動車、コンパクトカー、商用バン、スポーツカー、ビッグスクーターからその国で使用するカテゴリを選ぶ。一度選ぶとその国では変更はできない。
  • ショー当日まではレースで稼いだポイントで車のパーツを開発したり、ショーを有利に運ぶためのマーケティングやプロモーション活動を行う。
    • マーケティングは現地の流行りのパーツを調査する(ショーでポイントが上がるパーツを調べる)。プロモーションはプレイヤーが指定したパーツを流行らせる(ショーでのポイントを任意に上げる)。成否はランダム。それぞれ1回の開催期間で1度ずつ効果を発揮する。
    • レースは複数種類存在するが、いずれもドライビングテクニックは求められず、全てタッチ操作のみで行う。
  • 車のパーツは全てカードで表現される。カードにはレース、ショーそれぞれに適用される数値が書かれており、パーツによってレース向き、ショー向きと言った違いがある。
    • 車のカスタマイズはこのカードの組み合わせで行うため、チューンナップというよりはデッキの構築に近い。
  • ストリートレースでは画面の指示に従ってハンドルやシフトレバーの操作を行い、その成功の度合いによって相手との距離が変わる。ゴール時に相手より先行していれば勝利。
    • それ以外ではセッティングしているパーツカードをルーレットで回し、カードに描かれた数値に応じてレースが進行する。レースはゼロヨン、アウトバーン、チキンレースなど複数種類存在する。
    • 必殺技の開発も可能で、使い所次第でレースを有利に運べる。
  • ショーでも基本操作はレースと同じでルーレットを回す。但し、こちらではショー用の数値が適用されるため、レース用のチューンのまま挑むと泣きを見る。
    • こちらではゼロヨンレースで獲得したサポーターが多いほど有利になる。また、コンパニオンを呼んで人目を引くと言った特殊技も使用可能。最終的なスコアで1位になれば優勝。

問題点

  • とにかく単調なゲーム性
    • ショーが始まるまで連日レースに挑み、ショーに勝ったらまた連日レースに…この繰り返しである。
      • レースもショーも最初はそれなりの面白さを感じられるのだが、シンプル故に飽きも早い。それを25サイクルも繰り返すとなると軽く苦行である。
      • 後述する通りイベントも少ない上に薄く、このサイクルは最初から最後まで変化が無いため、本当にルーチンワークをこなすだけになる。
    • レースは様々な種類があるとは言え、ストリートレース以外は細かいルールの差異はあれど、基本どれもルーレットを回すだけ。そしてショーも然り。
      • アウトバーンはひたすら高い数値を重ねてスピードを出す、チキンレースは規定値を超えないようになるべく近い数値を出す。どちらにしてもルーレットの数値の合計を競う事に変わりはない。
      • 唯一アクション要素のあるストリートレースもハンドルを回してシフトレバーを動かすだけなので、レースをしてる気があまりしない。また、ハンドル操作は感度が良くなく、回したつもりなのに失敗してヒロインから「ちょっとォ、やる気あるのかしら?」とお叱りを受けがち。
      • 「ドライビング操作が不要で、カードやタッチペンを使ったアクションで気軽に楽しめる」という触れ込みだが、気軽過ぎてゲーム性が薄くなってしまっているのが実情である。
    • ゲームの難易度自体低く、ポイントの高いパーツを揃えていけば後は殆ど作業になる。
      • そもそもレースでの速さもショーでの人気もパーツカードに書いてある数値で決まるので試行錯誤の余地が殆ど無い。特にショーは数値の高いパーツを付ければ勝てるので、デザインも何もあったものではない。
    • マーケティングやプロモーションも特にプレイヤーが操作する事なく、ちびキャラのアニメーションとランダムな成否の結果を見るだけ。実行した所で特定カードの数値にブーストが掛かるだけで、シミュレーション的な戦略性はほぼ皆無。
    • ルーレットを回すだけの単調作業&レスポンスの悪いスライド操作と言うと、二年前のKOTY携帯機部門大賞を彷彿させる。難易度が低く、何度もリトライさせられないだけ本作の方がマシだが…。
  • 意味の分からない流行
    • 世の中、何が流行るか分からないとは言え、全ての国で商用バンが大人気でスポーツカーが不人気という訳の分からない世界になっている。1国だけならまだしも世界共通である。
      • 無論、商用バンもカテゴリの一つだし、圧倒的人気を誇る国があってもおかしくはない。しかしこれがどの国でも、となると流石に無理がある。
    • ゲーム的なバランスを取って、バンは「レースで不利だがショーで有利」、スポーツカーは「ショーで不利だがレースで有利」という分かり易い位置付けにしてしまった為だろう。当然、「どの国ではどのカテゴリが有利か」と言ったような戦略性も無い(マーケティングで人気が分かるのはパーツだけ)。
    • 尚、早期購入特典は商用バンのミニカーであった。何故そこまでバンを推すのか。
      • その割にはパッケージに描かれているのはガルウィングドアのスポーツカーだが…*1
  • 薄いストーリー
    • 公式サイトには「起伏に富んだ展開で、突然のアクシデント、ライバルの登場など、手に汗握る展開が待っている!」と記されていたが、実際のところはその謳い文句とは程遠い出来栄えである。
    • 速さのみを追求し、車のデザインには興味が無かった主人公が夢を追い求めるヒロインと出会い、認識を改め、成長していく。と書けば相応のストーリーが期待できそうだが、そう言った流れは最初のスイス編で終わってしまう。
      • その流れにしても、「スーパーオートサロン同日に大きなレースが開催される事を知って主人公が飛び出し、パートナー不在のヒロインが危うく不戦敗になりかけたところで突然心変わりした主人公が出場をキャンセルして戻ってくる」というもの。
      • 展開そのものは悪くないのだが、主人公の心変わりの過程が一切描かれていないので気まぐれを起こしたようにしか見えない。
    • ストーリーイベントは各ショーの合間に短い寸劇がある程度。内容も薄い。
      • ショー開催までの期間中にイベントがある訳でもない。とにかく起伏が無く、キャラのゆるいやり取りを交えつつ淡々とショーをこなしていくだけである。
      • 各スーパーオートサロン決着後のイベントは全て一枚絵とナレーションだけで、カタルシスや達成感など無い。エンディングも例外ではない
    • ストーリー自体、チャプター1から登場するライバルとヒロインの競い合いにばかり集約していくため、それ以外のキャラはとにかく目立たない。主人公を含めて
      • せっかく個性的なキャラクター性を与えられているアメリカとドイツのカーデザイナーは出番が乏しく、彼女達との勝負もまるで盛り上がらない*2。大抵、ショーはヒロインとライバルの勝負ばかりに焦点が当てられ、他のデザイナーの見せ場など皆無と言って良い。
      • そしてストーリーが進むにつれて主人公はどんどん影が薄くなっていき、終いにはレースを除くとほぼ幕間のナレーション専門と化す。ストーリーは完全にヒロイン主導になり、どちらが主人公なのか本当に分からない。
      • 挙げ句の果てに、最後のスーパーオートサロン開始前のイベントはと言うと、ヒロインとライバルが互いを讃えて最後の勝負に挑むというもの。主人公や他のキャラは影も形も無い。
    • スーパーオートサロンは3回優勝すると決着が付いてしまうからなのか、全5回中2回は必ず負ける。ゲーム的に勝ったところで何かしらの事情でライバルに勝ちを譲る展開になっている。
      • ドイツ大会では前日の事故で車が破壊されてしまうのだが、ゲームとしては普通にショーに参加させられ、何の制約も無く勝つ事ができる。しかし結果は最初から決まっている。
    • 登場人物がほぼ美女という典型的なギャルゲー風の作りで、女性関連に力を入れている*3割に恋愛要素などは皆無。
      • 主人公と他のデザイナーとの絡みが極めて薄いばかりか、ヒロインとの絡みすら主人公の存在感と共にどんどん薄れていく。主人公自身はヒロインに気があったもののヒロインにとって主人公は最後までショーのパートナーに過ぎず、このようなストーリーでは主人公が男を見せる機会も皆無のため、案の定ロマンス展開には進まない。しかもエンディングのナレーションであっさり「俺とエリカの恋は実らなかった」と語られる。下記のおまけシナリオまでクリアすれば若干希望がある結末*4になるのがせめてもの救いか。
    • エンディング後にはおまけシナリオが解放されるが、これは主人公がカーデザイナーとしてヒロインと手合わせするという延長戦。本編での主人公の描写が薄過ぎたから急遽フォローを入れたかのような取って付けた感があり、やることももちろん同じ。
      • 本編が主人公の成長を描くようなストーリーだったら良かったのだが実際は上記の通りなので、最終的にヒロインに勝てるのも説得力が薄く、成長の結果というよりはゲーム的な都合に思えてしまう。
      • ちなみにこのシナリオではマップ上のちびキャラがヒロインから主人公に切り替わる。つまり本編中はやはりヒロインが主役だったという事だろうか。
  • その他
    • 周回プレイ可能で、イベントスチルは周回して条件を満たすとバリエーションが増えていくものもある。
      • しかし上述したような単調極まりなく一周すらもしんどいゲーム内容で、カーデザイナー達の水着姿などを目当てに何周もしたいと思える人がどれだけいることだろうか。
    • 各チャプターの最後のスーパーオートサロンは勝敗それぞれにイベントスチルが用意されている。バリエーション豊かなのは良いのだが、つまりコンプリートの為には毎回一度は負ける必要がある。
      • また、せっかくのイベントスチルが表示されても地味なBGMと淡白なナレーションが入るだけで、演出面も寂しい。
    • カスタムカーで競うゲームでありながら、自分でカスタムした車を保存して後から参照するようなモードも存在しない。つまるところ、肝であるはずのカスタムカーもゲームを進めるための手段に過ぎない。

評価点

  • キャラクターデザインは良好
    • 人数は少ないながらも、ヒロインを初めとして(何故か少女ばかりの)カーデザイナー達やサポーター、主人公も含めて魅力的なデザインになっている。公式サイトにヒロインのデザイン過程が載せられていた事からも、力を入れていたのは窺える(アーカイブ)。
      • 店舗予約特典も水着姿のヒロインとアメリカのカーデザイナーが描かれた図書カードと、靴下を脱いでいるパンチラヒロインという微エロなテレカだった。
    • 上記で少し触れたが、カーデザイナーの水着姿や温泉と言ったサービスカットも用意されている。マイクに息を吹きかけると、紙吹雪や温泉の湯気を飛ばすことができるという無駄な拘りも。
    • それだけに、せっかくのキャラを無駄にするようなゲームデザインやストーリー運びが悔やまれる。
  • カードの数値を注視してルーレットを回していればクリアできるため、専門知識やデザインセンス、ドライビングテクニックは問われない。「気軽にプレイできる」は確かに嘘ではない。
    • ただ、それで面白いと思えるかは別である。

総評

モーターショーという珍しい題材を用い、レースゲームとは違う新たな車ゲーの境地を開拓しようとする着眼点は良かったものの、
肝心のゲーム内容もストーリーも退屈極まりなく、目玉である車のカスタマイズもカードの数値を見るだけの単調な作業となっている。
パッケージに描かれている可愛いヒロインや格好いい車に惹かれて手を出すと、まず後悔することになるだろう。

最終更新:2022年07月05日 22:08

*1 ちなみにこの車はヒロインではなくライバルのカスタムカーである。

*2 特にドイツのデザイナーはクラッシュアートを売りにしたキャラなのだが、やった事と言えばクラッシュアート作成(破壊)中の不慮の事故で主人公達の車を破壊しただけ(当人の所為ではないが)。肝心のショーに至っては直接の登場すら無し。

*3 声があるのも女性キャラのみで、主人公とライバルの弟(女装少年)には無い。

*4 互いに成長して再会する事を約束し、別れる。というもの。