グランブルーファンタジー ヴァーサス

【ぐらんぶるーふぁんたじー ゔぁーさす】

ジャンル 対戦型格闘ゲーム

対応機種 プレイステーション4
Windows(Steam)
発売元 Cygames
開発元 アークシステムワークス
発売日 2020年2月6日
定価 7,679円→2,178円
(2021年12月より値下げ)
プレイ人数 1~2人
レーティング CERO:B (12歳以上対象)
判定 良作
ポイント グラブル初の家庭用ゲーム機作品
シンプルなシステムかつあらゆる面で完成度が高い格闘ゲーム


概要

  • Cygamesが制作・配信しているスマートフォン向けRPG(ソーシャルゲーム)『グランブルーファンタジー』(以下グラブル)のキャラクターが登場する対戦型格闘ゲーム。グラブルでは初めての家庭用ゲーム機向けに製作された作品。略称は「GBVS」。

ゲームシステム

  • 基本的なルール・システムは『ストリートファイターII』を源流とした一般的な2D対戦型格闘ゲームに通じている。攻撃ボタンは弱(L/A)攻撃、中(M/B)攻撃、強(H/C)攻撃、特殊(U/D)攻撃*1の4種類で、これにアビリティボタン、ガードボタンを加えた6ボタンが最低限必要なボタン数である。
  • アビリティ
    • 格闘ゲームにおける必殺技に相当するアクション。アビリティボタンと方向キーの組み合わせ4種*2により、基本的に1キャラ4種類のアビリティ*3を発動できる。
    • 一般的な格闘ゲームのような波動拳・昇龍拳・竜巻旋風脚コマンドなどでもアビリティを発動することができ、これは「テクニカル入力」と呼ばれる。クールタイムがアビリティボタンによる入力と比べて短いなどテクニカル入力によるメリットが存在する。
    • 原作の同名のシステムに準じて、使用すると再使用するまでにクールタイムが発生する。通常のアビリティを使う分にはすぐクールタイムが終了するため、連続使用の制限は発生しない。
    • ボタンの押し分けによって性能を変化させられるが、強版で発動した場合は「アビリティ+」となる。アビリティ+は技の性能が大きく強化される代わりにクールタイムが大きく延長され、しばらく再使用できなくなる。
  • トリプルアタック
    • 本作のボタン連打による自動コンボに相当するシステム。本作の立ち状態の通常技は近距離・遠距離の区別があり、近距離の通常技は続けてボタンを押すと最大2回(初段と合わせて三段)まで連続攻撃を行うことができる。
  • 投げ、オーバーヘッドアタック
    • 相手のガードを崩す共通アクション。投げ(近くにいる相手を掴むガード不能技)は弱攻撃+中攻撃or特殊攻撃、オーバーヘッドアタック(しゃがみガード不可の中段攻撃)は中攻撃+強攻撃で出せる。
    • 相手に投げられたのと同時に投げ入力を行うと相手の投げを抜ける「投げ抜け」が発生する。本作ではここに独自要素があり、通常投げ抜け発生後は五分の状況なのだが、投げ抜けが遅かった場合は投げを抜けながらのけぞるモーションが発生。投げを抜けた側に微ダメージと硬直差不利が発生する。
      • 遅投げ抜けの猶予は長く慣れたプレイヤーなら投げられたのを見てから投げ抜けを行えるが、遅投げ抜けを行っていても状況が好転しにくいため、遅投げ抜けをしながら耐えるか、早投げ抜けで状況を打開するかという駆け引きが発生する。
    • オーバーヘッドアタックは中段技であるのと同時に投げ無敵効果があり、早投げ抜けを狙った相手にカウンターヒットする(カウンターヒット時は追撃可能)という構造になっている。
  • ガード
    • 本作では方向キー後ろによるガードとガードボタンによるガードが両方存在する。
      • ガードボタンでのガードは裏周りによる左右のガード方向の変化に対応できるが後ろ歩きができないため投げに弱くなるため、方向キーによるガードと比べて一長一短である。
    • ガードボタンを使ったアクションとしてその場避け(後ろ+ガード)と回り込み(前+ガード)などの回避アクションも使用できる。
  • 奥義
    • 攻撃を当てる/受ける、前進するなどの行動で奥義ゲージが増加し、100%になるとそのゲージを全て消費して超必殺技である奥義を使用できる。また、体力が30%以下の時は奥義に加えて解放奥義も使用できる。
    • 解放奥義は一部キャラを除いてヒットするとムービー演出に移行し、これでKOして2本目の勝利ポイントを獲得すると専用勝利演出になる。
  • 追加システム
    • 発売から2年経ってのアップデートで以下のゲームシステムが追加された。発売当初からあった「奥義ゲージの使用用途が少ない」という意見に応えてか、いずれも奥義ゲージを奥義以外に用いるものである。
    • タクティカルムーブ
      • 奥義ゲージを50%消費して使える前後ダッシュの強化版。無敵時間が付与されており、相手の攻撃を回避するのに使える。前方へのタクティカルムーブはラッシュ、後方へのタクティカルムーブはバックシフトと呼ばれる。
      • ラッシュは相手に近づくと攻撃を行い、ガードさせて有利な上に通常技と同様にアビリティへのキャンセルも可能。また、ラッシュ自体も通常技からキャンセルできるため連続技にも使うことができる。
    • オーバードライブ
      • 奥義ゲージが100%ある時に使えるパワーアップシステム。発動すると周囲に衝撃波を発した後にオーバードライブ(OD)状態になる。OD中はダメージが上昇、通常技で削りダメージを与えるなど攻撃力が強化される。
      • ODを発動すると奥義ゲージがオーバードライブゲージに変化。ODゲージは時間で消費していくODの残り時間となる。OD中にダメージを受けるとODゲージが減少する。また、OD中は一回だけ奥義・解放奥義を使用することができるが、発動するとODゲージは0になり解除となる。
      • OD発動時の衝撃波は発動直後から無敵時間がありガードさせて有利なため安定した切り返しとなるが、ガードされずに避けで回避された場合は大きな後隙を晒すため相手の反撃が確定してしまうという弱点もある。
  • 登場キャラ
    • 製品版のみで使用できる初期キャラクターは11体。発売後に順次追加キャラが追加され、最終的な使用キャラ数は23体。最後に追加された2キャラを除き、シーズンパス1(5体)・シーズンパス2(6体)としてまとめ買いが可能。

主なゲームモード

  • RPGモード
    • 物語を進めながら遊べるモード。2人での協力プレイも可能。
    • 雑魚敵の他にもボスキャラとしてプレイヤーキャラ(倒すことでRPGモードのプレイヤーキャラとして使える)や星晶獣として大型の敵も登場する。
    • キャラ強化システムとして10本までの武器編成ができその武器は武器チケットというガチャで入手する、戦闘中に原作のアビリティに相当するサポートアクションを発動できるなど原作お馴染みのシステムも用意されている。
      • 特定の武器を入手するとRPGモード以外でも使える武器スキンが解禁される。
  • オンライン
    • インターネット対戦を行うモード。内容は『GUILTY GEAR Xrd -REVELATOR-』と同様で、ランクマッチ・プレイヤーマッチの他、オンラインロビーも存在。

評価点

  • シンプルで遊びやすいゲーム性
    • 『ストII』のように遊びやすいゲーム内容にするというコンセプトのもと、アークシステムワークス製の格ゲーとしては珍しく所謂「エアダッシャー」から離れたゲームシステムが構築されている。
      • コンボゲー定番の「エリアル」のようなお互い空中にいる状態で連続攻撃を与えるようなシステムは無いが、浮かせた相手に地上で攻撃を与えて拾えるような空中コンボシステムも理解しやすい形で用意されている。
      • 地上戦重視のゲームだが、トリプルアタックやダッシュなどジリジリとした動きに寄りすぎない軽快な操作性となっており、操作する楽しさも堅持している。
    • 格ゲーの基本システムに原作のフレーバーを加えたアビリティシステムは全ての必殺技をアビリティボタン一つでという初心者に優しい統一した操作性と本作独自のかけひきを形成している。
      • 「アビリティ+」は技自体の性能が高くなる他、相手を浮かせる効果があり連続技に使うことができたり相手を強制ダウンさせて起き攻めに移行できるなどの高い効果を発揮するが、使用すると一定時間再使用ができなくなりキャラの動きの幅が狭くなる、リスクとリターンが明確な完成度の高いシステムである。
  • グラフィック
    • GGXrd』や『DBFZ』など過去作品に比べると大きなインパクトこそないものの、原作イラスト風のキャラクターを格闘ゲーム内で躍動させており、品質は非常に高い。
      • ファンタジー世界のRPGということでデザインされた鎧などの細かい装飾が原作通りに再現されている点は本作の制作で苦労した点と言われており、隠れた評価点である。
    • 原作を再現した演出・モーションなども多数見られる一方、原作がRPGという関係で各種アクションなどは本作で一から作られているものが多いのだが、サイゲームス側の監修もあって全く違和感がなく仕上がっている。
    • 本作の優れた特徴として武器スキンがある。同様の2D風3Dグラフィックを用いたアーク製の格闘ゲームは、セルアニメと同様の手作業にてキャラクターのモーションを作っているため、全キャラ分の別コスチュームなどを作る事が工数的に非現実的であり、同じ3Dグラフィックの格闘ゲームに比べてキャラクターのドレスアップしてカスタマイズする要素が少ないという弱点があったが、本作ではキャラの武器を原作にもある別の武器などに変えられることで部分的だがドレスアップのカスタマイズが可能になった。
  • BGM
    • 主に原作のBGMがアレンジされて使用されている。RPGモードで戦う星晶獣戦も同様で、特にコロッサスのテーマは原作のイベントBGMでボーカルを務めたSTEVE氏が歌い上げるというアレンジがされた。
      • 一部キャラのBGMにはキャラクターソングやキャラを象徴する曲をインストアレンジしたものが使われている。内容もフェリの「ソラのミチシルベ」やDLCで追加されたナルメアの「泡沫夢幻・胡蝶刃」といった人気キャラから、同じくDLCで追加されたソリッズが出演したイベントのテーマソング「三羽鳥漢唄」といったツボを押さえた選曲で好評。
    • 今作でボスを務めるベルゼバブのテーマ「Existence」は、壮大な曲長とベルゼバブの心情を表現した歌詞、それを見事に歌い上げるnana hatori氏の凄まじく高い歌唱力で屈指の人気を得た。
    • 一方、アバター戦で流れる「paradise Lost」やDLCキャラの一人ベリアルの「Parade's Lust」などは原曲が使われている。当然歌付きであり、原作での壮大な戦いをバックに戦う事が可能。*4
  • 演出面
    • キャラゲーとしての側面もある本作だけに、演出面にも思わずにやりとできるものが多数。例を挙げると…
      • 全キャラ全組み合わせに個別の戦闘前掛け合いがある。それ自体は他ゲーでも見られるが、今作は 1P側と2P側の配置順で掛け合いが変化する という珍しい仕様となっている。これは今作の戦闘前掛け合いが2P側から話しかけ1P側が答えるという流れになっているため。
      • 勝利演出は普通に倒した際と開放奥義で倒した際専用の2種類が存在する。前者には更に組み合わせ次第で差分が生じるキャラがおり、中でもネタキャラのローアインは 全キャラに個別の勝利演出がある という謎の優遇を受けている。勝利台詞も当然の如く全キャラ全組み合わせに存在しておりぬかりない。

賛否両論点

  • 地味なゲーム内容
    • ボタン数の少なさ・システム上の1キャラの必殺技数の制約などから、1キャラあたりのアクションは現代の他の格ゲーに比べると少なめ。初心者向けを目指した反面、熟練した際のやり応えの乏しさにも繋がっている。
    • 避けや回り込みは攻められている状況で使いにくいことから防御システムに乏しく、一旦受けに回った時の対抗手段が少ない。対抗手段としては隙は大きいが全身無敵のあるアビリティで切り返すというものがあるが、それすら持っていないキャラもいるため、特に発売初期の調整では一度近づかれた時点で大幅不利という展開になりやすかった。
      • 遠距離キャラなのに無敵切り返しアビリティのあるフェリと、大型鈍重キャラなのに無敵切り返しアビリティの無いバザラガの差は特に顕著だった。
      • プレイヤーからは「奥義ゲージを使ったガードキャンセルの追加」が希望されていたが、後に奥義ゲージを使った無敵動作としてバックシフトやオーバードライブなど切り返し手段の追加が行われた。システムとしてガードキャンセルが追加されたのは次回作の「ライジング」から。
    • アビリティシステムのUI上、アビリティを出す度にアイコンの見た目が変化するため、アイコンが変化したのを確認して無敵のあるアビリティや奥義を出す「アイコン確認」というテクニックがあり、上級者帯になりこれが活用されると窮屈な立ち回りを強制されることになる。
    • なお、発売初期はランスロットやフェリ、グランのM版ドライブバースト(通称ヤクザキック)やカタリナの近距離Mなど、単純に調整不足のキャラや技が多数散見され、単純に技の強さを押し付けるのが強さと言わんばかりのある意味ピュアなゲーム内容となっていた。
  • DLCも含めたキャラクター選抜
    • 原作がソシャゲという性質上非常に大量のキャラがおり、それらを全て出すのは現実的に不可能という前提はあるが、単純に人気キャラを出すというより性能的な多様さを目指した選抜が行われていると思われ、結果として原作で(相対的に見て)人気の高くないように見えるキャラが登場している。
  • 主人公(グラン、ジータ)について
    • 原作のグラブルでは主人公のスキンを男性・女性から選ぶことができるのだが、本作では初期キャラとして男性主人公の「グラン」が、有料DLCの追加キャラとして女性主人公の「ジータ」がそれぞれ登場している。性能としては「スタンダードなキャラクター」という共通した特徴を持つのだが、必殺技の性能が大きく異なる*5ため単なるコンパチキャラではない。
    • ジータはDLCキャラとしての登場であるためか、奥義が原作のエンドコンテンツ「十天衆」に因んだものになっている豪華仕様。グランは無課金勢、ジータは重課金勢と演出の格差を揶揄されている。
    • 原作では主人公キャラはジョブによってスキンや性能を変えられるシステムがあるが、本作ではそれに因んだシステムは未搭載。これは『P4U』と同じ措置と言える。
    • シーズン2で追加された「ベリアル」は、グラン・ジータと同じく波動昇龍という必殺技構成ながら非常に多彩な動きのできる性能を持っており、特にグランはベリアルの登場によって使用率が大きく低下している。

問題点

  • 各種奥義を出す際に波動拳コマンドを必ず入力しなければならない
    • テクニカル入力ではいわゆる真空波動コマンドだが、アビリティボタンを使う場合でも波動拳コマンドを入力する必要がある。
    • これ自体は「1ボタンによる簡単な操作による割り込みで大ダメージ」という守り側が強くなる事を懸念した内容とも思われ、発売当時は「波動拳も出せないなんて」と格ゲーマーに一蹴された意見だが、後に『ストリートファイター6』がコマンドを廃したモダン操作が好評だった事を考えると本作での取り組みはやや半端なものだったと評することができる。
  • RPGモードのロード時間が非常に長い
    • 会話画面やゲーム画面への移動など、あらゆる画面遷移の度に長めのロード時間が発生するため、テンポが非常に悪い。PS4で遊ぶ場合SSDへの換装は必須、それでも十分長いと言われていたほど。
    • RPGモードの評価を下げている最大の要因。

総評

サイゲームス側としてはIPの家庭用ゲーム機向けの展開や自社eSports大会(RAGE)の種目として、格闘ゲーム制作に長けたアーク側としては格闘ゲーム対戦人口の裾野を広げる作品として、両者の思惑が噛み合った良質なコラボレーションと言える作品であり、作品としてのクオリティは高い。
一方、原作ファンとしてはキャラゲーとしての半端となってしまった事やRPGと対戦アクションというジャンルの差異から、格闘ゲームファンとしてはシンプルなゲーム内容からやり応えの不足から、両者から広範囲な強い支持を得るには至らず、ヒットこそしたものの残念な結果も残った「惜しい作品」としての側面も本作にある。


その後の展開

  • 2023年12月14日には続編として『グランブルーファンタジー ヴァーサス ライジング』が発売された。

最終更新:2025年04月20日 06:53

*1 地上で出した場合はキャラごとに異なる性能の特殊攻撃アクション、しゃがんで出した場合は相手をダウンさせる「しゃがみ強キック、足払い」に準ずる性能に、空中で出した場合は地上で出す場合ほど特殊ではないが特殊な性能のジャンプ攻撃となる。

*2 方向ニュートラル、後ろ、下、前

*3 一部3種類しかアビリティがないキャラが存在したり、地上版と空中版で同じ操作でも違うアビリティを発動できるキャラもいる。

*4 もっとも後者は歌詞の内容が大変卑猥なため、別の意味で集中できなくなるかもしれないが……

*5 後ろ必殺技はグランが大きく突進する「ドライブバースト」、ジータがその場で攻撃して連続入力で複数回攻撃する「ボーパルブレード」。