Street Fighter II'

【すとりーとふぁいたーつーだっしゅ】

ジャンル 対戦格闘
対応機種 セガ・マスターシステム
メディア 8MbitROMカートリッジ
発売元 TECTOY
発売日 1997年
プレイ人数 1~2人
備考 日本未発売(ブラジル限定)
判定 クソゲー
劣化ゲー
ポイント まさかのマスターシステムに無茶移植
殺風景になった背景
全然出ない必殺技
昇龍拳は存在しない
総合的にはGB版と五十歩百歩な出来
これでも公式ライセンス品
ストリートファイターシリーズリンク


概要

人気対戦格闘ゲーム『ストリートファイターII'』のセガ・マスターシステム移植版。
『ストII』には様々な機種に非公式で移植された海賊版が多数あり、本作もその一つと思われがちだが、本作はカプコンから許諾を得てブラジルの現地企業TECTOYからブラジル限定で発売された公式ライセンス品である。
何故SFCはおろか、PSやセガサターンが既に出ている1997年にマスターシステム版がブラジル限定で発売されたかと言うと、ブラジルでは輸入品に高い関税がかけられており、日本のゲーム機は非常に高額で普及していなかった。
その一方、セガ・マスターシステムに関してはTECTOYがセガと契約を結びブラジル国内で生産・販売していたため高い関税はかけられず、セガ・マスターシステムはブラジルでは1997年当時でも現役だったのである(詳しくは『20 em 1』のページも参照)。


特徴

  • キャラクターは、リュウ、ケン、春麗、ガイル、ブランカ、M・バイソン(BALROG) 、サガット、ベガ(M・BISON)の合計8名。
    • 日本未発売ということで、シャドルー四天王の名前も海外版に準じているが、本稿では混乱を避けるため日本版の名前で記述する。
  • 『II'』とあるが、『ターボ』や『スーパー』の要素も含まれている。
    • 例えば、春麗が気功拳を使える他、顔アイコンのドット絵は『スーパー』準拠となっている。

問題点

8メガというマスターシステムとしてはかなりの大容量ROMカセットを使用している本作であるが、それでもスペックや容量が足りなかったのか、AC版はおろかSFC版などの移植版と比べても劣化している部分が多々見られる。

  • GB版と同じく必殺技が出しづらい
    • 必殺技の出し方にコツが必要で出しづらい。少なくともSFC版やMD版と同じように入力してもまず出ない。
    • 一応、ボタン連打系の必殺技である、春麗の百裂脚とブランカのエレクトリックサンダーは、比較的出しやすい。
  • キャラクター数の減少
    • キャラクターが削除されており、エドモンド本田、ダルシム、バルログ、ザンギエフが使えなくなっている。
    • 一応GB版でもキャラクターが削除されていたが、GB版にはいたザンギエフも削除されており、合計8人とGB版の9人よりも少ない数になってしまっている。
  • グラフィックの劣化
    • キャラクターごとにステージが用意されているのだが、元と比べて画面中央にあった建物や物体などが取り除かれており、殺風景で寂しい背景になってしまっている。
      • 例えば、リュウステージでは奥にあった城が無くなっている他、ケンステージの中央にあった船も無くなり、サガットステージでは大仏が除去されている。春麗ステージに至っては何故か肉屋がコピペされており、あたり一面全部が肉屋という奇妙なステージに。
    • GB版と同じくキャラクターの動きがカクカクしている。
    • 他にもキャラクターの影とキャラクターが立っている位置がズレており、キャラクターが宙に浮いているように見える。
  • 使える技も削られている
    • 各キャラごとに、必殺技が2つまでしか割り当てられておらず、原作と比べて必殺技が減っているキャラがいる。
      • 例えば、春麗は百裂脚と気功拳しか使えず、スピニングバードキックが使用できない。
      • 特に酷いのがリュウとケンで、よりにもよって代名詞である昇龍拳が削除されている
    • 当然のように投げ技も存在しない。
    • 通常攻撃は基本的に強攻撃しか出せない。GB版のようにボタンの長さで強弱を切り替えるという工夫も無い。
  • ゲームバランスもあまりよくない
    • 前述したようにプレイヤーは必殺技が出しづらいのに対して、CPUはバンバン必殺技を出してくるので、難易度が高い。
    • 何故かブランカのローリングアタックとベガのサイコクラッシャーがガードすると多段ヒットしてかなりの大ダメージを受けてしまう。そのためこれらの技はガードしない方がダメージを抑えられるという本末転倒なことに。
  • その他劣化点
    • ボーナスステージも存在しない。
    • キャラクターボイスも削除されている。
    • キャラクターごとのエンディングも無し。

評価点

  • マスターシステムということを考慮すれば、キャラクターのグラフィックはそれなりの出来。
    • 前述の通り動きはカクカクしているが、ドット絵そのものや顔アイコンなどはマスターシステムということを考慮すれば中々のもの。
  • キャラクターボイスは無いが、キャラクター選択の名前読み上げとラウンドコール、YOU WIN・YOU LOSEのボイスだけはついている。

総評

マスターシステムはファミコンと同期の8bitマシンなので、AC版はもちろんのことSFC版などと比べても、ある程度の劣化は致し方ないと言えなくもない。
それを考慮しても、ステージ背景の殺風景化、キャラクター数の減少、必殺技の出しづらさ……等々、元と比べて劣化している要素が多数見られる完全な劣化移植。
というか、ブラジルではメガドライブも同じくTECTOYから販売されているのに、何故わざわざ性能で劣るマスターシステムで出したのかが謎である。
総合的には無茶移植として名高いGB版と五十歩百歩な出来であり、 少なくともSFC版やMD版など、マスターシステムよりもハイスペックな据置ゲーム機で良質な『ストII』の移植が多数行われている日本においては、わざわざ本作を入手してまでプレイする意義は全くない。
とは言っても、それはあくまでも「ゲーム」としての話であり、人気タイトルである『ストII』がブラジル限定でしっかりとライセンスを取得して販売されたという事実による希少性はあるので、コレクターアイテムとしての価値は非常に高い。所持していれば一種のステータスにはなるだろう。


余談

  • 本作のスタッフロールに日本人の名前がいくつか記載されているが、実はアーケード版のスタッフロールを丸々写しているだけである。
    • 雑誌「ゲームラボ 年末年始2022」に掲載されたカプコン社員へのインタビューによると、開発はドイツで行われたらしく、日本のスタッフやカプコンは開発に一切関わっていない。風評被害もいいとこである。
最終更新:2025年08月11日 14:04