彼女の本名(というかフルネーム)はモーラ・ハールマン。相棒のヴァンパイアハンター、フリッツの妹である。
フリッツとは異父兄妹の間柄で、村を襲った吸血鬼に手篭めにされた彼の母親が産んだのがモーラなのだ。
そういった事情がある為、村の住人からは家族全員そろって迫害対象とされ、あまり幸福な幼少期は送っていない。
しかしフリッツと二人の母親だけはモーラの事を愛しており、家族のことだけを大切にして生きてきた。
また度重なる村人の嫌がらせやリンチも半吸血鬼である自分が悪いといって抵抗せず耐え忍んでいた。
ある年、インチキな宗教家が商売の宣伝をしようと、モーラに聖水だと言って 煮えた油を浴びせた為、
フリッツは宗教家を殺害し財産を強奪。モーラを伴って故郷の村を脱出し、以降ヴァンパイアハンターとなる。
当初は木の杭と槌だけで戦いを始めた二人だったが、成長して経験を重ねるにつれ装備を増強。
吸血鬼から奪った財産や、吸血鬼が『狩り』の為に開発した特殊な武器を駆使して戦い続けている。
ヴァチカンの 埋葬機関や 王立国教騎士団ほどではないにしろ、腕の立つハンターのようだ。
そういった事情から、あまり他の人間に心を開くことはない。
唯一の例外がフリッツであり、そして吸血殲鬼ヴェドゴニア――主人公の伊藤惣太である。
幸福で平凡な人生を送っていた惣太は、秘密結社イノヴェルチより逃走した ロードヴァンパイアに襲われ、
大量の出血、或いは日時の経過と共に吸血鬼へと変貌してしまう存在、ヴェドゴニアへとなってしまう。
ロードヴァンパイアを追跡していたモーラとフリッツは彼を救うと共に、ロードヴァンパイア、イノヴェルチと
戦う為の武器として利用するようになる。
(この時の姿は、ニトロワ出演時のリーブアタックでも見ることができるが、完全にバケモノ。
口に鋼鉄の枷を嵌め、拘束着を纏わねば、吸血鬼として暴走してしまう)
しかし惣太は元々裏世界とは関係ない一般人であり、半吸血鬼という自分に似た境遇を持つ惣太を利用するのは
モーラとしてはかなり不本意だった様子。
ナイフで手首や首筋を切って 人間をやめ、倒したバケモノの血を啜って人間に戻る過酷な戦いの日々。
苦悩し、絶望しながらも何とか人間であろうと抗い続ける惣太を気遣っていたモーラは、
やがて惣太から外見ではなく、本来の年齢相応の女の子として接されるようになり、その事をきっかけに心を開いていく。
実は彼女の父親はイノヴェルチの大幹部・ナハツェーラーであり、モーラルートでは彼女との直接対決が発生する。
といっても敵は催眠術を得意とする(つまり戦闘向けではない)存在の為、わりとあっさり倒されてしまうのだが、
兄のフリッツを 洗脳し吸血。自分の死後、モーラに対する刺客として彼を送り込んだ。
妹に対する家族愛が、吸血鬼化によって歪んだ形で増大したフリッツは、彼女と二人で生きる為にモーラを吸血鬼化しようと試みる。 ロードヴァンパイアを倒した為、もはやヴェドゴニアとしての力を失い、 ただの人間に戻った惣太は、
フリッツに果敢に戦いを挑みダメージを与えるものの、片腕を切断され、瀕死の重傷を負い、遂には追い詰められてしまう。
そんな彼を救ったのはモーラであり、彼女は惣太を生かすため、自ら兄の心臓に杭を突き立てたのだった。
その後、モーラの元で「人間の吸血鬼ハンター」として修行を積んだ惣太は、彼女と共に戦い続ける人生を選ぶ。
学校生活、両親、幼馴染、平穏な人生、そういった全てを捨てて、彼はモーラと生きていくことを決意したのだ。
二人の目的は、全ての吸血鬼の抹殺。そうすることで、初めてモーラは平穏な人生を送ることができるのだから。
右腕の鋼鉄の義手を構え、スレッジハンマーを携え、二人は吸血鬼のねぐらへと踏み込んでいく。
山奥に小さな小屋を建て、子供の代わりに二匹の猫を飼い、そして共に穏やかに生きていく為に――
「灰は灰に…」「塵は塵に…」
余談ではあるが、この作品のモチーフとなった作品はブラム・ストーカーと『 仮面ライダー』である。
人でなくなりながらも戦う悲哀のヒーロー&改造バイクと吸血鬼伝説を合わせた結果
こういうまったく新しい作品になる辺りはいかにもニトロらしい。
その為、後にライダーシリーズで吸血鬼を題材とした『 仮面ライダーキバ』では偶然か設定が似ている部分がある。
(主人公がハーフだったり兄が敵になったりする、あと巨大なハンマーを武器に使う)
更に余談だが、彼女が登場する『ヴェドゴニア』という作品は元々普通の学園物として企画され、
ヒロインの方向性も、幼馴染、眼鏡っ娘、ロリ、不思議少女、という良くあるチョイスだった。
実際、幼馴染に朝起こされたりするし、真面目そうな眼鏡っ娘が実は メタル好きといったギャップ萌え等も盛り込んである。
そしてロリ担当がこのモーラであり、「お兄ちゃん」というセリフも用意されてるのだがしかし、
上記の要素もぶち込んだ結果がこの通りである。
実のところ脚本担当の 虚淵玄氏は真面目に恋愛ゲームのシナリオを作ろうとしていたのだが、
どうしてもそういったシナリオの構想ができず、納期が近づいていたのもあって
最終的には自分の趣味に走って書くしかなかったとのことらしい。
|