おじいさんが死んだ時、僕は形見として懐中時計が欲しかったのだけど、それは姉さんにとられてしまった。家にこもって本ばかり読んでいる君には必要ないでしょ、と一笑に付された僕は、代わりに革表紙の日記帳を譲り受けた(相当のボロだ)。
かくして僕のものとなった日記帳に記されていたのは、おじいさんの旅の記録だ。僕のおじいさんは、家でじっとしていることができない人で、年中旅をしていた(そのせいで、随分とおばあさんを困らせたみたいだ)。ゆえに、僕も直接会話した記憶は少ない。
「A州の小汚いパブにて、珍妙な郷土料理を食す」「B自治領に入ったところをスリ集団に囲まれて一文無しに」……。棚いっぱいの冒険物語(子供向けのやつだ)に飽き飽きしていた僕にとって、おじいさんの「冒険」は少し悪っぽくて、たまらなく憧れた。
さて、時計がないから正確な時間はわからないが、窓の外から汽笛の音が聞こえた。僕は、日記帳を父さんの旅行鞄に押し込んで(勝手に拝借)、家を出た。おじいさんは、僕にもこうしてほしかったに違いない。空白のページは、僕が引き受けるつもりだ。
武器種 | 杖 | レアリティ | ★★★★ |
属性 | 光 | シリーズ | 想起 |
EN | Ancestral Memory | ||