自分の研究の成果で、戦争で多くの人が死んでいく。最初はそんな現実に苦悩したが、今ではそんなことを考えることも無くなっていた。そんな私に与えられた次の研究対象は、豚のようにぶくぶくと太った、おじさんだった。
最初はただ戸惑うばかりだったが、このおじさんの体内から、正体不明の毒素を生み出す実験を行うのだという。おじさんを観察したところ、人間の自我みたいなものはなく、言葉もおぼつかない。ただ動物のように、私に餌をねだるばかりである。
実験が進行する間、私はおじさんの観察と世話を続けていた。そしていつしか、その触れ合いを通して、純粋な研究者だった頃の思いが蘇ってきた。このまま実験が最終段階までいったら、おじさんはどうなってしまうのだろう……。
結局私は、そのおじさんの研究結果を破棄した。人を殺すために研究者になったわけではないと、今になって思い至ったからだ。結果方々から恨みを買い、追われる身となってしまったが、気持ちは晴れやかだ。だって私には……おっと、そろそろ餌の時間だったか。
武器種 | 格闘 | レアリティ | ★★★ |
属性 | 闇 | シリーズ | 抗抵 |
EN | Antinomy Fists | ||